機動戦士ガンダムSEED〜ラスティ生存√リメイク〜 作:残月
◆◇sideアスラン◆◇
「この…‥大馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!何故あの時、退かなかった!貴様が……貴様がラスティの言う通りに撤退していれば奴は……奴は……」
「イザーク……」
ラスティのジンがキラのストライクによって討たれた。茫然自失となった俺を回収したのはラスティの指示で足付きを攻撃していたイザークとディアッカ。そしてイザークとディアッカに合流したニコルだった。
あの時、ラスティがキラと戦っていた最中……俺とニコルは撤退の為に二手に分かれた。ニコルはイザークとディアッカを呼びに離れ、俺はラスティの支援に向かった。そこで俺はラスティの撤退援護をして撤退すれば良かったのにラスティとの戦いで満身創痍に見えたストライクを見て俺の感情は爆発した。キラを討つならせめて俺の手で……そんな俺の思いと決意は上辺だけのものだった。そんな半端な思いで戦いを挑んで、その結果ラスティは俺を庇ってキラに討たれた。ラスティのジンはストライクのソードでバラバラに切り刻まれ、海に落ちた後に爆発を引き起こした。あの爆発では生きてる可能性は限りなく低いだろう。しかも足付きからの攻撃から逃げる為にラスティの機体の捜索も出来なかった。
潜水艦に戻った俺はイージスから降りた直後、イザークに詰め寄られて胸ぐらを掴まれて壁に叩き付けられた。いつもなら此処でラスティがイザークを止めるか茶化して場を和ませるが……いない……そうだ、俺の所為でラスティは……
「よせ、イザーク!」
「なんだと、ディアッカ!アスランを許せとでも言うのか!?」
そんなイザークを止めたのはディアッカだった。睨むイザークにディアッカはクイッと親指で右側を指差す。その仕草に俺とイザークの視線は同時に移り……言葉を失った。
「ラスティ……嘘ですよね……一緒にショッピングに行くって約束を……うっ……ラス、ティ……約束したのに……うっひぐっ……らすてぃ……」
ニコルは地べたに座り込んだまま動かなくなっていたのだ。ラスティのジンが置かれていたハンガーを見上げて涙を流している。その姿に俺とイザークは何も言えなくなり……イザークの手の拘束も緩んだ。
「一番ツラい奴が居るんだ……少しは気を使ってやれよ……」
ディアッカの絞り出すような一言に俺は視線を落とす。そうだ、あれだけラスティに懐いていたニコルが一番ツラい筈だ。だが、ニコルになんと言えば良いのか分からない。
こんな時、ラスティだったら場を和ませながら笑わせてくれたのだろう。イザークもディアッカも同じ気持ちなのか黙ってしまっている。俺達はラスティが居なくなった……それだけでこんなにも足を止めてしまう程に弱かった。それだけラスティが俺達の中で大きな存在なのか思い知らされてしまう。
『あんまり気にすんなって、気にし過ぎると禿げるぜアスラン』
一瞬、ラスティの声が聞こえた気がした。もしもラスティがこの場に居たら、こんな事を言うんじゃないかと幻聴まで聞こえたらしい。俺がそんな事を思っているとニコルは立ち上がり、俺達を見据えながら叫ぶ。
「行きましょう……足付きもストライクもダメージは受けている筈です。今から追いかけて、ラスティの仇を……僕がストライクを討ちます!」
「っ!当然だ!だが、ラスティの仇は俺が取る!」
「だったら競争だな。俺も話に乗るぜ」
「……決まりだな。俺達は足付きの追跡任務を続行する」
一番ツラい筈の……そしていつも優しげな表情のニコルがいの一番に戦いを決意し、イザークとディアッカもニコルの気持ちを汲んで足付きを沈める事を決意した。だったら……俺も隊長として覚悟を決める。先程までの上辺だけじゃない……俺がストライクを……キラを討つ!
◆◇sideディアッカ◆◇
ラスティがストライクとの戦闘でMIAになった。その言葉を俺は信じられずに居た。アカデミーの頃から何処かタフな奴で何があっても場を和ませて笑いをとっていた。ラスティは何というか……クルーゼ隊の潤滑油みたいな奴だった。メインではないもののサポートが上手く、気が付けば誰かの隣に居る奴。イザークとアスランが揉めるなら真っ先に間に入るか茶化す奴だった。アイツが居ないと思うと……妙に静かなもんだと思ってしまう。
部屋に戻った俺はアカデミー時代を思い出していた。初対面の奴ばかりが揃う教室で超速で馴染んだコミュ力が異常に高い奴ってのが第一印象だった。
堅物のイザークや真面目なアスランと違ってラスティは俺と女の話を時折する奴だった。俺は胸派だがラスティは脚派。派閥は違うがグラビア雑誌を見ながら良く語り合ったもんだ。
「ああ、そういや……貸す約束してたっけ……」
俺はラスティが今度貸してくれと言っていたグラビア雑誌を手に取る。何故か、いつも手にしている筈の軽い雑誌が妙に重く感じた。
◆◇sideイザーク◆◇
俺がラスティと初めて会ったのはアカデミーでの事だった。会った時からヘラヘラ笑って、俺とは合わない奴だと思っていたが、ラスティは強かった。MS戦でも肉弾戦でも、俺は奴に勝てなかった……クルーゼ隊に配属になってからも奴の関節技から抜け出せる事は無く、随分と苦しめられた。
奴は頼んでもいないのに、俺のサポートをする事が多かった。ディアッカは援護射撃でラスティは接近戦での援護が巧みで何度も助けられた。
大気圏間際での戦いで俺はストライクとの対決の邪魔をした脱走兵のシャトルを撃ち落とそうとしたがラスティに阻まれた。後から聞かされたのだが、あのシャトルには民間人が乗っていたのだと言う。それを聞いた時、俺は血の気が引いた。いくらナチュラルでも力を持たない者を撃つなど、あり得ないからだ。それを止めてくれたラスティには感謝しかない。
奴はいつもそうだ。どれだけ俺達が熱くなっても、いつも冷静に周囲を見ている。
だから、俺は許さない……我が友を討ったストライクを……
◆◇sideニコル◆◇
ラスティがMIAで行方不明になった……その事実を僕は受け入れる事が出来なかった……彼の事だから「あー、死ぬかと思った」なんて、へろっと笑いながら帰ってきそうだと思ってしまう。
僕がラスティと初めて会ったのはアカデミーの時で年下と言う事で周囲に中々馴染めなかった僕をラスティは手を引いてアスランやイザーク、ディアッカの友達の輪の中へと誘ってくれた。
でも、何故か僕が自己紹介をした時に「ん?……女の子……うん、OK問題ない……なんで違和感を覚えたんだろ?」なんて言っていたのは妙に印象に残った。
ラスティ達の輪に入ってから笑いの絶えない日々が続いた。
イザークと言い争いになったラスティはプロレスを開始して……
アスランとMS運用の話をする時は物凄く盛り上がって……
ディアッカと……エッチな本をコソコソと読んだりして……
でも皆の中心にはラスティが居た。皆と笑っているラスティにドンドン惹かれていった。いつの頃からか彼が笑っていると胸がドキドキしていた。
特にMSの事に関わっている時の彼の無邪気な笑う顔が好きだった。
アスランとの訓練で頭を打ってから何か悩みがあったのか、難しい顔をする事が増えたけど悩みが解決したのか、吹っ切れたのかいつものラスティに戻っていった。
一度だけ、あるトラブルで僕の着替え途中をラスティに見られてしまった事がある。慌ててタオルで姿を隠したけど、ほぼ全裸を見られてしまい凄く恥ずかしかった。この時があったからバルドフェルド隊長に『ドレスのデザインは足が出るのが良い』と言ったのだろう。
ラスティがショッピングに誘ってくれて僕は似合わないかも知れないけどスカートで行ってみようかと考えていた。でも、その約束も水泡に帰してしまう。
ラスティのジンが置かれていた場所を僕はズッと見ていた。いつもなら僕の隣にラスティが立って一緒にジンや四機のGを見ていた場所。彼のお気に入りの場所。その隣こそ僕の居場所だった。
その居場所はストライクの手によって奪われてしまった。僕は生まれて初めて本気で人を憎んだかも知れない。ストライクは僕の手で討つ。ラスティの仇を取ると決意した。
『俺は敵討ちなんて望まねぇよ。つまらない事を考えんじゃねーよ。変に意地はってないで素直になってみろよ。いつもみたいに可愛い顔で笑ってくれ』
「笑え……ないよ……いつもみたいに側に居てくれないと……笑えないよ、ラスティ……」
ラスティの声が聞こえた気がしたけど僕は笑う事が出来なかった。その場に座り込み、涙を止める事が出来なかった。
主役不在回でした。