機動戦士ガンダムSEED〜ラスティ生存√リメイク〜 作:残月
アークエンジェルとオーブの艦隊を宇宙へ脱出させる為にバタバタと準備が急ピッチで進んでいく最中、パイロット組は脱出援護の為に体を休めておけと言われたので雑談に興じていた。尤も俺は手元のパッドでデータ整理に忙しかったが。
だけどまあ……本当ならこうなる前にどうにかしたかったし、ウズミ様の自爆も止めたかった。あの手合いの人は生き残って戦後の処理もして欲しかったし『生きてください』の一言も伝えたかったが、あの決意を秘めた目と気迫を感じたら黙るしかなかった。
「宇宙に上がったら……恐らくザフトとも戦闘になるだろう」
「ああ、クルーゼ隊長やイザークともやり合う可能性があるな」
「出来たら戦闘は避けたい所ですが……」
宇宙へ脱出したらメンデルコロニーでの戦闘だったっけ?アスラン、ディアッカ、ニコルの会話をBGMに俺は各種MSの強化プランの設計を見直しを練っていた。エリカ・シモンズさんに頼まれはしたものの時間が足りない。しかも既存のパーツから組み上げたり、加工しなければならないのだ。プラモみたいに簡単にはいかないし、それも分かってはいるがやらねばなるまい。
「凄いね。これなら戦闘の幅も広がりそうだよ。稼働時間の延長も……」
「ストライクのマルチプルアサルトストライカーの稼働データがあったのも大きいな。それにG同士で互換性がそこそこあるからパーツの連結もうまく行きそうだ」
ザフトの内部事情の話に口が挟めないキラがデータを覗き込んでくる。丁度良いし、キラの意見ももっと聞こう。俺としてはムウさんも来て欲しい所だ。だって宇宙に行ったらガンバレルストライカーを組み上げる事が出来るかもしれない。だったらガンバレルを扱えるムウさんの意見を聞かないとだし。
「警報っ!?」
「地球軍の三度目の進軍ですね!」
「行くぞ!」
「ラスティ!」
「やれやれ……何をするにも時間が足りないな」
このまま宇宙にフェードアウトしたかったが、そうは問屋が卸さないらしい。マスドライバーのあるカグヤの軍港に地球連合が迫ってきたらしい。
俺達はバタバタと緊急発進の準備をしていたらオーブの人達の会話が耳に入る。
「逃げ遅れた一般人をクサナギに乗せるのか!?」
「此処に残す訳にはいかんのだ!早くしろ!」
「避難民はアークエンジェルの方にも急がせろ!」
「宇宙に上がった後はアメノミハシラに移送させる準備を……」
この会話からマスドライバー、いやカグヤ島そのものを自爆させるつもりなのは明白だった。そういや忘れてたけどアメノミハシラはオーブの宇宙施設だったな。このタイミングで思い出したのもアレだけどサハク姉弟の事を忘れてた。詳しい経緯は忘れたけどオーブが戦火に包まれた理由の一つってコイツ等だったんだよな。
思い出せない事を悩んでも仕方ないし、それどころじゃない。俺はテスタメントに乗り込んでアークエンジェルとクサナギの発進援護をする事に。
『援護します。発進を急いでください!』
『空中戦になる。バスターとブリッツでは無理だ。二人はアークエンジェルへ!』
『ちっ……しょうがないな!』
『ラスティ、アスラン、キラも気をつけて!』
「先に宇宙で待っていてくれ。俺達も直ぐに行く」
地球連合の進軍を俺とキラとアスランで食い止める事に。ストライクダガーは空中戦が出来ないから地上から来るだろうが三馬鹿は空から来る。だとすれば発進前の戦艦を墜とすにはもってこいだ。しかもカラミティはそういった事に向いている機体だ。なんとしても食い止めて……ん?
そう思っていたのだが、飛んできた三馬鹿の機体に違和感を感じる。カラミティは左腕が欠落していて、レイダーは右足が無い。フォビドゥンだけマトモな状態だ。
「ヒドい……あんな状態で出撃してくるだなんて」
『テメェの所為だろうがっ!』
『僕達はお前を許さないからな!』
俺の呟きにカラミティから怒声と共にビームが発射され、レイダーはカラミティを背に乗せたまま、俺を執拗に追いかけて来た。
どうやら、前回の出撃の最後に味方の艦隊射撃で負ったダメージが残っていて修理が間に合わなかったみたいだ。嫌がらせと思ってやったのだが思いの外、効果的だったらしい。と言うか、俺への被害者意識からか妙に仲が良くなってんな、オルガとクロト。
この後、アークエンジェルは無事に飛び立ち、俺とキラとアスランもクサナギの発進援護をしながら戦って、最終的にクサナギにしがみ付いて宇宙へと脱出した。三馬鹿の機体がダメージ負ってたから割と楽勝だった。三馬鹿から俺への恨み骨髄だろうけど。
クサナギが飛び立った後、オーブ本土のモルゲンレーテ本社とカグヤ島のマスドライバーが自爆した。地球連合にオーブの施設を利用されない為とオーブを守りきれなかった自分達のケジメとして。