FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「――試験終了。良い感じだね」
『良かないっすねぇ。ったく、ホント疲れるんですけれどもー?』
「あははは。仕方ないじゃないか。君のデータを地道に取って、そのデータを兎に角、フィードバックする事が、君の事への理解につながるんだから」
『……頼みますよドクター。この変人天才様の手綱、ちゃんと握っててちょーだいね。俺はあくまでモルモットなんだから』
「あははは……努力するよ」
ダ・ヴィンチから『改めて、礼装の試験運用がしたい』という提案が出された時は、好機だと思った。
セプテムでの試運転的な幾度かの使用では……今の所、何か不穏な様子を見せていない。此方のデータでは、特に問題がある訳ではない。故に油断してしまっている部分が無いかと言われれば、否定は出来ない。
医者としても、ここは気をより引き締めて挑むべきだ、としっかり頭のネジを締め直し目の前のデータを見直す。
シミュレーターでの幾度かの調整。ただ能力を発現させて調子を見るだけのそれは、本来なら礼装が完成してからやるべきだったのだけど……特異点を攻略する為には些かとその時間が取れなかった。
故に次の特異点までには、出来るだけの調整を繰り返して。彼のデータを集め、それを元に……更に安全性を高め、本造院君へのリスクを徹底的に減らす。彼の中に流れる血が暴れ出さない様に。
彼の血については、色々分からない事も多いのだ。
そもそもの話、先祖が鬼だったからと言って、鬼の能力を使えるか、と魔術的観点から話をさせて貰えば……そうでもない。
極端な話をすれば。神の血を引いているからといって、その神の力が使えるのか。と言えばそうでもないのだ。当然ながら。受け継がねばならぬのは極端な話にはなるが、血ではなく、神秘なのだ。
「――彼の家が、正しい神秘の保存をして来たのか」
それに関しては、疑問符を付けざるを得ない。
何故なら彼の親族は魔術師ではない、というのは確認済み。当然本造院君に魔術刻印等も存在しないのは分かり切っている。
であれば。彼が発現させた力はどういう理屈で発動したのか。鬼の混血なれど、何世代も何世代も後の彼に、何故。
やはり分からない事が多すぎる。
一般候補の一人として彼が連れてこられたのが、その血が原因だったのか、という色々な想像を働かせることも出来るが……
「ロマニー? 何をボーっとしてるんだい?」
「あ、いや、ごめんごめん」
今はそんな事をしている場合ではないだろう。
「全く。礼装の設計や開発は出来ても、人体に関する面においては、一応医者である君の方が優れているんだからさ。ちゃんとデータを取って貰わないと」
「そうだね。君に好き勝手作らせる訳にも行かないしね」
「そんな事はしないんだけどなぁ」
「意識してはしなくても、興が乗っちゃってやっちゃうことがないって言える?」
「――さー、実験を再開しようか!」
ダ・ヴィンチが幾ら天才だからと言って。データが無くては改良の仕様もない。彼自身も、開発者として礼装の安定性、及び性能の十全な発揮の為にこの実地試験に協力してくれているのだから。
それに、余り彼を拘束しておくわけにはいかない理由も、出てきてしまっている。
「それで? 先日来てくださったお嬢さんの様子はどうだい?」
「……正直、穏やかに過ぎると言えばそうだね」
ここから見える位置に配置してある監視カメラのモニターには、シミュレーター内にてエミーとの模擬戦闘に興じているサーヴァント……アヴェンジャー、ゴルゴーンの姿が映し出されている。
エネミーのレベルは、セプテムでの戦いを元にして、それなりに高レベルにしあげてるのだけど、まぁ物ともしていない。戦力増強としては、これ以上ない程に心強い相手を引き当てたと言えるだろう。
彼女は、これから激しさを増す戦闘に合わせて、追加での召喚を行ったサーヴァントなのだが……問題は、彼女の気性にあった。
反英霊。そうカテゴリされるサーヴァントが存在する。
神話において、怪物を討伐し……討ち取るのが英霊であるのならば。そのまた逆。討伐される側の存在も、サーヴァントとして召喚される事が、あるのだ。
それこそが、英霊に反する位置に居る存在。敵役。物語の怪物。人類を憎む物。彼らは人類史が危機に陥っているとしても味方してくれるとは限らない。そんな存在なのだ。
そして、その中でも、ゴルゴーンともなればひとしおだろう。
「正直、人と相いれる理由がないんだよ。彼女」
「一応は此方に味方してくれるらしいみたいだけど、寧ろ彼女の境遇考えるとそれってあんまりにも都合が良すぎる、というか」
「うん……」
此方に協力してくれている相手にこの様な事を言うのは失礼どころの騒ぎではないだろうが、しかし。
彼女は、反英霊の中でも、分かりやすく英雄に討ち取られたタイプの存在。ゴルゴーンの怪物。神霊によって遣わされた英傑にとって討ち取られ、その首を幾度となく利用され尽くしたという、恨みしかないような逸話があるのだ。
彼女についての情報を知っていればいるほど……
「マスターが近くに居るからって言って、遠慮して下さるとは限らないけどねぇ。まぁ居ないよりはマシ、くらいなのかな」
「この中で、彼女に問題なく話しかけられるのは、召喚した張本人の彼だからね」
無論、僕らだって彼女を無駄に刺激しようとは思わない。協力してくれている分此方も色々と彼女に融通を利かせる積りもある。別に彼女を腫れ物扱いするつもりもない。
それでも、サーヴァントに一番近い立場なのは、結局のところマスターの本造院君一人なのである。
彼女と本造院君との仲次第では、カルデアが空中分解し、人理修復は失敗……という事も十分にあり得てしまう。カルデアという組織は、それ程に薄氷を踏むが如き状態にあるのである。
「――とはいえ本造院君本人は彼女と相性が良さそうだって言ってたけど」
「え? そうなのかい?」
「あぁロマニは聞いて無いか。さっき礼装の調整に行った時、ゴルゴーンについて聞いてみたんだけど、そう言ってた」
しかしながら彼は、そこに関して心配はしていない、らしい。
「曰く、『同族の匂いがする』だってさ」
「同族の匂いってなんなんだろう」
それが事実かはさっぱり分からない。若い子の感性は独特なのかもしれないし。でも此方としてはマスターに余計な事を吹き込んでサーヴァントをコントロールしよう、とかやったら絶対アウトな事は出来ないので、彼の胸先三寸に賭けるしかないのだが。
これが、藤丸君が召喚した方のサーヴァントの様に、全く心配いらない人であれば、此方も心を落ち着かせられるのだけれども。
「少なくとも藤丸君が召喚した方の、アルトリアよりは近しい物を感じるって」
「……何となくニュアンスだけは分かる気がする」
「良い子だもんねぇ。彼女」
サーヴァント、セイバー・アルトリアは、藤丸君と既に良好な関係を築けている。マシュとも真面目な気質が良く合っている様で、何も心配する点は無い。
「というか、彼女が苦手なんだとも言ってた」
「え。あんないい子が?」
「本人にももう言ってるって言ってたから、間違いないと思うけど」
「凄いね……本人に得意じゃないって言えるって、心が鋼で出来てるのかな」
「いや、言わない方が不誠実じゃないかって思ったんだって。彼女自身が嫌いってわけじゃないらしくて」
「あー」
……そんな少女とも、合う合わない、というのはあるらしいというのは、今まで見て来た彼らしいと言えば、そうなのだけど。なんというか、ダメな時は本当に『ダメ』というタイプらしいので。
「何がダメなのかな」
「女の子が刃物を持っているのがトラウマなんだって」
「……どんな限定的なトラウマなんだろう、それ」
ホモ君にとっては某ひぐらしとかもトラウマ刺激します。