FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第四十三章・裏:霧の都から

「……うぇぇ……気分わるぅ……」

「全く、サーヴァント相手に啖呵を切っていた時とは大違いだな。マスター?」

「そう言われましても……マジで、ヤバイヤバイ……吐く」

「ろ、ロマニ様。これはどうすれば……!」

『取り敢えず礼装に多少の毒対策は施してるけど……それでどうにかなるかな』

 

 霧が有害である事は皆も承知していました。しかしお二人ともバイタルに異常も無いから、と言う事で……マスターが異常を訴え始めたのは、藤丸様と共にしばしロンドンを歩いてから。吐き気がすると、端的に言うと。

 

「さっきまで……普通だったのにぃ……」

「だ、大丈夫か?」

「お前は平気そうで羨ましいぜ……」

「ドクター、周辺に休めそうな建物は」

『ちょっと待ってくれ、今急いで探してるから』

「周辺の警戒はお任せください」

 

 リリィ様の構える剣の切っ先に絡みついて見える程に、余りにも濃密なこの霧は……濃密な魔力の霧なのです。常人が深く吸い込めば、その時点で卒倒してしまうほど毒性を持った。

 それを耐え抜いていたのが、仇となってしまった。

 

 ロマニ様曰く『耐性が変に高い』との事でした。

 マスターは、その血に眠る人外の血を目覚めさせれば確かに人間とは思えない程の力を発揮するのですが……逆に言えば、それを目覚めさせなければ、ほぼ人間と変わりがないのです。

 しかし只人よりはこういった物への耐性は高いので、暫くは持っていたのが、限界を超えた結果一気に反動が来たのではないか……との事でした。

 

「すまないのう……藤丸さん……」

「良いって事よ。っていうか、礼装起動させてもダメなの、ロマニ」

『これに関しては蓄積したのが噴出した形だから、能力発動させて一気に体調が回復、なんて事は無いね。霧が入ってこない所で静養するしかない』

「うぐぐ、いきなり足を引っ張る形に……」

 

 特異点においてここまで出鼻を挫かれたのも、意外と初めてではないでしょうか。非常に哀しそうな顔で私の肩に寄りかかっています。

 

『うーん、これは先ず当面の活動をする為の拠点的な所を探さないといけないかな』

「俺の事はいい……先に進め……」

『いやマスターの君を置いて先に進めないから。戦力半減しちゃうから』

「つったって、あの……人形共……が……霧に紛れて、急に現れるとか……」

 

 そして、脅威は霧だけではありません。

 先ほど戦った――機械の人形。霧の中を徘徊しているその人形は、此方に明確な敵意を持って襲い掛かってきました。このロンドンに置いての初めての明確な敵性反応。

 彼らは、霧の中から不意打ち同然に襲い掛かってくる。

 

 それらを考えて――

 

「……全く、苛立たしいが……仕方あるまい」

「……マジで、ごめん……」

「喋るな。余計に体調でも崩されれば困るのは此方だ」

 

 弱ってしまったマスターを運ぶのが、ゴルゴーン様。

 マスターの調子を確認しつつ、おまじない程度の治療を施すのが私です。本当におまじない程度で、ちょっと吐き気を軽減するくらいしか出来ませんが……

 藤丸様達は、周辺の警戒及び、我々二人の警護を担当して下さるとの事で。

 

『――敵性体の反応、今の所無し』

「頑張れー」

「……申し訳ない……うごぉおお」

 

 マスターは、ゴルゴーン様の髪に咥えて持ち上げられて、ぶらぶらと揺られています。それが悪影響を与えないのか……と思ってしまいますが、しかしながらマスターを安全に運ぶにはコレが一番と言う結論ですので、致し方なく。

 万が一、襲撃を受けた場合には、ゴルゴーン様がマスターを咥えたまま逃走する手はずになっています。

 

『しかし、さっきの騎士……っぽい子を追いかける積りだったのが、この霧のお陰で思わぬ足止めを喰らっちゃったね』

「いやホント申し訳ない……」

『いやいや君を責めてる訳がない。寧ろ僕としては責められないさ。こんなレベルで危険な場所だったなんて、もうちょっとこの霧を調べて、影響を考えておくべきだった』

 

 そして。もう一つ。

 先ほど、マスターがダウンする前に出会った、全身甲冑の『騎士』。

 黄金の髪と碧眼が印象的であった彼女が、この特異点について何か知っているのではないか、と。情報を求めて本来は追いかける積りだったのですが……その直後にマスターのダウンです。

 それでも、もしやすればその騎士もこの先に居るかもしれない……彼女を見つけて追いかけるようになった時は、マスター一人を置いて行って、迂闊に叩かれる事もない様に、とも考えて。

 

『まぁこの先にいるかもしれないし。運が向いている事を期待しよう。それよりも……』

「ロマニ、本当にこっちで良いの?」

『うん。今の所、空き家が多そうなのはこっちだ』

 

 さて。

 ここから如何にしてマスターを保護しつつ、特異点を突破していくのか。ロマニ様が提案するには、先ずは大通りに乱立する家屋の一つを確保しよう、と

 やり方は……大変心苦しいのですが、犠牲の出てしまって、結果として放置されている場所も幾つかある、との推測から、そこを使わせてもらおうとの事で。

 

「良さそうな建物って、ありそう?」

『やっぱりサイ……人数的に! 入れそうな所は結構限られてくるから!』

 

 一瞬言葉に詰まったその瞬間、ゴルゴーン様の眼光が鬼の様に鋭くなったので、ロマニ様が何を言おうと考えていたのかは分かってしまいます。特に私から言う事は無いので黙っております。

 一つ言えるとすれば、私も女性ですので何方の味方と言えば、恐らくお分かりになるかと思います。はい。

 

 隣を見れば、首をかしげていらっしゃるマシュ様と、笑顔の――その細めている奥の目が笑っていないのは余りにも分かりやすい――リリィ様がいらっしゃいます。リリィ様は私のおっしゃりたい事が分かっているのかと。

 

『……申し訳ない』

「どしたのロマニ」

『なんでもないんだ……』

 

 ――と言う事で。改めてロマニ様が指し示したのが、船着き場傍の工場……船を収める倉庫らしきものもあるとの事で、一旦そこに身を隠そうとの事でした。

 

『大所帯でも、何人でも入れるくらいは大きいから、ね!! ね!!』

「そうだな」

「そうでございますね」

 

 特に何も言ってはいないのですけれども……さて。

 ロマニ様が非常に頑張って探して下さったその場所はまだまだ遠く。まだしばらくマスターはゴルゴーン様の髪の先で揺られる事になりそうです。

 気を緩めない様に。

 

「――あの、ロマニ」

『スイマセンリリィさん! もう、もうデリカシーに欠けた発言はしませんから!』

「いえ、そうでは無くて……大所帯っていっても、あの数も受け入れられそうなくらいでしょうか」

 

 ――そう思っていた矢先。

 リリィ様が、私達が歩いて来た方向に剣を向けます。その先から、先程襲われる直前、確かに耳にした駆動音が。それも……前回とは比べ物にならない程の数に。

 

「――機械人形!?」

『しまった! 発見が遅れた……相当数いる』

「ゴルゴーンさん、式部さん。康友を連れて先へ。流石に戦闘に巻き込むわけにもいかないし。マシュ、リリィ、戦闘準備!」

「はいっ!」

「了解しました」

 

 であれば。手筈通り。先ず我々は、ダウンしたマスターの保護を優先する為に撤退。ゴルゴーン様と共に、先を急ぎます。

 

「さっきの地点で合流しよう!」

「分かりました! ご武運を!」

 

 

 

「――ここを抜けた先、か?」

「はい。ロマニ様はそうおっしゃっていましたが……」

 

 後ろから聞こえる剣戟が、遠くへ消えてしまう位には、移動したでしょうか。周囲の霧は相も変わらず深く、ともすれば一歩先も見えぬのではと思ってしまうほど。

 今の所、敵には襲われてはいませんが、先程のようにいつの間にか傍に寄られているという事も十分にありえます。気は抜けません。

 

 そんな中……私の隣を歩いていたゴルゴーン様が、その足を止めたのです。

 

「まぁ、そう容易く進める訳もないか」

「え……?」

 

 ちらとゴルゴーン様の方に視線を向け、彼女が顎をしゃくった方を見つめれば……霧の中より滲む、影らしきものが見えます。

 

『――ンンン』

「え……?」

『こうまで上手く運ぶとは。何とも僥倖! であれば……』

 

 霧の中で、少しくぐもって聞こえてくるその声に。

 私は……聞き覚えがある様な、気がしたのです。

 

『我が! 罠に! ご招待申し上げる……いざ、急急如律令!』

 




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