FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第三十章・裏:利用し、利用され

 ――黒い影が四方八方から迫りくる。

 刃物を携えた黒い影。一騎のサーヴァントに率いられた出来損ないの影法師。

 その大将にして最も厄介な相手。サーヴァント、エイリークはもう一人のマスターが対処しているが、しかしながらそう言う厄介さなどとは別に、面倒なのは間違いなく此方ではないか。そう思える程に……これは。

 鬱陶しい。凄まじく鬱陶しい。

 

「――ええい、貴様ら一々、ハエの様に……纏めてかかってこい!」

「したらゴルゴーンさんに纏めてハチの巣にされるのが分かってるんでしょ」

「かと思いますが……さ、最初に一撃与えた時から露骨に……」

「……」

 

 原因が何か。

 ……本当に、業腹ではあるが。恐らくは、私、なのだと思う。

イヤ命令を下したのはマスターで。それに従っただけだから。と言うのは、簡単だ。

 だがマスターは確か『取り敢えず牽制くらいでやっちゃって!』とか言っていた気がする。それが生ぬるい指令だと思って、一気に焼き払いに行ったのは、私だ。

 

 その結果、露骨に私を警戒されて、森の奥から黒子が出て来なくなった。私と、キャスターとマスターが、あのシャドウサーヴァントを相手にする、という段取りだったのだがしかし……

 

「どうなっている! 森を焼き払ったら余計に見つけにくくなるとは! 隠れる場所が無くなっているんだぞ!」

「ゴルゴーンさんってゲリラ戦の概念ご存知!?」

「知らん!」

「でしょうな! こういう状況の事を言うんだよ!」

 

 木が倒れ、隠れる場所も無くなり、木の重さで潰せて一石二鳥……かと思えばその倒れた木の影からも出て来る。なんだ貴様等は。虫か何かか。黒い色が余計に鬱陶しく感じるのだが。せめて色を変えろ。

 ええい、いっそ、島もう丸ごと消し飛ばしてやりたい程だ。だが、マスターという楔を消す訳にも行かないのがもどかしい。これがサーヴァントという物の面倒な点だ。

 

「へい! マイ担当のダ・ヴィンチちゃん、状況どうだい!?」

『いやはや全然。向こうの妨害か何なのか、詳しい位置も分かんない』

「そうかい!」

『一応は、この妨害をやってる輩は、この近くに居ない事だけは分かるんだけどね』

「つまりこれはどうしようもないと! 最悪のお知らせありがとう!」

 

 ……どうやらカルデアの連中の援護も当てにならない、ともなれば。もうずっとこの調子は続くという事だ。成程。これは頭が沸騰しそうだ。怒りと、その他諸々で。

 

「ゴルゴーンさん、悪いけどもうちょっとモグラたたき頼むわ」

「そろそろ苛立ちで全てをフッ飛ばしてやりたくなるんだがな……!」

「藤丸たちがあのサーヴァントを撃退するまでの我慢だから!」

 

 何が特別に苛立つかと言えば。なにもせず見ているというのであればまだ良い。まだ良いのだがしかし。常に気を張って、周辺から顔を出せばそこを打つ。鼬ごっこを繰り返している。こういうのは、特別苛立つ。

 

 というかあの黒子共、ムカつく事に顔に何か貼っている。お洒落の積りなのか知らんがその貼られているモノのガラも、妙に不気味なのが苛立つ。

 

「――上等だ、その札諸共に……その顔を焼いてくれる!!」

「うわぁ、お怒りだぁ……」

「……」

「ん?」

 

 正直目玉だけのあのデザインも、好みではない。私自身、目で有象無象を石にするのを得手としているが、しかしながら、いや故にこそと言えばいいのか。ああいう柄は全くもって好まない。嫌味か。

 欠片も残さず灰にして、それで漸く胸もすくという物。やってやろう。私に対しそのような物を見せた貴様らが悪い。許さん。

 

「あの札……」

「ん? どしたの式部さん」

「い、いえ。何処かで、見覚えがある様な気が、すると申しますか」

「――それホント? えっ、アレを誰が操ってるか分かるの?」

「あ、その、そう言う訳では」

 

 ――なんだと?

 

「誰だ」

「へっ」

「誰だ。この私の神経をここまで逆撫でする愚か者、というのは。言え。早く」

「ぴえっ……そ、そのような、確信を、もって、言える、様な、事では無くて……あの本当に……そんな気がするな、くらいのもので……」

「何でもいい。言え。さっさと言え」

 

 ええいハッキリとしない。神経が苛立つ……。

 

「言うだけいえ。貴様の思っている事が合っているかどうかなどどうでもいい。それが合っているかどうかを判断するの貴様の仕事ではあるまい!」

「い、いえそうなのですけど……」

「――いや、ゴルゴーンさんの言うとおりだ」

 

 そのまま苛立ちのまま掴みかかろうとしたところで、マスターが間に割って入る。睨みつけようとした所で、視線で促される……言われる迄も無く分かっている。だが、しかしながら。

 キャスターの話を聞くのは、苛立つ輩を焼き尽くしてから、時間が出来てからでも構わん。私とした事が。感情のままに暴れるなど。下らん真似を。

 

『紫式部。これは天才の個人的な忠告ではあるけれど、どんな可能性でも言わないよりはマシだと思うよん』

「……」

「ウチには良いブレインが付いてるんだから、分からない事が在ったら投げる。それくらいで、取り敢えず幾らでも使い倒してやろうじゃないか。な?」

『うーん何と堂々とした酷使宣言。まぁ君達のバックアップの為に居るんだから良いんだけどね。別にさ』

 

 そうだ。この程度の事で心動かされず、あんな下らん輩共は、我が手で軽く焼き払う。苛立つなど、それこそ向こうの思惑に乗るようなものではないか。この私が。たかが人間風情の率いる群れに。

 人間共が私を恐怖し、怯え、竦む。感情に振り回され、逃げ惑う。それこそが正しい姿なのだから。乱されるのは私ではない。貴様等だ。感情が高ぶってくる。黒いカカシ共に向けて、砲口を向け……

 

「――苦しむがいい」

 

 解き放つ。束ねられた魔力が無数の一閃となって、襲い掛かる。

 勘違いをしていた。一匹一匹を叩くのではなく。力づくで広く広く薙ぎ払う。狙うなどとまどろっこしいマネをせずとも、私の全てを注ぎ込んで破壊してやれば、自ずとその中に亡骸も転がっているだろう。

 無駄に全てを破壊するまでもない。あくまで周りに結界でも築くかのように。狙った範囲を確実に制圧する。

 

 その程度の事が私に出来ぬ訳が無いだろう。

 

「――どう、いけそう?」

「はっ、誰に物を言っている。また一人……焼き切れたわ」

「はえー。うっわ、なんだこの攻撃。レーザーネットって奴? 逃げ場ねー」

 

 そうだ。網の様に、我が魔力を立体的に組む。檻のように、だ。そこから逃げようとする輩を、更にもう一本の格子でも追加して、焼き尽くしてやればいい。

 

「いやー上手いな。藤丸達の所まで行かない様にやってる」

「ふん、サーヴァントとしての最低限の仕事をしてやっているだけだ」

「オーライ……じゃあまぁ、チョイとしたサポートでも」

 

 ――ふと、感覚が冴え渡る。黒い奴らの動きが、今まで以上にしっかりと感じ取れた気がした。恐らくは、今なら奴らの動きを先読みして、焼き払う事も難しくは無いだろう。

 とはいえ、私がやった訳ではない。可能性があるとして……ちらと隣を見れば、ニマニマ笑うマスターの姿が、目に入った。

 

「……何のつもりだ?」

「マスターとしての仕事って奴。さ、ダ・ヴィンチちゃんの解析結果が出る前に終わらせる為にも、存分にどうぞ!」

 

 やれるだろ? とでも言いたげな顔だった。

 

「良いだろう。精々利用してやるとするさ」

 

 そんな生意気な顔をされて、流石に苛立つかと思った。だが。寧ろ僅かに愉快な心持になった気がした。ほんの一瞬だが。

 恐らくはそんな事は無い。ただの気のせいだとは個人的に思う。だが……それが気のせいだとしても。

 

 悪くはない。これが、マスターを利用し、マスターが利用する。私の想定した関係だとするのであれば。多少のやる気を出してやるのも……良いだろう。

 

「やるぞ、マスター」

「オーライ。初めての共同作業と行こうか」

 




某クロスブーストのプロヴィデンス〇ンダムのアレみたいな感じです。
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