イッセーの修行も一段落つき、少しだけ余裕の生まれた俺は一度山を下りていた。
エロ仙人に電話をかけるためだ。
「だから、仙術修業をやらせて欲しいんだってばよ!」
『自然エネルギーをきちんと感じられるようになるまで次の段階には進まんと言っておるだろうが』
「妙木山に逆口寄せする許可をくれるだけで良いんだって!」
『ならん。確かに向こうならば自然エネルギーが豊富だから修業のスピードも上がるだろうが、お前が仙術を使う際の自然エネルギーとはいささか質が異なる。急造でどうにかなるほど仙術は甘くないと、何度も伝えたはずだがのぉ』
「わかってる...けど、一発でいいんだ。一発だけでいいから仙術を利用した一撃がどうしても必要なんだよ」
『リアスちゃんの件は聞いておるがのぉ...やはり認められん。お前も本当は分かってるんだろう?付け焼刃でどうこう出来るほど仙術は甘くない』
「それは...」
『ふぅ...なんの為にお前をリアスちゃんの専属にしたのか、もう一度考えることだ。残りの時間せいぜい足掻いてみせろ!それじゃあの』
それだけ言われると電話を切られてしまった。
「専属になった意味...」
俺と部長の為じゃないのか?
あの時言われた事以外の意味なんて、考えてもすぐには浮かばない。
「くそ」
俺だって時間に余裕があるわけじゃない。木場達との模擬戦だってあるし、影分身で仮想ライザー眷属になって部長達と模擬ゲームだってする予定だし...
時間が空けば自然エネルギーの感知の為のトレーニングをしてはいるが、どうにもコツを掴み切れない。
フェニックスの再生能力は精霊としてのフェニックスの性質を受け継いでいる物だ。精霊としての性質は炎そのもの、つまりフェニックスは自然エネルギーの塊と言ってもいい。だからこそ仙術チャクラが有効打になるはずなんだが...
予想はしていたがあてが外れてしまった。
次の対策を考えないといけないが、そろそろ集合時間だ。
ひとまず戻るとしよう...
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「さて、ひとまずライザーの眷属達のチームアップの予想と対策の話は終わったけれど...問題はやはり」
「ライザー本人ですわね」
時刻は夜、食堂で作戦会議が行われていた。会議と言うよりは作戦の伝達といった様相だが...
イッセーは必死で筆を走らせている。後でちゃんと覚えれているのかテストしないといけないな。
「はっきり言ってしまうと、現状私達には決定打が欠けているわ」
「部長も朱乃さんもすごい力を持ってるのに、それでも決定打にならないんすか?」
イッセーが手を上げて質問する。
「えぇ、フェニックス一族は強力な再生能力を持っているの。ライザーを倒すには神クラスの一撃か、再生する度に精神を削り切るまで絶えず攻撃し続ける必要があるのよ...それほどの攻撃を繰り出すのは正直難しいわ」
「そんな...じゃあ勝てないって事ですか?」
「そんなに簡単に諦めるわけにはいかないわ。必ず倒す方法はあるはずよ...」
部長の顔が少し影を落とす。やっぱり、そう簡単にはいかないだろうな。
「ねぇナルト。念の為に聞いておきたいのだけど、あなたならライザーを吹き飛ばすことが出来るのかしら?」
「...一つだけ有効そうな術は持ってますけど、あんまり積極的に使いたい技ではないってばよ」
「もしも嫌じゃないのなら、一応見せてもらってもいいかしら?」
「わかりました。それじゃあ一旦外に出てもいいですか?」
「えぇもちろん。みんな、行きましょうか」
......
「今からやる技が今の俺が使える一番強力な技です。折角の機会ですから、俺の全力見ておいてください」
「ようやくあなたの実力を見れるという訳ね...いいわ!防御結界は張っておくから好きなようになさい!」
「おう!!」
俺は影分身で3人に分身する。
本体である俺が放出役、一人が回転及び圧縮。最後の一人が性質変化を施していく。
『はぁぁぁぁぁぁ!!!』
チャクラが空気を切る音が強まり、耳障りなほどの高音を発する。
螺旋丸から伸びるチャクラの刃は、やがて残像を残し手裏剣のような形を成した。
「風遁、螺旋手裏剣!!」
完成したそれを目の前の木に向かって叩きつける。
瞬間、接触した木は消失した。そのまま破壊するべき目標もないままに全てを消し尽くし、形を維持できなくなった螺旋丸が爆ぜる。
刃のように性質変化したチャクラが拡散して、ひときわ巨大なドームを作り出す。
全てが終わった後残ったのは巨大なクレーター状の穴だけだった。
「すさまじいわね...でも、これほどの力があるなら...ってナルト!その腕は一体どうしたの!?」
俺の右腕は骨が折れ、所々から血を垂れ流していた。
「ぐっ...これがあまり見せたくないって言ってた理由だってばよ。この技は威力が高いから、こっちにもそれなりのリスクが...」
「そういう事は最初に言っておきなさい!!アーシア、すぐに治療してあげて!」
「はい!」
アーシアさんが治療を施してくれる...そうか、アーシアさんが居るじゃないか。このデメリットはある程度無視出来ると考えても良いかもしれない。
「こら、アーシアが居るからリスクを無効化できるって考えてそうな顔よ」
「...すみません」
「全く...そんなに危険な技ならそうだと先に言っておいて欲しかったわ」
「以後気を付けます...うん、ありがとうアーシアさん。もう治った」
「本当ですか?」
「俺ってばすげぇ回復力高いから、アーシアさんの
「そうなんですか?じゃあ、終わりますね?」
「すげぇなナルト!...お前、そんな恐ろしい技持ってたのか」
「あぁ。正真正銘今の俺の切り札だ」
「確かにナルトの言うとおり気安く出して良い類の技ではないようね...ありがとう、今後の参考にさせてもらうわ。ゲームの事は抜きにしてもあなたのその力を知ってるかどうかは大きいと思うもの」
「うす」
「さて、私はこれからもう一度ライザー攻略の糸口を考えておくから、イッセーとアーシアは引き続き朱乃と魔力の修行、佑斗と小猫、ナルトの三人は各々トレーニングしておいて頂戴」
『はい』
「それじゃあ解散!」
俺、木場、搭城さん以外のメンバーは別荘へと戻っていく。
「ナルト君、僕と模擬戦してくれないかな」
「おう、良いってばよ」
「...私もお願いします」
「もちろん!それじゃあ影分身で...」
「いや、折角なら三つ巴で戦うのはどうかな?今回のゲームでは基本的に数的不利が前提になるんだし、良い練習になるんじゃないかな」
「わかった。それじゃあそうしようか」
イッセーが他の人と修行している時は、この三人で集まる事が多かった。まぁ二人は自分一人でもトレーニング出来るから分かれてトレーニングする時間の方が多いけど。
「それじゃあこの石が地面に落ちたらスタートで...」
俺は適当に拾った石を投げる。
塔城さんが拳を、木場が木刀を構える。
コツンという音と同時に三人で動き始めた。
やはりというか二人は俺を狙ってくる。
木場に突進してぶつかり距離を開ける。
すぐさま反転して塔城さんの攻撃を受けていく...基本的な格闘術は習熟しているけど、単純な脅威度で言うと全力で強化したイッセーの方に分があるかなといった所だ。戦車としてのパワーはあるのだが、一撃一撃がそれほど重くないのが少し痛い...まぁ、ライザーの眷属達を相手取る分には充分過ぎるくらいだろうけど。
隙をついて背後を取り両手を抑え込んで、膝カックンの要領で跪かせる。
...訓練だから良いけど、普通に犯罪的な絵面だなこれ。
「...参りました」
塔城さんが抵抗を辞める...よし、後は木場だ。
「僕が戻るまでに小猫ちゃんを倒すなんて、流石だね」
「2対1を大人しく受けてやれるほど余裕はねぇからな」
「それじゃあ、行くよ...!」
木場が木刀で襲い掛かる。隙は少ないしきちんと俺の動きに対処できる余裕を保っている。
素手で戦っている以上下手に正面から木刀を受けるわけにもいかないので、すべていなしていく...
掌がジンジンと痛み出してきた。
「ふん!!」
無理矢理木刀を掴む。肩から少し嫌な痛みがしたが気にしない。
そのまま引っ張って殴り掛かろとするが、木刀から手を離されたので体制を崩してしまう。
「おっと!」
「ふっ!」
木場が殴り掛かって来たので、カウンターとして木刀を木場の側頭部へと振りこむ。
...ギリギリ間に合わないか?
「っっ!」
両方の攻撃が寸止めで終わる。
「引き分け...いや、本当の闘いなら僕の負けだったかな?」
「そういうこと言い出したらキリがねぇし、引き分けだってばよ」
「そうだね」
木場に木刀を返却する。
「...またすぐにやられてしまいました」
塔城さんが下を見つめている。う、落ち込ませてしまったか...?でも木場と塔城さん二人を相手にしたら流石に対処しきれないし、そもそも模擬戦だから手加減ってのも違うだろうし。
「あー...ほら、次は一対一でやろう。塔城さん技術自体はしっかりしてるからあんまり言える事も無いかもしれないけど、何か力になれるかもしれないし」
「お願いします、ナルト先輩...少しでも強くなりたいんです」
塔城さんがぺこりと頭を下げる。
なんというか...真剣にお願いされてる身でこんな事考えるのは失礼だけど、美少女の後輩に頼りにされてるのって存外嬉しいもんだな。先輩呼びがむずがゆい。
「...変な事考えてますか?」
「いやいや!全然考えてねぇってばよ!」
じと目で睨まれる。この子人の雰囲気にすげぇ敏感なんだよなぁ...主にイッセーが指摘されまくっている。
「それじゃあお願いします」
「おう。木場はどうする?影分身ならいくらでも用意してやれるけど...それともお前もこっちに来るか?」
「うーん、僕は少し見直したい所が出来たからしばらく一人になりたいかな。それが終わったらそっちに顔を出させてもらうよ」
「了解。それじゃあ塔城さん、行こうか」
「はい。祐斗先輩、また後で」
「うん、二人とも頑張ってね?」
木場が手を振る様を背に二人で別の開けた場所に移動することになった。
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お互いに無言で開けたいい感じの場所を探していく。
...ちょっと気まずい。そもそも塔城さんが寡黙なのはあるけど...何を話したものか。
「ナルト先輩は、どうやって強くなったんですか?」
塔城さんがそんな事を聞いてくる。
「うーん...参考にならないと思うけど、影分身の自分とひたすら戦ってたからかな。自分の弱点とか、癖とか客観視できるんだよ」
「本当に参考になりませんね」
「ごめん...」
「...いえ、教えて下さってありがとうございます」
「あー、ほら!この後少しでも何か思いついたら言ってみるからさ、一緒に頑張ろう」
「はい、よろしくお願いします」
塔城さんが少しだけ微笑む。
不意な事でドキリとしてしまった...いかんいかん。しっかりと見てあげないといけないんだから、変な事は考えちゃいけない。
「ここら辺でいいかな?」
「そうですね」
「そのさ、俺もやりたい修業があって...本体の俺が模擬戦するし、体術には一切影響無いから影分身に修業させててもいいかな?」
「全然構いません...ナルト先輩の時間を奪っているのは私ですから」
「それこそ気にしないで大丈夫。今回のゲーム、勝ってほしいのは俺も一緒だから精いっぱい協力させてもらうってばよ...よし。それじゃあ早速打ち込んで来てくれ!」
「...ありがとうございます、それじゃあ行きます」
影分身数十体を作り出して自然エネルギーを感知する修業を付けさせる。
塔城さんの攻撃をいなしていく。
「よっと...うーん。攻撃は思い切りが良いし、的確に急所を狙えてるんだけど...」
パンチを避けて出来た隙にカウンターを入れる。攻撃の代替として塔城さんのお腹に手を添えた。
「防御面が疎かになってるってばよ。俺も人の事言えないし、戦車の防御力も頼りがいがあるんだろうけど...明確に隙になってる」
「...セクハラです」
「うぉ!?ごめん!!全然そういうつもりじゃ....!」
「冗談です。でも...確かに戦車の性質に頼り切りな面はあるかもしれません」
塔城さんが自分の掌を見つめている。
「冗談きついってばよ...そうだな、逆に俺の攻めを受ける方が見える物があるかも。やってみる?」
「お願いします...!」
.........
「はぁ、はぁ...」
塔城さんはかなり息があがっているようだ。
「よし...ひとまず休憩にしよう。何か掴めたなら良いんだけど」
「そうですね...ナルト先輩の戦い方には反撃の隙が見えませんでした」
「そうなるように意識してるからな。攻撃を受けた時のダメージを抑えられる事と、攻撃を受ける事は一緒じゃない。小さなダメージの積み重ねで痛い目を見る可能性がある以上はなるべく受けるべきじゃない。その上でわざと受けた方がいい場面にそれが出来るのが塔城さんの強みだってばよ」
「はい。ありがとうございます」
「後はそうだなぁ...塔城さんの体型なら大きな一撃を狙うんじゃなくてヒット&アウェイでチクチク攻める方が嫌かもなぁ」
「...どういう意味ですか?」
ジトリと睨まれる。
「いや、そういう事じゃなくて...小柄で威力が出ないのを補う為に振りの大きい攻撃をしてるんだと思うけど、逆に小柄な事を活かして蜂のように攻める方が効果的で合ってるんじゃないかなって」
この子結構ノリが良いというか、意外にSっ気あるのか?すげぇ気まずい所で揚げ足取って来るな...まぁさっきのお腹に関しては俺が悪かったけど。普通に寸止めで良かった。
「そうですね...考えてみます」
「あぁでも!もちろん戦いやすいのが一番だから、自分とちゃんと相談するってばよ?俺の意見なんて何の根拠もないんだし」
「いえ、その通りだと思います...このまま色々教えてもらえると嬉しいです」
「なら良かった」
「...そういえばナルト先輩。あれは何の修業なんですか?」
「あれ?あれは大気中のエネルギーを感じ取る修業で、仙術の足掛かり...」
そこまで言った所で塔城さんが猫のようにすばやく後ろに飛び退いた。
「今、なんて言いましたか?」
塔城さんが睨んでくる...あれ?何か地雷踏んだ?どこ???
「えっと...どういう意味か分からないけど、仙術の事?」
「なんで...なんで先輩が仙術の事を知ってるんですか!!?」
「ち、ちょっと待って!なんでそんなに怖い顔してるんだってばよ?」
「いいから教えてください!!」
「えl!?えっと...仙術は忍の中でも極一部に伝わっている技術なんだよ。そんで俺の師匠が仙術を知ってて、それを習う為に修業をつけてて...まずは周囲のエネルギーを感知する所から...」
「......本当ですか?」
「嘘じゃない。塔城さんなら分かるだろ?」
良く分からないが塔城さんにとって仙術は地雷みたいだ。理由は分からないけど...
「.....すみません。取り乱しました」
しばらくの沈黙の後、塔城さんが臨戦態勢を解いた。
「その...どうして塔城さんが仙術にそれほど過剰反応するのかは分からないけど、塔城さんをどうこうしようとかは一切ないってばよ。絶対に何もしない、嫌なら塔城さんの前で修業もしないし...」
「仙術は...ダメです。先輩が変わってしまう所なんて見たくないです」
塔城さんが顔を顰めながらつぶやく。
どういう事だ...?あれか?カエルになっちゃうみたいな事か?
「大丈夫。細心の注意は払ってるし、この段階じゃカエルになる事はないってばよ」
「カエル...?」
塔城さんが怪訝そうな顔をする。あれ?そういう事じゃないのか...?
「えっと...」
「ごめんなさい。今日はありがとうございました...私は一旦別荘に戻ります」
ぺこりと頭を下げるとこちらを見る事もなく走り去ろうとした。
「ま、待ってくれよ塔城さん」
「...っこないで下さい!」
伸ばした手を弾かれる。
一度こちらを悲しそうな目で見て、そのまま走り去ってしまった。
弾かれた手に触れる。
痛い...拒絶の痛みだ。もうとっくに慣れてたつもりだったけど、オカルト研究部での生活で忘れていた...誰かに拒まれる痛み。
でも...理由は全く分からないけど、きっと塔城さんも痛いのだろう。
過去に何かがあったんだ。仙術に関して、辛い過去があるのだろう。じゃないとあんな顔をするわけが無い。
部長や木場なんかに聞けば知れるのかかもしれない。けど、それは卑怯な気がした。
話そう...塔城さんと。折角出来た初めての後輩なんだ、あんな顔をさせてそのままになんて出来ない。
俺は追いかける為に立ち上がった。