FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第二十五章・裏:聖杯でなく

「――あー……しんどかった」

 

 そう言いながら。マスターが地面に座り込んだ事で……私自身、戦いがようやく終わった事を自覚しました。

 いつの間にか指が、次の一撃を放とうと構えを取っていた事に、今更気が付きました。当然意識していた訳ではありません。それ程迄……緊張の一戦だったのです。

 

 天を見上げようと、顔を上に上げたその時……ふと視界に入る、一筋の何か。マスターのお尻の下まで伸びるその長さは、優にマスターの身長など越え、細いながら底は見えません。信じられなれないのですがそれは、余りにも巨大な斬撃の跡です。

 

「大丈夫?」

「……あぁ、いや、ホントに世界って広いなぁ。ああいうのが居るんだねぇ」

「あの強さは、そう言う問題じゃないと思うけど。ねぇ?」

「は、はい。正直、この様な惨状を作り出せるなんて……最早人間業を遥かに超えている気が、致します」

 

 大通りの全てに出来た無数の切り傷は、たった一人のサーヴァントが作り上げたもの。建物の高さも何も関係ないとばかり建物に刻まれる一文字。

マスターが座っている場所の傷の様に、建物だけに留まらず地面にまでも深々と延びている切り傷も、いくつかあります。切られた柱はズレて無惨に崩れ去り、そのまま瓦礫と化している建物も幾つか。

 

 一体どれだけの膂力と技量があれば、こんな事が出来るのでしょうか。私の時代。源氏武者の皆様とて、ここまでやれるでしょうか。

 

「皆さんが居なけりゃ詰んでましたよ。えぇ」

「それはこっちも同じ。誰が欠けてもなます切りにされてたと思う……スパルタクスなんか見てみなよ」

 

 ……スパルタクス様は、呂布様と共にそんな暴力の最前線で戦っていたのです。我々の援護などどれほど役立ったのか、と言わんばかりの激戦でした。

その筋肉の鎧に無数の傷を負って。何時もは雄弁なスパルタクス様は、無言で大地に腰を下ろしていらっしゃいます。呂布様は、立ってこそいますが……その場から一歩も動いていません。己の武器に体重を預けて、立っているのがやっとなのでしょうか。

 

「これは、我々の勝利という奴だ……女流作家殿」

「荊軻様……」

「まぁ、トドメを貰ったのは私だがな。ははは」

「け、荊軻様……」

 

 そして、そのお二人の激戦によって……正に千載一遇、とでも言えるような機会を突いて見せたのは荊軻様でした。

 ブーディカ様を一瞬の盾とし。陰から襲い掛かってセイバーのサーヴァントの喉首を掻っ切るその姿……正に、古の皇帝に迫ったとされる、荊軻様の伝説を再演するかのような一撃でございました。

 

『――お疲れ様!』

「いやーホント。きつかったよ……いきなり連絡寄こして『その人を止めてくれ!』だもんなぁ。皆様が居なかったら詰んでた。ホント、俺じゃなくてローマの諸将軍様に感謝してくれ」

『うん、正直な話、それは絶対にする……するけど。マシュも、藤丸君や自分、そしてネロ陛下を守るので精一杯だった。大きな怪我は無かったけど……ダメージは大きかった』

「いやマシュ達を責めてる訳じゃないけど」

 

 ……寧ろ、荊軻様の様な方であったからこそ、討ち取れたのかもしれません。

 真っ向から、全力で渡り合えるか、と言えば。マシュ様、藤丸様、ネロ陛下の三人が反撃すら許されず、宝具の一撃で戦えなくさせられてしまった。

 その原因か。それとも、たった一因だったのか。

 

『本造院君。聖杯は?』

「あー……式部さんが回収してる。大丈夫」

 

 その一撃で、彼女の元に現れた聖杯に関しては、私が今、手元に持っています。この特異点を成立させていた、大きな要因。つまり……この聖杯を私が手にした、という事は。この特異点は、ようやく解決した、という事になります。

 

 特に横入がある訳でもなく。

 あっさりと……この特異点の原因は、入手出来てしまったのです。

 

「後でマシュに渡せばいいんだっけ。ロマニ」

『了解。でも急いで、そろそろ帰還が始まるはずだから』

「あーそれまでにって事か、じゃあ休んでる暇もねぇな、っと」

 

 とはいえ、マシュ様のシールドに格納するのが、一番の安全策ではあります。

 マスターが立ち上がるのに合わせ、急いでお傍に駆け寄って……そのままなぜか抱えられてしまいました!?

 

「あっ、あのっ!? マスター!?」

「時間無いから抱えて走るけど良い? 申し訳ないがイエス以外は聞けない。後急ぐんで皆にお別れを告げるんであればお早めに!」

「え、えっと!」

 

 流石にローマに来てお世話になった方々に何もなしで帰るというのは申し訳ないのでしかし丁寧に言うのもちょっと時間が無いと申しますか……どうしようかと思って、周りを見渡せば、私の近くに居た荊軻様の姿。

 ブーディカ様含め、前線で奮戦なさっていた他のお三方は戦いの疲れで、休んでいる所を妨げるのは良くない。ので……せめて。

 

「あ、あの……お疲れ様でした! また機会があれば!」

「ほーう、サーヴァント相手にまた機会があれば、というのは随分だな。今度は聖杯戦争でという事かな?」

「はわっ!? いいえそんなつもりは全く!」

「ふふ。冗談だ。あぁ、また機会があれば、轡を並べようではないか」

 

 荊軻様は、そんな私に豪快に笑いかけ。

 

「――カルデアのマスター」

「ん?」

 

 そして。マスターにも。

 笑顔から、一転。真剣な表情で。

 

「私の勝手な想像から、勝手な忠告だ」

「え? はぁ、そりゃあ、どうもって言や良いんですかね」

「自分で自分を潰すな。自滅程みっともない事も無いぞ。特にお前の様な、若い男ならば猶更、な」

「――そりゃあ御忠告どうも。そんな軟な体してないんで、大丈夫です!」

 

 マスターは、そう言い残して走り出しました。

その一瞬、荊軻様に言葉を返す時に、何か間が挟まれたように感じて。マスターを腕の中から見上げます。

特に何か感情を浮かべている、という訳でもない様に見えて。その視線が少し、泳いでいるようにも見えます。

 

「……心当たりがおありですか?」

「無いよ……って言いたいけど。ま、若いと無茶するのは、ね」

「荊軻様は、歴戦の勇士ですから。その御忠告、ありがたく受け取っておくべきかと」

「そーねぇ。まぁ俺みたいな若造よりは、経験豊富か」

 

崩れた王宮内に、藤丸様、マシュ様達の姿が見えます。ネロ陛下が驚いています。それは……帰還の光に包まれ始めたお二人の姿を見ているからでしょうか。危なかったです。聖杯をマシュ様に渡し損ねる所でした。

 

「マシュ、フォウ君は!?」

「大丈夫です! 後は、式部さんから聖杯を――」

「マシュ様、藤丸様! 此方です!」

 

 出来るだけ早く渡した方が良いと、声をかけて、それから聖杯を掲げます。それを確認したマシュ様が向こうからも駆け寄ってこられ……聖杯を、確かに受け渡す事が出来ました。危なかったです。

 そして、私達の合流を見て……ネロ陛下は、少し寂しそうな顔を、なさっています。

 

「もう、行くのか」

「は、はい……一応、異変は終結した、みたいなんで」

「もう一つの勢力とやらはどうするのだ。余が一人で……どうにかするのか」

『その勢力に関しては。こうして我々が帰還する時点で、大丈夫だとは思います』

 

 もう一つある、と予測されていた勢力に関して警戒すべきは多くありませんでした。

 その勢力が聖杯を奪取し、特異点を利用する可能性。そのカギである聖杯を私達が回収できた以上は、ローマはもう、大丈夫です。

 

「……そう、なのか」

「はい――俺達が力を貸せるのは、ここまでです」

「後は、ネロ陛下のお力で。ローマを……私達が共に戦ったローマを、支えて行ってください。私達が、遠くからでもネロ陛下のご活躍が分かる様に」

 

 藤丸様と、マシュ様がそうネロ陛下に告げて。ネロ陛下は……ぐっ、と何かを堪える様に口元をキュッと引き絞って。それでも、最後は笑顔で、お二人に向けて堂々と胸を張られました。

 

「――うむ! 当然! お主らの耳に毎日入る様な、ローマにしてみせるぞ!」

 

 

 

「――行ってしまったか。全く、極刑ものだぞ。余の誘いを断るなど……まぁ、仕方あるまいか」

「さて。これからが忙しいか。やるべき事は山積みだ。領地の復興に、新たな防衛施設も築かねばならぬ……?」

「んぬぅ? この髪飾り……なんだ、見覚えがある様な……あ」

 

「そうだ、あの島の神が、髪を括っておった。アレだ。しかし、何故こんな所に」

 




勝ったのは二つの陣営。



という事で、一月ほど投稿を停止させて頂きます。
次は六月に投稿するかと思われます。投降した時は、また雑に流し読みする程度でも呼んでいただければ。

それでは。
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