FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
『ネロ陛下の熱の入れようから考えても、恐らく、次の会戦……敵、連合ローマ首都への攻勢が、セプテムでの最大の、そして最後の戦いになる――と、考えて構わないでしょうか。陛下』
「うむ。ここで、決着をつけるつもりだ」
『となれば……陛下にはお伝えしておかないといけない事があります』
――ドクターがネロ陛下へと告げたのは、レフ・ライノールが居る可能性を考え、カルデアのメンバーは都市の制圧では無く、首都、というより敵の本丸への突入を優先する、という事だった。
ネロ陛下が目指すのは、『正しきローマを取り戻す事』なんだけど、カルデアの目的は『この特異点の修正』だ。そうなったら、連合ローマ首都襲撃に際し、二つの取るべき行動に差異が出て来る訳で。
だったら……先ず俺達、カルデアが叩くべきは、このセプテムにおいての異常……連合ローマを統率する、首魁、そしてその首魁に使えているという魔術師――レフ・ライノールと思われる――の二人が最大の目標である。
聖杯を持っているとすれば、恐らくは敵戦力のトップの二人だろう。
『如何でしょうか』
「うむ。それに関しては元よりそれを頼む積りであった故、問題はない。敵の首魁が一体どんな力を備えているか、想像もつかぬ。想像もつかぬ脅威には。うむ。此方の想像を超える活躍をして来た……お主たちをぶつけるに限る」
今こうして、ネロの前に集っているローマの主力の皆……ブーディカや荊軻。スパルタクス、呂布。今こうして自分達と共に戦っている者達を信じている。口には出さなかったけ。そう言外にネロ陛下が示してるのは、分かった。
『ありがとうございます。そして、それに関して……ネロ陛下。それと、今其方に言っているカルデアの皆に話しておきたい事が』
「ぬ?」
『……今回、敵はスパルタの大英雄、レオニダスという強大なサーヴァントを投入して来た。それで、ネロ陛下は、彼の様な戦力がローマにて戦っている、というのはご存じなかったのですね?』
「う、む。あの様な勇士が敵の一角として暴れていたなら、流石に報告の一つでも入ると思ってはいる、が……」
ドクターの声は、真剣、というより、深刻、といった方が良い感じの物だった。
『この事から、敵はサーヴァントを投入できるだけのリソースを持っている……まぁ、相手に聖杯という切り札があるなら当然と言えるんですけど』
「うむ。まぁそれだけの切り札が無ければ、余のローマにをここまで追い詰めるなど」
『――ここで、一つの疑問が出てきたんです』
そんなドクターが視線を向けたのは……此方、というより康友だった。
『先日、シャドウサーヴァントが其方に強襲を仕掛けてきたんだよね?』
「あぁ……そりゃあもう、結構な数が来てたよ」
『そして、カエサルとの戦いの時も、多くのシャドウサーヴァントが此方へと突っ込んで来ていた訳なんだけども』
「ホント何処でも沸いて来るよなアイツ等」
『……可笑しいとは思ってたんだよね。正直な話』
どうして、シャドウサーヴァントなんだろう――と、続いたロマニの呟きに、なんの事だろうと思ってしまった。
『シャドウサーヴァント、というのは、何処まで行ってもサーヴァントに成れなかった存在なのは、君達に説明したとおりだけど……』
「俺達にとっちゃ、サーヴァントよりも馴染み深くなってるよ」
「俺は、康友よりは馴染みないかなぁ……」
「おう自分が襲われてないからって生意気良い寄ってからに貴様……」
実際、シャドウサーヴァントに襲われるのは康友ばかりで。とか思ってたら本人からどえらい勢いで詰められた。うん、本人にとっては完全に他人事ではないとしか言い様が無いというか。シバキ倒されても文句言えない位怒ってる……
そ、それは取り敢えずいいとして。
『……続けていいよね?』
「あ、はい」
『シャドウサーヴァントって言うのは、サーヴァントが召喚できるなら呼び出す必要あるのかな、って言う話』
「――あ」
「そう考えて見りゃあ、確かに?」
そう言われてみればそうだ。
あんなレオニダスの様な英雄を、何時でも呼び出せるとなれば、無理にシャドウサーヴァントを呼び出す必要も特にないじゃないか。それは、確かにロマニの言う通りなのである。となれば。
「なんでシャドウサーヴァントを呼び出してるんだろう……?」
『リソースを節約する為、って言うのは『聖杯』のあまりの力の強さから考えれば、殆どあり得ない。サーヴァントとしての強みの一つ、宝具もマトモに使えないような存在を呼び出して、メリットがあるかと言えば』
「無いのだな?」
『……魔術師、としての立場からの意見ではありますが』
では。
単純なメリットの他に、彼らがシャドウサーヴァントを呼び出すだけの理由があるのだろうか、サーヴァントと共に運用するだけの。
そんな中で、口を開いたのは……先ほど、敵軍勢を蹴散らしつつ帰還した、特別遠征軍の片割れ。頭脳担当の荊軻であった。
「ふむ……元暗殺者の立場ではあるが一つ」
「申してみよ荊軻」
「私であれば、サーヴァント、という手札に全てを注ぎ込むとは思う……サーヴァントの力が大きければ、それを十全に生かした方が効率がいい。シャドウサーヴァントを使うなど無駄でしかない。そう言った無駄は、後で確実に自らの足元を掬う」
「それは、確かに一理あるか」
「――荊軻の言うとおりだとすれば、アタシから一つ」
そこから繋げたのは、ブーディカ。
「なんだ?」
「そいつ等にとって無駄でしかないなら、そいつ等じゃないんじゃ?」
「ふむ、というと……奴らは連合ローマ、という一勢ではないと?」
「私なんかは軍勢を率いてたけど、決して私が支配してる軍団のみ、って訳じゃなかったんだ。ブリテンに居た、色んな奴らを纏めて戦った。そいつ等の中には、私らの装備より上等なものを持ってた人達も致し、そうでない人もいた」
「――つまりシャドウサーヴァントと、連合ローマの勢力は、全く別。陣営の違う者達が結託して動いている、と?」
頷くブーディカさん。
そう言われてみると、其方の方が腑に落ちる気がした。無理に彼らが非効率的な事をしている、と考えるよりは……サーヴァントは聖杯の持ち主、すなわちレフ側が召喚し。
シャドウサーヴァントを召喚し、戦わせているのは全く別の陣営なのではないか。そうなると。
「連合ローマとは、その二つの連合である、という意味だったのか?」
『ああいえ、そうでは無くて……連合ローマが聖杯を持っていて。その連合ローマの影に隠れて暗躍している勢力が、あるのかと』
「う、うむ。左様か」
……一瞬自分も同じ事を思ってしまったのは黙っている事にする。
兎も角。連合ローマが聖杯を手にし、サーヴァントを使って特異点を荒らす中で。別の目的で動いているもう一つの勢力が存在する事実。
「――だとすれば厄介だな。もう一つの組織のその目的次第では……連合ローマを打ち倒しても尚、問題が解決しない可能性がある」
『横から聖杯を掻っ攫われたりしたら、目も当てられませんね』
「もう一つの勢力とやらにも、注意を割く必要がある、か」
『……えぇ』
そして、ロマニがチラリと見つめた先には……康友の姿。あくびなどしながら『あ、自分頭の良い話にはちょっと参加できないんで』みたいな顔色してる。
今は話題に出していないけど、シャドウサーヴァント達は、どうしてか康友を狙う事が多かった。彼らの目的にとって、康友は必要な存在なのだろうか。
もし……康友が奪われたらどうなってしまうのか。
「であれば、王宮に突入するお主らには、十分に注意して貰わねばならぬか」
『そうですね。万が一にも不意を打たれたりすれば全てが瓦解しかねません』
「……正体を探れれば良いのだが。この戦いが終わった後も、連合ローマに味方していた輩が残って暗躍を続けようものなら、余のローマの安寧が危うい」
分からない事は多い。
特異点という中で、多くの事情や思惑が交差する中で……その影に潜んでいた謎の勢力は余りにも、不気味に思えてならなかった。
カルデア陣営から見た???陣営のお話。