FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「……それで、他の所も調べると、色々分かる様になるのか?」
「そうみたいですね。色々というか、沢山の情報があればあるほど、より正確な年代を特定できるようになるみたいですけど」
「ほえ~……すげぇなぁ、人類史の歩みって。積み重ねてんなぁ」
「ですねぇ。私の時代からは考えられないような事ばっかりです」
背後からの好機の視線を受けつつ、落ちている瓦礫をチェックする。運べるサイズの瓦礫はリリィと一緒に一か所に集めて既に確認済み。後は、持ち上げられないレベルの大きさの物を一つ、一つチェックしていくだけ。
それも、目の前の何かの土台であろう残骸でラスト――通信先から聞こえて来る、解析をしている時のキーボードらしい音が、止まる。
「どう、ロマニ」
『……うん。結構多めにサンプルがあってよかった。我ながら、かなり正確な予測が立てられたと思うよ。そして――どうやら、予感は当たってしまったらしい』
――四代目の享年とぴったりと重なった。
口元に手を当て、漏れ出すため息を抑える。それが正しいなら、二つの出来事に因果関係は無いとは到底言い切れない――あまりにも若すぎる死と、破壊の跡。寧ろ、関係性を見いだすのが容易い組み合わせと言っても良い。
何かが起きたのと考えるべきだ。そして……幼子ですら巻きこむ様な、凄惨な破壊の跡という要素。類似する例は、当然二人の頭に浮かんでいる。十数年前に起きた、悲劇。
「……似たような事件が起こってたって事が?」
『ないとは言い切れない、かもだ』
康友が巻き込まれた一件は、屋敷の中で十数人が亡くなるような痛ましい事件。
一方で、突如として目の前に浮かんできた出来事の影は、かなり大きい――墓場をここまで破壊して、幼子にまで被害が出ているのだから。
「だとしたら――偶然なんて、あり得ると思う?」
『……一つの村とも呼べない小さな集落で、何人もの死者が出る様な事件が、複数起こるだなんて。そこに何もないっていう方が不自然、と思ってしまうけどね』
であれば、その原因は――
「――先輩っ!」
その声に、深く沈みかけていた思考が、引き戻された。
立ち上がって、振り返れば。此方へと向けられた懐中電灯の明かりが目に入った。
此方へと向けて近寄ってくる丸い光。暗闇の中で大きく揺れるそれは、持ち主が明らかに急いで、焦って、駆けて来ている事を示している。
その光の先には――やはり、ゴルゴーン探索へと向かっていたマシュが。
「マシュ、どうしたの。そんなに走って来て――」
巌窟王の姿は……とりあえず回りを確認してみるも、見当たらない。かと言ってマシュが置き去りにするとは到底考えられず。
何があったのかを問えば、マシュはそこで漸く、一つ。小さく呼吸を入れてから――彼女がここに戻ってくるまでの顛末を話してくれた。
『……それで、エドモン・ダンテスに関しては彼女が探して来る、と』
「はい。酒吞童子さんであれば、ただ待っている事しか出来ない私よりも、彼と合流して安全に下山可能かと思い、私は先行して戻って来た次第です」
「なるほど――それで、気になる事って?」
「……酒呑童子さんがおっしゃっていた事です……けど」
その瞳が、背後に向けられる――その先には、後ろに立っている康友の姿。互いの視線が絡んだと同時に……マシュの眉根が、悩まし気に寄ったのが分かった。
口ごもり、その先の言葉を言い出せない。
その僅かな上目遣いに滲む……視線の先の相手の事を慮る色が、あまりにも分かり易かったからだろう。背後の少年は、耐えきれないと言わんばかりに、ぶふっ、と噴き出してしまっていた。
「……アンタって優しいな、マシュ・キリエライト。本当に」
「いえ、そんな事は。ただ、私は」
「いーよ別に。気にしなさんな、お嬢さん。こんな緊急時だからな」
申し訳なさそうに目を伏せる彼女に向けて、康友は軽く片手をぱたぱた、平気だよとでも言いたげに振って見せてから……けれど、と続ける。
「そう思ってくれるのが、すげえ嬉しいよ。ありがとうな」
「……はい」
しばし。マシュはかけられたその言葉を噛みしめる様に瞳を閉じて……それから、開いた瞼の下、先程の様な惑う様子は見当たらない。
紫紺の瞳に宿した光は、本当に真っすぐで。もう少しも揺らいでいない。
「……康友さんの中に眠っている、あの力についての事です。酒吞童子さん曰く、自分が村に近寄らないのは、自らが傍にいる事の影響を危惧しての事だと」
「自分が傍にいる事の影響?」
「……彼女は『惹かれる』という言い方をしていました」
まるで、彼の仮称『鬼の力』自体に別の意思が宿っているかのような――マシュも、同じような感想を抱き。そして……その事について、確かめようと思った、と。
チラリと背後を伺う。康友はと言えば……死んだ目で『思ったよりもヘビーな事が返って来てお兄ちゃん困惑』と呟きながらうずくまって、なぎこさんに背中を繰り返し撫でられていた。妥当な反応過ぎて、マシュと二人、物凄い申し訳ない気持ちになってしまう。
……とはいえ、今更止まれない。
息を吐いて気を取り直しから、マシュは周りを見回す。一瞬、この墓についてか、と思ったが……もうすっかりと暗くなった闇の中でも、その視線がこの『集落全体』に向けられている事は、直ぐに分かった
「実は……この集落の家屋について、詳細な調査を行いたくて」
「ここの集落の建物……もしかして、全部?」
「はい。ここから先については、私の想像に過ぎませんので。確証を得手からお話ししたくて……ついては、私単独でこの村を調べる許可を頂きたいんです」
……マシュの表情は、真剣そのもの。そもそもの話、彼女がこのような事を言うのだから、自身の中で何かしらの『論拠』に成り立っての仮説であろう事は想像もついた。
集落全部となると、結構時間もかかる事は彼女が承知してない訳も無い。それが必要だと、それでも判断したなら。
ちらりと通信先のドクターを見れば――なんだか、成長した娘を見ているかのように嬉しそうな顔で、うんうんと頷いているのが見えた。
『――よし。やろうマシュ。ただし』
「俺たちも手伝う」
……そう言った途端に、彼女が目を丸くしたのが。とても愛らしくて。
思わず、先程の康友の様に、噴き出してしまった。
「で、ですが、これはあくまで私の想像に過ぎない事を確かめるわけで……先輩や、ドクターに手伝って頂く必要は……」
『君がそこまで言うんだから、きっと何かしらがある筈だ』
「大体、マシュが一人で頑張ってるのに俺だけふんぞり返って別の所でお茶を飲んでるだなんて、絶対できないからね」
マシュ・キリエライトと言う少女の能力を、そして何よりもその人柄を。自分達は信じている積りだ。そんな彼女が自分一人でも、と言う程なら。信じてみる価値は十分にあると思うのは、別に何もおかしくないだろう。
それに、だ。
彼の身体の中の力に何かしらの。本人とは別のモノが潜んでいる、というその可能性というのは――自分達の調べた事とも、繋がるかもしれない
『僕達の方にも、収穫はあった。それと合わせて、ここで一気に調査を進めよう! 今まで積み上げて来た物と合わせれば、きっと――』
「……あ゛~……ちょっといいかな」
ドクターが、満面の笑みを共に調査の開始を宣言しようとした所で――普通に横やりがどすっと入って来た。背後を振り返れば、頭を掻きながらこちらに歩み寄る康友の姿。暗がりでも分かる顔色の悪さだが……それでも、何とか立て直したようである。
「いくら何でも、ここまで暗くなって来てるんだし……明日にした方がいいんじゃないかね。明るい所で確認した方が分かり易いと思うぞ」
……マシュと顔を合わせる。ぱちくり、と目を瞬かせてから。あ、と声を漏らして。
それから、彼女は少し恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。
「……は、はい。そう、ですね……明日にします」
――という事で。
エドモンは、酒呑童子が責任をもって帰してくれる……その言葉を信じて、全会一致で一旦屋敷に戻る事となった。
尚、屋敷への帰り道についている間もずっと、マシュは顔を手で覆ったまま、『張り切り過ぎてしまいました……』と、なんとも可愛らしくしょげていた事を、後でしっかりレポートにも書き記そうと思う。
「全く……兄貴が無粋な事言うからー」
「無粋とかじゃねぇだろ……後、俺だって手伝うは手伝うから、ちょっと整理する時間が欲しかったんだよ……ったく」
リリィ「口を挟む余地が無さすぎる」
すまねぇ……作者の腕が無くて済まねぇ……!