FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:厄災 其之三

 ――再び、屋敷の大広間。

 

 全員終結――ではない。エドモンは未だ戻って来てはいないが。その帰還を待つ間にもやる事はある。改めて村の調査をやるにしても……マシュの言っていた事を考えれば、その辺りと自分達の成果を『すり合わせる』ことくらいは出来るだろう。

 

「――流石に、ここまで出てくると、ただの偶然とは思えなかった」

『状況によるバイアスがかかっている、という可能性も否定はできないけど……逆に言えば、これを偶然だと思い込む方が、楽観的に過ぎると思ってね。壊れた墓石の破損部分をスキャンしてみた結果も……『人為的な破壊』である確率が高い』

 

 マシュと、お婆さん――そして改めて、あの場に行けれど詳しい説明を出来ていなかった康友達に、解析した結果を伝えた。まだ目覚めてない香子さんを除いて

そして、その二つには、何か関連があるのではないか――より具体的に言うのであれば。その二つの要素から浮かび上がってくる……一つの『恐ろしい仮説』について。

 

 ……目の前のお婆さんの顔が、歪む。

 苦虫を噛み潰したかのような、その表情。顔を上げ、此方と目を合わせてから。大きくため息を吐いて見せた。

 

「そこまで出てくりゃ馬鹿でも『そうなんじゃないか』って疑って当然だろうよ」

『……一応、ゼロではありませんよ』

「一つ一つ、偶然が重なったって? 確かに、そういう可能性もゼロじゃあない――なら、アタシ方から否定させてもらうよ。偶然なわけがない」

 

 墓の方へと顔を向けながら。彼女はふんと鼻を鳴らして言い切った。

 

「あの墓の前の管理人の爺さんが、病気で亡くなる前の事さ――『あれと比べりゃ、嵐の方がマシだ』って、零してたのを聞いたことがある。墓の前でね」

 

こんな山奥だ。お婆さんは自然と、『昔はデカい熊なんかがここら辺をうろついてたのだろうか』と思ったらしい。墓の荒れ具合も、もしも猛獣が暴れた跡というのなら、説明は付くのであまり気にも留めていなかった――との事。

しかし。こうして、多くの出来事が起きた後で考えてみれば。

 

「……はぁ。十年前のアレと、似たようなもんだったんだろうね。きっと」

「その、何か詳細等は……?」

「何にも。それっきりさね。ただ――アンタらの話を聞いていると、その爺さんの言ってた『アレ』っていうのは、おおよそ想像も付いて来るけども」

 

 お婆さんは、そう言ってから――今度は、康友の方へと顔を向ける。

 康友は、と言えば。壁に寄り掛かって座ったまま。腕を組んで、目を閉じて。憮然とした表情で話を聞いていたのだが。その視線が向けられて直ぐに、その下ろしていた瞼をゆっくりと開けて。何処か不満そうに、鼻を鳴らして見せた。

 

 リリィが、きょとんとした顔で二人の間を行き来する。なぎこさんが、小首を傾げている。見つめ合う康友と、おばあさん。二人の表情は……実に、険しいもので。

 

「……康友。あんた、あの角。勝手に出たり入ったりする事は無いのかい」

「ねぇよ。今の所はな。こちとら制御の仕方だとか、使いこなす方法、だなんてさっぱりと分かんねぇってのに、不気味な位に静かだ――なんでかは、知らねぇけどな」

「アンタと四代目の子供の違いなんて、年齢くらいなもんだろ……『納得も行く』」

 

 ……お婆さんが、最後に口にした言葉に。

マシュの顔が、悲痛に歪む。思わず、『あの』と声を上げて――それも、手を上げた康友に制される。

 

『えっと……その先は、僕から』

「いい。若造が年寄り気遣ってんじゃないよ」

『そ、そんなつもりはないんですけど……』

 

 じろり、と。お婆さんに睨まれて。ロマニも、口を閉ざさざるを得なかった。

でも、ムカついてる相手を睨む視線に怯えてしまった……というよりは。その真っすぐな瞳に見つめられて、諦めざるを得なかった――『ここは譲ってくれ』と、言わんばかりの強い意志の込められた瞳で。

 

……ほんの少し、二人は微笑んでから。

自分たち二人と、ロマニの方へ、それぞれ、ぺこりと頭を下げて。それから――再びお互い向き合って、口を開く。

 

「あんな化け物を殴り飛ばせる様な、とんでもないパワーだしな」

「……生まれたばかりの子は、とても乗りこなせやしないだろうね」

「んで、カルデアの人達の説に乗って考えるなら――結論は分かり易いな」

「その子が亡くなるまでに、康友に宿ってるような力が目覚めたから『四代目』にされたと思って良いだろうね」

 

 酷く。酷く、可笑しな状況だった。本来なら――自分達が、調べた責任をもって話さなければならない事を。淡々と、まるで確定した事実を話すかのように……その身内の人達が、話している。そして……その度に。リリィとなぎこさんの顔色が、青ざめていく。

 当たり前だった。自分だって――そんな事があるだなんて、思いたくも無い。

 

「ま……待ってください……それって……!?」

 

 リリィの声が……震えている。康友は、其方を見たまま。何も言わない。

 二人の視線が、しばし無言で絡む。ごくり、と。彼女の喉が鳴って……それから、荒い呼吸が、ゆっくりと静まっていく。お互いの目が、ぴたりと合ったタイミングで、康友はが口を開いた。

 

「そっから考えると……だ」

 

「その四代目は、生まれた直後に、俺みたいな力が目覚めて、暴走」

「村全体に被害が出る様位に暴れ回った挙句――力尽きた」

 

 ……部屋が、一瞬、しんと静まり返った。

 先日、この村で起きている事を、ちゃんと説明した時だって――ここまで、静まり返ってはいなかったと思う。

 

 リリィが、口元に手を当てたまま、立ち上がる。

なぎこさんはと言えば……呆然とした顔で、二人を見つめている。

 誰もが黙りこくってしまった室内で……次に言葉を発したのは、なぎこさんだった。

 

「……マジで言ってる。ホントに?」

「カルデアの皆さんは、この村の問題を解決しようと……すげぇ真剣に、やってる。そっから導かれた事だ――気持ち的には兎も角、疑う余地はねぇよ」

 

 ……静かに、そう言葉を打ち切ってから。彼は苛立ちか、不快感か……歪んだ目元で天井を仰ぐ。目を閉じれば、その口元からあふれ出した重たいため息が、床へと零れ落ちていって。その手がガリガリと頭を掻く。

 なぎこさんはと言えば……あー、とも、うー、とも付かないような呻き声と共に立ち上がると――軽くこちらに頭を下げて、部屋から出ていってしまう。

 

 ……当然ながら、それを止められる訳も無い。

 その内容自体が、ショックを受けるには十分過ぎる話だというのに――それが、自分の家の話だとなれば、余計だと思う。

 

「……本当に、あの人が居なくてよかった」

「ま、気の弱いあの娘に聞かせるには、ちょいと酷な話かねぇ」

「確定した訳じゃないとはいえ――こんな身内の恥を聞かせるのは、流石になぁ」

 

 ――聞こえてきたその言葉に、口をきゅっと引き結ぶ。

 

「……あ、あの、それは……っ」

 

幾らなんでも、そんな言い方は無いんじゃないか、と思ってしまった、が。

マシュがその後を続けられないのも……分かる。視線の先の二人は、それ以上何も言わず。寧ろそう言った側の方が、身体を、小さく。申し訳なさそうに、縮こまらせて。

彼女の方に向き直ってから、お婆さんは黙って頭を下げ。康友の方からもごめん、と消え入りそうな位に、小さな一言が。

 

 ……二人にも、それが良くない言い方である自覚は、恐らくはあるのだろう。

 それでも――彼らは、そう口にする。

 

 今の身内の恥、というのも――本当にそれ以上の意味は無いのだろう。自分達がやって来た、やってしまった事で、迷惑をかけてしまうかもしれない事に。本当に申し訳ない、と。ともすれば故人を貶める様な、傲慢な言い方だけど。

 それでも……香子さんの部屋の方へと視線を向ける二人には。それ以上の意味は無いのだ。祖先の行いを必要以上に嫌悪する色も、何も――ただ、その可能性だけを、真っすぐに見ている。

 

 その上で――『もしそうなら、自分達の恥ずべき行いの一つだ』と。言葉のままに、そう受け止めて。はっきりと、そう言い切る。取り繕ったりしない。

 

「……先輩」

「うん」

 

 それは正しい行いではある。自らの良心に則っている。それはそうなのだが……何故か、違和感がある。

 

 ……康友は、基本的に身体を張って戦っていた。そして、自分の身を顧みない行動で香子さんに怒られた。目の前のこれは、きっとその延長線上にある。

 それがよく言う様な他者への悪影響を泳場さないのは……徹底的なまでに範囲が限定されているから。彼らの中で一つの精神的な指標があるから。ただただ、自分か、または身内に対して、彼らは異様に厳しい評価をする。

 

『おいババア!』

『なんだいクソガキ』

 

 ……思えば。この村にやって来てから。

お互いへの呼び方や、その態度で……彼らは、それを示していたのだろう。

 




ある種の理想を書くと『これってやっぱおかしいよな……』ってなるのってどうしてなんですかね……?
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