FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章・内:会合

「――さーて、この悲劇の日の主要な登場人物を紹介しようか」

 

 ……暫し歩いた後、彼はその廊下の半ばで足を止めた。

 ぱちん、と指が鳴る。それと同時に――先ほどの様な赤い光が、まるでスポットライトの様に、そこに居る人物を照らし出す。

 

「先ずは、このロクでもない宴の『中心』たる鬼の子――少年時代の俺!」

 

 手を引かれたまま歩く、小さな黒い影――やはり、その顔ははっきりと伺えない。しかしながら、あからさまに肩をいからせている様子から、彼自身が不満を露わにしている様子は何となしに伺える。

 

 そして、幼い彼の手を引いて歩く女性――そちらは、やはりはっきりと見えている。彼を叱る時のガーッ!という声が思い浮かぶ様な、怒った顔のお婆さん。自分から見てもちょっと怖いド迫力。幼い彼はこれに対して怯む処か、何かしら言い返している様にすら見えるのがなんだか凄い。

 

「そんな俺がめちゃくちゃ文句を言ってるのが、此方の我が婆な訳なんだが……いやーこっから年食っても尚、全く怒る時の勢いってのが衰えていないのが凄いな。俺よりよっぽど鬼だぜ。くくっ」

「ひ、酷い……」

 

 ……確かに凄い形相なのは否定しないけれども、と心の中で思いつつ。

 

「あれ、そう言えば……お婆さんは、その、この時に、貴方は集まりに居なかった、と言っていましたけれど」

「――くくっ、さて、何方が正しいのかね。まぁ、先ずは『俺から見た』あの日の出来事を見て貰うとしようじゃないか」

 

 今は、確かに先程の部屋にはまだ居ないけれど。お婆さんは、幼い頃の彼を連れて、やはり……あの大部屋へと連れて行っている様な気がして――その自分の視線を横切る様にして、彼はその影の向かう方へと歩き出した。

 

「そして――お次は此方だ」

 

 そのまま、彼の後に続いて暗い廊下を歩いて行けば。その先には、赤い光が漏れ出す部屋が一つ。先程までの血の海らしきものは、広がっていない。彼に続いて、開け放たれた扉の中へと足を踏み入れれば――

 

「っ……」

「安心してくれ。まぁアンタから見れば大分不気味な光景だとは思うが……それでも襲い掛かっては来ないよ」

 

 ……思わず、足がすくんでしまいそうになる。

 大部屋の中に並べられた沢山の机。その上の煌びやかな料理。

そして机の前に並べられた座布団と――その上に腰を下ろした、少なくも二十以上は居るであろう沢山の影法師。黒いヒトガタの群れは、人に似ているからこそ、その異質さを際立たせるようで。自らも侵食されてしまうのではないか、という得体の知れない感覚に足先がたじろぐのを抑えきれない。

 

「大丈夫? 手でも繋ぐか?」

「……いいえ。何とか、大丈夫です」

 

 ……暫し、目の前の影法師たちへと目を向けてから。彼らがただそこに『居る』だけの存在である事を再確認してから、一度深呼吸。流石に彼の目の前で情けなく腰を抜かす様な醜態は晒したくなかった。

 

「……ん、分かった。それじゃ……主要人物の紹介の続きと行くか」

 

 頷いて見せた此方に、彼は少し微笑みながら頷きを返し。それから、目の前に並んだ机の間をすたすたと歩いて抜けていって――『あ、いけない』と自然に頭に浮かんできた。

置いて行かれてしまう、と。少し慌ててその後に続こうと……小走りで駆け出してしまった――はっとして顔を上げれば、彼が目を丸くして此方を見ている。もの凄い恥ずかしい所を見られてしまった、と自覚すれば。顔がかっと熱くなってくる。

 

「……」

「あの、これは……違うんです……」

 

 思わずその場にしゃがみ込み、両手で顔を覆い隠した。漏れ出す声が、我ながらあまりにも弱々しい声に、余計に恥ずかしくなってくる。

 

「あー、えっと……」

「……すみません」

「手、やっぱり繋ぐ?」

「大丈夫ですぅ……」

 

 ……緊迫した空気が一気に緩んだのを感じていた。別にそれが悪い事ではないと思うのだが。なんとなく申し訳なくなってしまう。でも仕方ないと思いたかった、一応何も特別じゃない普通の村娘なのだし。我ながら言い訳じみているけど。

 

「よし、それじゃあ……ここは逆に俺が男見せる所かね」

 

 ――そんな自分の肩を、彼は優しく抱いて、立ち上がらせてくれる。

 

「……恐れ多いですが、エスコートをさせて頂けませんか? 麗しいご婦人」

「う、麗しっ!? そ、そんな風に褒めて頂ける様な……えっと、その」

「さ、俺に掴まって。こっちに」

 

 支えながら立ち上がり――そのまま、上座に近い所へと連れられる。顔を上げればそこに、見覚えのある形の影が三人。大人の男女と、小さな女の子が一人。先程、外で見たご両親と……幼い頃の『彼女』だ。

 母親に頭を撫でられながら、お行儀良く座っている。

 

「という事で……俺の両親と妹――この家の人間だから、それなりの場所に座っているって感じ。あ、そこの空いてる席は婆の奴ね?」

 

 そして……小さな少女から両親を二つ挟んだその先、一番の上座の一つ手前の席だけがぽっかりと空いている。ここの辺りは、本造院家の席という事だろう。そう思って、ふと違和感に気が付いた。空いている席は一つ、それがお婆さんの席だというのなら――やっぱり一つ足りない。

 

 一応、他を見回してみるも――しかし、やはり、無い。空いている席も何も。いやそもそも、目の前のこの机が本造院家の席であるなら、ここに席が無いと……可笑しいのだ。

 

「あの……貴方の席は?」

 

 隣の彼に視線を向ける。此方の問いかけに――彼は返事をせず、ただ曖昧に微笑んでから。目の前のお婆さんの席から、ゆっくりと視線を……一番の上座へと向けた。

 

「――んで、最後の一人。この村のまとめ役……俺の祖父だ」

 

 彼が手を伸ばしたその先には、一番の上座に一人腰掛けた――着物姿の男性の姿が見えた。他の住人と違い、着ている服の仕立てが相当に上等なのが、こうしてシルエットを見るだけでもなんとなく分かる。

 

 左右に居並ぶ村人を、真ん中に堂々と座って見まわすその姿には、確かな落ち着きと堂々とした風格がある。

 

「こちらの、方が……」

「――と言っても、表で俺が言ってた通り、まともに顔を合わせた事もねぇからな。あんまり詳しい事は言えねぇけど……『四回目』で村人を救った英雄、らしいぜ?」

 

 若い頃はブンブン言わせてたってさ、と彼は静かに笑って見せた。

 改めて、目の前の影を見つめる。確かに、その堂々とした居振る舞いは、英雄というその呼ばれ方に相応しい気がしないでもないけれども……いや、そうじゃない。それよりも先ずは、目の前の彼の席が何処にあるのかという話で――

 

「んで……俺の席は、その隣だ」

「……え、あっ」

 

 そこで、彼に言われて初めて気が付いたのだが――その老人の隣、本造院家の席の側の辺りに、もう一つ座布団が置いてあり。そこには確かに誰も座っていない。

 

「ここ、ですか?」

「そ。あんまり喜ばしい事じゃないんだけどねー……今回の主役は、俺って訳だ」

 

 空いたその席を、ため息を零しながら彼は見ている。

 本造院家を纏める当主の隣に、態々座布団が置いてあるというそれは、確かに特別扱いされている――ここが、彼の記憶の景色なのだろうか。だとすれば、ここまではっきりとした景色に、自分の家族が居た場所も、よく覚えているとなれば――彼の記憶違いというのも、少し難しくなってくるようで。

 

「……この集まりの目的は、俺の『顔見世』っていうか――村人への周知って感じなんだよなぁ。本来の目的じゃあない」

「本来の?」

「そ。ちょっとこの時の村は色々と複雑な状況でね。もうちょっと話し合いを続けてから結論を出すはずだったのが、俺の祖父が無理矢理に集まりを断行した」

 

 目の前の豪華な料理は、自分に反対する村人に対してのせめてもの『もてなし』――机の上の大皿に盛られた食事を見つめながら、彼は軽く頭を掻いて。

 

「……反対、ですか?」

「あぁ――俺も今更ながら知ったんだが、多分原因は俺の前の人……四代目だ。まぁその辺りの事は今は置いておくとして。この時の祖父の一派と、それ以外の村人の意見は真っ二つに割れていた、っぽい」

 

 それまでの経緯は、部屋に連れて来られてから大雑把に聞いた、という。今日は、祖父と村の人達がちょっと喧嘩してしまっているから、大人しくしていなさい、と。

 ……確かに、本造院家の席と、反対側に座っている人たちは。どうにも、この席を楽しんでいるようには見えない、気がする。そうなると。

 

「……一体、何を話し合っていたのですか?」

「俺の処遇だよ――前例に則るか、それとも」

 

 

 

 ――事が起きる前に『葬ってしまうか』ってな。

 




コラボ本当に最高でした。(感涙)
どうかデュマを実装して下さい。(血涙)
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