ライザー襲来事件の後、アーシアさんが悪魔になった。
まぁ絶好の機会だったのは間違いないだろう。皆にはお世話になっているから力になりたいとの事だ。部長もごめんなさいねと言いながらも歓迎していた。正直回復役が一人居るのと居ないのとでは大きな差が生まれるから非常に助かる提案だった。
とはいえ、まさかライザーとグレイフィアさんが消えてすぐに言い出すとは思わなかったけど。
早速とばかりにアーシアさんを悪魔に転生させた所で、俺達は部室を追い出された。部長は姫島さんとオカ研に残って作戦を練るらしい。
俺も作戦立案を手伝おうかと言ったのだが断られてしまった。なるべく俺の関与を疑われるような作戦は立てたくないそうだ。
俺が部長のお兄さんの計らいでここに居る事は割と知られているらしく、俺だけが派手に動き回って勝ったり、あまりにも忍らしい作戦で勝った場合に部長の面子が潰れる可能性があるらしい。下手すればゲームを無効にする口実にもなりかねないとか...もっとも、本当にまずい時には利用せざるを得ないが、やっぱり自分の眷属だけで勝てるのが一番なのだそうだ。政治の世界はいまいちわからないが、思ったよりしがらみが多いらしい。
そういうわけで大人しく帰って、代わりに自分から願い出たイッセー強化計画の内容を考える。
まずはいい加減にイッセーの中に眠る力を呼び起こさないといけない。ライザーに啖呵切ったのもそれを当てにしているからだ。
...後はきっかけだけだと思う。ここ一か月イッセーはかなりのトレーニングをこなしているし、基礎は出来始めている。
更に
うんうんと唸っていると、部長から電話が来た。
なんでも明日から強化合宿を行うらしい...グレモリー家所有の別荘のある山が会場だそうだ。
山、山ね...山でイッセーに与える精神的負荷...
ぴんと妙案が浮かんだ。これならイッセーを追い詰めることができるかもしれない。
かわいそうだが、イッセーの為でもある。頑張ってもらう他ないのだ。
俺はせっせと合宿の為の用意を始めた...
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翌朝、荷物を背負って部室へと向かった。
既にイッセーとアーシアさん以外は集合しているみたいだ。
「おはようございます」
「えぇ、おはようナルト。良く眠れたかしら?」
「はい。貴重な10日間なんで、なるべくみんなの力になれるように頑張るってばよ」
「お願いね。特にイッセーを頼むわ...あの子の中に眠る真の力がどのような物かによって作戦も大きく変わってくると思うから」
「了解です。10日間でイッセーを立派な兵士にしてみせます」
「それなんだけどね...流石に10日間ぶっ通しでトレーニングだとイッセーが壊れてしまうし、せっかくの機会だからイッセーやアーシアに悪魔の知識を最低限身に着けてもらう為にも座学の時間も設けようと思っているの。他にも朱乃による魔力の指導や、レーティングゲームでの連携の確認も入念にやっておきたいわ...5日。最初の5日間イッセーを貴方に預ける。その間にイッセーが最低限戦力になるようにしてもらいたいの...これは命令よ。出来るわね?」
おっとっと、まさかの期間半減か...でも、命令ならやるしかないな。
「もちろん。やってみせるってばよ」
「いい返事よ。よろしく頼むわ」
「おう!...で、肝心のイッセーとアーシアさんは一体どこに?」
「...二人に合宿の件を言うのを忘れていたわ。すぐに迎えに行ってくるから待ってなさい」
部長はそういうと魔法陣でどこかへ飛んでしまった。
なんというか、部長らしくない珍しい凡ミスだな...
「リアスは徹夜で作戦を考えていたから疲れているみたい...許してあげて下さいね?」
「いえ、許すもなにも...ちょっと珍しいと思っただけですよ」
「あらあら、それなら良かったですわ...ナルト君。本来なら言う必要は無いのでしょうけど、もしもの時はよろしくお願いしますわね?」
「本当に必要ないですね。グレモリー眷属なら勝てますよ」
「そうね、リアスの為にも必ず勝たないと...」
一瞬...姫島さんにしては珍しく眉に皺が寄っているように見えたが、すぐにいつものほほ笑みを取り戻した。木場や塔城さんの顔も真剣そのものだ。今日からの合宿を思っているのだろうか。
それだけこの戦いに、部長の婚約に思うところがあるのだろう...主と下僕が互いを思い合う、いいチームじゃないか。
それからしばらく雑談をしていると、部長がイッセーとアーシアさんを引き連れてやってきた。
「さてと、これで全員揃ったわね...それじゃあ早速向かいましょうか!」
おぉー!と声をあげると、部員全員を魔法陣が包んで一瞬で景色が切り替わる。
目の前にあったのは森だった。角度がついている事からここが山の麓であるとわかる。
「これから私達が宿泊するのはこの山の頂上付近に建ててあるグレモリー家の別荘よ」
「頂上...あれ?じゃあなんでこんな所に転移したんすか?部長に限って転移ミスなんてしないでしょうし」
「それはもちろん別荘まで登山する為よ。これも修業だから、真剣に取り組みなさい?」
「ま、まじっすか...」
「じゃあイッセー、早速だけど私と朱乃の荷物を持ってくれるかしら?」
「二人分!?しかもそんなにおっきいリュックサック...」
「これも修業よ。安心なさい、別荘についたらナルトにこんな荷物持ちなんて可愛いくらいの修業をつけてもらう予定だから...ウォーミングアップのつもりで取り組むのよ?」
「え...ナルト、お前が俺に修業つけるのか...?」
「当たり前だろ。お前がライザー倒せなかったら俺燃やされるし...今まではゆっくり成長すればいいやと思って軽いトレーニングにしてやってたけど、今回ばかりは時間が無いからな...まぁ死なない事だけは約束してやるから安心するってばよ」
「てめぇ!いつものトレーニングだってクナイ振り回して斬りかかって来てるじゃねぇか!あれが軽いトレーニング...なのか、そっか。俺は死ぬのか...」
「イッセーさん、頑張ってください!」
アーシアさんが急速にテンションを落としていくイッセーにエールを送る。
「ありがとうアーシア。なんとか頑張るよ...」
「まぁ安心しろよ。ご褒美も用意してやるから」
「どうせご褒美とか言って地獄のトレーニングやらせるつもりだろ!」
「いや...」
俺は他の部員に聞こえないようイッセーの耳に手を当てて小声で呟く。
「お前が好きそうな容姿の美少女に戦闘の指導をしてもらうつもりだ」
「まっ、まじで!?...本当なんだろうな...本当に俺好みの美少女なんだろうな」
イッセーも小声で答える。
「あぁ。間違いなく見た目は美少女だ...お前にやる気を出させる一番の方法はこれだろうと思ってな」
「おいおい、わかってんじゃねぇかお前...!よっしゃー!!...やる気が漲って来た!!」
イッセーが大声をあげる。
「何を吹き込まれたのかしらないけど...まぁ、やる気をみなぎらせているのは良い事ね。それじゃあ出発するわよ!」
部長が山の方をビシッと指さし、宣言する。
グレモリー眷属強化合宿の始まりだ...!
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「イッセー早くなさい?」
部長がはるか後方のイッセーに声掛けする。
イッセーはバテていた。ともすれば倒れそうな程にぜぇぜぇと息を荒げながら山道をのしのしと登っていく...
「くそ...俺だけ、遅れてる...てかナルト!!お前なんでそんなに身軽なんだよ!ちょっとは手伝ってくれよ!!」
「俺がやっても意味ないってばよ...文句言う元気があったら少しでも前に進むんだな」
「ちくしょー!!やってやらぁ!!」
5歩程走ってすぐに減速する。
ここ1ヶ月で結構体力をつけてやったつもりだったがまだ足りなかったらしい。
俺は発破をかけるべくイッセーの横へと向かう。これまでの付き合いでイッセーがどうすれば頑張るのかはある程度知っている。
とことん追い詰めるか、ご褒美を用意するかだ。
朝トレでは俺が鞭、部長やアーシアさんを飴として機能させていた。
「ほらイッセー、お前のその一歩一歩がハーレムへの歩みなんだぞ?頑張れって...それにお前好みの女の子が上で待ってるってばよ?」
「そういやそんなこと...言ってたな...」
イッセーの疲労で歪んだ顔がゆるゆるとほどけていく。
「ぐふふ...よし...よし、よし、おっしゃー!!目指せハーレム !!目指せ美少女!!」
何かしらの録でもないエネルギーを充電したイッセーは今までの亀の歩みが嘘のように駆け出していった。
イッセーのドスケベパワーはとんでもないな...この後俺があいつにする仕打ちを知られたらどうなってしまうのだろうか。
その時は腹パン一発くらいは甘んじて受けるとするか。
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結局息も絶え絶えながら、イッセーは別荘まで登り切った。
「お疲れ様イッセー。最初はどうなる事かと思ったけど、きちんと最後まで登り切って偉いわ」
部長が倒れているイッセーの頭を撫でている。
「ありがとうございます...げほっ!」
「さて、それじゃあ早速部屋に案内するわ。荷物を置いたらすぐに着替えてリビングに集合なさい」
息をつく暇もなく部長の指示が入る。
「おいナルト...お姉さんは一体どこにいるんだ...?」
目を血走らせながらイッセーが俺の肩を掴んでくる。
「ま、まぁ待てって...お前のトレーニングが始まったらすぐに用意するから」
「用意...?まぁそうか。そうだな、楽しみはとっておかないとな...!」
イッセーはそういうと荷物を担いでたったか部屋へとかけていった。
「あの、ナルトさん...」
「どうしたんだ?アーシアさん」
「イッセーさんの修業、私もついて行ってはいけませんか?」
っとと、そう来たか...うーん。正直居てくれるとありがたいけど、居られると困る時もあるんだよなぁ...イッセーのあんな姿やこんな姿はアーシアさんにあんまり見せたくないし、断るか。
「イッセーさんを強くするために、きっと危険な事もいっぱいするんだと思います...例えどんなに危険な事だったとしても私、絶対邪魔しません。それでも...だからこそイッセーさんが心配なんです。すぐ傍に居られれば私の力でイッセーさんを癒してあげられます。どうか許してくれませんか?」
アーシアさんが俺の目を真剣に、まっすぐに見つめてくる。う...気まずくてついつい目線を逸らしてしまった。
逸らした先にいた部長が一度ふぅと息を吐くとこっちにやってくる。
「アーシアに施したい修業もあったけれど、せっかくアーシアが自ら願い出ているのだしそれで構わないわ...どの道、魔力や悪魔の常識については二人セットで学ばせるつもりだったから丁度いいのかもね。ナルト、アーシアもお願いするわ」
「...わかりました。それじゃあアーシアさん...俺はイッセーに結構な仕打ちをするけど、絶対に命には関わらないようにするから、許してくれってばよ」
「はい。ありがとうございます!ナルトさん、部長さん!」
「それじゃあ二人も着替えてきなさい。ナルト、食事の用意はこちらでしておけばいいのかしら?それともサバイバルしながらでも修業する?」
「いや、流石にそれは効率が落ちるんでしっかり食べてしっかり寝てもらう為にもここにはちゃんと帰って来ます」
「そう。それじゃあよろしく頼むわ...イッセーの真の力が判明したらすぐに教えてね」
「はい」
それだけいうと、部長はアーシアさんを連れて二階へと登っていった。
さて、俺も着替えるとするか...
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「それでナルト、俺とアーシアが一緒に修業するのは分かったけど具体的にどこで修業するんだ...?後美少女は何処に居るんだ?あそこか?あそこか!?」
「美少女?」
「あぁなんでもないんだよアーシア!そう、なんでもない!」
「早速修業を開始するって言いたい所だけど、その前にやるべき事があるってばよ」
「あん?何をするんだ?」
「イッセー、お前には死んでもらう」
「...は?」
「...へ?」
予想外の発言に拍子を抜かれた様子の二人を横目に、影分身を用意する。アーシアさんは関係無いけど、イッセーの傍に居させてあげると言った以上見せない訳にもいかないだろう。
二人を担ぐと俺と分身は目的の場所へと駆け出した...
登山中に目星を付けていた場所があるのだ。
一気に森を抜けて開けた場所へと飛び出す。
「おいナルト!俺とアーシアをどこに連れていくつもりだ!!」
「いや、連れていくのはイッセーだけだってばよ」
「俺だけ...?待て、待て待て!!その先道なんて無いぞ!!あるのは...」
イッセーの声が途絶える。それと同時にアーシアさんを担いでいる俺の分身が停止する。
「崖ぇぇぇぇぇぇ!!!待ってくれ!!死ぬ!!!死ぬ!!!!」
「さぁイッセー...このままじゃ死んじまうぞ?...お前の本当の力、見せてもらうってばよ!!!」