しばらくはゆっくりなペースになると思います。
イッセーの部屋の窓から侵入し、ベッドにイッセーを寝かせる。
制服やらなんやらは、朱乃と呼ばれた悪魔が治してくれていた。とても助かる。
にしてもどうしようかな...このまま堕天使の拠点に向かってもいいが、さっきリアス・グレモリーと話していた通りはぐらかされるだろう。残念だがイッセーは一般人では無いというのをさっき見せつけられた所だったし。
そんな風に考えていた帰り道、不意に悲鳴が聞こえた。
全速力でそこに向かうと、一人の女性が今にも化物によって壁際に追い詰められていた。
「らぁ!!」
横っ腹に飛び蹴りを食らわせる。
...よし、間一髪無事だったようだ。
「大丈夫か?」
「ひっ...あ、あの...わた...うぇっ」
「安心してくれ。俺がやっつけてやるから」
ニコリと笑いかける。
「え...?」
「ナンダァオマエハ...!オレサマノ...ジャマスルナァァァ!!!」
両手が鎌のようになっている異形が襲い掛かってくる。クナイで鎌を受け止めて、腹に蹴りを入れる。
「グハッッ!!!」
「わりぃけど、さっさと倒させてもらうぞ...」
影分身を出現させて、螺旋丸を作り出す。
腹部の痛みに悶え苦しむ異形の顔面に当てて、粉微塵に吹き飛ばした。
「流石の手際ね...」
後ろから声が聞こえる。さっき聞いたばかりの声だ。もうしばらく会うつもりも無かったんだがな...
「もっと早くくりゃ良かったのに」
ばさりと髪をなびかせながら、リアス・グレモリーが眷属を引き連れて現れた。
「そのつもりだったのだけど、あなたが現れたから...折角なら実力を少し見せてもらうと思ったの」
「...一般人を見捨ててか?」
「いいえ。あなたが間に合うと分かってたからよ。もしもの時は止められるように準備していたし」
「そりゃ用意の良い事で...あんまりそういうの好きじゃないな」
「そう...気分を害したようでごめんなさいね?」
「いや、そこまでは...まぁいいや。それじゃあ、この人の記憶消去頼むってばよ。俺ってばあんまり得意じゃないし、そういうのは悪魔の専売特許だろ?」
「それはもちろん構わないけど...少し話があるの」
「何だ?」
「オカルト研究部に入部する気はないかしら?」
どういう事だろうか。悪魔に勧誘しているのか?
正直意味が分からない。
「悪魔になる気はないぞ?」
「そういう意味じゃないわ。ただ、駒王学園に居る間オカ研に席を置いてみてはどうかというお誘いよ?もちろん眷属に勧誘するつもりもないわ...あなたがなりたいと言うなら話は変わるけどね」
「うーん...」
一応、こいつらとの接触も任務の内ではあるし、部活に入ってる方が探りを入れやすいか?
向こうとしても、俺にぴょいぴょい動き回られるよりも近くに置いておく方が安心出来るのかもしれない。
悪くない提案だとは思うけど、わざわざする必要があるって程でもなぁ...
まぁ一応、イッセーが酷い扱いを受けないかだけでも見ておけるのはいいかもしれない。
「分かった。それじゃあ二度目になるけど、短い間世話になるってばよ」
「えぇ、うずまきナルト君。よろしく頼むわ」
右手を差し出されたので握り返す。
「さて、他のメンバーの紹介もしないとね。この子が朱乃」
「姫島朱乃と申しますわ。よろしくお願いいたします」
俺が殺したはぐれ悪魔を処理しながらぺこりとお辞儀をされたのでお辞儀し返す。
「そしてこの子が祐斗」
「木場祐斗だよ...君と同じ二年生だ。よろしくね?」
「よろしく」
「そして最後にこの子が小猫」
無言でぺこりと頭を下げられる。
俺も無言でぺこりと頭を下げる...
「さて、挨拶も終わったことだし早速戻りましょうか...あなたはどうするの?」
リアス・グレモリーに話しかけられる。
「俺はもう少し残って町をうろついてくる。明日の放課後からそっちに行けば良いのか?」
「そうね。そうだ、貴方あの子のクラスメイトだったわよね...ついでに彼も連れて来てくれると助かるわ。知り合いが一緒ならあの子も気が楽かもしれないし」
「了解...それじゃあまた明日」
「えぇまた明日」
他のメンバーも手を振ってくるので応じる。
「うーん...軽率だったかなぁ」
夜の町を闊歩しながら考える。
今考えても特にデメリットは感じないが、単純にめんどくさい可能性がある。
まぁエロバカ共に放課後永遠とダル絡みされるよりはマシか。イッセーはオカルト研究部に入るのだろうし、そっちに逃げれると思えばまぁ。
などと考えながら自販機でお茶を買っている時、それは起こった。
「...っ!解!!」
何かによる精神的作用を受けた。即座に解除したが実際の所それほど強力な物でも無かったようだ。何もしなくても影響はほとんど無かったかもしれない。
まぁ、用心するに越したことは無いから間違った対応では無いが。
あれか。イッセーを殺した堕天使ってのが例の彼女さんか彼女さんを操ってる奴で、用事が終わったから証拠隠滅したって所かな。
奴らの目的は実際の所何なのだろうか...イッセーを殺す事なら四人も居る必要はないだろう。
他にもちらほらと堕天使に身を寄せたであろう破門神父がやって来ている。それなりの規模の儀式でも起こすのかもしれない。
...潰すか?けどなぁ、これが堕天使上層部の命令での計画だったなら堕天使側で雇われてる忍の立場が悪くなるかもしれないし...
「んー...まぁ考えるだけ無駄か。向こうが動いてから考えるしかないってばよ」
結局その日のパトロールも無為に終わった。
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次の日、イッセーはやたらと元気が無かった。
そらそうか、昨日死にかけたんだし。
顔色を悪くしながら、彼女に殺される夢を見たなどと言っていた。
しかし、昨日の力を受けたので当然松田も元浜もそんな事覚えていない。ギャーギャーと嫉妬しやがって、本当に知らねぇよと喧嘩し始めた。
あまりにもしつこいのでイッセーは証拠を見せるべく携帯を取り出して...何もないことに気が付く。
携帯を隅から隅まで調べる。が、当然何も出てこない。仕舞いには二人に真剣に心配される始末。
そんな様子に、本当に二人は覚えていないのだと気づいたイッセーは酷く動揺していた。
「ナ...ナルト...お前は覚えてるよな...?」
縋るような目で尋ねられる。今この場で答えるわけにもいかないので無言で首を振る。
「そんな...」
ちょっと見てられないな。
「イッセー、お前疲れてるんだよ。顔色も悪いし...俺、イッセーを保健室に連れていくってばよ」
「あぁ、そうだな...頼むわナルト」
松田に言われる。
「大丈夫だって、ちょっと寝不足なだけだから...」
「いいから、ちょっと来いって」
「お、おう...」
俺はイッセーの肩を抱えて教室の外へと連行する。
しばらく歩いて階段の踊り場で止まる。ここなら人もそう居ないだろう。
「保健室に行くんじゃなかったのか?」
「それは行きたいなら後で連れていく。それより大事な話がある...というよりは話の場を設けるから予定空けとけって感じか」
「あん?」
「今日の放課後、俺と一緒にオカルト研究部の部室に来てもらう」
「オ...オカルト研究部だって!?それって二大お姉様が居ると言われてるあの...!?入部条件が一切不明で謎に包まれているというあの!?」
「そう、そのオカルト研究部」
「まじか...いや待てよ、という事はお前オカルト研究部の部員なのか!?」
「いや...あー、そうだな。今日から入部だ」
「おい!ずりぃーぞ!!俺も入れてくれるように...あれ?じゃあなんで俺も行くんだ?まさか寂しいなんて柄じゃ」
「まぁ簡単に言えばお前も勧誘されるからだ」
「まじか!!よっしゃー!!二大お姉さまの居る部室にいけるなんて!!!あ、でも...」
テンション爆上げだったイッセーが突然黙りこくる。彼女の事でも思い出したのだろう。
「まぁ、そこで大事な話があるんだ。夕麻ちゃんの話って言ったら分かるな?」
「は...?今なんて」
「だから、お前の彼女だった夕麻って子について話があるんだって」
「さっき知らないって...それに、実際に携帯には何もなくて二人も覚えてなくて...でも、お前は覚えてて...あぁもう訳わかんねぇ!その上オカルト研究部って...あれか?これはオカルト的な現象の仕業でしたって事か?笑えねぇんだけど...」
イッセーは頭をガシガシと搔きながら動揺している。
「イッセー見てろ」
「なんだよ!」
俺は十字に印を組んで影分身の術を使った。
四人に分身する。
「...は?」
「お前が知らないだけでこの世には不思議な事があるって事だ。詳しい事はオカルト研究部で説明してやれるから、放課後俺と一緒に来てくれ」
「そ...んな事、てか!知ってるなら今言ってくれてもいいじゃねぇか!」
「ダメだ。友達だしあんまりこういう事言いたくねぇけど、これはお前とオカルト研究部の問題なんだ。俺は直接関係ない。だから、話すべき人に話してもらうってばよ」
「...わかった。いや、全く意味わかんねぇしなんで言ってくれないんだって思うけど、放課後オカルト研究部に行けば全部説明してくれるんだな?」
「あぁ。すまねぇな」
「...でも、ちょっと一人になりたいから保健室行ってくるわ。大丈夫、放課後にはちゃんと戻るから」
「わかった。それじゃあな」
「おう」
イッセーはトボトボと歩いて行った。
まぁこの後衝撃的な話を聞かされまくる予定だから、保健室にいる間に心の準備をしてもらえれば良いだろう。
結局、イッセーが帰って来たのは昼飯前だった。
とはいえ、それからもずっと考え事をしていたようで、放課後になって俺が声をかけるとびくりと体を震わせていた。
「それじゃ、今から行くぞ」
「お...おう。そういえばオカルト研究部ってどこにあるんだ?」
「旧校舎の二階だってばよ」
「旧校舎ってあの学園七不思議の一つがある?」
「それは知らねぇけど...」
校舎を出て裏手に回り、旧校舎の中へと入っていく。
「古そうだから中もボロボロかと思ってたけど、案外綺麗なんだな」
「そりゃ今でも使われてるからな...っと、ここだな」
「うわ、ほんとにオカ研だ...」
イッセーはオカルト研究部と書かれた室名札を見て呟く。
「いいかイッセー。一応言っておくが、この扉の先はオカルト一杯の非日常だ。引き返すなら今...って言ってやりてぇけど、残念ながらお前はもう手遅れだ。心の準備だけはしとけよ」
「わ、わかった...よし!どんとこい!」
イッセーが元気よく返事したので俺はドアをノックする。
ガチャリと開けると...
「本当にリアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩が居る!!これが非日常...!」
イッセーがノータイムで歓喜した。こいつ...
「あら、いらっしゃい兵藤一誠君、うずまきナルト君」
「こ、こんにちわ!初めまして、兵藤一誠と言います!!」
「こんにちわ」
「えぇ。早速だけど二人とも、そこにかけてくれるかしら?お話があるとそこの彼に聞いてるでしょう?」
「はい!わかりました!!」
イッセーはハイテンションで返事する。
今朝のシリアスイッセーは何処に行ったんだ。
「まずは自己紹介からしましょうか、兵藤一誠君...イッセーって呼んでいいかしら?」
「そ、それはもう!是非お呼び下さい!」
「そ、じゃあ皆。イッセーに挨拶なさい?」
そこからオカ研のメンバーが挨拶をしていく。
姫島朱乃が俺達にお茶を出してくれる。
「さて、自己紹介も終わった所で...あなたを歓迎するわ、兵藤一誠君」
「あ、はい」
「悪魔としてね...」
「あ...悪魔?」
「そ、悪魔。単刀直入に言えば私達は全員悪魔なの...そこにいるうずまきナルト君を除いてね」
「はぁ...」
イッセーは半信半疑といった様子だった。
「信じられないかしら?なら...これで納得してくれる?」
リアス・グレモリーと眷属全員が背中から翼を生やす。
「翼...!じゃ、じゃあ二大お姉さまが悪魔で、塔城小猫ちゃんが悪魔で、木場も悪魔で...あれ?じゃあナルトは一体なんなんだ?」
「彼は私達の...そうね、ビジネスパートナーと言った所かしら」
なんとも言えない関係なのでとりあえずそれでいいやと頷く。
「はぁ...えっと。それで、悪魔の皆さんが俺に何の用なんでしょう」
「だから、先程言ったけれど貴方が悪魔で私の眷属だからよ」
「はい?一体何を言って...」
「天野夕麻」
リアス・グレモリーがその言葉を発すると同時にイッセーの顔が難しい物になっていく。
「...彼女の事と一体何の関係があるんですか?」
「そうね、昨日貴方の身に起こった事を説明してあげる」
....
「えっとえっと...?夕麻ちゃんは堕天使で、悪魔の敵で、俺の中のセイ...何とかを狙って殺して、そこを先輩が悪魔として生き返らせたって...なんだよそれ、意味わかんねぇ」
イッセーはリアス・グレモリーの言葉を反芻しながら頭を抱えた。
「
「それ...そもそも何なんすか」
「そうね、魔力の満ちているこの空間なら発現も容易かもしれない...じゃあ、手を上にかざしてみなさい?」
「う、上?」
「そう、早くなさい...そう。それじゃあ、目を閉じてあなたが一番強いと感じる存在を想像してみなさい」
「一番強い...ド、ドラグソボールの空孫悟かな」
「それでいいわ。その人が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ」
「浮かべました」
「そう、じゃあそれを真似しなさい。軽くじゃダメよ?全力でやりなさい」
「そ...それはちょっとこの歳では」
「いいから、早くなさい!」
「は、はい!えぇと...マジか。うぅ...」
ひとしきり迷った様子を見せると、何かを決心したように頬を叩く。
「ドォォォラァァァゴォォォォンンンン...波ぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
イッセーは全身全霊でやった。本当にやりきってしまった。
ドラグソボールの時点で察していたが、いくら憧れの先輩の命令とはいえよもや本当にやるとは...
しかも、本当に全力の時のドラゴン波だ。軽く尊敬の念を覚えた。
やがてイッセーの左手から赤い光があふれ出す。
「うわ...何だこれ!!どうなって...て、なんじゃこりゃああああ!!!」
イッセーが叫ぶ。そりゃそうだ...突然左腕に籠手が装着されたのだ。当然驚く。
「それが
「これが...これのせいで...」
「そう。堕天使はあなたのその力を危険視して殺した」
「タチの悪い冗談とかじゃないんですよね...」
「えぇもちろん。私が今語った事は全て事実よ...だからこそあなたは今日ここに呼ばれたのだもの」
「そっか...そうですか」
イッセーはぺたりと座り込んだ。
...まぁ、落ち込んでるよな。初めて出来たってあれだけはしゃいでた彼女が、堕天使で、自分を殺す為に近づいてきてたなんて。
「ひとまず、俺の状況は分かったんだけど...結局ナルトは何なんだ?」
「俺?俺はまぁ...簡単に言えば、忍だ」
「忍...ハッタリ君とか、忍玉乱ノ助とかの?」
「そ。その忍...ここには任務で来た。そんでリアス・グレモリー先輩はここの土地の所有者だから、任務を受ける為の許可を貰ってる。その関係で少し知り合ったんだってばよ」
「なるほど...ってか、そもそも忍って何なんだ?」
「忍とは...か。まぁそうだな、簡単に言えば傭兵集団って所か?」
「傭兵集団?」
「あぁ。詳細はどうでもいいから省くけど、チャクラっていう特殊な力に目覚めた人間達が集まって出来た集団が忍だ。一応結成当時の目標は人間と異形との決別だったんだが、流石に面と向かって戦ったら負けるのは分かってたからな。傭兵として自分達を悪魔や堕天使に売り込んで、裏で暗躍しながら両方の勢力を削っていこうとした。天使とはほとんど関りが無いけどな」
「つまりなんだ?悪魔や堕天使の敵なのか?」
「最初はな。だけどそんな企みもいずれバレる。両方の勢力からの圧力で見事に潰されて忍は勢力として崩壊した。今は手の届く範囲の人間をルールを守らない異形の不当な脅威から守りながら、たまに悪魔や堕天使に雇われるだけの存在なんだってばよ」
「へぇ...忍ってのも大変なんだなぁ」
イッセーは自分から聞いてきた癖にどうでもよさそうに答える。この野郎...
「あら、そこまで悲観的に見なくていいと思うのだけど?確かに勢力としての力は失ったけれど、傭兵としての実力は昔からずっと折り紙付きですもの。特に暗殺や諜報活動に関しては一流よ」
「暗殺...すっげぇ忍っぽいな。ナルトもそういうのやるのか?」
「いや、俺はそういうの苦手だってばよ...それに、俺の役割はそういうのとは相容れないからな」
「どういうことだ?」
「なんでもねぇ!ま、忍についてはこんなもんで良いだろ?」
ニカッと笑いかける。
「あぁ...そうだな」
俺がこれ以上話すことは無いとばかりに話を切ったからだろうか、イッセーは素直に聞いてくれた。
「さて、ちょっと急ぎ足だったけど話すべき内容は大体話せたかしらね...分からない事があったらなんでも聞いてちょうだい?」
「はい!分からない事だらけですけど一旦大丈夫です!」
「そう...?まぁ、疑問が浮かんだら聞いて頂戴?それでね、イッセー。早速だけど貴方には仕事を与えるわ。悪魔として、私の眷属としての最初のお仕事よ...」
イッセーはゴクリと唾を飲む。悪魔のお仕事なんて言われると、あんまりいいイメージは無いわな。
俺もちょっとどんな仕事か気になる。
「それは...チラシ配りよ!」
「チ...チラシ配り...?」