FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第三十三章・裏:ドラゴン狩りのハゲ

「私は、此方の陣を構築しておきますので、お二人共。お願いいたします」

 

 ――キャスターが、ドレイクに頼まれて船の周りの野営地の結界等を構築する事となって、マスターと私は一旦離れて狩りを再開する事となった。

正直な話をすればあの白い女神とクマを見ていたくも無いというのがあった。

 

『あら? 貴女って――』

『……いやいやいやいや女神女神女神、ダメだ、ダメだぞ俺―』

『って何を見てるのかしらダーリン♡』

『あ、いえ!? あの、人外サイズから繰り出される規格外おっぱいとか全然、全然見てませんからブギュウ』

『もーまたよそ見してるー! おっぱいなら私だっておっきいもん!』

 

 あんな吐き気がする程に甘ったるい雰囲気も、何もかもが嫌だったというのもある。後、姉上となんだか気まずい。

 

 という訳で、こうしてマスターと一緒にこの島を巡っている訳なのだけれども。この男と二人きり、というのも初めてか。思えば。

 隣のマスターは、酷く飄々としているばかりだ。破壊された船を補修する為の素材はそれなりの相手から入手する。そんな奴を狩る時も『ダーマッ!』等と気勢と奇声を上げて楽しそうにやっていて。

 船でサーヴァントの弾丸に晒されたばかりだというのに。呑気というか……危機感が欠如しているというべきか。

 

 しかしそれは、この男が。あの海賊の凶弾から姉上を守ったが故のケガではある。この男の油断の所為かと言われれば、些かと違う。

 寧ろ、姉上を助けてもらった事に関しては。

 

「――船での事、感謝する」

「しなくていいよ別に」

「……」

 

 ……不思議な感覚だった。

 姉上を必死に守った男に礼を言うなど。昔ではあり得ぬことだった。寧ろ冷ややかな目で見ていた事すらあった気がする。いや、姉上がどうでも良かった、とかではなく。

 

 姉上を命がけで守る、とほざいていた輩共は、姉上の美しさに見惚れ、半ば洗脳されるように無理矢理動かされていた事もあった。

 島に流れ着いたならず者共を我先にと駆逐するその姿に、死骸に集る蛆虫を見る時にも似た嫌悪感を感じる事すらあった。

 だが……

 

「それよりも、ドラゴンをガンガン刈らないとね。仕事、仕事」

「……あぁ」

 

 この目の前のマスターが姉上を助けた時。この男は、最後に私を見て親指をビッと立てたのだ。大丈夫だ、とでも言いたげなその表情は、まるで変わりがない。苛立ちを覚えはした。したが……しかし。だ。それよりも大きかったのは。安心、というか。

 以前と変わらずイラついたのが、寧ろ安心させられた。この男は、姉上の美しさに狂わされて体を張った訳ではないのが、分かった気がして。

 

 姉上が守られた、という事から来る安堵も当然大きかったが、それだけでは無かったようにも、個人的には思う。

 

「所でさ」

「なんだ」

「良いの? お姉さんと一緒に居なくて」

 

 ……うむ。こんなデリカシーの欠片も無い原人の様なマスターだからこそ、多分姉上の魅力も全く通じなかったのだろう。女人に興味がないのか。それともそもそも姉上に興味がないのか。

 

「……こんな醜い姿を姉上の前で晒せとは。随分とサディストだな、マスター?」

「いや俺は現代的な感性持ってるから言うけど、カッコ良いと思うよ。ゴルゴーンさんは真面目に」

「カッコいい、か。女に向ける誉め言葉ではないな」

「今は女性を表す言葉として最上位に位置する言葉なんだけどなぁ」

 

 まぁ何れにせよ。

 マスターの言葉は特に何か気遣ってのものではないだろう事は凡そ分かる。というよりは言葉以上の意味を持っていない、というべきか。行かなくていいのであれば、それで良いのだろう。この男は。

 ならば、もういい。今は考える必要も特にないだろう……となれば、気にするべきは其処ではない。今、気にするべきは。

 

「ま、それでいいならドラゴンの素材集めに熱中しようか、ゴルゴーンさんとワイバーン共じゃ格が違う。楽勝楽勝」

「当然の事を言われても大してうれしくもないが」

「気楽に行こうって話だ。んじゃあまぁ……やろうぜ!」

 

 周辺から来る殺気に対応すべきだろう。

 拳を鳴らしたマスターの動きに反応したのか、茂る森の草葉の中から、翠の色の化け物共が飛び立つ。

 空を舞い、天を回って叫ぶ者共は、蜥蜴にも似て鱗を持ち、しかしながら蜥蜴は持たぬ鋭い角と、天翔ける為の広い翼を、持っている。そして、天からゆっくりと此方に向けて降りて来て……甲高い鳴き声を上げながら我々の周りを取り囲んだ。

 

 名を、ワイバーンと言う。

 

「ふん……随分な数だな」

「まぁそれなりの素材にはなるんじゃないかな」

「ふん。我々が欲しているのは竜種の素材であろう。亜流の細やかなそれ等、どれほど役に立つものかな」

「無いよりはマシでしょうよ。ヨシ、やってやろうぜ!」

 

 マスターと共に探して居た、獲物の一つだった。

 

 

 

「しかし、これどうやって運ぼうかね」

「私はやらんぞ」

「やらせないよ。後で海賊連中に頼むしかないかなぁ。まぁ、ドンドン叩いて落として、で良いんじゃないかな。取り敢えずは……ってぇ、しかし、此奴ら硬いなぁ」

 

 数はそれなりに居たのは、確かだろうが。しかしながら。私を相手にするには余りにも弱い手勢である。所詮、真に竜と呼べる類と比べれば、単に飛べるようになった蜥蜴でしかなく。人間にとってはそれなりに硬い鱗だろうと、私に貫けぬ道理はない。

 強いて言うのであれば、赤い色をした奴が僅かに硬くはあったが……それでもまぁ、ある程度である。こんな輩共でも、数さえいれば船の素材になるのだから人間共の小細工には驚きを覚える。

 

 いや……今、それ以上に気になったと言えば。マスターの方か。

 

「まさか、ワイバーンに拳で殴り掛かるとはな。勇敢を通り越して、蛮勇ではないか?」

「舐められたら負けだと思ってるもんで。ボロカスにしてやった」

「拳がボロ雑巾になりかけているではないか」

「叩き落してやるのに必要な犠牲だった訳であります」

 

 私がワイバーンと戦っている間、一匹程マスターの方に逃れた。殺されぬようにだけ注意しろとは言ったが、しかし。マスターは逃げるよりもまず、寧ろ角を生やして突っかかって行ったのだ。

 まさか素手で殴り倒しに行くとは思わなかったのだが。気が付いた時にはワイバーンが一匹、地に伏せていたので、やりおおせたのだろう。拳から血を流しながら。棒切れの一本も拾わず。

 

「……マスター、結局貴様、あの生えていた角は一体なんなのだ」

「ん? あぁ、アレ。なんだろうね。俺の血に流れてる……モンスターの力?」

「何故首を傾げる」

「俺も分かってないのよ。アレが何なのか。まぁでも今の所は、悪い影響は出てないから大丈夫じゃない、かな」

 

 神秘が強い、とは思っていたが。しかしながら。成程、化け物の血を引いている、か。そうなると。少し、口の端に意地の悪い笑みが浮かんだ。

 

「――なんだ、存外似合いの召喚者だった、という事か?」

「ん?」

「貴様は化け物の血が混ざった半端者。私はいとしい姉妹すら喰らい尽くした正真正銘のバケモノだ。互いにロクでもない存在ではないか?」

 

 ――私としては、マスターの顔が苦く歪むのを想像していた。

 多少、マスターが気安く話しかけて来てるのを見て、牽制代わりの一発だったというのもあった。利用し、される関係というのを変える積りは、あまりない。であれば、この辺りで少し、強めに。それで思う通りの顔が見れれば、多少愉快な心地にもなる。

 しかしそう思っていた……私が見たのは。

 

「――そう、だな。うん。似合いなのかもしれねぇな」

 

 私の方を見て。ほんの少しだけ寂しく笑った、マスターの顔で。

 この男が浮かべるにしては、些か以上に似合わぬというか。私が見ていたものとは、全く別物の顔を、見たのだった。

 




ドラゴン狩りの男! ス〇イダーマッ!!
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