千雨Cubed   作:雑草弁士

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010話・近右衛門、覚悟を決める

 千雨と氷雨の2人は、近右衛門、高畑、エヴァンジェリンと学園長室で会見していた。議題は、超たちについてである。ちなみに茶々丸は、定期点検のために大学部のロボ工研へ出向いていた。と言うよりも、彼女らがこの話し合いを持ったのは、茶々丸が定期点検なのを見計らって行ったのである。

 茶々丸には一応エヴァンジェリンから、超一味に対して長谷川3人娘の情報を黙っている様に命じてはある。しかしそれでも、葉加瀬や超からすれば茶々丸の記憶ドライブを覗く事など、容易(たやす)いと言う以外に無い。だから今回の様な超一味に関する話し合いのときは、茶々丸はできるだけ外さねばならない。

 

「済まねえな、マクダウェル。絡繰にもハブって済まねえとは思うが、こればっかりはなあ……」

 

「気にするな。で、超の事だったな。いったいどうしたのだ?」

 

「それなんだがな。超は火星人だ」

 

「「「は?」」」

 

 エヴァンジェリンは呆れた様子で言う。

 

「それは超の奴が良く言う冗談だろう? まさか、お前たちアレを本気で本気にしたのか?」

 

「……奴があの台詞を言ったその時に、わたしと希雨と氷雨は、『虚言感知(センス・ライ)』を唱えてたんだよ。そしたら、その言葉に欠片も嘘の気配が無かった」

 

「「「は?」」」

 

「超のやつが未来から時間遡行して来たってのは、マクダウェルは知ってるんだろ? つまりその未来では、火星に人類が暮らしてる、って事だな」

 

 氷雨の台詞に、エヴァンジェリンは眉を(しか)めて難しい顔になる。一方の近右衛門と高畑は、信じがたいと言う顔で口を開いた。

 

「ま、待つんじゃ。超君が未来から時を(さかのぼ)ってやって来た、火星の人間じゃと!?」

 

「本当なのかい!? ……いや、済まない。だが、あまりに信じがたい事で」

 

「超のもたらした技術で、葉加瀬は茶々丸の開発に成功している。茶々丸に使われている技術を見れば、あれが現代の技術力ではない事ぐらい理解できるだろう。それとも貴様らまでもが、麻帆良結界の認識阻害で脳をやられでもしたのか?

 それに時間移動が可能な存在は、今この部屋に2人もいるし、ここに来ていない残り1人もそうだろうが。更に言えば、今現在では不可能でも、未来ならば時間移動技術が開発されていても、おかしくはあるまい?」

 

 エヴァンジェリンの言葉に、近右衛門と高畑はぐうの音も出ない。そして千雨が言葉を続ける。

 

「奴の言葉を、他にも『虚言感知(センス・ライ)』で検証してみたんですが。結果、次の事が浮かび上がりました。奴は『世界の平和を乱しても、あるいは乱すことを手段として』『世界の破壊を防ごうと』しています」

 

「「……!!」」

 

「ほお……。」

 

「正直わたしたち3人だけでは、どう判断していいものやら。それで御三方の意見をお教え願いたいと思いましてね。ただ、わたしたちも単に手を(こまね)いているつもりはありません。希雨が今日来ていないのは、無人宇宙船を遠隔操作して、火星圏の調査をしてるからです」

 

 千雨の言に続き、氷雨も問いを発した。

 

「火星に関係して、『世界の破壊』に関わっている様な事態、学園長先生や高畑先生は、ご存じでは無いですか?」

 

「「……」」

 

「その顔つきからして、何がしか隠し事がありそうだな。言ってしまえ。楽になるぞ? ククク」

 

「「……」」

 

 エヴァンジェリンの台詞に、それでも言い淀む近右衛門と高畑だった。だが千雨が(おもむろ)に呟いた言葉に、彼らは陥落する。

 

「……ネットで調べた火星の地形と、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』の地形図が、海の有る無し以外は完全に一致しました。これは何がしか、関わりがあるのでは?」

 

「!! そ、それは……」

 

「……タカミチ君、言ってしまおう。長谷川君たちは、おそらく個々人が最低でも『紅き翼(アラルブラ)』の構成員に匹敵するかそれ以上の存在じゃ。それに長い年月を過ごして来て、見た目通りの歳ではない。生徒に頼るのがどうこうとは、エヴァを始め多くの魔法生徒を戦わせているワシには、既に言えるはずもないからのう……。

 長谷川君たち、伏してお願いする。どうかワシらに力を貸して欲しい。ワシらでは今現在、解決に至る術が欠片なりとも見いだせずにおるのじゃ」

 

 近右衛門は苦し気な声を絞り出す。そして長谷川3人娘に深く深く頭を下げて黙り込んだ。だがやがてゆっくりと顔を上げ、口を開く。その様子は、何処か一気に老け込んだ様にも見える。

 

「『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』という魔法使いたちの異界がこの世界に隣接して存在している、というのは長谷川君たちに先だって教えた通りじゃ。それについては、書物も渡してあるから既にしっかり知っておると思う。

 問題はの……。その『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』が、今まさに破滅の危機に瀕している、と言う事なんじゃ」

 

「……」

 

「何!?」

 

「「……」」

 

 高畑は黙し、エヴァンジェリンは(まなじり)を吊り上げる。そして千雨と氷雨は目を(すが)めるが、これもまた黙って話を聞く姿勢を取る。近右衛門は話を続けた。

 

「かつて遠い昔に、『造物主(ライフメーカー)』という超人的な魔法使いが生まれた。そやつは永遠の命を持ち、不死身で、超人的な信じがたい魔法的能力を持っており、同時に『始まりの魔法使い』でもあった。そして、そやつはのう……。何を思うたか、人造の異界を造り上げたのじゃて。それが今現在の、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』じゃ。

 そして『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』という異界を創造するにあたり、依り代となったのが『現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)』に存在する火星の大地じゃ。そして『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』を運営するに必要な魔力は、何十億年にも渡って太陽から火星に降り注ぎ、蓄えられた魔力を消費する事で(まかな)われておる」

 

「「「「……」」」」

 

「じゃが、の。『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』が消費する魔力は、太陽から火星に降り注ぐ魔力よりも遥かに莫大なのじゃて。今、火星の魔力は枯渇しかけておる。数億年分の貯蓄を、数千年であっという間に使い果たしかけておるのじゃ。

 正確には分かっておらぬが、おそらくは数十年後には火星の魔力は尽き果てる。そうなれば、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』は崩壊する」

 

 そして高畑が、説明を代わった。

 

「今『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』には、元々『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』に住んでいた人々や生命体と、魔女狩りの時代などに『現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)』から逃げ込んだ魔法使いたちの子孫などが暮らしている。……このうち、元から『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』に住んでいた者達は、『幻想』の存在だ。

 彼らの血肉は、全てが魔力で構成されている。魔力が『現実の物質のフリをしている』だけの存在なんだ。けれど彼らにも意志があり、心があり、魂がある。身体が魔力で構成されている以外は、ちゃんと人間なんだ。

 だけどもし『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』が崩壊、消滅してしまったのなら……。彼らも同時に消滅する。残されるのは、全『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』住人12億人のうち、メガロメセンブリアなどに住んでいる現実の人間の子孫たち6,700万人のみ」

 

「……その、現実の人間の子孫6,700万人は、どうなりますか?」

 

「おそらくは、依り代になっている火星の大地に放り出されるだろう。だが生き延びたとしても、相当に……悲惨な……。だから僕らは、なんとかして『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』崩壊を防ごうと、その術を求めているんだけどね。でも、今のところ糸口すらも掴めていない……。

 そして、ここでもう1つ問題がある。先ほど学園長が言った、『造物主(ライフメーカー)』という魔法使いが関わる事だ。『造物主(ライフメーカー)』は、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』と言うテロ組織を作ったんだ」

 

「「……」」

 

 千雨と氷雨は黙って聞く。高畑は、淡々と語る。だがその瞳は、強い意志を宿して燃えていた。

 

「テロ組織『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』は、かつて『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』に於いて大戦を引き起こした。何のためにそんな事をしたかと言うと、大戦を隠れ蓑にして裏で彼らなりの『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』救済計画を発動しようとしたのさ。

 それはね。『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』全体を魔法的に書き換える事で、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』全ての存在を封印し、諸人に『計算され尽くした幸せな夢』を見せて未来永劫眠らせる、と言う物だ。

 この『幸せな夢の世界』では、実際にはまったく生命活動が行われない。故に、消費魔力は太陽から火星に降り注ぐ魔力で十二分に(まかな)えるほど省エネだ。それが『完全なる世界』の正体さ」

 

「「「「……」」」」

 

「そしてエヴァを封じた魔法使い、ナギ・スプリングフィールドをリーダーとするグループ、『紅き翼(アラルブラ)』は、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の企みを叩き潰した。もっとも、相応に悲惨なレベルの被害が出たけれど……。

 僕も『紅き翼(アラルブラ)』の末席にいるんだけど、僕らは……僕は『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の救いは、まやかしだと思っている。ましてやそのために大戦を引き起こしたのは、許すわけにはいかない暴挙だ」

 

「……タカミチ君。いいかね?」

 

「学園長?」

 

 ここで近右衛門が、再び割って入った。その瞳には、何かしらの決意の色が浮かぶ。だがこの時点では、誰もその決意の深さを窺い知る事はできなかった。そして近右衛門は語りだす。

 

「ワシもいい加減、覚悟を決めるとしよう。超君という異分子が、未来から時を超えて遡って来たのも、何かの運命なんじゃろうて。超君は今現在、既にその蠢動を始めておる。あちらこちらで資金を集め、あちらこちらに伝手を作り、更にはワシら魔法使いの事に関しても色々と調べまわっておる。

 いい加減、潮時なのじゃろうて。ここから語るのは、タカミチ君ですらも知らぬ事じゃ。ワシがワシの責任で、ワシのところで情報その他を止めておった」

 

「「「「!!」」」」

 

「メガロメセンブリアという、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』の国家については教えたであろう? ここ関東魔法協会にとっても、本山とでも言うべき位置づけの、西洋魔法使いの本拠じゃ。……メガロメセンブリアには、かつて『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』に移住した現実の人間たちの子孫が暮らしておる。

 メガロメセンブリアの政府……元老院はのう。メガロ住人6,700万人の、『現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)』への……地球への脱出を(くわだ)てておる。滅びゆく『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』を見捨てて、の。麻帆良にも、その計画への協力要請が来ておる。そしてその計画を推進しておる人物の、そのうちの大物の1人なのじゃが。よりによって元老院のクルト・ゲーデル議員じゃ」

 

 近右衛門が語ったその名を聞き、高畑は目を見開き愕然とする。その拳が握りしめられた。あまりの握力に、ぽたりと血が床に垂れ落ちる。

 氷雨が溜息を吐いて、高畑に語り掛けた。

 

「高畑先生、落ち着いてください。……ちょっと手を見せて。あー、あー。爪が(てのひら)に食い込んで……。『封傷(DIOS)』」

 

「あ、ああ、済まない氷雨君」

 

 氷雨の魔法で、高畑の(てのひら)は一瞬にして癒える。千雨は(おもむろ)に問いかけた。

 

「……高畑先生の、お知り合いですか? そのクルト・ゲーデル議員……」

 

「……元『紅き翼(アラルブラ)』のメンバーだったんだ。『紅き翼(アラルブラ)』のやり方では世界は救えない、そう言って脱退して権力を求めた……」

 

「「「……」」」

 

 しばし沈黙が続く。しかし千雨が不敵な笑みを浮かべ、辛辣に言った。

 

「何考えてんですかね? 今現在の地球に6,700万人を脱出させる? どうやって?」

 

「魔法を兵器としての、軍事侵攻じゃな」

 

「ですよね、馬鹿らしい。それが正義の『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』の総本山のする事ですかね。無理ですよ。地球に6,700万人を受け入れられる余裕なんて、無いです。地球側は、必死で抵抗するでしょうよ。

 学園長先生、いえ、関東魔法協会理事、近衛近右衛門殿。貴方のスタンスをお聞きしたいのですが」

 

 居住まいを正し、近右衛門は言葉を紡ぐ。その目には、強い意志が伺える。

 

「ワシはいざとならば、メガロメセンブリアからの離反を考えておる。そして秘密裏に、その準備をしておるところじゃ」

 

「「「「!!」」」」

 

「ワシは『現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)』の住人じゃ。『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』の滅亡は、可能であらば防ぎたい。なれどそれに付随するゴタゴタで、『現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)』に……地球に世界大戦規模の惨禍が(もたら)されるのは絶対に看過できん。ましてや、ワシがその片棒を担がされるなど、もっての外じゃ!

 メガロが地球侵攻を企むのであらば、ワシはワシの身勝手な想いにより、全身全霊をもって抗ってみせようぞ! そしてこれは正義ではない! ワシ個人の、自分勝手じゃ!」

 

 近右衛門は、ふっと今までの気の張った様子を解き、柔らかな雰囲気で高畑に語りかける。

 

「タカミチ君……。君は、好きにするがよい。この事をメガロに、ゲーデル議員に伝えたくば、そうしても構わぬ。何、数年ばかり計画が早まるだけじゃて」

 

「……学園長。見くびらないでください。学園長が自分勝手でメガロと戦うのなら……。メガロが地球侵攻を企んでいるのなら……。僕もそれを止めるために戦いますよ。僕自身の、自分勝手でね。

 やれやれ、これは大変ですね。『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』の崩壊阻止の手段も探さなければならないし、更にメガロメセンブリアの野望も打ち砕かないといけない」

 

「……ありがとう、タカミチ君」

 

 そしてエヴァンジェリンが、千雨と氷雨に問いかけた。

 

「貴様らはどうするのだ? ここまで話を聞いておいて、無関係は通らんだろう」

 

「そっくりそのままマクダウェルに返したいところなんだけどよ。まあそうだな。わたしはせっかく、必死の思いで帰還してきた地球なんだ。それが大惨事になるのは、どうにかしてえな」

 

「同じくだ。たぶん希雨も同じ事言うと思うぜ? ま、だけどよ。『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』の崩壊を阻止できれば、なんとかなんじゃね? どうにもならなかったら、地球を護るために戦線に立つぐらいはやってもいいぜ」

 

「ふむ。ジジイやタカミチはともかく、貴様らには借りがまだあるしな。ちょっとぐらいは付き合ってやろうか」

 

「「サンキュ」」

 

 千雨も氷雨も、エヴァンジェリン秘蔵の呪文書を写させてもらった事で、貸し借りは終わったと考えてはいた。だがせっかくの厚意を無駄にするのも悪い。この場は素直に、礼を言って置く。

 

 そしてエヴァンジェリンが言った。

 

「ただしジジイ! 手伝ってやるから、学校運営はきちんとやるのだぞ! 最低でもあと3年、きっちりと! そうでなくば、わたしの呪いが解けんからな!」

 

「まあ、それは当然じゃ。きちんとやるとも。まずはもうちょっと先にある、学園祭かのう?」

 

 まあ、呪いが正常化されて放課後や休日に麻帆良の外へ出られる様になり、修学旅行へも出かけられるとなっても、最低限次回の卒業式を迎えぬ限りは、エヴァンジェリンは解放されない。その場の一同は苦笑を浮かべる。

 

 近右衛門が、打って変わって明るい声で言った。

 

「さて、では話を戻して、超君をどうするか相談せねばならぬのう!」

 

「そうですね。たぶん間違いなく、彼女は『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』が悲惨な結果に終わった未来から、やって来たんでしょう。上手くそれを聞き出せるといいんですが」

 

「そうですね。それと現状の超が立てている計画も、聞き出せればいいんですがね。可能ならば、超にわたしらが協力するんじゃなく、超の側がわたしらに協力する形で。……超のやつは、頭いい癖にちょっとなんと言うか……」

 

「頭のいいバカ的な?」

 

「言いえて妙だな」

 

 そしてその場の面々は、超に対してどの様な対処を行うか、色々と意見を出し合い話し合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 千雨と氷雨が自宅に戻ったのは、既に日が暮れた頃だった。流石に今から千雨が料理を作るのも何なので、邸宅の研究室で作業をしていた希雨が今晩の料理を作っている。彼女らは晩飯を食べながら、本日の情報交換を行った。

 

「……ってわけで、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』がヤバいらしい。しかも大国メガロメセンブリアが、地球侵攻を企んでる」

 

「うわー。そりゃ酷え状況だな。そっか、火星の魔力欠乏によって、『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』崩壊かあ。そっか、それで調査した時、火星の残留魔力が現在進行形で、ずんどこ減り続けてたんだな」

 

 希雨が呆れたように言う。千雨と氷雨も頷いた。希雨は続けて言葉を紡いだ。

 

「ま、わたしも地球を護る事にゃ、文句は無えよ。なんなら、保有する宇宙船群を投入するぞ。レーザー水爆とか超電磁砲(レールガン)とか中性子ビーム砲とか載せてるし。いや、別の世界で手に入れた船の方がいいかな? 位相光線砲(フェーザー)とか光子魚雷(フォトン・トーピードー)とか量子魚雷(クォンタム・トーピードー)とか搭載してるしなあ」

 

「まて待てマテ」

 

「なんか戦略兵器クラスの奴を戦術兵器として使う恥知らずが、ここに居た」

 

「いや、核爆発魔法をずんどこ気軽に使える奴に言われたか無えよ」

 

 希雨は大きく溜息を吐く。

 

「ふう……。でも、そうすると『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』の残り時間は11年と半年か。何か対策取るには、ちょっと短いな。どうしたもんか」

 

「「……何?」」

 

「ん? 何が?」

 

 千雨と氷雨の表情が強張る。近右衛門と高畑は、『おそらく』という枕詞付きではあったが、タイムリミットまで数十年程度と見ていたのだ。千雨と氷雨も、その言葉を今この瞬間まで信じていたのである。

 

「希雨、火星の残留魔力は、太陽から降り注いで増える分まで考慮に入れても、それしか保たないんだな?」

 

「あ、ああ、間違いない。火星圏に送り込んだ無人宇宙船が、探査機を大量に火星にばら撒いたんだ。その結果からシミュレートして、割り出した値だ。誤差は目一杯大きく見積もって、プラスマイナス100日程度だ。」

 

「ち、その資料を全部プリントアウトしてくれ! 今から学園長のところへ行って来よう! 氷雨はアポの電話を!」

 

「わかった!」

 

 彼女たちは、晩飯も半ばで学園長室へと取って返す。そして幸いにも高畑とエヴァンジェリンがまだ帰宅していなかった事もあり、彼女らはこの情報を共有する事が出来た。しかし一同の表情は暗い。あまりにも、予想以上に、そして無慈悲にも、残り時間は短かったのである。




 というわけで、近右衛門はメガロメセンブリアから、なんとかして地球を護ろうと考えてます。無論『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』を救う事ができて、6,700万人の地球脱出計画が必要無くなればそれはそちらの方が良いのですが。最悪の場合、メガロと袂を別つ事になっても、メガロの6,700万人を見捨てる事になったとしても、地球を護るつもりなのです。
 ……もしかしてわたし、近右衛門のこと気に入っているのだろうか(笑)。
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