機動戦士ガンダムSEED〜ラスティ生存√リメイク〜 作:残月
◆◇sideミリアリア◆◇
アークエンジェルに攻撃を仕掛けていたGのパイロットを機体ごと捕虜にした。その報告を聞いた私は複雑な気持ちになっていた。トールもキラもMIAになったのに敵のパイロットを保護する形になるなんて……一人は褐色の生意気そうな男。もう一人は小柄のショートヘアの可愛い女の子だった。
気になる事があった私は医務室で怪我の様子を診察している筈の二人の敵パイロットの所へと向かった。キラと戦っていたのはイージスだった。残った二機のどちらかはトールが乗っていたスカイグラスパーの行方を知っているかも知れない。私はそれが知りたかった。
医務室に行くとベッドには褐色の男が此方を馬鹿にした様な雰囲気を出していた。私がトールの事を聞こうと思ったら先に男の方が口を開いた。
「ハッ……何、暗い顔してんだよ、恋人でも死んだのか?」
「っ!」
その言葉を聞いた瞬間、私の頭は一瞬で沸騰した。医務室に治療用として置いてあったナイフを持った私はコイツを……
「なんて酷い事を言うんですか!!」
「ぐはあっ!?」
私がナイフを振り下ろそうとした瞬間、カーテンに仕切られた反対側のベッドからもう一人のパイロットの女の子が飛び出して男の顔面に蹴りを叩き込んでいた。その細く綺麗な足から放たれた蹴りは完璧に男の鼻に命中して男は壁に叩きつけられた。
女の子の方はTシャツにハーフパンツに着替えさせられていて、手を後ろに縛られているが男を涙目になりながら睨んでいる。
「な……何するんだよ、ニコル!?」
「僕達は……僕達はラスティの敵討ちでストライクを討ちに来ていたんですよ!僕達がツラいんだから、この船に乗っている人達もツラい思いをしているに決まってるじゃないですか!なんで、そんな酷い事を言えるんですか!?」
鼻から血をダラダラと流しながら抗議する男に女の子が叫ぶ。茫然とその事態を見ていた私だったけど彼女達も誰かを失った悲しみを持っていたらしい。この子も私と同じ様に好きな人を失ったのだろうか。
「何してるんだ、ミリィ!?……本当に何があったんだ?」
「あ、えっと……」
騒ぎを聞きつけ戻ってきたサイだけど、この状況を見て混乱してる。仲間割れをしている敵パイロット二名にナイフを持ったまま立ち尽くす私。誰が見ても混乱するだろう。
そんな状況を破る様に入口の方からガチャリと銃を操作する音が聞こえたので振り向くと女の子に銃口を向けたフレイが立っていた。
「コーディネーターなんて……皆、死んじゃえばいいのよ!」
「駄目っ!」
「キャアッ!?」
私は咄嗟にフレイを止めようとしたけど、フレイが構えた銃から弾が放たれ、天井のライトを破壊した。ライトの破片が女の子に降り注ぎ、悲鳴が聞こえた。
「止めるんだ、フレイ!」
「何で邪魔するのよ!?ミリィだってコイツ等を殺そうとしたじゃない!?」
サイがフレイを羽交い絞めにして銃を取り上げる。私は咄嗟に女の子に駆け寄り、髪に降り注いだライトの破片を取っていた。さっきまで殺したい程、憎んでいた筈なのに私はこの子を放って置けなくなっていた。
「ミリィだって憎いんでしょう!?トールを殺したコーディネーターが!トールもキラも殺したコイツ等が憎いんでしょ!」
「……違う、違う!」
「止めるんだ、二人とも!」
フレイはコーディネーターが憎いのは同じだと主張してくる、否定は出来ない。さっきのこの子の涙と誰かを失った発言を聞かなかったら私もフレイみたいにこの子達を憎み切っていたに違いない。フレイはサイが取り押さえていたけど私はこの子を庇っていた。
「おい、なんだこの騒ぎは!?」
「何をしている!」
銃声と騒ぎを聞き付けて、艦内のクルーが走ってきた。この後、私達は厳重注意を受けて、敵パイロット二名は部屋を捕虜用の場所へ移されていった。
この騒ぎの数時間後。私は捕虜用の部屋に向かって二人と柵越しに対面していた。女の子の方は私に気付くとペコリと頭を下げた。
「先程は気に障ることを言ってしまったようで、すみませんでした。ほら、ディアッカも」
「………悪かったよ」
女の子の方が頭を下げて謝罪する。そして、そのまま男の方にも謝罪を促して、謝らせてきた。男の方も悪いと思っていたの素直に謝ってくる。先程、鼻を蹴られたから鼻に大きめなガーゼが当てられている。少しだけ胸がすく気分になった。
「それで何の用だよ?……さっきの仕返しにでも来たか?」
「………スカイグラスパーのパイロット」
「スカイグラスパー?」
先程に比べれば多少はマシとは思うけど皮肉気味な口調は変わらない。思わず殴りたくなったけど、私は聞きたかった事を聞く事にした。女の子の方はスカイグラスパーを知らなかったのかオウム返しで聞き返してきた。
「戦闘機よ。青と白の。島であなた達が攻撃してきた時にも出撃していたわ」
「ああ、あの……二機飛んでいた筈ですね。あの機体が何か?」
「あの機体か……アスランが落とした戦闘機だな」
女の子の方は私の質問の意味がわからなかったみたいだけど男の方は察した様だ。
「遠目だけど見えたんだ。ストライクとイージスの戦いに割り込んで……イージスの投擲したシールドに翼を落とされて海に落ちていった筈だ」
「それは……」
「……トールはその後、機体のシグナルがロストになって……MIAになったわ」
あの時、レーダーだけで状況を知る事は出来なかったけど、バスターのパイロットは投降する際に僅かに見えていたらしい。私は知りたかった事は聞けたけど……トールの生存は希望が無いと思い知らされた気分にさせられた。私が踵を返して捕虜用の部屋から出て行こうとすると、女の子の方が声を掛けて来た。
「僕も……大切な人を失いました。ストライクに討たれて……」
「……同じだったのね。でも……ごめん」
私は女の子の吐露に何も言えなくなってしまう。女の子の言う、大切な人はキラのストライクに墜とされたみたいだ。だから、この子や男の方も必死に仇を取ろうと戦いを仕掛けてきたんだと思う。私はそれ以上、何も言えなくなって足速にその場を後にした。
◆◇???◆◇
体が痛ぇ……まどろむ意識の中、俺はボーッと見覚えの無い天井を見上げていた。フッと意識が急浮上する感覚に俺は周囲を見渡して……凄い美人が俺の顔を覗き込んでいた。なんか見覚えのある人だと思った瞬間……俺の意識は完全に覚醒した。
「あら、目が覚めたわ」
「え……ア、アイシャさ……痛でぇ!?」
視線の先には砂漠で重傷を負ってプラントの特別施設に行った筈のアイシャさんだった。俺は勢い良く起きあがろうとしたら体に激痛が走った。
「ダメよ、まだ起きちゃ」
「痛たたっ……こ、此処は?」
咄嗟に俺の体を支えてくれたアイシャさん。一体、何がどうなってるんだ?
「あら、目が覚めまして?初めまして、ラスティ・マッケンジーさん」
「ラ、ラクス・クライン!?」
え、いや……マジで何が起きているんだ!?和やかに挨拶をするラクスに俺は混乱するしかなかった。