FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:厄災 其之四

「――お話を整理しましょう!!」

 

 静まり返った部屋の中で。声を上げたのは――リリィだった。さっきまで大分顔色が悪かった様に見えたのだが……この短時間で切り替えられる心の強さは、激動のブリテンを旅した騎士故だろうか。

 

「えっと……先ず四代目さんの一件が事実、だとしたら――何がどうなるんでしょう?」

「俺たち……っていうか、昔の一族が一体何をそんなに『特別視』していたか、ほぼ確定するって所、かな。あってるかカルデアの……後ろの人?」

 

 リリィの視線を受け。康友はそう言ってから――軽く自分の額をとんとん、と指先で叩いて見せ。此方を――正確には、此方をモニタしているであろうロマニとダ・ヴィンチちゃんの方を、見た。

 

『――四代目には畏敬の念を得るだけの『時間』が無かった。だからそう呼ばれるだけの要素があるとすればって話だったからね……実際に確かめる為の手段は無いから、確証を得るのは難しかった』

『でも、あの墓場の破壊が起きた年代――状況証拠ではあるが、破壊の跡が『特徴的』なのが問題だ。自然災害ではありえない、『暴力』の跡』

 

 普通の人類では成し遂げられないであろう破壊の痕跡は、通常の人では成し遂げられない。方法やこの村をじっくりと調べた結果だが……『魔術師の痕跡』らしきものも何処にも存在せず。『何でもあり』というのも難しい。

 

 しかし――『手段』は、ある。

というより、この破壊の跡を成せるほどの力を……この集落を纏める、一族の少年が持っている。尋常ならざる怪物を素手の一撃で殴り飛ばし、人理に刻まれた英霊の影たるサーヴァントにも痛打を入れられるほどの、強い力が。

その少年は自らの一族から『五代目』と名指しされている。当主の中でも、そうよばれた者が特別視されているのは……『四代目』の墓の様子から、確認できた。

 

「他よりも、丁寧に掃除されたお墓……」

『今にして思えば。それは、他の意味もあったのかもね』

 

 それは――憐憫と呼ばれる感情だったのか。

 その墓に埋葬された者に対しての。

 

 最も若いであろう『当代』と。

最も若くして亡くなったであろう『先代』。

 

 前者は、自分も実際に見て来た時間と実感から。後者は――逆に、そうするだけの歴史がない故に、考えられる要素が一つしかなかった。

昔から、伝説が伝わる程に『鬼』という存在を想う集落の人達が特別視する――

 

『そんなものは……『鬼』としての力しかない――本造院くん当人だって、詳細を知りえない、貴方達の一族の血に伝わっているのであろう神秘』

 

人知を超えた破壊の跡、それを作り出した原因、手段。過去の集落において、考えられる恐らく唯一無二の『暴力』だろう――では、どうしてその力がこの集落で振るわれる事になってしまったのか、制御は出来なかったのか。

 

その問いへの答えは、実に分かり易い。

ほんの一年も生きていなかった赤子に、そこまでの事を期待するのは、あまりにも酷ではないか、と言う話である――もしこれがミステリーであれば『あまりにも話が出来過ぎている』『他に原因があるのではないか』という話にもなってくるであろうが。

 現実には、何処にも無いのだ。そんなものは。残酷な『結果』だけが、積み上げていった事実の先に存在しているのである。

 

「……継承してた覚えはどこにも無いんだけどね」

『藤丸君から聞いています。『五代目』までの発現者と思われる人達、彼らが生きていた時代は実にまちまちだと――これは僕の完全な推論になってしまいますが、恐らくは目覚める可能性も完全に『ランダム』なのではないでしょうか』

 

 ――真剣な顔で、ドクターが続ける。

 

『暴走した要因は、そこにも……あるのかもしれません』

「――赤子だからと油断してた。『まだ』経験したことが無い最悪のパターンを踏み、結果として、自分らの集落でとんでもない事故を引き起こした、って所かい?」

 

 それを継いで続けられた静かなその語り口には……嫌な説得力があった。この集落の歴史は長い――もし、本当に五人しか力が発現した人が居なかったのなら。四代目が生まれるまでは、先例は三つだけ、あまりにも参考にするサンプルが少ない。

 

「……なるべくして起こった『事故』だったって所か」

「同時に……どうして俺たちの一族が、その鬼の継承者について、あそこまで隠していたのかにも説明が付くな」

 

 ……ちらり、と。お婆さんが視線を康友に向けた。

 

「隠してたってのは……」

「三代目まではどうだったかは知らねぇが――四代目がとんでもない被害を出して亡くなったとすれば。そりゃあより厳重に隠したくもなるだろうよ」

『――成程。四代目の頃に、継承者に関する文書を破棄――もしくは、何処かへ隠したって事も考えられるのかな?』

 

 ……そこも、繋がる。

村にとって特別な人たち。それを記す為の文章があまりにも少ない。アレだけの蔵書や何やらがあった、あの蔵の中にも存在しなかった――では、大切な書物を第三者の目に付かない様にする為の切っ掛けがあったとすれば。

 

 当主の名前と、その内で『誰が』目覚めたかについてだけの、簡素な記述が残っていたのは……逆に、それだけだったからだ。あの文章の中には、辿られるだけの要素自体は何処にも無い。だから、アレだけが残った――

 

「――まぁ元から無かった、って話になったら笑い話なんだが……」

『その場合は私達が間抜けだったという話だ! 無知の知を知ったという事で、また前提の練り直しをすればいいだけの話だとも!』

「はっ、万能の天才は言う事が違うぜ!」

 

 ……正直『そっち』もありえなくないのが難しい所であるが。

 

「……まぁ、今は一旦『ある』という事で話を進めようじゃないか」

『ちなみにお婆さん、何か『ある』という確証に繋がりそうなものとか……』

「残念ながら。こちとら唯のババアだからね――まぁ、昔っからの年中行事を欠かさなかった連中だ。こっそり他の目に映らない様にして伝えてても不思議じゃないけど」

 

 今までの行動からして、残している可能性は高い――であるならば、決してこうする事は無駄ではないだろう。

 

 さて。そうなってくると、だ。

 そう言った文章が隠されている場所として、一番可能性があるのは――鬼の力を『初代』から引き継いできたであろう、本造院家だろうか。

村のまとめ役として、トラブルの収束を担う役割もあったろう。逆に言えば、他にこれ以上に適任な家は存在しないと言ってもいい。

 

「……四代目の一件やら、その前の事やら……一番詳しく知ってるとすりゃあ、アタシの旦那とその周りの連中だ。そいつらが、何処にどうやって隠していたか」

「本当になんも知らねぇのか?」

「……残念ながら。ただ、そうだねぇ」

 

 その事について、改めて問いかけた康友に、お婆さんは目を向け――その視線が、真正面からぶつかる。しばしお互いに見つめ合った後。

お婆さんは、不意に視線をそらして。庭の一角へと視線を向けた。

 

「――『埋めた場所』かね」

 

 その一言に。

 康友の眉尻がが、ぴくりと上がった。

 

「……それって」

「アンタの『肉親』が埋められてる所だ――あそこを選んだのは、目に付かない様な場所っていうのと、もう一つ……妙に『彫り易かった』ってのがある」

 

 他の場所と違って、明らかにスコップが刺さりやすい――まだまだ背筋もしゃっきりしていて元気な康友のお婆さんだが、その当時も体力の衰えはどうしても感じていた。そんな彼女が、成人した男女を埋めるのには、どうしても無理があった。

 それが上手く行ったのは……他よりも、明らかに『耕されて』――否、『幾度も掘り返されて』いるかのように柔らかい地面があったからだ、と彼女は語った。

 

「生ごみを埋め立ててた、って事もあるかもしれないが……だったら、一度埋めたら掘り返す必要は無いと思うけどね」

『し、しかし……死者の埋められてる所を、暴くというのは……』

「それを躊躇って『今を生きてるガキ』が迷惑する位だったら、アタシはあの世であの子達に詫びる覚悟はあるさね」

 

 ……どうする、とでも言いたげのその視線が――今度は、此方に向けられた。

 

 此方を見るお婆さんの目は……とても、静かで。でも凪いだ水面の奥は、確かな意志の光に満ちている。まるで、鋼の刃の様に鋭く、澄んだ光は、此方の瞳の奥まで射貫いているかのようで。

 

「――マシュが提案した調査が、まだ残っています。やるなら。その後に」

 

 自然と、偽りなく。自分はそう彼女に応えていた。

 

「……そうかい」

 

 一度目を閉じ……開いて。此方を見つめ直してから。お婆さんは、にやりと不敵な笑みを浮かべて見せた。そして。

 それから、彼女が口にした言葉は。何時か、何処かで聞いたようなもので――

 

「焦らず、どっしりと――悪くない」

 

「世界を救おうって所の奴は、やっぱり違うねぇ」

 




漸くこの章の終わりが見えて来た気がします……
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