死の支配者/大地の支配者   作:海月坊主

1 / 7
プロローグ

「では、またどこかでお会いしましょう」

 

 そうして、ヘロヘロもログアウトしてしまった。

 

 体験型オンラインゲーム「YGGDRASIL(ユグドラシル)」。かつてギルドランク9位に上り詰めた"アインズ・ウール・ゴウン"、その本拠地であるナザリック地下大墳墓の第九階層にある円卓の間に、一人の溜息が響く。

 

「今日がサービス終了の日ですし、お疲れなのは──」

 

 その言葉を最後まで発することもできず、目の前の仲間は現実へと帰還する。

 彼の疲れた様子はわずかに交わした会話の中でも十分に理解できた。そんなヘロヘロにこれ以上の無理を言っても良いものかと逡巡した結果、一歩遅れてしまったのだ。

『またどこかでお会いましょう』

 その言葉は幾度となく聞いてきた。それこそ40人分──。

 空席となった思い出深い40席へと視線を動かし、決して漏らすまいとした思いを吐露する。

 

「どこで、何時出会うのだろうね──……ふざけるな!」

 

 両手をテーブルに叩きつけ、前日まで顔を見せていた人物すら恨めしく思ってしまう。

 こうしていても仕方がない。

 彼──ギルド"アインズ・ウール・ゴウン"ギルド長であるモモンガはその立場に相応しい装備を纏い、ギルド武器であるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に円卓の間を後にする。

 

 向かう先は第十階層、玉座の間。

 

 道中、執事であるセバス・チャンと戦闘メイド集団プレアデスに指示を出し、共に玉座の間へと入る。玉座の間にて、ふと、NPCアルベドの設定を覗こうとした時だった。

 

[ぶくぶく茶釜がログインしました。]

[ペロロンチーノがログインしました。]

[アセナ・F・ミゼーアがログインしました。]

 

 ログイン通知がポップされる。暫くしてバタバタと玉座の間へ続く通路が騒がしくなったかと思うと、

 

「間に合った! モモンガさんいるー!?」

「姉ちゃん速い、どこにそんな足があるんだよ!」

「モモンガさーん、何とか2人、連れて来ましたよー!」

 

 駆け込んできたのはギルドメンバーであるぶくぶく茶釜とペロロンチーノ、そしてアセナ・F・ミゼーアだった。

 

「ええっ、3人ともどうしてここに!?」

 

 まさかサービス終了間際に会えるとは思っていなかった3人の登場にモモンガは──目は無いが──目を丸くする。特に、アセナに至っては今日は参加できないと前日顔を合わせたときに言っていたではないか。

 

「いやー、可愛い後輩に説得されまして……。モモンガさん、今まですみませんでしたー!!」

「俺も、姉ちゃんとアセナさんから面を貸せと言われて……俺も、すみませんでしたー!!」

「打ち上げの幹事特権というやつですよ。モモンガさん、上手くいくとは思っていなかったので昨日は大変失礼しました」

 

 滑り込むように頭を下げる姉弟と立ち止まって頭を下げる仲間。思ってもみなかった光景に自然とモモンガに笑みが浮かぶ。

 

「いえいえ、お待ちしていました。お久しぶりです!」

 

 両手を広げ喜びの声を上げるモモンガの様子を見て、3人のギルドメンバーは笑い合う。

 

「この時間なら、モモンガさんはもうここにいるかなーって思って!」

「我が愚弟ながら勘は働くわよねぇ~」

「ささ、モモンガさん。昨日言ってたアレ、やりましょうよ」

 

 そう言われて、モモンガは昨日、自分がアセナに語っていたサービス終了時のロールプレイを思い出す。

 

「いいでしょう、やりましょうか!」

 

23:58:45、46、47……

 

 アセナの言葉を受けて茶釜とペロロンチーノは頷き合う。

 モモンガも鷹揚に頷くと玉座の前に向かい、漆黒のローブを翻しながら振り向く。

 

23:59:56、57、58……

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」

「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」」」

 

0:00:00……01、02、03

 

「「「「……ん?」」」」

 

 4人が一斉に疑問を発する。

 つい先ほどYGGDRASIL(ユグドラシル)はサービスを終了したはずなのである。

 

「これは……なんですかね?」

 

 並ぶ3人の内の一人、アセナが小首を傾げる。

 

「サーバーダウンが延期になった?」

 

 モモンガも思わず一つの可能性を口にするが、その様な空気でもない。

 

「……あれ?」

 

 目の前でペロロンチーノがコンソールを操作するような動作をするが、何も起きてはいない。

 

「モモンガさん、GMコールは生きてますか?」

「あ、ああ……」

 

 ぶくぶく茶釜言われて思い出したGMコールの操作を行おうとするが、やはりそもそもコンソールが開かない。

 

「……どういうことだ!」

 

 先程の歓喜から打って変わって、怒気を孕んだ言葉にギルドメンバーの3人は何も答えられない。しかし、数秒の間をおいて彼らへと言葉が投げかけられる。

 

「どうかなさいましたか? 至高の御方々?」

 

 4人は声のする方へ体を向ける。そこには、ギルドメンバー、タブラ・スマラグディナが創造したNPC──アルベドが本来ならば動かないはずの表情を動かしながら問いかける姿があるのだった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
初投稿、ご覧頂き大変恐縮です。
不定期とはなりますが、書き溜めが増え次第順次投稿してまいります。
今回、オリ主以外にもギルドメンバーに登場いただきました。
『このキャラがいたら、こういうもしもがあったかもな』という、多くのもしもで構成されています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。