FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「なぁ藤丸! 一つ確認して良いか!?」
「なに!」
「あの後ろの方に居るふくよかな奴ってブラフかな!? 露骨過ぎないか!?」
「……多分違うと思う! 多分だけど! 明らかになんか強そうな気がする!」
「だよな! でも露骨過ぎやしないか幾らなんだって。あんな分かりやすい『司令官』って体形見た事無いんだけども!?」
――褒められていない事はまぁ分かる。
攻め寄せるは我が方の敵。正当なるローマの軍。そして……それに与するカルデアと呼ばれる組織。そして、私の標的は正当なローマの皇帝と、もう一人。その標的を探して視線を巡らせ……
見つけた。余りにも分かりやすかった。人相が悪いという特徴にバッチリと当て嵌まっていた。真っ黒な服装が、人相の悪さをより引き立立てている。確かに、兵士としては良く似合う人相だと思う。
我々のパトロンの御所望なのだが。なぜ彼なのか。見た目が特異なのは間違いないがわざわざあれだけの戦力を我々に貸し与えて欲する必要があるのか。
まぁそもそもな話。これだけの戦力を当然の様に貸し出せるパトロンが一体何者なのか、という事実すら知らないのがどうにも、私としてもしっくりこない。
「……今回の会戦でその一部が、万が一にも知れたとして……まぁ、ほぼ持ち帰る事は出来ないか」
もちろん負けるつもりはない。だが……あの後方に控える、薔薇の如くに輝く女が、そう簡単に諦めて負けると思うか、と。いや、無いだろう。
正直、こっちとしては負けても構わないというのもある。
「では、後は私に出来るのは、自分の仕事をするくらいだな。おい」
「はっ」
「『傭兵』を出す。巻き込まれぬように気を付ける様に伝えよ。そうなった場合は撤退するがいい。これは命令である」
「はっ」
……全く、あの方の酔狂にもほとほと困ったものだ。
意思のない群体となった今のわが軍と、あの『傭兵』とは余りにも相性が悪い。標的を見つけ出せば敵も味方も関係なくそこへ直進するのだから、下手をすれば此方の同士討ちで戦線が崩壊。その挙句、敵に付け入る隙など与えようものなら。最早何方かを使わぬほうがまだマシな程。
一応、指揮をしてやれば其方を優先する程度の脳はあるが、それも不安定で、何処まで頼れるものか。
「しかし、使わぬ訳にもいかぬのが、あぁ、全く」
しかしマスターを支援しているパトロンとしては、この傭兵は出来るだけ運用するようにとの仰せらしい。我がマスターからも使える物はすべて使って、確実に潰せとの命令が下っている。
……私個人の見立てではあるが。
運用直後よりは、あの黒い『傭兵』共は、動きが良く、そして無駄のない動きが出来ている様に見える。パトロンが、出来るだけ使うように、というお達しを出しているのと併せて考えれば……自ずと、目論見も何となく見えてくるという物。
最終的に、あの黒い影共をどうするつもりなのか。それに関しては、想像の域どころかそもそも明確な輪郭すら見えてこないが……禄でもない目的なのは分かる。
そして、加担したくもない『育成』に関しても……その命令を此方は断れる立場ではない訳で。
我が陣営は、どうにも二つの勢力の思惑が入り交じり、十全に戦う事すら少々とばかり厳しい有様だ。全く、ストレスで更に肥えてしまいそうな……おっといかんいかん。今生はそう言った事で太る様な体ではないな。
「――はぁ、戦と政治は分けろと言うに」
いや、傭兵を使えと言うのは正確には政治に関連する話ではないんだが。上の都合という奴だが。しかし戦の最中に押し付けてはいかんという点では殆ど変わらない。政治の都合で戦争が始まるのはいいとして。その戦争に政治の意向が差し挟まれるのは愚の骨頂。
なんなら上の都合であと一歩という所で兵を引かされたりなんぞすれば……全く、生前の事を思い出してしまった。
「っと、ごちゃごちゃと考えている場合ではないか。さてあの傭兵共がどれだけの戦力を削ってくれるか……」
そして、件の傭兵共でもある。
正直、会戦で使うのではなく、こやつら単体で使う『遊撃隊』として使うのが最も良い運用方法だと思う。味方の事も関係なく暴れるので、軍団単位での運用にまぁ向いていないというしかない。それでも尚、ここで振るえ、というのだ。
全く、本当に……自由に、自由に運用をさせて欲しい物だ。如何に私が優秀な司令官だとしても、こうも縛りを設けられては厳しいというしかない。
正直な話、やれる事をやったとしても勝てない気もしている。
「――あれは……!」
「シャドウサーヴァント!? 嘘だろ、首都に来た奴らも結構いたってのに、未だこれだけ居るって」
「だとしても退く訳にはいかん! 敵将の元へ!」
とはいえ。それらの心配諸々を振り切って、あの黒い傭兵共がもし、あの者達を削り切ってしまったら、私の見立てもいよいよもってさび付いていたという事になる訳だが。
――ああいや、それは最早、杞憂か。
「退けっ!」
「マシュ! 陛下の援護だ!」
「式部さん、前衛は充実、好き勝手にブチかまして頂戴!」
「「はいっ!」」
赤い一撃が、突っ込んでいく傭兵たちを一閃にて薙ぎ払い、包み込む様に飛び掛かった黒い影は、重厚な盾に蹴散らされる。後ろからの魔術の弾丸は、後ろに続いていた一団へと降り注ぎ、幾人かを打ち倒し。幾人かの足を止める。
――後は、怯んだ後ろの影共を、一瞬で突破し、前へ、前へ、前へ!
ああ何と苛烈か。
しかし、そうだ。それこそローマではないか。
「実に――見事」
その、一歩たりとも気を抜かずに、前しか見ぬその瞳。正にローマ皇帝として十分な輝きではないか。
その資格を示すように――見ろカエサル。お前の前に、当代の皇帝は立って見せたぞ。
私という偽の皇帝を討ち果たすために、死より戻って来た卑怯者を討ち果たすために。
「待ちくたびれたぞ。一体いつまで待たせるつもりか」
「……カエサル、って。皇帝の名前だよね。皇帝がこんな強いって……凄いな」
「は、はい。彼の剣は強力な攻撃でした……先輩の指示が無ければ、守りぬけなかったかもしれません」
まぁ私の見立てがさび付く訳もなく。
負けた負けた。一応、本気でやったつもりではあった。約定を果たす気概も十分に持っていた。それでも。負けると。しかも二度三度、仕切り直したうえで切り結び……それでもはっきりと負けた。
些か、赤面物の負け方としか言いようがないが……ここまで負けが込むと、いやはや。何とも清々しい物ではないか。
「うむ。いや。此処まで負けるとはな。あの傭兵共も、存外と役に立たなかった……いやそうではない、違うな」
当代の、今を生きようと抗う者達の輝きに、死して尚、過去の残滓に縋りつこうとした愚かな偽の皇帝が敗れた……それだけの事だ。
結局は、自業自得に過ぎない。
「そも、私が一兵卒の真似事をするのは無理があるというのに。全く、あのお方の奇矯にはこまったものだ」
「あのお方――?」
「……っと、敗軍の将とは言え、これ以上に口を滑らすのは無粋か」
私の体が黄金の光に解けて行く。
その時、一瞬マスターの一人と目が合った。
やはり、あの黒い傭兵共の目的とするには不思議な。少しばかり、傷も多いがまぁ、ごく普通の少年……の、様に見えるが。しかし。
近くで見て、漸く気づく事もある。
その視線には、決して理不尽に負けぬとばかりに輝く、克己の光だけでは無いものが混ざっている。それは後悔に狂いながら、それでも何かに焦がれるような。そんな……激情だった。
カエサル様から見たレフ陣営の内容と、人を見る目があるこの人から見たホモ君の内面の一部描写……上手く行ってねェ!!(自虐)