FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
――黒い影が四方八方から迫りくる。
刃物を携えた黒い影。一騎のサーヴァントに率いられた出来損ないの影法師。
その大将にして最も厄介な相手。サーヴァント、エイリークはもう一人のマスターが対処しているが、しかしながらそう言う厄介さなどとは別に、面倒なのは間違いなく此方ではないか。そう思える程に……これは。
鬱陶しい。凄まじく鬱陶しい。
「――ええい、貴様ら一々、ハエの様に……纏めてかかってこい!」
「したらゴルゴーンさんに纏めてハチの巣にされるのが分かってるんでしょ」
「かと思いますが……さ、最初に一撃与えた時から露骨に……」
「……」
原因が何か。
……本当に、業腹ではあるが。恐らくは、私、なのだと思う。
イヤ命令を下したのはマスターで。それに従っただけだから。と言うのは、簡単だ。
だがマスターは確か『取り敢えず牽制くらいでやっちゃって!』とか言っていた気がする。それが生ぬるい指令だと思って、一気に焼き払いに行ったのは、私だ。
その結果、露骨に私を警戒されて、森の奥から黒子が出て来なくなった。私と、キャスターとマスターが、あのシャドウサーヴァントを相手にする、という段取りだったのだがしかし……
「どうなっている! 森を焼き払ったら余計に見つけにくくなるとは! 隠れる場所が無くなっているんだぞ!」
「ゴルゴーンさんってゲリラ戦の概念ご存知!?」
「知らん!」
「でしょうな! こういう状況の事を言うんだよ!」
木が倒れ、隠れる場所も無くなり、木の重さで潰せて一石二鳥……かと思えばその倒れた木の影からも出て来る。なんだ貴様等は。虫か何かか。黒い色が余計に鬱陶しく感じるのだが。せめて色を変えろ。
ええい、いっそ、島もう丸ごと消し飛ばしてやりたい程だ。だが、マスターという楔を消す訳にも行かないのがもどかしい。これがサーヴァントという物の面倒な点だ。
「へい! マイ担当のダ・ヴィンチちゃん、状況どうだい!?」
『いやはや全然。向こうの妨害か何なのか、詳しい位置も分かんない』
「そうかい!」
『一応は、この妨害をやってる輩は、この近くに居ない事だけは分かるんだけどね』
「つまりこれはどうしようもないと! 最悪のお知らせありがとう!」
……どうやらカルデアの連中の援護も当てにならない、ともなれば。もうずっとこの調子は続くという事だ。成程。これは頭が沸騰しそうだ。怒りと、その他諸々で。
「ゴルゴーンさん、悪いけどもうちょっとモグラたたき頼むわ」
「そろそろ苛立ちで全てをフッ飛ばしてやりたくなるんだがな……!」
「藤丸たちがあのサーヴァントを撃退するまでの我慢だから!」
何が特別に苛立つかと言えば。なにもせず見ているというのであればまだ良い。まだ良いのだがしかし。常に気を張って、周辺から顔を出せばそこを打つ。鼬ごっこを繰り返している。こういうのは、特別苛立つ。
というかあの黒子共、ムカつく事に顔に何か貼っている。お洒落の積りなのか知らんがその貼られているモノのガラも、妙に不気味なのが苛立つ。
「――上等だ、その札諸共に……その顔を焼いてくれる!!」
「うわぁ、お怒りだぁ……」
「……」
「ん?」
正直目玉だけのあのデザインも、好みではない。私自身、目で有象無象を石にするのを得手としているが、しかしながら、いや故にこそと言えばいいのか。ああいう柄は全くもって好まない。嫌味か。
欠片も残さず灰にして、それで漸く胸もすくという物。やってやろう。私に対しそのような物を見せた貴様らが悪い。許さん。
「あの札……」
「ん? どしたの式部さん」
「い、いえ。何処かで、見覚えがある様な気が、すると申しますか」
「――それホント? えっ、アレを誰が操ってるか分かるの?」
「あ、その、そう言う訳では」
――なんだと?
「誰だ」
「へっ」
「誰だ。この私の神経をここまで逆撫でする愚か者、というのは。言え。早く」
「ぴえっ……そ、そのような、確信を、もって、言える、様な、事では無くて……あの本当に……そんな気がするな、くらいのもので……」
「何でもいい。言え。さっさと言え」
ええいハッキリとしない。神経が苛立つ……。
「言うだけいえ。貴様の思っている事が合っているかどうかなどどうでもいい。それが合っているかどうかを判断するの貴様の仕事ではあるまい!」
「い、いえそうなのですけど……」
「――いや、ゴルゴーンさんの言うとおりだ」
そのまま苛立ちのまま掴みかかろうとしたところで、マスターが間に割って入る。睨みつけようとした所で、視線で促される……言われる迄も無く分かっている。だが、しかしながら。
キャスターの話を聞くのは、苛立つ輩を焼き尽くしてから、時間が出来てからでも構わん。私とした事が。感情のままに暴れるなど。下らん真似を。
『紫式部。これは天才の個人的な忠告ではあるけれど、どんな可能性でも言わないよりはマシだと思うよん』
「……」
「ウチには良いブレインが付いてるんだから、分からない事が在ったら投げる。それくらいで、取り敢えず幾らでも使い倒してやろうじゃないか。な?」
『うーん何と堂々とした酷使宣言。まぁ君達のバックアップの為に居るんだから良いんだけどね。別にさ』
そうだ。この程度の事で心動かされず、あんな下らん輩共は、我が手で軽く焼き払う。苛立つなど、それこそ向こうの思惑に乗るようなものではないか。この私が。たかが人間風情の率いる群れに。
人間共が私を恐怖し、怯え、竦む。感情に振り回され、逃げ惑う。それこそが正しい姿なのだから。乱されるのは私ではない。貴様等だ。感情が高ぶってくる。黒いカカシ共に向けて、砲口を向け……
「――苦しむがいい」
解き放つ。束ねられた魔力が無数の一閃となって、襲い掛かる。
勘違いをしていた。一匹一匹を叩くのではなく。力づくで広く広く薙ぎ払う。狙うなどとまどろっこしいマネをせずとも、私の全てを注ぎ込んで破壊してやれば、自ずとその中に亡骸も転がっているだろう。
無駄に全てを破壊するまでもない。あくまで周りに結界でも築くかのように。狙った範囲を確実に制圧する。
その程度の事が私に出来ぬ訳が無いだろう。
「――どう、いけそう?」
「はっ、誰に物を言っている。また一人……焼き切れたわ」
「はえー。うっわ、なんだこの攻撃。レーザーネットって奴? 逃げ場ねー」
そうだ。網の様に、我が魔力を立体的に組む。檻のように、だ。そこから逃げようとする輩を、更にもう一本の格子でも追加して、焼き尽くしてやればいい。
「いやー上手いな。藤丸達の所まで行かない様にやってる」
「ふん、サーヴァントとしての最低限の仕事をしてやっているだけだ」
「オーライ……じゃあまぁ、チョイとしたサポートでも」
――ふと、感覚が冴え渡る。黒い奴らの動きが、今まで以上にしっかりと感じ取れた気がした。恐らくは、今なら奴らの動きを先読みして、焼き払う事も難しくは無いだろう。
とはいえ、私がやった訳ではない。可能性があるとして……ちらと隣を見れば、ニマニマ笑うマスターの姿が、目に入った。
「……何のつもりだ?」
「マスターとしての仕事って奴。さ、ダ・ヴィンチちゃんの解析結果が出る前に終わらせる為にも、存分にどうぞ!」
やれるだろ? とでも言いたげな顔だった。
「良いだろう。精々利用してやるとするさ」
そんな生意気な顔をされて、流石に苛立つかと思った。だが。寧ろ僅かに愉快な心持になった気がした。ほんの一瞬だが。
恐らくはそんな事は無い。ただの気のせいだとは個人的に思う。だが……それが気のせいだとしても。
悪くはない。これが、マスターを利用し、マスターが利用する。私の想定した関係だとするのであれば。多少のやる気を出してやるのも……良いだろう。
「やるぞ、マスター」
「オーライ。初めての共同作業と行こうか」
某クロスブーストのプロヴィデンス〇ンダムのアレみたいな感じです。