FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
――カリギュラは、単騎では先ず勝てない。
それは、セプテムに派遣された……この、レフ・ライノールという端末のみがはじき出した結論であるが、しかしある程度正鵠を得た結論だとは思っている。
ネロ・クラウディウス。そして、カルデアからの援軍。オルレアンでの現地戦力、そしてシャドウサーヴァント、其々の戦闘を鑑みて得た結論だ。根拠もない憶測ではない。そもそも、自分達はそのような憶測には頼らない。
故にこそ、シャドウサーヴァントをカリギュラの援護をする為にともに送り込んだ。
奴らは、言われていた通り、戦い、倒される度に、
探りを入れた事はある。最終的には敵対する相手だ。その手の内を理解し、対策を講じようと思った事はある。対等の敵であるからこその策略だったのだが……
向こうは、それをさして重要な事と捉えず、更に『恐らく時間の無駄になるからやめておいた方がいい』と諭される始末である。それが、何故なのか問うた時、闇の向こうのソレは、こう答えた。
「……我々だからこそ、理解できない仕組み……フン」
ブラフ、だと思わないでもなかった。
しかしブラフというには、彼らのシャドウサーヴァントに付いて探りを入れる事への無頓着さが気になる。本当に、レフの一派には理解できない仕組みで、強化しているのだとでも言外に告げている様な態度。
今回、彼らがもしカリギュラと共に全滅しても、彼らにとってはさして痛手では無いのだろう。それ程に、彼らはシャドウサーヴァントを気前よく提供する。
「まあ良い。カリギュラが負けようと……此方には、このローマにおいての絶対的な切り札があるのだ」
それがある限り此方には敗北は無い。セプテムでカルデアを全滅させる。協力者についての対策を考えるのは、それからでも遅くない。
『――』
「……っ!?」
そう、思っていた時だった。
レフの真横に『闇』が開く。定期連絡には些かと早い時刻の接触に、思わずして体が跳ねてしまう。まるで、人間の様な反応をしてしまった自分に苛立ちつつも、レフはそちらに顔を向けた。
「なんだ、定期連絡には早いぞ」
『―― ――』
「……何? 島の女神を?」
島の女神、といえば……カリギュラを向かわせた島に居るという、神性……の、絞りかすの様なサーヴァントがそこに居るのだという。それを求めてネロ・クラウディウス率いるローマが、島に向かったという情報を聞きつけ、カリギュラを送り込んだのだが。
正直、戦力になる様な存在かと言えば、そうではない。あくまで、ちょっとした悪戯が出来る程度の存在だ。
そんな島の女神を……彼らは、欲しがっているのだという。
「我々には何の価値も無い存在だ。問題は無いが……」
『――』
「まて。何故そんな物を欲しがる。貴様等のシャドウサーヴァントの方が、よっぽど戦力としては役立つはずだ」
正直な話。
戦力としてはそう珍重できるものでもないが、その人を狂わせる程の美貌の力、というのは如何様に悪用も出来る。今回はそれ以上の物があるから必要ないだけで、もし他に無ければ、彼女を旗印に、この特異点を支配しようと思っていた可能性はある。
故に、下手にその力を悪用されるくらいなら、という考えが、今、彼の頭にあった。
『――』
「呼び水……だと?」
『―― ――』
「戦力の増強……カルデアの戦力を鑑みて、その為の措置?」
しかし意外にも。彼らが欲していたのは彼女の『愛玩される』性質では無く……彼女そのもの、といった方が良かった。
触媒……彼女の、『神』としての血を、欲しているのだという。その言葉に、レフ・ライノールは彼女についての思考を巡らせる。
当然、レフは無能ではない。万が一、神性ごときに邪魔をされても構わないと、例の島に降臨した女神に付いても十分に調べた。そして、先の結論にまで至った。特に我々の脅威になるものではない。
生贄として何かしら利用できるか? と言っても、そうするにはその『愛玩される者』としての性質が面倒に過ぎる。リスクとメリットが合っていない……
それでも、彼らは女神を欲するのだという。
「活かしようは幾らでもある、か……まぁ構わん。どうせ我々には必要のない存在だ。どう利用しようと貴様等の自由だろう」
『――』
「しかし貴様らがどれだけ足掻こうと、お前たちも消し去るのは最早決まり切っているのだから、無駄な事はあまりやらない方がいいのではないかな?」
……正直な話。
これ以上に向こうが力を肥大化させる前に。叩く必要があるのではないか。という意見も出てきている。七十二柱の集合体故に、意見が一切割れない、という事は無い。
人理焼却……そして、それを踏まえた『真の目的』に関しては意見は完全に一致し、完全に統率されて動いているものの、此度の一件に関しては完全に例外だ。
何方にも利点はある。シャドウサーヴァントという尖兵は、確かに十分な戦力になり得るのである。カルデアのサーヴァントに悉くしてやられている。等と、短慮な思考をする事は無い。
彼らが示したプランの通りだ。あの影の『成長具合』も、少なくとも、第五特異点の前には、このままのペースで行けば、プラン通りの戦力になるだろう。
そうなれば……いよいよカルデアに勝利の可能性は無くなる。
元々から、所詮ここまでの特異点など攻略されても構わない。第七特異点とて、元から突破は不可能な計算であるが。
それに加え、彼らの戦力があれば、もっと確実に勝利を収められる。となれば、今は無理に敵対する必要は無いだろう、と。
……さらに言えば。
現状、ぶつかり合えば間違いなく我々が勝つ。
しかし痛手を負う可能性は十分にある。自分達が如何に精強な群れであったとしても過信する事はしない。カルデアなどいう、考慮にすら値しない、僅かなレジスタンス擬きなどとは違う。と、レフは改めて脅威を定義する。
しかし、カルデアとて牙を持っていない訳ではない。今、協力者と衝突し痛手を負えばその隙を突かれ……という事もありえるかもしれない。
故に。カルデアという、ほんの僅かな不安要素を排除するまでは、彼らと協力関係を維持するべきではないか。という意見も十分に多いのだ。
「……良いだろう。別に無害な女神一人を其方に引き渡す程度で戦力を増強できるのであれば、乗ってやろう」
『――』
「増強を完了するのにどの程度かかる?」
『――』
「そう時間はかからない、か。まぁいい、カルデアが此処に来るまでには増強を完了して貰えると、私も骨を負った甲斐があるのだがね」
故に。
今は、良好な関係を続けている振りをしておく……カルデアを、排除するまでは。
このセプテムにてカルデアを排除すればもう協力関係を続けるなんていう茶番をやる必要もない。オルレアンは奇跡的にカルデアに突破されたが。しかしここ、セプテムには自分が詰めている。
王の使徒たる自分が。
オルレアンの無能なサーヴァントとは、格が違う。
万が一、此処迄攻め込まれたとしても。此方には二重三重の策が用意してある。最悪の場合でも……自分が相手してやれば良い。
自分は矮小なサーヴァント共とは格の違う存在だ。たかが数人のサーヴァント程度ならば自分一人でも十分に攻め滅ぼせるだろう。
「……それで、そのシャドウサーヴァント共はどう動かせばいい? アレは細かい動きは出来ない筈だが?」
『――』
「自分達で動かす? では私にいちいち言わずとも……ああ、あくまで捕獲と輸送、引き渡しは我々で秘密裏にやれという事か。全く、何処まで自分達の情報を秘匿したいのか、貴様等は」
レフ・ライノールは笑顔の仮面の裏で、闇を見据える。
その深淵に座する者を、さて、どうやってこの後始末してやろうかと……現状にて本来の敵である、カルデアからすら目を離して。
レフ君迫真の慢心