FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「やぁああっ!」
「ったく、こんな小娘が……錨でも振り下ろしてんのか、この馬鹿力!」
――サーヴァントという物を、ここまでの特異点で良く知っているマスターとしては、サーヴァントと対等に戦うドレイク船長の屈強さに目を奪われるばかりにございます。ハイ本当に。
後、マシュが『マスターももしかすれば……』という視線を向けてくるのが非常に心苦しいのであんまり現地人が逞しすぎても困る人理修復中のマスターです。
という事で、この可笑しな海を人理修復に来た旨を話した結果、『こんな面白おかしい海は無いから楽しんでる』『話をしたけりゃ力試しからだ』という話になって。カルデア側からはアルトリアが。海賊側からはドレイク船長が代表として決闘を行う事になった。
流石にカルデアのサーヴァント四人がかりで現地人を蹂躙すると言うのは、それは、どうなのだろうか。それは向こうとやってる事変わらないのじゃないだろうか。
『うん、流石に見た目が宜しくない』
『美学もクソも無いなぁその力攻め!』
元軍師経験もあるダ・ヴィンチちゃんからのお墨付きも貰って、一騎打ちになったのだが。しかしその判断がちょっと甘かった可能性がある。
「逞しいなぁ、船長」
「そりゃあこんな特異点で海賊やってんだから逞しいだろうよ」
「限度が無い? 幾らなんだって」
ドレイク……フランシス・ドレイクと言えば世界最強のスペイン艦隊を破った伝説の提督。にして海賊。大海賊。
大英雄に間違いはないのだが、しかしながらサーヴァントを相手出来る程か。というロマニの建てたフラグはまぁ的中した。
結果として、長剣対拳銃という、漫画での題材になってる率ぶっちぎりのロマン対決が実現したのだけれども。
「ドレイク船長って、超人だったって言う逸話、あったっけ?」
「えっと……無いと思います。多分ですけれど」
「だよねー」
兎も角ドレイク船長が強い。
俺のサーヴァントになってくれた彼女……アルトリア・リリィは確かに騎士として、剣士として、若い身ながら目の覚めるような剣の冴えを見せていると、素人ながら思う。多分だけど。少なくとも俺が目の前に立ったら間違いなく“なます”だ。
真正面からの戦いで、彼女を越えようとなると……ちらと見るのは、康友が新たに召喚した、ゴルゴーンさん。神話に語られる程の彼女であれば可能ではあるだろう。
逆にそれくらいの格が必要な程、可憐なる少女騎士、そこに秘められた棘は、鋭いどころの話ではないのだ。
しかし彼女を相手取るドレイク船長は、地上という自分のテリトリーでもない場所での戦いでも、全く引けを取っていない。引けを取って居ないというか、上手に引く事を知っているから負けてないというべきか。
「そぉらっ!」
「何処を狙って……いえ、上ッ!!」
リリィが反応したのは目の前ではなく……自分の真上。戦場ではあまりにも致命的なそのよそ見を、ドレイク船長が見逃す訳はない。
「そっちに反応したね、なら終わりだっ!」
リリィは、剣での攻撃、そして接近戦では圧倒的な強さだろうが……ドレイク船長はそれに一切付き合っていない。
地面を転がり、今見た様に木の下に誘導してヤシの実を打ち落として攻撃する等、二次元的な戦闘ではなく、三次元的に動き、搦め手も併用し、徹底的にマトモに戦わない。故にこそ……
「――甘いです!」
「っはぁ! また避けるかい、今度こそ当てたかと思ったけど」
「そう簡単に当たりません! さっきまでは大袈裟に避けてましたけど、何となくわかってきました! 避け方!」
「だからって簡単に避けるんじゃないよ!」
超人的なアルトリア相手に、互角に戦えている。
そう。ドレイクの攻撃は、アルトリア・リリィに通じる程に強く、信じられない程に動きは機敏だけど……しかし、それでも単純な機動力では、リリィの方が上回っているという事実。
地形を全力で利用し、圧倒的に経験を生かして、相手を翻弄し。けれどその幾つもの手札に、リリィは若さゆえの勢いと剣士としての技量で食い下がっている。
結論としては、『リリィもヤバイ。ドレイク船長もなんでかヤバイ。マシュはコレを参考に人間を計らないで欲しい』というマスターの哀しい結論が出ている訳なのです。俺はあそこ迄逞しくなれません。
「……剣もって甲冑着て暴れるのかい藤丸君」
「冗談は止してくれ。絶対に足手まといにしかならないの目に見えてるじゃないか」
「あっそ。似合うと思うけどなぁ……あの子よりは」
――そんな事を考えながら、ふと隣で二人の争いを共に見ているマスター友達を見つめた。彼は結構ハッキリ物を言うタイプだが、実際にリリィに対し、苦手と言っていたのは記憶に新しい。
『嫌いって訳じゃないんだ、ゴメンね』
禿げた頭を掻きながら、申し訳なさそうに言ったアイツは、リリィはとても良い子だろうし、と何度も何度も念押しをしていたのが記憶に残っていた。じゃあなんで苦手なのかというのは……結果、聞いて無かった気がする。上手い事誤魔化されていた。
まぁ人によって好みなんてそれぞれだから詳しく聞く必要もないんだけども、こうしてリリィが目の前で活躍しているのだから、折角の機会な気がする。
「……普通に似合ってると思うけど。リリィには」
「似合ってる似合ってないの問題じゃないんだよな」
「何がそんなに気に入らないんだよ」
――その言葉に、リリィに向けられていた禿げた頭が、少しだけ此方を向いた。
「……」
「なんだよ」
「んじゃあ、一つ思考実験というか……そんな感じの事をやってみようじゃないか。マスターとして、交流の一環的な感じだ」
「それは、リリィに関係ある事、って事で良いんだよな」
「今の流れで関係ないこと話されても困惑しないか、普通」
それは全くそうなのだが……と、思っている俺を他所に、康友の言葉は続く。
シチュエーションは、自分の家。自分は居間や自室で寛いでいて、そこに少女が入ってくるのだという。前提条件として、目の前に居る少女が自分にとって非常に親しい関係である事。
まるで慣れているかのように、そこまで淀みなく康友はスラスラと言葉を並べた。
「こういうのって好きなの?」
「いんや。別に。こんな話題出したのだって初めてだし」
「そうなんだ」
「そりゃあそうだろ。こんな遊び日々楽しくやってるのはインテリだけだ」
「それは流石に偏見じゃないかって思うんだけども」
「そっか。んじゃあこれ以上の偏見が出る前に……一つ、この前提条件を元に質問をしようじゃないか――その子が、包丁を持って部屋に入ってきたら、どう思う?」
そう言われた時、ふと目の前に浮かぶ、マイルームの景色。
考えてみる。親しい子が、急に刃物を持って部屋に入ってくる。自分の場合は、最近親しくなってきた……マシュとかが、入って来たと考えてみる。そりゃあ、そりゃあ。
「驚く、かな。理由を聞くかもしれない」
「んー、何とも普通な回答だ」
「なんだよ。普通で悪いか」
「いいや、普通の回答で安心したよ。そこで『取り敢えず抱き締める』とか言われてても困っちまったしな」
「どんな情熱的な人だと思われてるんだ」
答えはしたが、これが何の意味を持っているのか。
「で、その質問に対する俺の回答は……『ちょっと身構える』」
「身構える?」
「その子が親しいからこそ、俺の事を良く知っているからこそ……そして、暴力とは離れた印象を抱く相手だからこそ」
問いかけようとして見た、隣の男のその眼は……目の前の激闘を見ている様で、そうでない様にも見えた。もっと、もっと別の所を見ている気がした。あくまで、確信は一切ないのだけれども。
「その刃物には、重要な意味が込められているかもしれない。例えば、その刃物が俺に対する感情の回答になるだとか」
「……それは考え過ぎじゃ」
「ま、言われても仕方ないけども。俺はそんな風に怯えがちなもんで。ちょっと刃物を持った女の子は個人的に、苦手なのよ」
――それが。
唯の印象の話でそう言っているのか。それとも……
それを問いかけようか少し迷っている間にも、目の前の激闘は、佳境を迎えようとしていた。
某ひぐらしとか見てると、少女プラス包丁がそれにしか見えなくなるバグ。アレって鉈なんですけどね。