リアルが多忙でなかなかハーメルンを開く時間がなく...
「チラシ配りってあの、駅前でやってるやつですか?」
イッセーが拍子抜けといった様子で聞き返す。
「少し違うけれど大まかにはそうよ。このチラシは転移魔法陣になっていて、欲深い人間が願いをこのチラシに込めると魔法陣が反応して私達が召喚される仕組みになっているの。そこで契約を交わす事で願いを叶えて代償を貰うのが悪魔の大切な仕事なのよ」
「なるほど...代償ってのはその」
「基本的には金品よ、叶える願いの大きさによって代償は変わっていくの。だから願いの大きさによっては命が代価になる事もあるわ」
「い...命って、人を、こ、殺さないといけないんですか!?」
「あぁ...安心なさい。もっと昔ならそんな事もあっただろうけど、最近はそこまで大きい代価だとまず契約不成立になってるわ。それに、私自身そういった願いをする人の願いを叶えるつもりもないから気にしなくていいのよ?」
「そうですか...良かった」
イッセーはほっと胸をなでおろす。
「やっぱり悪魔のお仕事というと物騒なものを想像しちゃったかしら?」
「正直ちょっと...でも安心しました!」
「そう、良かったわ」
リアス・グレモリーがにこりと笑いかける。
「にしても悪魔の仕事ってのも結構地道な物なんだな。てっきりもっとこう...派手な感じかと」
ついそんな言葉が口に出てしまう。契約と任務の違いって意外にないのかもしれないなと思ってしまう。
「そんな事も無いわよ。イッセーにチラシ配りをしてもらうのは悪魔の仕事や常識を一から知ってもらうためで本来は使い魔に配らせているし、今は学生との両立だから本格的に悪魔としての活動を行っていないだけで、一人前の悪魔になればもっと大口の契約を交わしたりもするわ?」
「なるほど...今は研修期間のような物だと」
「ええ。そう思って貰って構わないわよ」
「えっと...俺ってこれから使い魔の仕事をするんすか?」
少し嫌そうな顔をするイッセー。
「そんな顔しないの。祐斗も小猫もやった事なのよ?私の眷属になったからにはしっかりと下積みをしてもらうわ...一つ一つの地道な積み重ねが悪魔としての評価に繋がっていくの。それにねイッセー。頑張れば貴方だって爵位を貰えるかもしれないわよ?」
「爵位...?爵位って...それってつまり貴族になれるって事ですか!?」
「えぇそうよ。悪魔の社会は貴族制なの。本来は血筋を大事にするから貴族の血筋の悪魔以外はなれないのだけれど、近年は純血悪魔も減少しているからあなたのような転生悪魔でも優秀な功績を残せば爵位が与えられるようになっているわ...転生悪魔の貴族はこれからも増えていくだろうし、貴方は私の下僕なのだからチャンスはいくらでもあるはずよ。だから頑張ってみなさい?」
「貴族って事は、ハーレムも作れるんですか...?作れますよね!」
「え?えぇ...まぁ、そういった趣味嗜好の悪魔も多いわね」
「やった!!ハーレムを作ったら、その...エ、エッチな事をしてもいいんですよね!?」
「うーん...まぁ、あなたの下僕にならいいんじゃないかしら?」
「うぉぉぉぉぉぉ!!リアス先輩、今すぐチラシ配りに行きます!!行かせてください!!!」
そんなにハーレム作りたいのか...作りたいんだろうなぁ。この数日でこいつの性欲の強さは良く分かってる。
まぁ...明確な目標が出来て良いのかな?中身最低だけど。
「落ち着きなさいイッセー、後でいくらでも仕事はさせてあげるから...あと、これからは私の事は部長と呼びなさい。あなたもようずまきナルト君?」
「うぇっ!?」
突如俺に矢印がむいて驚いてしまった。
「なんで俺も...」
「オカルト研究部に加入したからにはそうしてもらうわ。ほら、日本には郷に入っては郷に従えってことわざがあるでしょう?」
「はぁ...分かったってばよ」
「よろしい。それじゃあ、本当はもう少しイッセーに悪魔についてのお話をしたい所だけど、せっかくやる気いっぱいになっているのだし仕事に行ってもらおうかしら?」
「はい!よぉし...ハーレム王に、俺はなる!!!」
イッセーが両の手を天に掲げて叫ぶ。
頭を抱えてしまう。なんで俺こんなのと友達やってるんだろ...ついさっきまでのシリアスなイッセーを返してくれ...いや、落ち込んでるよりは良いんだけどもうちょっといい塩梅でさ...
そうこうしているうちに、イッセーはリアス...部長から変な機材とチラシを受け取って出て行ってしまった。
「なんか...イッセーがすみません」
「あなたが謝る必要ないじゃない。それに、面白い子が下僕になってくれて嬉しいわ。馬鹿な弟が出来たみたいでね」
「はは...」
「それで、あなたは今晩どうするのかしら?せっかくオカルト研究部に入ってもらったのだし、ここにいてくれればこちらの持ってる情報網からの情報を提供してあげられるけれど」
「あー...せっかくならイッセーの働きぶりも見たいし、今日も自分の足で動く...きます」
「無理に敬語にしなくてもいいのよ?」
「いやまぁ。さっき郷に入っては郷に従えって言われたし、今まで少し偏見が入って強めに当たってたので...ちょっとは改めようかなぁと」
「そう...あなたの好きにしてちょうだい?それに、そう言ってもらえるとこちらも嬉しいわ。せっかくの出来た縁だもの、良好な関係を築けると嬉しいからね」
「違いないってばよ。それじゃあ、今日はこれくらいで」
「えぇ、また明日」
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イッセーを探すべく夜の町を駆け抜けていたが、探すまでもなく騒がしい男が一人チャリンコを漕ぎまくっていた。
「ハァ、ハァ...次ぃ!!!」
そんなにハーレムが待ち遠しいかイッセーよ。俺はチャリを漕ぐイッセーに追いつくと並走を始めた。
「よぉ、調子はどうだ?」
「うわ!...なんだナルトか。ハァハァ...そっか、忍とか言ってたもんな...ゼェ...チャリと並走くらいわけないのか...げっほ!!」
「一旦休憩にしたらどうだ?」
「いや...一日でも早くハーレム王になりたいからな...さっさと...下積み終わらせて評価を...」
「そ、そっか...まぁそれなら頑張ってくれってばよ。最近は堕天使とかはぐれエクソシストがうろついてる事もあるから、襲われそうになったらちゃんと逃げるんだぞ?イッセーじゃ100発100中で負けるから」
「ま...まじか...そんな奴がうろついてるのに...いやでも!ハーレム!!へこたれてられねぇ!!」
イッセーはそれだけ言い残すと走り去ってしまった。
「さてさて...」
これからどうするか...いつも通りの巡回でも構わないけど、正直堕天使側が動いてくれないからやりがいが無いんだよな。
とはいえ何も起こらないと決まってる訳じゃない。イッセーが堕天使の誰かと接触したらまず間違いなく上手く対処できないだろうし、イッセーの後をついていくか。
屋根を伝いながらイッセーの後をついていくが、ハーレムハーレムと叫びながらチャリを漕ぎ続けているだけだった。
しばらくしてイッセーが自販機の前に停まった。休憩なのだろう、俺も休憩にするか。
「よっと、後何枚くらいあるんだイッセー?」
「うわぁ!びっくりした...急に飛び降りてくるなよ」
「悪ぃ悪ぃ」
「ったく...後10枚で終わりだけど?」
「おぉ、もうすぐ終わるんだな。厄介事に巻き込まれなかったようでなにより」
「なぁ、堕天使とかエクソシストってそんなに危ない奴らなのか?」
「今のお前にとってはな。部長は何かあっても自分達の陣地だからすぐに転移出来るって判断でお前を送り出してるんだろうけど、本当に相対したら普通に殺されかねないな。お前上手く対応なんてできないだろ?」
「殺され...」
「ま、そんなに心配しなくていいってばよ。ただでさえ悪魔の陣地で動きにくい上に俺がこうやって毎晩町を巡回してるから、向こうはかなり動きにくいはずだ。少なくともここしばらくは教会に引きこもってるしな」
「そっか...引きこもってるなら心配しなくていいな...にしても、昨日今日で色々な事が起こりすぎだよなぁ」
「目が覚めたら悪魔になってたんだもんな」
「ほんとだぜ...そういやさ、悪魔とかの事知ってたからかもしれないけど、俺が悪魔になっても態度を変えたりしないんだな」
「そんな事もないってばよ。俺は今までずっと悪魔ってだけで穿った目で見てたし対応してた。今まで色んな悪魔と戦ったし殺してきたからな。けどまぁ...任務で部長達となし崩し的に関わって、仲良くしてたクラスメイトまで悪魔になったりして...悪魔だって普通に生きてるんだなって改めて感じて、偏見で見るのはやめようって思ったんだ。だから、ほんの昨日までの俺だったら態度を変えてたかもしれない」
「そ、そっか...なんか難しい事は分かんねぇけど、こういう裏の世界?ってやつの先輩としてこれからもよろしく頼むぜ。もちろん友達としてもな!」
イッセーが俺に拳を向けてくる。
「おう」
俺もそれに拳を合わせた...こういうの初めてだな。なんかちょっと照れくさい。
「うし...!それじゃあ俺はさっさと残りのチラシを配ってくる!また明日な!」
「あぁ、また明日!」
イッセーはチャリを漕ぎながらこちらに手を振ってくる。俺はそれを見送った後、拠点に帰ることにした。
...ふと、先程合わせた拳を見つめる。
「友達...か」
この体になってから、まともに友達と呼べる人間は出来なかった。NARUTOよろしく俺は人柱力のバケモノ扱いでほんの一握りの忍しかまともに接してくれなかったし、学校の子供に関しても俺が憑依する前のナルトの性格なのか忍関係者でもいたのか、俺は最初からいじめの対象になってしまっていたし。精神年齢のズレで話が合わなかったのも相まって、まともな人付き合いなんて諦めてた。俺自身もこんな知らない世界の友達なんかいらないって思ったりしてな...
本当は...寂しかったんだな。ちょっと友達だって言ってもらえたくらいでこんなに心が弾むなんて。
まだ知り合って数日のくせに、まだまだお互いに知らない事なんて腐るほどあるくせに、友達だって思えるだけでこんなにも心が温かい。どうしようもないバカで、変態で...でも、どこか憎めない俺の友達。
「ハハ...」
あまりにもクサイ考えで笑いがこみ上げてくる。
元の世界に帰りたいっていう目標もある。じいさんを殺した奴への恨みもある。サスケへの因縁もある。人柱力としての使命も、忍としての責任もある。
それでも...少しくらい、ほんの少しくらい遠回りしたって構わないだろう。せっかくこの世界で初めて自分の手で手に入れた、たった一つの繋がりなのだから。