FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「――香子さんは?」
「やっぱり全然起きないねー……静かなもんだよ」
「そうか……なら、こっちは婆ちゃんに任せて、俺たちも行こうぜなぎこ。これで確定すりゃあ、向こうさんの話も大きく進展するんだろうしよ」
――そう言って、目の前の『女の子』を送り出してから。
一人部屋に残り……布団に眠る彼女へと視線を向ける。やっぱり、死んでいるかのように眠ったままだ。カルデアの分析では『大丈夫』と出ていたのだから、心配は要らないと分かっているものの、どうしても気になってしまう。
……僅かに、こぶしを握り締める。
確か『マスター』と『サーヴァント』は夢で繋がる事があるという。一緒に寝て、眠っている彼女の元へと行けたのなら。どんなに良いだろうか――
『――間違いない、ね。この補修の跡……』
「はい……Dr.ロマニ。先ほどと同じような?」
『ちょっと待ってね……うん。正確な時期までは無理だけど、やっぱり四代目の無くなった時代とおおよそ重なってくる』
……マシュの表情が、少し悲しげなものに変わった。これで確定した――此処で、目を覆いたくなるような悲劇が起きてしまった事が。
町の端から端まで広がる破壊の跡。どれだけの被害が出たのかを想像するのは、さして難しい事じゃない。だからこそ……マシュは、こんなにも悲痛な顔をしているのだから。
周りを見回す。増改築の跡の理由を理解した今は、家々に刻まれたそれが、酷く痛々しい『傷』に思えてきてしまってならない。自然と、少し目を伏せてしまう。
『端から端まであるとなれば、被害は広大なモノだったんだろうと推測出来るけど……ただ、これは……?』
「ドクター?」
……そこで、ドクターの声が耳に入って来る。
訝しむ色が滲むその声に。一旦周りを警戒するリリィの姿をちら、と確認する。何かしら周りに何かしらの異常が顕れた様子は、ない。となれば。
『あぁ、いや……ここだけ、なのかな。いや、しかし……』
「……ドクター、『次』の確認をお願いします」
『うん、分かっ――えっ? まだ調べるの?』
「はい。もう後、何か所か……調べている事の延長線上ではあるのですが。もう少しはっきりと確認できる場所が、幾つかあるかと」
その疑問に応えるかのように、マシュがゆっくりと立ち上がって、ドクターにそう告げる。少し困惑した様子のドクター。事実確認は終わった、と自分も思っていたので……しかしながら、彼女はまだ『確信』には至っていないようで。
という事で、そこから暫し。マシュと共にこの村の中を探索し続ける事となった。
幾つかの家の修繕跡を確認し。ドクターに解析を頼み……と、やっている事はさして変わらないのだけれども。
『……どういう事だ、一体……?』
「どうしたの、ドクター」
『明らかに一回だけじゃない。大規模な修繕の跡が、それも……この分布は』
ドクターの、明らかに動揺した様子。一方のマシュは動揺した様子を見せず……しかしながら、明らかにその顔に浮かぶ悲痛な色は、さらに深まっていっている。
ぎゅっ、と強く握りしめられたその手が痛々しくて……思わず駆け寄って、その手を静かに包み込む。大丈夫、とは言葉にしない。それでも。出来れば伝わる様に。
「……マシュ」
「っ――ありがとうございます。先輩」
少しだけ、顔色が良くなった様な気がして。ほっとした。
彼女は一つ、深呼吸をしてから……通信機の先のドクターに向けて声をかけ。持ってきていたそれを、近くの家の石畳の上に広げて見せる。
それは……村中を探索しつつ、マシュが作っていた村の『地図』であった。どうしてこの村全体をマッピングしていたのかと思っていたが……
「ドクター、解析結果を教えてください。分かり易く可視化を行いたいので」
『わ、分かった……えっと――』
ドクターが口にする言葉を、マシュが正確に地図上に記していく。流石カルデアのAチーム、本来特異点に対してレイシフトを行う筈だった最精鋭の一員だ。淀みないドクターの報告にも余裕をもって対応している。
……いや、それだけではない。あらかじめ借りていた三色ボールペンを複数遣い、何やら色分けまで行っている。そうして、色々と地図に書き込んでいった結果。
「……これって?」
なぎこさんと康友が覗き込む地図上に――『円』が描かれていた。その数は四つ。大きさはまちまちだ。
「……酒呑童子さんは、私に『ヒント』をくれました」
「それって、巌窟王の捜索をしてた時の」
「はい。その時の言葉を、私なりに解釈してみたんですが……彼女が言っていた『村中に残した跡』という言葉が指していたのは、こう言う事ではないのではないか、と」
その円が繋いでいたのは――地図上に記されたいくつかの建物。一番外側の円は、先程まで調べていた一番端の建物……というか、集落の一番外側の建造物を、集落全体の形をなぞる様にして描かれている。
この円が一瞬何なのか分からなかったのだが、しかし先程までの調査から、漸くその事へと思い当たった。
「外側のこれは『四代目』さんが被害の範囲かな」
「はい……そして、残りの三つ、なのですが」
「――俺の前の『当代』は、後三人いたな」
地図を見ながら、ぽつりと呟く康友。それが意味する事とは、つまり――マシュが、康友の言葉に静かに頷いて見せた。
「……この村にやって来た時『複数回』の修繕の跡があった建物がありました」
「あ……そういえば」
「はい……一番内側の、この一番小さい円から……」
マシュが指示したのは、お屋敷廻りをぐるっと囲む程度の大きさの線。そこから、一番外側の大きな円へと向けて、一つ、一つ。マシュは段階を踏む様に、四つの円を指し示していく。
「……外側へ至るにつれ、建物の修繕された回数は増えていっています」
壊され、そして直された跡――どうして破壊が引き起こされたのか。最大の要因となりえるであろう要素は、藤丸にも直ぐに思い浮かんで来る。
……四代目だけとは、誰も断定してはいない。歴史の影に埋もれただけで、同じような事が起きた可能性は、誰にも否定できなかった。
あくまで想像ではあるが。しかし、こういった悪しき想像である程に得てして事実であってしまうというのは、この人理修復の旅の中では何度もあった。
「……あの鬼娘のいう『跡』ってのはこう言う事か」
「はい。そして……なのですが」
『明らかに……破壊の規模が広がって行っている』
そして……逆に、外の円から一番小さな円へと向かうにつれ、修繕された『最初』の跡はどんどん古くなって行っていって。そして、円は、形こそ違ったり、一部が重なっていたりもしているが……しかし、古くなるにつれて、明らかにその『範囲』を狭めていっているのだ。
最も被害が少なかったのは『初代』だったのだろう
「……神秘って、時代を経るごとに弱まっていくんだよね?」
『基本はね。でも――ここでは、例外だったのかも。若しくは』
「使う側の方が、その法則に従って『弱くなって』いった、か?」
……重い沈黙が伸し掛かる。
当代、と呼ばれる彼らが特別視された理由。それが『最悪』の形で浮かび上がって来ていた。彼らは、これだけの被害を生みかねない存在として……『畏怖』されていた。
そして――自然と、顔を上げて。目の前の彼の顔を見てしまった。
「……どっちにしろ、俺の前で村一つ吹き飛んでんだ。俺の代で、村人が全員居なくなる可能性もあった、って事かね」
「あ、兄貴は、その……なんか、使いこなしてたっぽいじゃん。あの、ヘンテコな」
「まぁ結果としてはな。とはいえ、偶然みたいなもんだ――」
しゃがみ込んでいた康友が、ゆっくりと立ち上がる。大きくため息を一つ付いて、天を見上げ――ぎりっと、奥歯を噛み鳴らす。誰も、口を開けなかった。
彼は、きっと誰よりもはっきりと理解しているのだ。その『五度目』は……とっくの昔に『起きてしまっていたのかもしれない』というその事実を。
……その足の先が、屋敷の方へと向かう。
それが事実かどうか。何かあるとすれば……やはり、全ての『当代』を輩出した、この村の代表のお屋敷しかないだろう。
「……溝の底までさらうぞ」
「必ず、探し出してやる――確証を、な」
フェイクコラボたのしー!!