FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第三十九章・裏:ヘラクレスを討て

 『契約の箱』の元まで彼女、エウリュアレを運ぶ役割は、誰が担うのか。

 ヘラクレスを足止めする等、それだけでも難題であることは間違いない。そこはサーヴァントの皆に任せるしかない訳で……では、それを誰がやるのか? 康友の言っていた事を考えて、此方にも思いついた事があった。

 

 アイツがアルゴノーツを仕留めるなら、こっちは『ヘラクレスを引き受ける』。ヘラクレスと言う絶対的な脅威を討ち取るのは、彼を除くアルゴノーツ全員を打ち倒すのと、同じくらいに苦しい。

 イアソン含め、メディア、ヘクトール。彼等を侮っている訳じゃない。けれどアステリオスとゴルゴーンさんの二人がかりで、漸く均衡……それも、最終的には一時的な誤魔化しにしか持ち込めない、袋小路に持ち込めただけの、大英雄ヘラクレス。彼の実力を軽く見積もる事は、絶対にしちゃいけない。

 

『ヘラクレスは、ただ一つで全てを覆し得る()()である』

 

 その前提で動くなら。此方もカルデアの全てを賭けて戦う。当然、俺の命だってかけなければいけないと思う。

 

「ほらほら気合入れて走りなさいな! 追いつかれたらそれこそ終わりよ!」

「い、幾ら皆が足止めしてくれてるからっていって……しんどい……!」

 

 にしたとしても。後ろからあのゴツイマッチョな神話の英霊様が追いかけてくるって言うのは迫力が物凄くて若干自分の判断を後悔しても仕方ないと思います……等と思いながら、足が棒になりそうな状態で走っている。

 敵のマスターと、生贄にする予定の女神が揃っている状態だ。あからさまな罠だとしても、向こうがヘラクレスを持っているなら、乗ってくる……という算段だったのだが当然のように乗って来た。流石アタランテさん。向こうの船長の性格を良く分かってる。

 

 後は、自分が逃げ切るだけなのだが。まぁそう簡単にはいかないのは、先程後方から聞こえてくる轟音が遠ざかっていない事で凡そ分かってしまう。後ろで、サーヴァントの皆が足止めをしてくれているから心配ない……と、気楽には言えない。

 歴史に名を刻む英霊たちが束になって、それでも足止めが精一杯なのだから、とんでもない。コレがヘラクレス。英雄たちの頂点の一角。

 

「……契約の箱まで、もう少し。でもヘラクレスも、あと一歩の所まで来ているわね」

「コレが大英雄ヘラクレスって事か、肌身に染みるなぁ!!」

「どう? 震えて来た? 大英雄の威光に」

「……いいや」

 

 それでも。

 もし、怖いと思っていても。怖いとは表には出さない。もし表に出したら、それは周りに伝わるから。腹をくくって、歯を食いしばって、走るしかない。

 

「怖くはないよ。大丈夫」

「そう――良く言えたものね。その強がり」

 

呆れた、とでも言いたげな背中の女神様。俺だって仕方ないとは思う。こんなあからさまな強がり、呆れられても。でも仕方ないんだ。人類最後のマスターの片割れだから。ここで踏ん張らなかったら、カッコ悪い。

 

……別に、康友に張り合ってるとかじゃない。

 そもそもマスター業には、張り合うとかそう言う雑念を持ちこんじゃいけないのは、此処までの特異点を潜り抜けて分かってる。

 そんな事をする暇があるなら、俺達は前に進まなければいけないんだ。この世界を、自分達の日常を、嘗て過ごした現実を、取り戻すためにも。ここは、踏ん張り所だ。

 だから、頑張るのは当然なんだ。

 

 ――でも。

 ちょっとくらい、カッコつけても良いじゃないか。

 アルゴノーツを潰すって、アイツが不敵に笑って言ったなら。張り合う積りなんて無くたって、そりゃあこっちだって『やってやろう』って気になったってしょうがない。

 

 だからこの世界を取り戻すために、やれる事をやろうって言うのが、殆ど。でもほんの僅かだけ、男の子として、カッコつけたいという思いが混ざってる。その想いが――今、足を進ませている。

 

「でも嫌いじゃないわ。目を背けた訳じゃない強がりは」

「……女神様のフォローは効くなぁ」

「私がフォローなんてする訳ないじゃない。これは評価って奴よ」

 

 背中の温度を、頼りに走る。

 今、マシュが。リリィが。ダビデが。アタランテが。オリオンとアルテミスが。この特異点で力を貸してくれた皆が。戦ってくれている事を、この温度で思い出す。俺は、最も大切な役割を負っているのだと、思い出す。

 

「――さぁ、見えて来たわよ」

「アレが」

 

 そこに見えてきたのは、細長く、装飾のされた……正に『豪華な箱』と呼ぶのが相応しい物。だけど、その豪華さとは裏腹に、なんだか見ているだけでも寒気がしてくる。コレが、触れれば死ぬ、災厄の箱なのか。

 

「で、後ろも来てるわよ」

「――えっ?」

 

 しかしそれを頭に入れる間もなく、振り向かされた。

 入って来た入口の方向から、それは此方に向かってきている。闇より浮かび出る巌の如き筋肉。真っ赤に輝く瞳。響く轟音の様な足音。なんてこった、アレはヘラクレスって奴じゃないか!

 あの五人の足止めを突破して来たのか。想定してたとはいえ、実際見ると馬鹿なのかと思ってしまう。彼一人で、本当に聖杯戦争全部勝ち抜けてしまう。

 

「悠長に止まってる暇は無いみたいね」

「分かってる……じゃあどうすればいいんですか!」

「飛び越えるのよ。生を掴み取る為に。死を」

 

 そう言って、肩を越えて手が伸びる。指差す先には、死を具現化する宝具に他ならない『契約の箱』。成程、死を乗り越える、と言うのを物理的にやれという事だろうか。随分と無茶を言ってくれる……けど。

 

『――アルゴノーツは俺達で仕留める』

 

 俺達と同じくらいの無茶をやろうとしてる一人のマスターがいる。

 向こうは頭数は同じ、こっちには圧倒的に戦力を裂いて貰っている。これでヘラクレス相手にビビりあがってしくじりました、なんて。口が裂けても言える訳ない。

 少女を、地面に降ろし……共に走り出す。その一瞬で、大分距離を詰められたのが音で分かった。それでも。

 

 振るえない様に足に力を込める。大きく踏み込んで、つま先で地面を蹴り飛ばす。目の前に触れれば終わる箱が見えて――それでも、躊躇わない。

 

「いくわよ――1、2の、3!」

 

 アイツが行ったのだ。

 だったら俺だって止まらない。寧ろ、跳ぶ勢いで!

 

「「――っ!!」」

 

 足の下を過ぎていく『契約の箱』。足を出来るだけ高く、引っ掛からない様に飛び越得たとはいえ、プレッシャーは半端ない。

周りの景色が、スローモーションになっている様にすら見える。あぁこれ走馬灯って奴かな。メッチャ『死』が近いから。後ろも、下も、全部『死』だ。だったらもう、走馬灯なんかにビビってる暇はない――ただ只管、前に!

 

「――きゃっ」

「ぐっ……!?」

 

 地面に転げる。

 転げた、と言う感触がある。死んでいない。体は痛いけど……どうやら、乗り越えられたみたいだった。最後の関門を。

 

「ったぁ……ホント、女神にする扱いじゃないわよ」

「エスコートが下手で申し訳ない!」

「――でも、いいわ、帳消しにしてあげる。見なさい」

 

 自分が飛んで来た方向に視線を向ける。そこには……地下墳墓の通路の高さでも尚、頭が詰まるような大男が堂々と立っていた。

 決してどんな試練にさらされても負けないだろう、と言う迫力があった。実際に目の前の男は、無数の試練を当然のように乗り越えて、此処にいるのだ。

 

「ヘラクレス」

「分かっているのでしょう。それが自分を殺し得る物だと」

「■■■■■■……」

 

 後ろには、駆け付けたマシュと、リリィの姿。そして、ドレイク船長達も、後ろに詰めている。

サーヴァントが五人以上、地下墳墓の奥地で逃げ場も無い。流石にここまで契約の箱が近づいたならば……押し込めるだろう……と、言い切れないのが恐ろしい。相手は十二の試練を突破した大英霊、ヘラクレスだ。

この場をただ一人で切り抜けても、何の不思議もない。

 

「でも」

 

康友は、今アルゴノーツを、自分一人で襲撃してるんだ。

戦力の殆どを此方に回してるんだから、ここで負けたら顔向けも出来ない。今生賭けて根性入れて、今――特異点の、正念場だ!

 




リリィが居る分、難易度は下がっていると思いきや微々たるものな気がするヘラクレスとか言う怪物。
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