FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
『――という事で、我らが巌窟王が戻る事を信じて、その間に改めて状況を整理しよう』
『進行役はロマニ、解説は――サーヴァントなれどきっちり睡眠をとって気分爽快なこのダ・ヴィンチちゃんが務めようじゃないか!』
『うん、まぁ、暫し通信に出てこなかったのはそう言う理由なんだ……彼も、それまで精神的に疲労しまくってたから許して欲しい』
「いいえ、その、私たちはドクターやダ・ヴィンチちゃん、カルデアの皆さんの決死の探索で救われた側ですのでそれに対して何か言えるような事は無いのですが……」
マシュの言葉にリリィと顔を合わせて頷いた。
『まぁ、アレだよロマニ。あんまり謝り過ぎるのも良くないって事で。早速始めよう』
『……うん、そうだね。それでは先ず、ここまで分かった事を纏めて見ようか』
部屋の真ん中で顔を突き合わせ、先ずは画用紙(頂きもの)に今まで分かった事実を書き連ねていく――年表、にするには詳細な年月は分からないので、本当に事実を時系列というか順番に並べただけの簡素なモノにはなるけれど。
……とはいえ、特異点の物理的な規模自体はそう大きくなくても、単純な情報量なら今までの特異点の中でトップクラスと言ってもいい。
こうしてただ書き連ねていくだけでも量はかなりのもの、色々とごちゃごちゃしていた物を整理出来て、少しスッキリした気分にもなれる位に……まぁ、それは兎も角。
「……凄い一杯ありますね」
「うん」
ずらーっと並べられたそれ全てが、特異点解決に関わってくるかどうかは分からない。
しかし、それとは関係なしにもう少し緩やかな歴史になる筈だというのに、詰め込まれた情報は、波乱万丈どころの騒ぎではない。
そして……その全ての元凶となったのが。
「この……最初、本造院家の起こりになった、とある貴族の娘さん」
「ずっと昔に、鬼の子を宿したからって、自分のお家から追放されてしまったっていう」
『うん。この息子さんが、本造院家の初代の当主』
状況的に、初代である彼がこの家に流れる血の元。彼女の胎に宿った鬼の子である。しかしながら、だ。
『……今まで判明している情報から、一度目の破壊を引き起こしたのがこの初代だと仮定すると、うーん』
『神秘は古いものほどその力強さを増す。その論理から行くと……多分初代が一番出力大きい筈なんだけれどもね~?』
……でも、残されていた補修の跡は一番小さかった。そして、そこから時代を経るごとに破壊の規模が増して行っている。この村に魔術の痕跡があったわけではない。魔術回路の様にしっかりと神秘が『受け継がれていった』という可能性も低い。
代を経るごとに力は落ちていっているのはほぼ間違いないのでは、と――ロマニや、他の職員の人達は予想している。
しかしながら……起こした被害はその神秘の法則に反して、徐々にその被害を増して行っている。四代目の時代になれば、生まれたばかりの段階ですら、村一つを巻き込むレベルの膨大な破壊をもたらした――
「……あの、もしかしてなんですけど。時代を経るごとに『制御』が出来なくなっていってるとか、なんでしょうか」
そうなってくると、だ――リリィ口にした可能性が一番、納得は出来る。受け継いだ血の力を、正しく使えなくなっていってしまった結果が、あの破壊ではないのか、と。
ロマニも、彼女のその発言に頷いて見せる。
『こちらでも、それは最初に思いついたし、一番可能性は高いと思うけど……う~ん』
「何か、気になる事でも」
『……ある。あるんだけど、どうにも――』
――そこで、続けようとしたロマニの言葉を、ぱんぱんと手を鳴らす音が遮った。
『はいはい。その辺りの事を深堀するのは『今』じゃないよ』
『っと、そうか……今は、情報整理のターンか』
『ちょっと脱線してしまったし、話を戻そうじゃないか』
ダ・ヴィンチちゃんの言葉で、再び情報の羅列された画用紙に視線が集中する。あの岩に恨み言を書き連ねる間に、この村の基礎となる集落が完成して。
『……んで、ここから現代までの出来事はごそっと抜けている。その辺りはお婆さんの言っていた『心当たり』の中に入っている可能性はあるけど――これも今じゃない。想像の翼を広げるにも、材料が無さすぎるしね』
「……とはいえ、この間にも合計三回の『破壊』が起こっていますし、その再建も挟まっています」
……決して、その間に何もなかったか、という訳でもない。
マシュが康友から聞いた事が本当なら――この間にも、何人か外からこの集落の人間として外から招かれている。色んな許可を貰いつつ、村の地図を描いたのも、そう言った外から来た人々の内の一人だった、と思われる。
「――そして、一番新しい……事件」
『うん。十数年前の……正直、これが一番の謎で、一番の……鍵だ』
――先ほども言った通り、被害は拡大していっている。
しかし、家屋の被害は確かにあったにせよ、お婆さんの世代までは村人たちは確かに居ていたのである。ところが康友の幼い頃の、推定『五回目』でこの村に暮らす人々は殆どいなくなってしまっている。
五回目に関しては、家屋への被害は殆ど出ていないと思われる。単純な規模であれば最小限と言ってもいい。だが被害の大きさは恐らく『最悪』と言ってもいいレベルだ。
ここに暮らすのはごく限られた人々というお婆さんの言葉は嘘じゃない。少なくとも自分達が実際顔を合わせて会話した相手も、康友と、その妹さん、お婆さんの三人だけ。
『……五回目は色んな意味で異質と言ってもいい』
細々ながら、人の暮らす集落として成立していたこの村が、今にも消えてしまいそうな寒村へと姿を変えてしまった。
『――その上で……だ』
「……うん」
『カルデアに来る前の本造院君が――十年前の、村人達の大量死の一件に関わっているのは、その……間違いないと思う』
そのロマニの一言は……実に重かった。部屋の中の空気が、一瞬で張り詰めたものへと変わる。当時の事を聞いただけで、実際の景色を見た訳でもない。それでも――お婆さんからしてみれば、何年たっても子供達のトラウマになるのではないか、とずっと思わせていた程の。
『私達の見て来た物と、この村で得た情報から考えれば……彼が『五代目』で、そして一番新しい……初代からの力を受け継いだ『当代』である事は、間違いないと思う』
「それって、その……ダ・ヴィンチさん」
リリィの声は、あまりにも小さかった。今にも掻き消えてしまいそうな位に。それはきっと……自分もしている、最悪の想像が浮かんでいる故、だろうか。
確かに、状況証拠から考えてみれば、そこへたどり着いてしまうのは、決しておかしくはない、とは思う。広がる破壊の矛先が、それが遂に……建物から村人へと向けられてしまって、そして。
「――そんな事は、無いと思います」
静かな声が響いた。
自分とリリィの声が、一点へと向かう。
マシュは……膝の上で、きゅっと拳を握って。顔を上げて、真っすぐな目で、此方を見つめ返して来る。アメジストのその輝きには、僅かな迷いと、そして――それ以上に、誰かを信じる、確かな意志の光が宿っている様にも見える。
「その、確かな根拠は無い、のですけれど……お婆さんと、康友さんとの、ご家族としてのやり取りに、嘘はなかった、と言いますか。隠し事は、無かったと言いますか」
その言葉に――自分も、遅ればせながら頷いて見せた。
「……俺も、康友が、元凶だとは思えない」
『――うん。それは、僕もそう思う』
そうして……通信先のロマニも直ぐに同意してくれた。
『カルデアを舐めて貰っちゃ困るよ。何十年前だって、一度目覚めた濃い神秘の跡を見逃す程に節穴じゃない』
彼は飽くまで、一般人としてカルデアにやって来たんだ――そう、力強く言い切って見せてくれたロマニに。少し哀し気な顔をしていたリリィも、直ぐにぱっと笑顔の花を咲かせてみせた。
『――レフの暗躍は見抜けなかったけれど!』
『うーん派手な自虐だこと』
『兎も角……十年前の一件は、本造院君が元凶ではない、という事を一旦前提に、これからは話を勧めようと思う! それで大丈夫かな?』
ロマニの一声に――部屋の中に満ちていた重苦しい雰囲気が、一気に晴れた様な気がした。まだまだ未熟な自分にとって、本当に頼れる大人たちからお墨付きを貰えたのが、とても心強かった。
部屋の中で、三人揃って頷きあう。
マシュの言う通り。彼と、そして……彼の家族を。信じたかった。