FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第二章・裏:焔の中で笑う男

「――一つ聞きたいんですけども」

「どうした?」

「俺って誘拐された割には結構、こう……厚遇されてるっすよね。どういう事なんで?」

「……まぁ、それに関しては、事情がある。正直勝手な事を言ってるとは思う……が。あんまり喚かないな」

 

 目の前の少年は、一応ハイスクールに通っている年なのだという。絶対嘘だと思うんだが。こんな気合入ったパンピーが居るかと。多分単純な迫力だけならウチの誰よりも凄い。ベリルの奴も独特の凄みがあるっちゃ有るが、それとは違う。見かけの圧力だけならぶっちぎりだと思う。

 というか、どうしたら、そんな顔に三本の獣傷……いや本当に、漫画みたいな傷を作ってる高校生が一体何処にいるってんだ。しかも、いきなり連れてこられたってのに、ちょっと困ったような顔するだけで、大人しいもんだ。

 

「……ここって、外で人が生きてられる?」

「いやー、外見れば分かるけど、無理だよ」

「でしょ? 地理もクソも無い、外は一面真っ白。そんな場所に出されたら現代っ子の俺は死にますよ。ここまで絶望的だと……もう運命とか感じちゃって。ねぇ?」

 

 いや、普通は取り乱してそれどころじゃないじゃないと思うんだが。ガチもガチになるとこうなるのだろうか。人間、あんまりにも現実離れした事が起きると、それを夢だと認識するみたいに。いや、違う気がするが。まぁ、取り乱さないなら話は早い。

 

「一つ確認したいんですけど。俺って帰してもらえるんですか?」

「あー……任務が終われば帰してもらえるし。多分君はあんまりやる事は無いと思うよ」

「えぇ!? じゃあなんでわざわざこんな所まで連れて来たんですか?」

「補充要員、って言ってたな」

 

 曰く。世界中から集めて来た、この任務の為の人材が万が一……ダメになってしまった時の為の、保険の保険の保険。そのレベルで普通に人誘拐するって辺りが、魔術師の人でなしぶりを証明してると思う。

 というか、俺がコレを言わないといけないのが、色々辛い。何も知らない一般人相手に『お前は補充要員として無理矢理に連れて来たんだ』とか。なんで言わなきゃいけないのか。

 

「ほ、補充……こりゃあなんとも酷い扱い」

「まぁ念には念を入れる程、重要な任務なんだ……っていうのは言い訳にならないか。悪い」

「そうだぞ、だからお詫びに馬鹿みたいに高い肉奢ってくださいよ。出来るだけ分厚いゴッツイ奴で、マッシュポテト付けて、ニンニク醤油で」

「……本当は余裕だろ」

 

 とかいう気遣いは全く必要ないのかもしれない。

もしかしたらナイーブになっている可能性もあるかもしれない、とか思ったけどマッシュポテトに、ソース迄指定してくる辺りは完全に余裕があるようにしか見えないのは気のせいじゃないと思う。

 

「さぁてね……それで、お兄さん。ここってなんの場所なんです? 実験場?」

「なんで実験場」

「いや、こういう菌一つない、って感じの真っ白な施設ってそう言う……実験施設的なイメージがありまして。映画とかでよくあるじゃないですか」

「あー……あるっちゃあるな」

 

 なんかそう言う系の、バイオ的な映画で見た事はある。自分の専門のジャンルじゃないが一応は話題の映画とかは、一オタクとして確認はしている。オタクという程、深みに嵌ってる訳じゃあないが。

 

「まぁ、大丈夫だ。そんな事を目的とした組織じゃない」

「へー……じゃあ後は……()()()()()、組織とか?」

「――」

 

 それは恐らく、やっぱり創作の世界のイメージで言ったんだろう。

 

「良く分かったじゃないか、正解だ」

「……へ?」

「ここは、世界を救うために作られた最後の砦、って奴だ。チープな言い方すればな」

 

 だが、その荒唐無稽な想像こそが大正解。

 人理という、人間の描いてきた歴史。人の存在を保証する、最も大切な情報。それを守るために設立されたのが……この人理保証機関、フィニス・カルデア。世界を救うって言う余りにも分かりやすく、そして子供の夢みたいな目標を叶えるために、馬鹿正直に戦力をかき集めている。

 

「……俺、その為に連れてこられたんですか……?」

「あぁそうだ。ちょっとはビックリしたか?」

「……何つーか、唖然としてます」

 

 流石に、さっきまで堂々としてたBOYも、度肝抜かれたみたいで。ぴくぴくと顔が引き攣っている。世界を救うなんてそんな目標に関われ……って、言われた時は同じような顔をしたと思う。自分の顔は全然見てないから想像なんだけども。

 

「俺で、良いんですかね。正直、そんな高尚な目標なんて……あー、いや……面倒、ってわけじゃあ……ないんですけど」

「そりゃあそうだな。まぁでも、俺から言える事があるとすりゃあ……不躾かもしれないが気を抜いて、楽に居る事だな」

「誘拐された先で?」

「そうだ。俺にはお前を逃がす事も出来ないし……まぁ、せめてものアドバイスだ」

 

 まぁ、そもそもな話。化け物みたいなメンバーが揃っているのだから、やる事もクソも無い。覚悟しないで飯を食ってるだけなら、心が削られる事も無いだろう。

 

「さっき補充要員って言われてたけど、正にその通りな訳ですかい??」

「そうそう。だから気軽に、気軽に。上手い事やっていった方が良いぜ。ボウズ」

「随分な言われようっすね。ったく、俺は好きでここに来た訳じゃないんですけど。最初っから使命に励むもクソも無いけどなー」

「そっか。なら心配いらん。任務が終われば、おふくろさんの所にも返してもらえるさ」

 

 記憶を消して、という枕詞は付くが……カルデアは、魔術協会の様な過激な組織ではない。神秘の秘匿の為に処置はするが、基本的に一般から連れて来た奴らは、ちゃんとお家に帰すように、とは所長の方針だ。

 曰く『一般の奴らを処理なんて出来る訳ないでしょう!! 殺した奴の責任なんて負えないわよ私には!!』との事だった。

 

「――あー、それは、えっとぉ」

「なんだよ。心配すんな。キッチリ返すから」

「いや。俺は……その、なんだ。とっくに天涯孤独、擬きみたいなもんでよ」

 

 ……その言葉で、悟った。

 此奴がここに連れてこられてきたのは、恐らく素質もあるんだろうが。それ以上に。連れてきても、後に問題が残りにくいという結論が出ていたからか。ったく、カルデアは比較的マシとは言え、やっぱり人道的とは、口が裂けても言えないか。

 

「……なんだ、悪かったな。変な事聞いて」

「いやいや別に。まぁ、お家に帰してもらえるなら……若しくは」

「若しくは?」

「やる気が無くても構わないなら、ずっとここに置いて貰う、って言うのは、アリなんですかね? お兄さん?」

 

 それに関しては、即答する。

 

「……馬鹿。無しだろ」

「そうかぁ……へっ、世知辛ぇな」

 

 世知辛いというか。正直、こんな場所に残りたいなんて、自殺行為だ。魔術に関わった奴の末路なんざ、ロクな事にならない場合が多い。俺がそうならない……って言う保証もないがしかし、そうならないようにするコツくらいは知ってる。

 でも此奴は一般から無理やり連れてこられたんだ。クソみたいな世界に関わって、悪い部分に染まらないという保証は一切ない。

 

 善人って訳でもないけど。流石に自分からろくでもない世界になんも知らないパンピーを引き摺り込むのはちょっと、とは思う。冗談だというのは分かっているが、一応強めに言葉は吐いておく。

 

「帰る家位はあるだろうよ。大人しく帰れ。誘拐犯と一つ屋根の下に住む気か?」

「うわ、その言い方……いや全くそうなんですけれどもね? まぁ、そんな美味い話は無いって事かねぇ」

「そうだよ。世間は冷たいのさ」

「へいへい。大人しく暫くのバカンスだと思って楽しみますよ」

 

 若い奴って言うのは、どうにも無鉄砲な真似をしたがる奴が多いと言うが。だから、一瞬本気じゃないのか、と思ってしまった、というのも、ある。

 

「じゃあ、そのバカンスを過ごす為の施設をこれから紹介してくから、快適に過ごしたいならきっちり頭に叩き込んでおけ。おすすめのサボり場所とかも紹介してやるから」

「そりゃあありがたいこって……じゃ、期待させてもらいますよ」

「おうおう。因みに何に一番期待してる?」

「サボり場所」

 

 

 

 ――目の前が揺れて、そこから記憶が途切れてて。気が付いたら、目の前が火の海になっていたんだ。

正直な話、眼鏡を落として机の下に、潜り込んでいたのが……ラッキーだった。俺の隣の奴は、見たくもない様な有様だった。一言二言、業務連絡しただけの奴だったけど。ショックだった。吐き出しそうだった。

 

「なんだ……どうなってんだよ……っ!」

 

 目の前は火の海。コフィンに入ってた奴らは……軒並み全滅? それとも……息がある奴も居るのか? それも分からないし……そもそも、近寄れない。怖い。

 

「――せ、せめて、せめて外部に」

 

 そう思った時。ふと中心を、見た。見て、しまった。

 見慣れた、薄い、藤色の髪が――赤い、炎の中心で……アレは、間違いない。マシュ・キリエライト。俺だってよく話していた。可愛い、妹分みたいな奴だ。このままじゃ間違いなく死ぬ。

 迷ってしまった。あの子を……少しでも、遠くに連れて行くべきか。それとも、外部への連絡を優先するか?

 

「――……しっかり、今助ける……!」

「お、おい藤丸……って、んだぁ!? こりゃあ!?」

 

 その中に。入り込んで来る人間が二人。

 一人は……あまり見覚えが無い。黒い髪と蒼い瞳の少年。中心に居るマシュに向けて、一直線に走り出していた。そこでふと思い出した。確か、マシュが案内していた、もう一人の一般からの補充要員が居た。彼がそうか。

 そしてもう一人。禿げた頭の男が……間違いない。俺が案内した、あの少年だ。

 

 燃え滾る室内に驚いて……ひとしきり周りを見回してから、ふと、一点で目が留まる。コフィンの中に居たオレンジの髪の少女。恐らくは、マスターの一人だったのだろう彼女に目を見開き、そして、一歩を踏み出して。

 

「――クソッたれ、やめろよ……っ! 俺の前で……」

 

 少年が、その拳を構えた様に、見えた。

 何をする積りなのか。彼はその腕を、思いっきり後ろに引いて――

 

<中央隔壁、緊急封鎖します。館内洗浄まであと百八十秒>

 

 それを止める様に、機械的な音声が割り込んだ。

 その直後、この部屋に唯一通じる出入り口に、巨大な隔壁が降りてくる。それに振り返ったのは……一人だけ。拳を振りかぶった少年の方。明らかに驚きを隠せていない表情で。振り上げた拳を、ゆっくりと下ろして。

 

「っ……おい藤丸。後ろ」

「分かってる」

「分かってるって……あーもう、こんな炎の中でラブロマンスか!? 見せ付けやがって頭湧いてんじゃねぇのかお前!」

「そんな事してないっての」

 

 燃え盛る中で、もうどうしようもない、とでも言いたげに肩をすくめ……逃げ場のない炎の海の中で。あの子供はそれでも腰を下ろさない。

俺は動けないのに。もう助けようがない、と体が竦んでいるのに。

 炎の中に居る当事者は、全く怯えていないように、見えた。

 

『そうかぁ……世知辛ぇな』

 

 そういって。少し困ったような顔をした、あの瞬間と。今の顔は、まるで変わってない様に見える。呑気なのか? もはやそれでは説明なんてつかない気がする。

 あれは、こんな状況も……受け入れているような。

 

<適応番号48  藤丸立香 適応番号49  本造院康友 の2名をマスターとして再設定します アンサモンプログラムスタート 霊子変換を 開始します>

 

「……」

「自分達だけの世界に浸りやがって……はーぁ、俺もそんな可愛い後輩ちゃん欲しいなー」

「だから、そんなんじゃないってば」

「良いから良いから。ホラ、しっかり手を握ってやっとけ。それだけでも……きっと大分マシになるだろうよ。こんなクソみたいな状況だったら」

 

<レイシフトまで>

 

<3>

 

<2>

 

<1>

 

 ――レイシフトが始まるその瞬間。

 

「……報いかね。これは」

 

 最後に。アイツは。

 笑っていたようにも、見えたのだ。

 

<全行程 クリア ファーストオーダー 実証を 開始します>

 




この形式が一番安定してる気がしてどうしてもこれで書いてしまう……赦されよ、赦されよ、我らの罪を赦されよ……
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