FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
狂乱。ただ、その一言に尽きましょう。
四方八方、何れからも迫るローマの兵士……だけではなく。守られるべき民までが。雑多な、武器とすら呼べぬような、板切れを、小石を、食器を、片手に携えて。
まるで波の様に迫りくるのです。怒涛に。
自らを栄光の一部と信じて、熱に浮かされた、そのままに。自分達が死ぬことなど欠片も厭わずに。
王宮への進入路を見つけた事を知ったから、等全く関係ないのでしょう。目の前に自らの神祖の敵がいるのだから、襲い掛かっているだけ。しかし……その暴走加減は、私達にとっては、一種の助けでした。
「――ネロ達はもう向かったか!?」
「は、はい! 後は……」
「ここで相手の動きを止めるだけ、か。しかしこの熱気。全く下手をすれば、呑まれそうなほどに、渦巻いているではないか……!」
彼らの全ての視線が、こうして大通りに立っている我々に向かっています。全員。欠片も視線を逸らさず、です。ネロ陛下達が向かった先には誰にも向かっている様子は見られません。囮としての役割は十分に果たしていると思われます。。
それにしても、ですが……嘗て皇帝の喉元に一度は迫ったはずの荊軻様が、隣で顔を顰めるのも、分かってしまいます。
人々の熱気の総量。私などは、もう足がすくみそうになってしまいます。
ローマの祖。その存在がローマの民にとってどれだけの存在なのか。それをイヤという程に見せつけられているのです。今。
「しかし――ふふ」
「……ん、なんすか」
「随分と落ち着いているな。意外に肝が据わっている」
しかし、今にも足が竦みそうな私とは違い、マスターは……とても、静かでした。
周りで此方を伺う者達を見ています。とても冷めた目で。
「いや? こういう痛い奴らを見てると、なんか却って、凄く……脳の芯が冷えるって言うかさ。周りが熱くなってると、こうならない?」
「そういうものか?」
「案外とね。えっと? んで? 此奴らはシバキ倒して良いんだよな」
「そりゃあ当然。ここで皇帝様に横やり入れさせないのが私達の役割だ」
「オーライ……じゃあ、ちっとばかり」
そこから一歩を踏み出すと同時、額より生じる角。飛びついて来る人を払いのける様にして、力任せに投げ飛ばして。その顔は……笑顔ではありましたが、しかし、先程よりも冷たさはやっぱり、増している気がします。
「――ホント、嫌な事ばっかりなぁ」
「ま、マスター……」
「分かってる。あくまで時間稼ぎだから。あんまり手荒にはしないってば」
……そこを言いたい訳では無いのですが。
笑顔で相手を殴り倒すその姿。とても、とても荊軻さん怪訝な顔をされてマスターを見てらっしゃいます。眉が寄ってます。キレイに。
笑顔で敵を殴り倒すその姿は、確かにそんな顔をされても不思議ではない、と思ってしまいます。私は、慣れている……とは言えませんが。しかし一応、こう言うマスターを見た事があるので、驚きはしないと言いますか。
「ローマを!」
「守るなササッと寝てろ」
「おわぁああああっ!?」
あの、印象的に……多分ですけど。マスターが華麗に投げ捨てている訳でもなく、力任せに彼方へと放り投げているのが余計になんでしょう、印象をちょっと悪い方向に変えていらっしゃると申しますか。
「……荊軻さん。あの、マスターは別に……その」
「ああいや。別に本当にヤバイ奴だとは思ってないよ。流石にそれくらいは判別も付く」
「そ、そうですか」
「感情を素直に表に出していないのは気にはなるが……まぁ今は気にする必要もない」
目の前の敵に集中するべきだろう、という一言と共に、荊軻様は人並みの中へと飛び込んで行ってしまいました。
大丈夫なのでしょうか、等と戦において素人も同然な私が心配してしまうのを他所に。奥の方で戦っていた将と思われたお方が倒れるのが見えました。
恐らくは荊軻様がお仕事をなさっているのでしょう。
「……」
「あのー、式部さーん?」
「はひぃ!?」
「あ、ごめんごめん。あのー援護して貰えると……っしゃあっ! あり、がたいんだけども! ハイもう一名様!」
「……す、すみません!! 今、今やります!! 申し訳ありません!」
いけません、荊軻様とのお話に夢中になってて、完全にマスターから意識を逸らしてしまって居ました!
「って言うか、そんなに笑ってる俺?」
「……えっ、聞こえてましたか!?」
「そりゃあそこまで離れてるって訳でもないし。そりゃあしっかり聞こえもしますよ」
「そ、その。申し訳ありません、ひそひそと」
「ああいや、それは良いんだけど。俺そんなに笑ってる!?」
……そう言って、兵士の方を蹴り飛ばすマスターの表情は、もう笑顔ではありません。若干怪訝な顔になっています。ですが……先ほどまでのマスターの顔に関して言えば。満面とまでは行かずとも。
「笑っては、いらしました」
「んあー……そっかぁ。そうか。まぁ、意識してなかったけどなぁ。じゃあまぁ気を付けないといけないかなぁ流石に」
「あの、驚かれないのですか?」
人を殴る時、意識せず笑っている、というのは……恐らくですが、本人も結構驚くと思うんですが。マスターは、何方かと言えばそれに関して、驚いているというよりも、納得したという感じでした。
「あーいや、まぁ。ちょっとした癖みたいなもんで。言われるんだよなぁ。結構おつむに来てる時ほど笑ってないかって」
「癖、ですか」
「そそ。なんなんだろうねぇ。なんで笑顔になっちゃうかねぇ!」
「そう言われましても……あ」
「ん?」
癖ならば、私には何もお答えできないと思うのですが……と、思っていたその時です。マスターの通信装置が、音を立てて起動しました。その直後、空間に浮かび上がるロマニ様の顔が。
そして、其方には。マスターの目は向かって居ません。
『本造院君かい!? レフだ! レフ・ライノールを発見した!』
「――マジか。大当たりだったか」
『ただちょっと、色々様子が……援護には来れ……なさそうだね!!』
「うん無理。そっちで何とかして貰えるとありがたいですなぁ!!」
――やはりセプテムにおいて、裏で糸を引いていたのはレフ・ライノール。それを示すレフ・ライノール発見の報が、藤丸様側から入りました。
念のため、援護に行けそうなら行く、という事を打ち合わせておいたのですが、しかし現状、此方からはどうしようもない事は確定していて……今、マスターが見ていた先にその理由はありました。
「一応確認するけど、そっちに居る? シャドウサーヴァント」
『え? えーっと……いないけど?』
「こっちに来てらっしゃいますよ。群れを成して。うーん、本丸に辿り着かれてるって言うのに、俺完全にマークされてんねぇ」
『――そうか。であれば、そっちはそっちで頑張らないといけないか』
「そう言う事。んじゃ、切るわ」
シャドウサーヴァントが……ずらずらと。今までの数よりも、更に多い。大通りに広がって歩く程度には、その数も増えています。
「本当に標的は俺らな訳ねぇ」
「マスター」
「あぁ、んじゃまぁ。目的になさってる俺がしっかりと囮になって、アイツ等の処理でもしましょうかねぇ!」
そう言って、此方へと突っ込んで来る黒い影を迎撃する為にマスターと共に、私はシャドウサーヴァントの方へと向かい……
「おぉ圧制者の走狗たちよ! 汝らを抱擁せん! 来るがいいい!!」
「■■■■■■■■■■■■ーッ!!」
――あっと言う間にバーサーカーのお二人に吹き飛ばされていきました。
それを意気揚々と足を踏み出した私達二人は呆然と見ているしかなくて。とんでもない勢いの突撃は正にバーサーカーというべきなのですが……
「うーん。なんだろうな。出鼻派手にくじかれたね」
「そ、そうですね……」
私達が『シャドウサーヴァントについて色々調べてみるのも良いのかもしれない』等と考えていたの等、お二人には関係ないのでしょう。とはいえ……取り合えず、私達もシャドウサーヴァントを打ち倒す為。遅れて動き出しました。
良い感じに書こうと思ったらバーサーカーのお二人が全て破壊していった……