FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
――作戦は、こうだ。
此方が遠距離から派手に攻撃して目を引いている間に、裏から回り込んだオリオンとアルテミスさんが敵船を搔き乱す。単純だけど、強力な射手が居るからこその策。
後は、此方に乗り込んで来る奴らにどう手出しをさせないか。この前のように、船を敢えて揺らされたら、どうするのか。
別に此方も、何もしてこなかった訳じゃない。
「乗り移ってきた連中から即座に叩いて! マシュは広く雑でも良いから! リリィは確実に一人ずつ! 頼むよ!」
「はいっ! マシュ・キリエライト、薙ぎ払います!」
「お任せください! やぁああっ!」
「「――っ!」」
船の上での戦いの難しさだって、マシュとリリィは嫌というほど分かったし。ダ・ヴィンチちゃんやロマニが、その戦いについて分析もしてくれた。
何も分からず、押し切られそうになって、ギリギリで逃げ出した、前とは違う。
俺だってどうやって戦うのかも、考えた。
即ち……相手のペースに嵌らない事。足場が不安定でも向かってくる相手にはガンガン攻めてやる事。要するにエイリークがやっていた事の猿真似だけど。やらないよりはずっと、ずっとマシだ。
カルデア最強の盾、マシュが豪快に盾を振り回し、敵の態勢の崩れた所に飛び込んだ
「――船の防衛は藤丸に」
こんな風に倒しても……相手は、相も変わらず此方にシャドウサーヴァントを送り込んで来る。
一足飛びに船の間を飛び越えて、何人かが海に落ちようと、船に張り付けば這い上ってくる。まるで船に取り付く悪霊の様な奴らだ。
この前も、こうやってひっきりなしに船に入ってこられて、体勢を立て直す暇すら貰えずボロボロにされてしまったのだ。更に言うなら、向こうの船の砲撃の威力だって全然変わらない。
「そんでもって、こっちからの攻撃は俺担当だ。お二人共。狙いは付けなくていいから兎も角数を頼むぜ」
「言われずとも。一々細かく狙いを付けるような真似は得意ではない」
「えっと、威力等も考えない方が良いでしょうか……」
「威力は考えて!」
でも。今回は、前と違ってこっちが強くなってる。
船の頑丈さも何もかもが違う。戦うと分かっていて、準備が出来ているならこっちだってやりようはある。シャドウサーヴァント達の動きに惑わされたりはせず、兎に角上がって来た奴を叩く。攻撃は最大の防御だ。
船の上の仲間を守る事に徹すれば、後は仲間が成果を出してくれる。
砲手を担当するのはエウリュアレだけではない。ゴルゴーンさんと式部さんが無数に弾丸をばら撒く。と言っても向こうにとっての最大の明確な脅威は、エウリュアレの放つ矢なのだが。
「ぎゃっ……」
「――ッ!」
「苦しむがいい……!」
なの……だが……
「船長! あんなのが居たら、悠長に撃ち返しても居られませんわ!」
「アンだけにってな! あ、すみません銃口此方に向けないで……それにしてもまぁわーお無差別ゥ……やっぱあんときにエウリュアレちゃん仕留めらんなかったのは痛かったですなぁ……コレ」
「ハ ハ ハ ハ ハ ハ ッ!」
いやそんな事は無いのかもしれない。
ゴルゴーンさんが放つレーザーだったり、ぶっといビーム砲だったりは、甲板に居並ぶシャドウサーヴァントや船員等、結構な人数を薙ぎ払ってる。エウリュアレの矢の当たる割合とか見てると、意外にもこっちの方が向こうへの脅威なのかもしれない。
というか、式部さんの術をも巻き込んで叩き落してるせいで若干威力が落ちてる気すらする。凄い勢いだ。
「全く、メドゥーサったら。傍に居たら巻き込まれそうね……アステリオス」
「う」
「おい貴様。なぜ私と姉上の間に挟まる。そのような事はしない。やめろ。私を何だと思っているのだ貴様……あの、いや、姉上。そのようにどうして露骨に私から、あの、あの下姉様……」
いや、でもエウリュアレが距離を置こうとしてしまうのも分からないでもない。全てを飲み込む勢いで攻勢、前のめり。粉砕し破壊し焼き尽くしてやると言わんばかりのゴリゴリ具合。
そりゃあ海賊の皆様にとっちゃ気楽に勝利の女神と騒げるが、ゴルゴーンのパワーを考えると……とカルデアのメンバーも思ってしまう程の爆発的な勢い。凄い、凄いのだが。確かにちょっとお姉さんの気持ちも分かってしまうのが、哀しい。
「あのっ! お二人共!」
「式部さんだけに重責負わせないでねーお二人共―……」
……まぁ、その混乱の割りを喰ってる人がいるんだけど。という事で。
エウリュアレは仕方ない、とでも言いたげに。ゴルゴーンさんは一瞬顔を顰めながら……実際式部さんは必死こいて術をばら撒いて必死に戦線を持たせていたので。そりゃあ文句も言えないだろう。
「――そろそろだと思うかい?」
「どう、なんだろう……アルテミスさんが大暴れしてから大分経ってる気はしないでもないけれども」
「だね。一応、何時始まってもいい様に、腹に力入れときな」
「はいっ!」
今の戦いの、何が凄いかと言えば……これだけのド派手な攻撃が、陽動にしか過ぎないという所か。ゴルゴーンさんの攻撃だけでも削り切れそうだと思ってしまう位だというのに、それですら相手の目を引く為の大きな花火で。
作戦が上手く行くかどうかは、先行して乗り込んだアルテミスと、オリオン。この二人こそが握っていたりするのだ。
「――船長さーん! 準備できたわよー!」
――等と、思って居たら。どうやら完了したらしい。
「っしゃあ! 総舵手、取り舵一杯! 角度をつけて、衝角で土手っ腹食い破るよ!」
「あいよ、姐御! 取り舵いっぱぁああああい!」
ぐるりと船が回る。アステリオスが、セイバーが、マシュが、各々の獲物を構え……そして俺も、立ち上がった。此処からは、俺達のターン。こっちに向けて歩いて来る康友に顔を向け、同じく康友のいた方向、相手の船へと、つま先を向けた。
「選手交代。派手に暴れてこい」
「任せろ! マシュに変態行為をしてくれやがった借りは、必ず返す!」
「その意気だブラザー。とはいえあんまり前に出過ぎて、巻き込まれて重傷とかは止めろよな? 俺じゃあないんだからさ」
「それ、自分で言うか普通」
少し言葉を交わしてから……パァン、と互いの手を掲げ、打ち鳴らしてバトンタッチ。その直後……赤い焔が、黒髭の船から立ち上る。
アルテミス、ゴルゴーン、エウリュアレ、紫式部。四人のサーヴァントの全力の遠距離攻撃の影に隠れ、オリオンが船の内部に潜り込んで、ある一点に火をつける。そこは文字通り火が点けば爆ぜる、火薬庫。
爆発と、アルテミスの攪乱で、これ以上ない程に混乱した状況下。
トドメは、この前黒髭の船によってボロボロにされてしまった『黄金の鹿号』が、自分の手で。刺す。
「突っ込みなぁ! 『黄金の鹿号』!!!」
――ド ゴ ン
事前に覚悟して踏ん張っていたとはいえ、それでもしっかりと揺れる位には来る、ラムアタックの衝撃。しかしその威力をより強く体験したのは、こっちではなく、当然ながらブチかまされた向こうの方だ。
相手の船が宝具だとしても、同じく聖杯の魔力で強化され、更に竜の鱗で覆われた衝角での突撃だ。明らかにダメージを受けているのが見て取れた。そして。今なら……此方から、相手の船に乗り込んで行ける。
「さあて、掠奪開始だ。乗り込むよ、アタシの頼れるアホウども!」
「うぅぅぅぅぅう!!」
「アステリオス、行きなさい! ――メドゥーサ、アステリオスが居ない間、しっかり私と船を守りなさい。良いわね?」
「分かりました!」
船で暴れられるクロスレンジの猛者たちが、今度は遠距離担当に代わって黒髭たちの元へと討ち入る。船を守るのは、康友達のパーティだ。
「セイバー! マシュ! 行こう!」
「はいっ!」
「マシュ・キリエライト。盾ですが、切り込みます!」
この前、してやられた分。
倍くらいに頑張ってやるから、覚悟しろ。黒髭!!
ゴルゴーンさんだけで行けるんじゃと思ってしまったのは内緒。