FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「全く、神様モドキを叩き潰したと思ったら、今度は蛇の大化け物とは! ホント、この海は退屈しないねぇ!!」
「いや、退屈しないのはこっちなんだけども……香子さん、どう?」
「ダメですマスター。ゴルゴーン様、完全に出来上がってしまっています」
「おい! 次だ! ドンドン酒持ってこい!! ハハハハハッ! 今日は宴だ!」
――ドレイク船長の話を聞いてからというもの、こうなってしまって。
船の上で明らかに不機嫌でしたのが一転。その大口を開いて物凄い勢いで酒を飲みほしていらっしゃいます、その姿に……召喚の際、ご自分を復讐者と己を名乗ったゴルゴーン様の姿はありません。ただの酔っぱらいがそこに居ました。
ドレイク様が打ち倒したポセイドン、というギリシャの神様には、ゴルゴーン様は因縁がお有りになる模様で。
「凄いですねゴルゴーンさん。むすっとしてたのが、ニコニコしてます、マスター」
「……昔の因縁って、凄いんだね。カルデアのマスターとして、ちゃんとその辺りも考えないとなぁ。リリィはそう言う人いる? ぶん殴りたい人」
「えっと、多分いないと思います、はい」
「先輩。ゴルゴーンさんは相当に合縁奇縁あっての事なので、リリィさんには居ないと思いますけれど」
ゴルゴーン様の合縁奇縁というより、ドレイク様との奇跡のようなめぐり合わせと申しますか。
ドレイク様は、嘗てこの特異点にて、オリュンポス十二神の名の元に現れたポセイドンをなんと……生身にて打ち破り、本当の意味で聖杯に選ばれたのだそうで。私達としては正しい聖杯をもっているというのが驚きでしかありません。
とはいえ、ゴルゴーン様にとっては、そんな聖杯についてはどうでも良く、ドレイク様が殴り倒した海神ポセイドンこそが重要であった模様で。
ポセイドン撃退を見事に成し遂げた事は、彼女が持っていた聖杯こそが証となって。
そこからはもう……あの調子です。
「そうだなぁ。マスターとしての責任も色々考えないといけないよなぁ」
「所でマスターとしてあの勢いで酒飲んでるのは良いのか? 止めなくて?」
「うーん……楽しそうだから良いんじゃないかな」
「そんなもんかなぁ」
しかし、余りにもこの、ゴルゴーン様の勢いが乗り過ぎていらっしゃるのは、如何なものかと思ってしまうのですが。もう樽からお酒を呑んでらっしゃいます。
サーヴァントは酔いもするとは言いますが、しかし。もうあれは泥酔とかその域では。楽しいからとかそれで済ませて良い域ではないと思います。
サーヴァントに酒精がどれだけ利くか。それに関しては分かりませんけれど、もし二日酔いになってしまうと恐らく誰にとっても悲しい結果にしかならないと思うので、お二方はそろそろゴルゴーン様を止めて頂ければと。
あ、樽がもう一本空になりました。もうさっきから樽からお酒では止まらず、樽から一気飲みされていらっしゃいます。
「あの、マスター、宜しいのですが?」
「いや実際楽しそうだし……止めるのも野暮って奴じゃん?」
「ですけど」
「まぁ二日酔いとか心配だけど、でもゴルゴーンさんがああしたいんだから、さ」
楽しそうじゃない。と言うマスターは私程焦っていない様に見えます。マスターも若いのですから、お酒の後に残る、あのしこりの恐ろしさを知らないのでしょうか……私も少しばかり、酒の席で口が滑ってしまった事もあって、その結果悲しい事になってしまったと申しますか。
「……そんな心配そうな顔しなくても、なんも考えてない訳じゃないよ」
「でしたら」
「考えた結果が、『放っておく』ってだけだからさ」
――マスターは、ゴルゴーンさんとの距離を、考えていると言われました。
これからの特異点を超えるにあたり、本当にサーヴァントとの仲を丁寧に考える。そして、その為に考えた、その結果。只無為に話しかけたり、諫めたりなんてするのは違うのではないか、と。
好きにさせる。暴走させるという訳では無くて。今、サーヴァントがやりたいようにさせるというのも、マスターとしての仕事ではないか、と。
「ゴルゴーンさんが飲みたいって言うなら、今くらい良いじゃない、って思っただけなんだよ。周りに敵がいるって訳でもないんだから。多少恥かいてもそれもいいでしょ」
「いいのでしょうか」
「そう言う後の事をサポートしてこそ、仲良くなれるって所もあると思うよ」
その後の面倒は、良く知っているけれど、と何処か遠い目をしたマスターは……ぽつぽつと口を開きました。
「小っちゃい頃なんかは、家で開かれた宴会とかの後始末とかしてたもんだから。まぁ親戚のおじさま方と直ぐに仲良くなったよね」
「えっと、それは、どうしてでしょう」
「自称酒豪の方々が何で勝負するか分かるでしょ。で、その結果として……お二人が相打ちになるかどっちかが勝つか。どっちにしても残る物はあるんだよ」
その結果として。地獄の様な量の、その……ご家族の方の遺物を処理する結果と相成ったそうで。最早その数は二桁に届く程の回数だったと言います。そう言った時など最早無我の境地に到達する事もあったと。
しかし、その結果として、一緒に片付ける羽目になった多くの親戚のおじさま方とは、本当に仲良くなれて。それは自分にとっての大きな宝になった、と。臭かったし、ぬるっとしてたけど、と。焦点の合わない眼で言われました。
「……それならその後の惨状もご存知なのでは」
「止めようとした結果宴が更なる惨事を生む事も知ってるんだよ。だから酔っ払いは放っておいて、後を綺麗に片づける。そうすれば余計なしこりも生まれない」
それを幾つの時に覚えたかなぁ、と。
「式部さんはどうだったの。そう言う辺り」
「ど、どういう辺りでしょうか」
「酒宴とか。平安お貴族様のそう言う宴とか、やっぱり経験して来たんじゃ」
「それは、まぁ」
「安倍晴明の酒の失敗談とか無かったの?」
では翻って見て。私はどうなのかと問われれば。
確かに酒宴に呼ばれる事はありましたが、それがどのように終わったか、全てを覚えているかと言えばいえ全くそんな事は無く。印象に残った出来事こそ多かったのですが、しかしそのどれも話のタネに出来るかと言えば余りにも醜聞と申しますか。
「多分、お話しできるような事は……特に晴明様についてはなにも」
「そっかぁ」
「あの方に関しては、そもそも私も知らない事も多かったので」
晴明様は……そもそもそこまでお酒を嗜まれていたかどうか。私は確かで弟子ではあったのですが、決して、あのお方の私生活に近い弟子では無かったので。
……というか、私に関しては面白がられていた節があった事も何となく分かっていました。弟子って言うより、なんでしょう。当世風に申しますと……『おもしれ―女』的な、扱いを受けていたと言いますか。文字通りに。
そんな晴明様のお酒……について考えてみると。
少なくとも、お友達と、花見酒を行われていた事だけは覚えています。確か……博雅様等とは、諸々喋っていらした所をちらと見たくらいですが。
「ふーん。やっぱ安倍晴明ともなれば、酒の嗜み方も問題無しか」
「私の知る限りですが。少なくとも、都に蔓延る魘魅邪魅についてスラスラと話していらしたので、酒でおぼつかなくなっている、と言う事は無かったのかな、と」
「さっすがー。酒に酔っても呪には参らず」
「私には分からなかったのですが、人の評判を勝手に弄る事で、その方を死後に呪う方法なども話されていて……」
「何それ怖っ」
――こんな事を話していると。マスターがサーヴァントとの距離を真剣に考えているという先程の言葉も、嘘ではないというのが、分かります。
楽しそうに、私の取りとめもない話を聞いているマスターの顔を見ていると。
博雅って? って思った型月ファンの皆様。陰陽師を見ましょう。
あぁ博雅。 って思った邦画ファンの皆様。陰陽師、良いよね。
安倍晴明が型月で細やかには言及されてないので設定を弄れるという強み。