機動戦士ガンダムSEED〜ラスティ生存√リメイク〜   作:残月

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少しだけ変わる運命

 

 

 

◆◇sideニコル◆◇

 

 

 

僕とディアッカがアークエンジェルの捕虜になってからどれくらいの日にちが経過しただろうか。ミリィの話じゃアークエンジェルは地球連合を離反して今はオーブに居るらしいけど……ミリアリアとはあの一件以来少しずつ話をする様になって愛称で呼ぶ仲にはなった。

ラスティ……貴方は無事なんですか?僕自身が捕虜の身分であるが故に捜索には行けないし、ザフト側では恐らくMIA認識されているだろうから僕もディアッカも探される立場だけど……僕がそんな事を悩んでいると捕虜を収監している部屋にミリィが訪れた。手にはザフトのパイロットスーツが二着あった。

 

 

「こんにちは。今日はどうしたのですか?」

「戦闘になるの。この艦」

「あん?」

 

 

ミリィの発言に隣の牢で寝転んでいたディアッカが起き上がる。

 

 

「連合がオーブを攻めてくるんだって。だから、貴方達はもう釈放していいんだって」

「ちょ、ちょっと待って下さい!?」

「待てよ、おい!」

 

 

牢屋の鍵を開けてパイロットスーツと私服らしき物を床に置き立ち去ろうとするミリィに僕とディアッカは駆け寄る。

 

 

「戦闘ってどういうことなんですか!?」

「連合が攻めてくるからアークエンジェルは戦うの。だから捕虜のアンタ達をいつまでも乗せておいても仕方ないの。連合から脱走した私達を匿ってくれたオーブにはお世話になったから協力するのよ」

「なんだそりゃ?ナチュラルってやっぱり馬鹿ばっかりか!?」

 

 

僕の問いにミリィは答えてくれた。ディアッカはもう少し言葉を選んで下さい!僕がキッと睨むとディアッカは「あ、悪い」と謝罪をした。ラスティだったら、この辺りのフォローを上手くしてくれるのだろうけど僕じゃこれが精一杯だった。

 

 

「そんなわけで、悪いんだけど後の事は自分でやってもらえる?その服は……私からの餞別だから」

「事情は理解しましたけど……ブリッツとバスターは返してもらえ……ないですよね?」

 

 

パイロットスーツとは別に私服が渡された時にはなんでだろうと疑問に思ったけどパイロットスーツだけじゃ目立つし浮くだけだ。移動用の為に私服を用意してくれたらしい。僕は一応、気になっていたMSの事を聞くとミリィは振り返る

 

 

「当然でしょ?元々は連合の物なんだから。モルゲンレーテが持って行っちゃったわよ」

「げ……マジかよ」

「ですよね~」

 

 

ミリィからの返答にディアッカは渋い顔になり、僕も苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

「こんな事になっちゃって、ごめんね」

「もしかしてミリィも戦闘に参加するのですか?」

「……っ」

 

 

謝罪するミリィに強い意志を感じて僕が聞くとディアッカが息を飲んだ。

 

 

「当然でしょ?私はCIC担当なんだから。それに……オーブは私の国なんだから」

 

 

そう言い残してミリィは去って行った。僕とディアッカは何も言えずにその背を見送ってしまう。でも、このままじゃ何も好転しないのでミリィから渡された餞別の服に着替える事に。

ミリィの選んだ僕の服は僕が普段から着ない様なチョイスで長袖のパーカーにショートパンツと女の子らしいコーデだった。服の間にメモが挟まっていて『ニコルが例の恋人と再会出来る事を祈っています』と書かれていた。

 

 

「ミリィ……僕とラスティとはまだ……でも……」

 

 

ミリィだって恋人がMIAなのに僕に気を遣って……ミリィの気遣いに僕はちょっと泣きそうになりながらもディアッカと共にアークエンジェルから下船した。

 

僕とディアッカがアークエンジェルを降りてから暫くすると警報が鳴り響き、戦闘が始まる。その様子を僕とディアッカは見ている事しか出来なかった。僕はラスティならどうするだろう、ラスティなら笑いながら戦闘に参加しに行くだろう、なんて考えていた。ディアッカも色々な感情が渦巻いているのだと表情から察せる。ミリィとの会話や今までの自分を省みてるのだろう。僕は何気無く視線を逸らして……絶句した。

 

 

攻めてきた連合軍の量産型じゃない新型三機が攻めてくる。その内の一体の機体が山間部に着地した。その山道に走っている人影が見えたのだ。

 

 

「えっ……ディアッカ、あそこに!」

「どうしたニコ……逃げ遅れかっ!?」

 

 

僕がディアッカの肩を叩き、山を指差すとディアッカも逃げ遅れた人達をすぐに見付けた。あのままじゃ間に合わなくなると思った僕とディアッカは悪いとは思いながらも乗り捨てられていた車を拝借して山へと走らせた。

 

 

「はぁはぁ……父さん、このままじゃあ……」

「大丈夫だ、シン。もう少しで港に出る筈だ」

「ここは危険ですよ!避難して下さい!」

 

 

車を走らせて逃げ遅れた人達の所へ行くと息を切らしながら走っていたが避難警報の事を知らなかったのかまだ港へ向かうつもりらしい。港にはもう船は残っていないと言うのに。

 

 

「だ、誰だね君は?」

「そんなことより早く避難して下さい!ここは危険です!」

「連合の目標は軍関連施設なんでしょう?」

「んな訳あるか!ここは既に戦闘地域だ!」

 

 

父親は驚いた様子で僕達を見ていた。少々緊張感の無い姿に僕が叫ぶと母親の方は連合の目的は軍事施設だけだと思い込んでいるらしく、そんな事は無いとディアッカが叫ぶと二人ともショックを受けていた様だ

 

 

「とにかく、ここは危険なんです。車に乗ってください避難区域まで連れて行きますから!」

「あ、ああ……わかった。走るぞ」

「うん!」

「あ、マユの携帯!」

「そんなの良いから!」

 

 

僕が車に乗る様に促すと父親は戸惑いながらも車に家族を乗せようとし走り始める。しかし、走っていた事で女の子のポケットから携帯が落ちて、しかも運の悪い事に携帯は下の茂みに落ちてしまった。取りに行こうとする女の子を母親が諌めるが駄々をこね足を止めてしまった。よく見たらこの女の子はオーブでラスティと一緒にいた兄妹だった。確か……シンとマユって……

 

 

「俺が取ってくる!」

「ちょっと、シン!」

「危ないんですから、一人では動かないで!」

 

 

母親の制止を振り切り斜面を滑り降りて樹の根元に引っかかった携帯を拾いに行くシン。僕は思わず、シンと同様に斜面を降っていた。

素早く携帯を拾い上げたシンは山の斜面を登ろうと上を見上げた、その瞬間だった。

 

 

「ヤベェ、伏せろ!」

「なっ……」

「シン!」

 

 

斜面の上からディアッカの叫び声が響いた。僕は咄嗟にはシンを抱き伏せた。それと同時に爆発音が聞こえ、僕とシンは爆風によって吹飛ばされ、近くの木々に体を打ち付けてしまった。

 

 

「……痛っ!」

 

 

爆風に吹き飛ばされながらもなんとか受身を取ったけど……身体中が痛い。でもディアッカの叫び声が無ければ何も出来ないまま僕とシンは吹き飛ばされていたから、この程度で済んで良かったと思えてしまう。

 

 

「そ、そうだ……シンにディアッカも……」

「父さん……母さん……マユ……?」

 

 

僕が居た場所から少し離れた場所でシンの声がした。僕が慌てて声のした方へ走ると、そこには爆発を近距離で受けたのか、手足や首が通常ではありえない方向に折れ曲がり、または千切れ、全身から大量に血を流し倒れている父親と母親の姿があった。近くにはマユちゃんが着ていた上着もボロボロの状態で落ちている。ディアッカの姿も確認出来ず僕も言葉を完全に失ってしまった。そこへ被害を確認しにきたのかオーブの軍服を着た兵士達が走ってきた。

 

 

「大丈夫か!?」

「おい、しっかりしろ!」

「ぐ、うぅ……あぐ……あ……」

 

 

オーブの将兵がシンの身体を揺すり声を掛けるが、シンはそれに気付いていないようだった。シンはその場に蹲り、右手に持ったピンク色の携帯を握り締め声を押し殺し泣いていた。

 

 

「うわあああああああああああっ!!!」

 

 

堰を切ったようにシンの咆哮が木霊する。その場にいる僕も将兵も誰もシンに声を掛けられなかった。そしてシンは上空で戦いを続ける新型機達を睨みつけていた。

 

 

「オーブの将兵さん、この子をお願いします」

「それは構わないが、キミは?」

 

 

未だに空を睨み続けているシンをオーブの将兵に任せると僕は少し痛む体に鞭を打って走り出す。

 

 

「僕はやるべき……いえ、やらなきゃいけない事を見つけました。だから、行きます!」

「そうか……彼は任せたまえ。本来なら危険だから止めねばならんのだろうが我々も彼の保護をしなければならないからキミを止める為の問答の時間も惜しい。行くと良い」

 

 

僕の言葉にオーブの将兵は苦い顔をしながらも僕を送り出してくれた。僕は振り返りながらシンの姿を見るとオーブの将兵に立たされながら、この場を離れるのを見れた。

 

 

「よし……急がないと!」

「痛ってぇ……死ぬかと思ったぜ……」

 

 

シンやオーブの将兵から大分離れた位置まで来た所で気合を入れ直そうとした瞬間だった。聞き覚えのある声に僕は足を止めてしまう。茂みの奥からボロボロの姿になったディアッカが姿を現したのだから。しかも、その腕の中には……

 

 

「マユちゃん!?」

「車でお前達を待とうとしていたらミサイルが飛んできてよ。車から降りて咄嗟に庇う様にしたんだが、ここまで吹き飛ばされちまった……」

 

 

ディアッカの腕の中で眠るマユちゃんは頭から血を流しているものの生きている。もう少しディアッカと早めに合流出来ていればシンにこの事を告げる事が出来たのに……

 

 

「ディアッカ。マユちゃんの事も心配ですし、モルゲンレーテに急ぎましょう。あそこにはブリッツもバスターも保管されている筈です」

「そうか……ちっと距離はあるが……また車かバイクを借りるとするか!」

 

 

僕とディアッカは揃って走り出す。僕の言いたい事もディアッカは察してくれたみたいだ。この後、乗り捨てられていたバイクを見つけた僕達はモルゲンレーテへと急いだ。

モルゲンレーテに到着してからマユちゃんの事をお願いしてから僕とディアッカはパイロットスーツに着替えてMSの格納庫へと走る。乱戦の最中だから侵入する事はアッサリと出来て僕とディアッカはそれぞれブリッツとバスターに乗って機体を起動させた。

 

 

そして機体を発進させるとディアッカはオーブ軍の援護に行ったので僕はアークエンジェルの援護をする事にした。ミリィとは色々あったけど今は友達なんだ!守りたい、アークエンジェルもマユちゃんも全部!僕がそんな思いで戦っていると上空の新型機達の戦いに動きがあった。連合の三機に追い回されていた蒼い翼のMSを援護する二機の赤い機体。片方の機体が連合の黒い機体に攻撃を加えた後……

 

 

『ぐあっ!?なんだテメェは!』

『自己紹介なんざ照れくさいが……敢えて言うとするなら愛と言う陽炎を追い続ける平和の狩人……みたいな感じ?』

 

 

物凄く聞き覚えのある声も相手を挑発する言葉のチョイスにも覚えがあり過ぎた。

 

 

『ぶっ殺す!』

『やってみろよ!』

 

 

変形した黒い機体の突進をいなしながら攻撃を加える動きに間違いなくラスティだと確信してしまう。ああ、もう……MIA認定だったから生きていてくれて凄く嬉しいのにっ!あの飄々としながら人を小馬鹿にした挑発に僕もイライラしてしまう。

 

 

「人を怒らせる天才なんでしょうね、あの人は!」

 

 

今頃、ヘロッと笑っているだろう愛しき人にビンタの一つでも見舞ってやりたくなる。戦闘が終わったら覚悟してくださいね、ラスティ!

 

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