FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「ねぇ兄貴、かおるっちの家はもう良いの?」
……他の皆が立ち去った後。背後からそう問われた。振り返れば、なぎこがこっちを見てる。このタイミングで聞く事か、という話だが――なんとなく意図は察した。
恐らくだが、探りを入れられている、といった所だろうかか。『それ』がどっちの目論見によるものなのか、単純に気になっただけなのか……まぁ、この際どれでも構わない。というか……単純に答えが変わらないだけというか。
「もう『役割』は終わったんだと思うぜ。香子さんが倒れる前、結構気合入れて調べても、前に見つかった物以上の情報は出なかったって話だし」
「えー、何その言い方。なんかゲームみたいな言い回しじゃん」
「やべっ、傲慢に過ぎたか……妹よ、見習うでないぞ」
……実際の所、敷かれた導線であるのは間違いないと思う。RPGっていうよりは出来の悪いTRPGに近いものを感じているのだが。
「でもまだ見つかんなかっただけかもしれないじゃん?」
「まぁ、そうかもな。でも、そもその話……今、俺達が欲しいのは、あっちに置いてある類のものじゃないと思うんだよ」
そう言えば。口をへの字にしながら、なぎこは首を真横にまで傾げてみせた。そんなに分かんないか。まぁ俺も正直感じたままに喋ってるから、分かり易くは無いし。具体的に言葉にしろって言われても難しいのだが。
つーか……
「んー? どういう意味?」
「んー……要するに、向こうに置いてあるのは『見せられる』もの。んで、屋敷にあるのは『残さなくちゃいけないもの』なんだよな」
「残さなくちゃいけない?」
「ちょっとは考えろやお前さん」
自分が今、凄い怪訝な顔してる自覚がある……まぁあくまで俺の感覚を言葉にしたものだから、分かりにくいのは仕方ないとは思うけれども。少しはこう、頭を使いなされと思う。お主の将来が心配になってくる。いや心配したところでその祈りが届くかどうかは別問題だけれども。
……さて、どう説明するべきか。というかなんで俺が説明しなけりゃならないのだろうか。いや『聞かせて欲しい』って視線送って来てる後ろの『妹』のおかげなのだが。
一つため息ついて、向かいがてらな、と言ってから先に歩き出した。
「今回の場合は……まぁ、俺のご先祖様が揃って晒した醜態だ。自分達に取っちゃ残しておきたくないもの。そうだろ?」
「まぁ。さっきの話が本当なら、自分の村が何回も壊れかけた様な出来事だし?」
「でもそうせざるを得ない。残しておかなかったら、後への戒めにならない」
流石に自分達の住処が何度も吹っ飛ぶような事は繰り返したくないだろうし……他人に見せたくない醜聞でも残さざるを得ない。
とはいえ、それを態々晒す必要は、流石に無いと思う。身内で見て大反省会でもすりゃあいい話だし、人の醜態を飯の種にするような連中に態々提供してやる理由にもならないと……まぁ兎も角だ。
残したくなくても、身内で秘してでも尚……ずっと、ずっと、語り継いでいく様なものだ。そこには、問題の本質が嫌という程に刻まれている。
「……つっても、結局失伝してるけど」
「それな!」
「それなじゃねぇんだよ。その証拠を今から探し出さねぇといけねぇんだぞ?」
……まぁそれが『解決』に至る根本的な理由じゃねぇのが、厄介な所だが。
「はー……ホント、七面倒な事にしやがって」
「ちょいちょい、そろそろお家に着くんだから、そういうのは言わんとけ~?」
「お、それもそうだな」
いやホント。発言一つ一つにも気を付けにゃならん――迂闊な発言一つで、折角の『仕込み』が全部パーになりかねないからな。
とはいえ……事が終わる前に『彼女』ともキチンと向き合わないといけない訳で。全くもって、やる事が多すぎる。
あぁ……三文芝居の主役も、本当に大変だ。反吐が出そうになる。
お婆さんは、黙って話を聞いていた。
ここまで来て、本来当事者であるの彼女に話をしないというのは無し、という結論になったのは自然な流れだと思う。例え……それが、自分達の村に起きた更なる悲劇を示唆するものだったとしても、だ。
実際、お婆さんは眉間に深い皺を刻みながらも。此方の話をしっかりと……一つ残さず取り零さない様に、と。しっかり聞いてくれていた。
その引き縛られ、硬く閉ざされていた、その口元は。
一連の調査の結果を耳にして、漸く開かれた。
「……そうかい。そうかい」
「ここまでの事態です――」
「なんも残ってない、でそのまま通すって言うのも、まぁ無理か。となりゃ……もう仏さんにも気を遣えないかね」
ゆっくりと、お婆さんが腰を上げる。
「……今更『こんな婆』の許しなんざ要らんだろうに。律儀なお人達だよ」
「いいえ。お婆さんは……きっと、本当に辛い思いをしながら、康友さんのご両親を、埋葬されたんだと思います」
『カルデアとしては、自分達の任務を理由にして、その思いを無下にする様な真似はしたくない……とは思っています』
吐息を一つ。藤色の着物の裾を握りしめながら……彼女はその瞳を此方へと向けた。
「それなら……もう一つ、我が儘を言っていいかい?」
「はい」
「掘り起こすのは、明日の早朝に――婆に、最後に懺悔をする時間をくれないかね」
頼むよ、と静かに頭を下げてくるお婆さん。マシュと顔を合わせる。時間がある、とは言えない旅だけれど……それでも、その時間はきっと必要だ。
目の前の彼女から奪う事は出来ない。マシュと共に、直ぐに頷き合う。
「はい。それまで、休息の時間に当てさせて貰います」
「あぁ、悪いねぇ……」
……今までで、一番弱々しい足取りで、お婆さんが部屋を後にする。その背中が、なんだか小さく見えてしまったのは、ただの気のせいではない、と思いたかった。
しばしの無言の時間。次に立ち上がったのは康友だった。
「――なぎこ、お前は今日香子さんの所で寝てろ」
「えっ、なんでぇ」
「一番怪しい所掘り返すんだぞ、何が起きても可笑しくない。万が一の場合も、危なくない様に、香子さんの事を見ててやってくれ。」
真剣な顔でそう口にした彼に、なぎこさんは少し唇を尖らせて……それでも、最後には渋々といった様子で『分かった』とだけ呟いて見せた。
恐らく、だけど。蚊帳の外にされるのがとても不満だったのだろう。なぎこさんは、今までも自分達の調査を隣で見ていたりと、好奇心旺盛な人だ。それで、最後の最後にあんまり関わるな、と言われて。
とはいえ……康友の言っている事も、間違いではないと思う。向こうがどういうアクションを起こすのかもさっぱり分かっていない。
『いや、君も出来ればその……』
「香子さんの所にってか? いや、俺は婆の所に居るつもりだ」
「お婆さんの?」
「あぁ、あんなんでも身内だからな。そっちは俺が付いとく。安心しろ、アンタ等プロの仕事を邪魔したりはしねぇよ――少しでも手が欲しいってんなら、喜んでお力添えさせて頂きますけれども」
……んで、そんな当人も、どうやら当日は大人しくしている積りの様で。物凄い失礼ではあるが、少し安心した。彼も、彼自身も、殆ど一般人と変わらないような状態だ。如何に『鬼の血』が再び目覚めたとはいえ、同じように使いこなせるかと言えば。
『ああいや、大丈夫。僕達で頑張るよ……とはいえ、そうできるかは若干不安ではあるけどもね……』
『いやー、まさか巌窟王が未だ戻らないとはねぇ』
……そう。
お婆さんの言葉は、実は案外こっちに有難かったりする。
「やっぱり、巌窟王さんを私が探しに行った方が……」
『いや君まで行方不明になっちゃったら厳しいから……セイバーとして、マシュに足りない突破力を持ってる君は必要不可欠なんだよ』
そう。
未だ自分と契約してくれているサーヴァント、巌窟王は戻っていない。彼は途中でやられてしまう様な温い人じゃない。未だ何かを探っているのは間違いないとは思うが……それでも暗躍が長すぎて、カルデアとしても、万全どころではない状態から、更に厳しい事になってしまっている。
……僅かに出来たこの時間で、彼が戻って来てくれると良いのだが、と。天井を見上げて、酒吞童子に願う事しか出来なかった。
TRPGやるには敵側の手札が自由過ぎだし多すぎるっピ!!