機動戦士ガンダムSEED〜ラスティ生存√リメイク〜 作:残月
目を覚ましたら見知らぬ天井……思考が回らず鈍い感覚。重い体を起こそうと思ったら胸の辺りに感じる小さな重み……視線を移せば少々癖のある緑色のショートヘアー。
「すぅ……すぅ……」
ベッドで眠る俺に寄り添うに上半身を預ける様に眠るニコル。椅子に座っていたのだろうが眠った拍子に俺のベッドに倒れ込んだのか何この寝顔……天使?じゃなくてっ!
「ニコル、ニコル……起きてくれ」
「ん……んうぅ……」
俺がニコルの肩に手を置いて揺するとニコルは眠そうに眼を開き始める。
「あれ……ラスティ?……ラスティ!」
「おはよう、ニコル……っとは!?」
ニコルは意識がはっきりしたのか俺を視認すると抱きついて来た。ヤベェ!可愛い、柔らかい、良い香りの三拍子!ニコルの控えめながら女の子足り得る『それ』が俺を更に興奮させる!
「バカバカバカッ!心配したんですよ!」
「悪い、ニコル。俺も今、目を覚ましたばかりだから状況が掴めていないんだ。此処は何処なんだ?」
抱きついていたニコルの背をポンポンと叩くとニコルはスッと離れた。そして涙目のまま俺を睨む。
「此処はジブラルタルです。大気圏突入した時の事は覚えていますか?」
「ジブラルタル?……大気圏突入の……」
ニコルの発言から此処はジブラルタルだと判明した。んじゃ大気圏突入は上手く……いや、ちょっと待て。俺は記憶の糸を手繰り寄せる……えーっと確か……
◆◇◆◇
『コースの算出、出来ました!でもラスティのジンが!?』
『仕方あるまい!こうするしかないんだ!』
俺の意識は殆ど飛んでいた。意識は朦朧として腕が上がらない。コクピットの熱も相当なものだし、計器のアラートもどれが鳴ってんだか……
『ラスティ!ラスティ!?しっかりしてください!』
『貴様、死んだら許さんぞ!』
デブリを盾にしながらブリッツとデュエルがシールドを構えて俺のジンを庇う様に前に出てくれているがそろそろ不味い。冷却剤も底を尽きそうだ。これは……もう……そう思った時だった。
『此方、ジブラルタル基地防衛隊!応答せよ!そちらのMS、所属を報告せよ!』
『あ……此方、クルーゼ隊所属、ニコル・アマルフィ!作戦中のトラブルで大気圏突入を試みました!三機の内、一機が危険な状態です!救援を!』
『クルーゼ隊?報告通りだな、了解した。すぐに回収部隊をそちらに回す』
『ジブラルタル基地の防衛隊!?そうか、クルーゼ隊長が根回しをしてくれたのか!』
どうやら大気圏突入した事でジブラルタル基地の防衛網に引っかかったらしい。ニコルが状況を説明してイザークが対処の早さからクルーゼ隊長がジブラルタル基地に連絡を入れたのだと判断していた。
それはそうと、もう大気圏突入が済んだのなら……俺はなんとか腕を上げてコンソールに手を伸ばして最後の作業をする事にした。
「外部装甲……強制パージ……ニコ……後は……たの……」
俺は半壊を通り越してほぼ全潰状態のジンアサルトの追加装甲をパージした。大気圏突入の熱でアサルトシュラウド装備は溶解しており邪魔にしかなってない。だったら外してしまった方が安全だろう。
あー、ヤベェ……意識が遠のく。
『ラスティ、ラスティ!?しっかりして!目を開けて!?』
『死んだら許さんぞ、貴様!ラスティ!』
ニコルとイザークの叫びを聞きながら……俺は本格的に意識を手放した。
◆◇◆◇
「ああ、うん……大体、思い出した」
「あの後、ジブラルタル基地の部隊が来て僕達を回収してくれました。ラスティはその時、完全に気を失っていたので……」
色々と思い出した。うん、あの時切羽詰まってたけどGなら兎も角、ジンで大気圏突入とか正気の沙汰じゃないわ。追加装備で冷却剤が追加されてなかったらコクピットもお釈迦になってただろうし。
そんな事を考えていたらニコルが半目で睨んでいた。
「心配したんですよ……ジブラルタル基地に回収された後、二日も目を覚まさなかったんですから」
「二日!?そんなに眠ってたのか、俺……」
驚きはしたもののGに乗ってないのに大気圏突入した代償がそんなもんなら安いもんだな。普通に死んでてもおかしくない状態だった訳だし。
「そういや、イザークは?」
「イザークはジブラルタル基地経由でクルーゼ隊長に報告してますよ。それに足付きが北アフリカに落下したそうで追跡の許可も打診しています」
姿の見えないイザークの事を聞くとイザークは俺が眠っていた間にも色々と動いていたらしい。アークエンジェルが北アフリカに落ちたって事は概ね原作通りな展開……いや、大気圏突入したのがイザークとディアッカじゃなくて俺とニコルとイザークって段階で原作通りとは言えんが。
「んじゃ俺もそれについて行……俺のジンは?」
「ラスティのジンは……ほぼ全壊状態です。ジブラルタル基地の人の話じゃ、大気圏突入が済んだ段階で爆発してもおかしく無かったくらいだと言っていました」
俺も砂漠に行くと言おうと思った所で俺のジンの事を思い出す。そしてニコルの発言から、やはりあの時に限界は来ていたのだと確信してしまう。
「データならありますよ。イザークが『アイツの事だから目を覚ましたら機体のデータを見たがる筈だ。格納庫には行かせずにデータだけを見せて安静にさせろ』と言ってましたので」
「あのツンデレめ……でも、有難い」
ニコルが準備してくれていたパッドに俺のジンの現在の状態が表示される。うわぁ……頭部が欠けてモノアイが割れてる。左腕と両足が無く、背面のブースターは大気圏突入の熱で半分溶解している。追加装甲に守られていたコクピット付近は冷却剤で冷やし続けたおかげなのか形はマトモだが全体的に破損が目立つ。改めて良く無事だったな俺……いや、マジで。
「ミゲルが守ってくれたのかな……」
「そうかも知れませんね……でも」
正直、爆散してもおかしくないくらいのダメージを受けて無事だったのは状況もそうだがミゲルが守ってくれたからな気もする。データを見ながら呟いたらニコルも同意はしてくれたがパッドを取り上げられる。
「ラスティはまだ目覚めたばかりなんですからMSよりもまずは自分のメディカルチェックが先です!」
「あ、うん……ゴメンなさい」
立ち上がりながら腰に手を当てて怒ってますと言わんばかりの態度のニコル。ビシッと俺を指差しながら指摘されるとグゥの根も出ない。
そこからニコルの対応は早かった。医務官に連絡を取り、俺のメディカルチェックの申請をして、イザークにも俺が目を覚ました事を連絡している。本当に出来た娘さんですよ。
「なんか怪我して入院した彼氏の世話を焼く彼女みてーだな」
「な、ななな何を言ってるんですか、ラス……きゃあ!?」
思わず口にしてしまった俺の呟きに過剰反応したニコルがすっ転ぶ。派手に転んだな、おい。
「ぼ、僕がラスティの……あわわ……し、失礼しまーす!?」
「あ、ニコ……行っちゃった……」
顔を真っ赤にしてニコルはバタバタと出て行ってしまった。ちょっと迂闊な発言だったかな。俺は再度、ベッドに寝転びながら出て行ったニコルを思いながら……「少しずつ原作とズレて来てるよな……」と心の中で呟き、今後の展開に不安を感じるのだった。