FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
――黒髭は、嘗てメイナードという男が率いた、イギリス海軍の奇襲を受けた。
何十人といた部下は十数人程度まで減り、嘗ての栄華は見る影もない程に陰り、最早終わりの鐘の音は響いていただろう……しかしながら。それでも尚、彼は仕掛けて来た海軍に立ち向かったのだという。圧倒的な戦力差も全く気にせずに。
憤怒の表情を浮かべた彼は、そこから恐ろしい大暴れを見せた。多勢に無勢という言葉を覆しかねない程の大暴れをして見せた。
結果。二十五の刀傷と、五発の弾丸を体に刻まれて尚、メイナードの部下の多くを道連れにする程に彼は暴れ続け……最後には首が切られようとも彼の体だけが船の上を歩き回って、そして果てたのだという一節すらある。人であったというのに、彼はまるで怪物のように恐れられた。
「――オラオラオラオラァッ! チミ達は拙者を怒らせたぁ!!」
「威勢のいい割には後ろに下がってばっかりいるんじゃないよお前ぇ!」
「え、だってBBAが怖すぎますし……」
……目の前の男がそんな物凄い人物に、俺からは到底そうは見えないのは、どうにも目の前の男が真剣に戦っている様には見えないからだろうか。
「それよりBBA。ワタクシにばっかり集中してはいけないのでは? 船にドンドン拙者のお仲間が乗り込んでパーリナィッ!」
「はっ、船には護衛は残してる、問題ないよ、おら死ねっ!」
「どぅわっ!? ととと、危険危険。そうでちゅか……ま、拙者もそんな事で隙見せられて負けられても拍子抜けですし」
しかし、真剣に見えなくてもその動きは機敏で、そして実に目敏い。ドレイク船長の放つ弾丸を躱す動きは、地を這い、体を投げだす泥臭い動きだが、しかし計算された動きなのだ。隅に追い込まれない様に。
今の弾丸も、空を切って、ロープの結び目の一端を切り飛ばすに終わってしまう。
もし躱せないタイミングだったとしても……そういう時には、時には冷静に誰かを盾にして避ける。いや、避けられないタイミングの時には、誰かが近くにいる様に動いているだろう。盾に出来る様に。
「あ、そこですぞ空気砲ドカーン!!」
「っ!? ……外れだっ!」
「いや今の躱すとかどんなチート!?」
「はっ、同じ屑同士だからねぇ。何処を狙えば『キツイ』かってのは分かってる」
「それに合わせて動いたって事ぉ!? うぅん海賊という言葉の意味を考えさせられたくなる大活躍! RPGの主人公か何か!?」
ドレイク船長は、足元を狙って相手の態勢を崩してから本命を打ち込む。そんな搦め手を上手に使いながら戦っているのだから凶悪。しかし。
その間、ドレイク船長の攻勢を本当に僅かな合間を縫う様な動きが出来る時点で怪物なのに、反撃で弾丸をぶっ放してくるのだ。英雄というのはどれだけ規格外なのか。分かる様な戦いだ。だが……
「はっ、まぁウザったいそのやり方を取れるのもそろそろ最後だ」
「いやーBBA明らかにセリフが悪役ゥ!」
「船員を盾にしてるそっちの方が悪役だろうが」
「あ、これは船員って言うかマジに優秀な木偶位の感じなので……別にどうやって使い潰しても良いですしおすし。それに、意外とまだまだおりますぞ。黒子君達。ほれほれBBAの後ろとか」
「……っち、本当にウザったい!」
先ほどから、船員を盾にするやり方をしているというのに。ドレイク船長がそれを特別に咎める事もない。マシュは、最初に黒髭がシャドウサーヴァント達を盾にしたときなど悲鳴を上げかけたのに。
黒髭も黒髭で、当然と犠牲にしたシャドウサーヴァント達を、まるで伏兵のように運用したりもする。先ほど、撃たれたと思ったシャドウサーヴァントの一人がゆらりと立ち上がって後ろから切りかかろうとしていて……ドレイク船長がすんでの所で額を撃ち抜かねば切り裂かれていたかもしれない。
「硬い船員共だねぇ」
「命令にも忠実ですしな」
「だからってこんな無茶同然やり方させんなドサンピン」
「海賊が無茶せずにどうするんですぅ~?」
ドレイク船長は、まるで
目の前で広がっているのは、まさに海上と言う自分達のテリトリーの中で、互いに食い合って只管に生き残り続けて来た『仁義なき者同士』の地獄のような争いなのである。
「っ……ドレイク船長!」
「任せる!」
「――分かりました!」
黒髭を相手にして、あそこ迄戦えるのはドレイク船長くらいだと思える戦い。故に……此方の方は、全面的に此方が引き受けるしかない。
「ったく……こんな真っ直ぐな剣を振るわれたらおじさん眩しくて目が潰れちまうよ」
「そう言う貴方の槍は、なんだかやりにくいです!」
「まぁそう言わせてこそのおじさんの槍捌きなもんで。いやでも、厄介だねぇ盾持ちと組んでる剣士の相手ってのは」
「お褒めの言葉と……受け取りますっ! リリィさん!」
「はいっ!」
特に、あのランサー。
先ほどから、リリィが攻めて攻めて、攻めて。マシュに防御を殆ど任せた強引な攻勢で兎も角相手に主導権を渡さない、そんな戦い方をしている。一見、二対一で、しかも攻め立てているリリィの圧倒的有利にすら見えるのに。
そうじゃない。
リリィの攻撃はさっきからランサーに全く届いていない。まるで木から取れた木の葉でも殴りつけてるみたいに。するりと抜けていく。どんなに攻めても、気が付いたら一歩間合いの外にいたり、攻めてるリリィの側面を取ってたり、だ。
確かにランサーに手出しをさせない程に、攻撃は出来ている、のだと思う。ランサーの顔も、余裕がある様には見えないし。それでもごく稀に……先ほどのようにドレイク船長を狙って不意打ちしてきたりすらするのだ。
「……メアリーとアンの海賊コンビを倒して、少しは状況が良くなると思ったけど」
とんでもない。
黒髭、そしてあのランサーが残っているだけでも、黒髭は未だ落ちない。船長としての力量もそうだけど。伏兵を配置する位置だって、絶妙だ。策略家としても間違いなく一流である。
「ああもう、チマチマしたのはもうやめだ……ケリ、付けようじゃないか御同輩!」
「お、BBA怒っちゃった? 激怒? 大激怒?」
「――いいや、それ以上に頭は冴えてるさね」
だけど。そんな敵に相対して尚。そのどうしようもないと思えるような所に壁を開けるのが……フランシス・ドレイクなのだという。
どんな相手であっても。勝ち目も、負けの目もぐっちゃぐちゃにかき混ぜられるこんな混沌の中でも。勝利と言う星を手繰り寄せる。それこそが。
『星の開拓者』なのだと。
「――オォォオッ!!」
直後、ドレイク船長の後方で上がる雄叫び。囲まれていたアステリオスがシャドウサーヴァント達を力で無理矢理押しのけたのだろう。そこにドレイク船長は目を向けた。
「はっ、そりゃあデカい油断ですぞォっ!」
「油断だと?」
直後、不意打ち気味に黒髭のカトラスがドレイクに襲い掛かる。先ほどまで、全く見せて居なかったその武器。寧ろ、こんな大きな隙を突いて切りかかる為に取っていたのだろうか。兎も角。
剣を持って、獣の如く躍りかかる黒髭相手に、しかしドレイクは……コレが油断に見えるのかと。
「此奴は……誘いってもんさね」
「っ!?」
これは、お前を討ち取る為の罠だと。
後ろに向けて跳んだドレイクがその手に掴み取ったのは……シャドウサーヴァント達の手から弾き飛ばされた黒い刀。アステリオスとの力の差を見せ付けられた証。そして……もう片方の手には、先程、間違って穿ったロープの端。
飛んだ勢いで、ぐいと自分を揺らし、そしてそのまま振り子の如く……
「――いやー、コレが、ヒーローってやつかぁ」
「チェストォォォォオオオオオッ!」
勢いに乗って。空を飛び。
紅い流星となって……その剣を、黒髭の喉元へと突き立てた。
ドレイク船長なら何でも『成程!』で済まされそうな星の開拓者とかいう素敵スキルホント好き。