イッセーと俺がオカルト研究部の部員になった日からしばらくたった。
相変わらずたまに堕天使が出歩くくらいで動きが無い。
オカルト研究部としての生活も、嘘みたいに平穏に過ぎていった...というかイッセーや部員の皆と教室で駄弁ってるだけだった。
しいて言えばイッセーがチラシ配りを卒業して、いよいよ契約を取りに行くという話になったがイッセーの魔力が少なすぎて転移出来なかった事件があったくらいだ。
それが理由でイッセーは悪魔だというのに今もチャリをこいで必死に働いている...ご苦労な事だ。
契約自体も、イッセーが担当する人が悉く色物ばかりでなかなかうまくいかないと悩んでいた。ドラグソボールごっこだとか、魔法少女アニメ徹夜視聴とか、イッセーが悪いようなイッセーは悪くないような...ただまぁ、アンケートでは非常に好評らしいのはイッセーらしいかもしれない。
いい加減飽きが来た頃、事態は突然動き始めた。
きっかけはまたしてもイッセーが連れてきた。イッセーは厄介事を呼び込む体質でもあるのだろうか?...すごい
「おいナルト!聞いてるのか!?」
「わ、悪い...少しぼうっとしてた」
「まじでちゃんとしてくれって...お前だけが頼りなんだぞ!?」
「大丈夫だってばよ、ちゃんと話は聞いてたからさ...」
俺は今イッセーから相談を受けている。
事の発端は、今日イッセーがとあるシスターとぶつかった事から始まる...
アーシアと名乗るシスターは、海外からここ駒王町に来たそうだ。言葉の通じない日本で道に迷っていた所、イッセーとぶつかってしまう。悪魔の権能で言語が自動翻訳されるイッセーは困っていたその子の為に道案内をするが、肝心の行き先が現在堕天使の潜む教会だった...という話だ。
ちなみに好みドストライクの美少女だったらしい。それはどうでもいいけど。
「それでイッセー、お前は俺に何をしてほしいんだ?」
「何っていうか、上手く言えないけど...あの子が心配なんだよ!堕天使はあの教会で何か企ててんだろ?あんなにいい子が堕天使の計画って奴に進んで協力するとは思えないんだ。なんか...嫌な予感がするんだよ」
「まぁ...イッセーの言いたい事は分かるんだけどさ」
「なら!」
「はっきり言うとお前のそれは余計な心配ってやつだってばよ」
「...どういう事だよ」
「シスターってのは本来教会で神に仕える存在...つまり天界側の人間。なのに堕天使の所に行くって事は、教会を破門になって身寄りが無かったって事になる。いわゆるはぐれってやつだ」
「今この町にいるはぐれエクソシストってのと一緒って事か?」
「あぁ。その子は堕天使側につく事でしか生きられなかったんだろう。お前が少し会っただけでいい子だって言うくらいだし、何か理由はあるのかもしれないが...それがその子の選んだ道なんだ」
「でも...!堕天使は俺を殺した残酷な奴らで...」
「あぁ。でも、それはどこの陣営にも...もちろん俺にだって言える事だ。あいつらにはあいつらの理由があってお前を殺した。少なくともあいつらの立場に立つとそれが正しい事だったんだ」
「なんでだよナルト!俺はそんな陣営がどうのこうのなんて話をしてるんじゃ...!」
「分かってるってばよ。確かにその子が心配なのは事実だし、少しきな臭い...俺も探りは入れてみる」
「本当か!?」
「あぁ。ただ、俺が言ってた建前ってやつをお前にも理解して欲しかったんだ。お前がリアス・グレモリーの眷属である以上...悪魔である以上陣営が関係ないだなんて言っても通じない事があるんだからな」
「...わかった。いや、分かってないのかもしれないけど、ナルトが言いたいことは分かった...アーシアの事をどうか頼む」
イッセーが頭を下げてくる。よっぽどいい子だったのだろうか、イッセーの事だし美少女相手なら下心を持ちそうなものだが、イッセーの顔はただ心配そうに歪んでいた。
こりゃ一肌脱ぐしかないか...
「任せとけってばよ!その為に俺がここに居るんだからな」
「あぁ!ありがとうナルト!」
顔を晴れさせたイッセーの肩をポンと叩きその場を去る。
...イッセーの言う通り嫌な予感はする。数日中に事態が動くだろうな。
いよいよ任務の終わりも近いかもしれない。
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イッセーからシスターについての相談を受けた二日後の夜、件のシスターらしき少女を引き連れてはぐれエクソシストと思しき男が教会から出てきた。
...イッセーには任せとけと言ったが、実際の所任務で来ている以上俺はこのシスターの事を冷静に見極めないといけない。
彼女が教会に来たという頃から教会で動きが見られだしている。俺は潜入が大の苦手なのでこうして遠巻きから見る事しか出来ないが、明らかに堕天使が出入りを激しくし始めている。更に数人の堕天使が増えた事も確認できた。
恐らく堕天使の計画とやらの根幹に彼女が居ると見て間違いない。
...あのエクソシスト一人くらいなら難なくやれる。今のうちにシスターを拉致しておくのも手か...?
ふと、イッセーの顔が浮かぶ。
やめよう。あいつは多分そんな事は望んでいないと思う。こちらから見る分にはシスターが危害を加えられていたり、無理矢理従えられているような様子は見えない。
彼女の身柄に関してはきちんと事情を把握してから考えるべきだろう。
とはいえようやく事態が動き始めたのだ。ここはいっそのこと堕天使の誰かを尋問すべきか...
などと考えていると、突如背後から殺気を感じる。
「のあっっ!!」
反射的に飛びのくと、元居た場所に光の槍が突き刺さっていた。
「ふん...ちょこまかと飛び跳ねよって」
振り返ると男の堕天使が佇んでいた。
「危ないな...一体どういうつもりだ?」
「どういうつもりはこちらのセリフだ忍め。不干渉の約束を反故にして悪魔なんぞにつきよって...不確定要素は速やかに消し去るに限るからな、ここで死んでもらうぞ?」
「手を出さないとしか言ってないってばよ。実際に手は出していない以上、勝手に約束を反故にしたと勘違いされちゃ困る...なんてな、こうなった以上実力行使以外無い...そうだろ?」
「ふん、我らに勝てるつもりか猿如きが...貴様ら猿は少し異能を持っているからとすぐに下らん勘違いをする...その不遜、命で償うがよい」
「...やってみろ鳥人間。似合わない羽根引きちぎってやるよ」
「....きさまぁぁぁぁ!!!」
堕天使が両の手に光の槍を携えて突撃してくる。
「影分身の術!!」
俺は10体の分身を生み出して迎え撃つように走り出し...
「ぐはっ!!」
分身の一人に蹴り飛ばされた。
ゴロゴロと転がりながら見えた光景は、俺を蹴り飛ばした分身が上から降ってきた光の槍に消し飛ばされる姿であった。
すかさず立ち上がって後退する。
「...一人じゃなかったのか?猿如きに複数で挑むなんて流石は鳥人間、群れるのが大好きなようで」
「ぐぉぉっぉぉおぉっぉ!!」
最初からいた方の堕天使は顔を真っ赤にして怒るが、上空から降りてきた方は冷静だった。
「落ち着けドーナシーク。猿如きの戯言に振り回されるな...それこそ恥ずべき事だぞ」
「ぬぅぅぅ......そうだなカズワード。忠言感謝する」
「構わん。忍は厄介な力を持つ場合が多い、我ら二人で確実に処理するぞ」
「わかった」
「...ちっ」
あのままブチ切れてくれてれば楽だったんだが...あのカズワードとかいう堕天使、ドーナシークとかいうのより強いな。
俺は影分身達の中に紛れながら再び駆け出す。
堕天使二人が光の槍を連射してくる。目の前の影分身の背中を足場に飛び上がる。
空中の俺を狙った攻撃は新たに生み出した分身が俺の腕を掴んで地面へと投げる事で回避、着地と同時に駆けだしドーナシークの元に肉薄する。クナイで横腹を切りつけながら横を通り抜け、振り向きざまに背中へとクナイを投げ飛ばした。
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
痛みに悶えるドーナシークの元に影分身が到達し、3人がかりで体術をしかける。
殴られ蹴られ、ドーナシークは反撃の暇も与えられずダウンした。
「御しやすい方から崩す。戦いの定石だ...まぁ、もともとこやつは戦力として見ていなかったから問題はないがな」
カズワードの方に残りの影分身をよこしていたのだが、俺がドーナシークに攻撃している間に全て消し飛ばして空中へと逃げていたらしい。
「それにしても面白い術を使うではないか忍よ...分身それぞれが実体を持ち、独自の思考を巡らせている。実に驚異的な力だ...是非我ら堕天使の為にその力をふるってもらいたい所だが、悪魔に着いたのなら致し方ない。ここで確実に滅ぼしてくれよう」
カズワードの威圧感が大きく増す。
...今まではドーナシークの手前、手加減してたって訳か。
「多重影分身の術!!」
一気に50人程に分身してカズワードを囲み、一斉に襲い掛かる。
「ほう!!随分楽しめそうじゃないか!!...だが、数を増やしたところで無駄だ。全て消させてもらうぞ!!」
そう言うと、堕天使は体中から光を放ち始めた。全方位無差別的に小さな光が散弾のように放たれる。
「....っ!!」
影分身がどんどん消されていく。影分身に投げてもらって、一旦体制を立て直すべく射程範囲から離れた。
「賢明な判断...だが、そこはダメだぞ?」
カズワードがそう言い放った瞬間、地面から光の槍がせり上がり俺の体を貫き...煙となって消えた。
「何...?本体はどこに...!」
「ここだぁぁl!!螺旋丸!!!」
カズワードの背後へと二人の俺が飛び掛かる...片方の手には螺旋丸が携えられている。
「ふん!」
カズワードは翼を大きくはためかせ体を逸らす。
「惜しかったな!!だが...!!」
螺旋丸を持っている俺の背に光の槍が放たれる。瞬間、下からやってきた俺が螺旋丸を奪いながら飛び上がった。螺旋丸を持っていた方の俺は槍に貫かれて煙と化す。
螺旋丸を奪った俺の背中に新たな俺が現れて、カズワードの方へと蹴り飛ばした。
「ぬぉぉぉ!!!」
「螺旋丸!!!」
カズワードが咄嗟に光の槍を生み出して螺旋丸とぶつける。
螺旋丸が光の槍を削り取って金切り音が鳴り響く。
「らぁぁぁっぁあ!!!」
やがて二つは混ざり合って爆発を起こし、カズワードは吹き飛び俺は消え去った。
「ぐ...この!!」
「...螺旋丸!!」
地面に叩きつけられたカズワードが起き上がろうとするが、爆発から現れた俺の螺旋丸が暇を与えず腹部に着弾した。
衝撃がカズワードの肉体を突き抜けて地面をらせん状に抉り抜く。
「ごはっっっっっ!!」
激しく吐血して、カズワードの体から力が抜けていく。
「ぐ...おの、れ...せめて...相打ちに...!!」
カズワードは最後の力を振り絞って光の矢を俺の顔面に放つが、頭部を貫かれると同時に煙と化した。
「な...にぃ!!」
「...俺の勝ちだなカズワード。お前の敗因はたった一つ...忍を舐めすぎだってばよ。厄介だと思うのなら楽しむ余裕なんて無かったはずだ」
「きさ...どこ...に...居た...」
「どこに...?あぁ、俺は最初に飛び込んだ二人の内螺旋丸を持ってなかった方だった...これで満足か?」
「ぐ...く...」
カズワードは何かを言おうとしていたが、口にする前に限界が来たようだった。
「...さて、あっちはどうなってるか」
俺は影分身を作り出し、シスターとエクソシストの捜索へと向かわせる。
この堕天使二人の処理をしないといけないが、あっちも少し嫌な予感がする。
にしてもまずい。ここに来てからしばらく、戦いから離れていたせいで勘がかなり鈍っていた。
特に最初の一撃、あれにぎりぎりまで気づけなかったのは流石に気が緩み過ぎている。
...この任務が終わったら鍛え直さないと。
頬を叩きながら決意する。
「さてと...オカルト研究部に二人を連れていくか」
俺は影分身に堕天使二人を担がせて駒王学園へと向かった。