唐突だが、希雨が異世界からこの世界へ持ち込んだ宇宙船は1隻ではない。これまでに確認されただけで、基地モードに変形して長谷川邸の中枢部になっている1隻と、戦闘ロボット1個小隊の母艦となっている宇宙揚陸艇1隻の2隻が確実に存在している。
そしてこの夜、長谷川3人娘と近右衛門、高畑、エヴァンジェリン、茶々丸、超、葉加瀬の眼前には、3隻目の宇宙船が着陸していた。全長が40mほどの
近右衛門が
「では長谷川君たち、超君に葉加瀬君、くれぐれも気を付けて行って来るんじゃぞ? タカミチ君も、引率よろしく頼むぞい。出張扱いにしておくからのう」
「ははは、引率とは言っても僕は何もやる事は無いんですけれどね。ジェネシス魚雷第1次実験のために、夏休み利用して1週間の宇宙旅行か……」
「あと夏休み終わりあたりに、もう1週間使って第2次、第3次実験のための前準備をしますからね。では行ってきます。学園長先生やマクダウェル、絡繰も気を付けてな」
「ああ、任せろ。貴様らが居ない間の貴様らの家は、きちんと護っていてやる。茶々丸とジジイがな」
「ひょ!? 丸投げじゃと!?」
そして長谷川3人娘、超、葉加瀬、高畑は
*
今、長谷川3人娘たちが搭乗した
「これが地球……。素晴らしいです……。今、わたしは宇宙へとやって来ている! 真空や低温、宇宙線などの脅威から、科学の力によって護られて! 素晴らしいです!」
「ハハハ。葉加瀬は宇宙は初めてだからネ」
「いや、僕も初めてなんだがね。何と言うか、感無量だよ」
高畑も、船窓から見える地球には感動している模様だ。まあ、誰しも彼らの気持ちは分かるだろう。ちなみに超鈴音は宇宙から見る地球の姿に、何かしら複雑な感情が表情に見え隠れしていた。
そこへ希雨の声が響く。彼女はこの
『そろそろ母艦とランデブー、ドッキングするぞ』
「おお! それは是非にも見逃すわけには!」
「葉加瀬、少し落ち着くネ」
そして
彼らの乗る
希雨はそのロボット達の合間を縫って、
「あのー、希雨さん。ふと思ったんですが、なんで有線で直接に接続してるんです? これだけの技術力があれば、無線での接続も可能かと思うのですが」
『ああ、そりゃ簡単にできるぞ? けどな、無線接続だとどうしてもハッキング、クラッキングや電子妨害に弱いんだ。だから大事なシステムは無線接続じゃなく、
いや、非常時用に無線接続システムも用意してるけどよ。重要部分にゃ、こう言う『枯れた』技術の方が安心なんだ。それにノイズにも強くて、回線速度も速いしな』
「なるほど。盗聴対策には黒電話、みたいな物ですね」
『そう言う事だ。んじゃ、とりあえずゲスト席に座っててくれ。ああ、超と葉加瀬はなんだったら、科学士官席のすぐ後ろのゲスト席を使うか?』
その言葉に、超と葉加瀬は大喜びで食いついた。
「是非にお願いするヨ!」
「お願いします!」
『わかった、わかった』
希雨は超と葉加瀬のために、科学士官席の
「あー、わたしは可能なら、この艦の中心に居たいんだが。重心位置じゃなく、位置的な中心。光年単位の超距離を『跳ぶ』んでな。艦全体に『
『わかった。ターボリフトに乗って『第4デッキ』って制御盤に向かって音声入力してくれ。第4デッキで降りたら、そこに案内のロボットが待ってるから、そいつの案内に従って『保安部員待機室』に行ってくれ。そこがだいたい艦の中心だ』
「了解」
千雨はターボリフトで、第2船体まで下りて行った。超が希雨に疑念を呈する。
「……光年単位を『跳ぶ』と言たネ? 千雨サンの『
『ああ、本当なら超空間を使った『
でもって『ワープドライブ』だと、宇宙空間の基幹構造に害を与えない最高速度のワープ5でも、光速の214倍。いや、その気になればこの
それだと、100光年行くのに170日かかる。夏休みどころじゃねえんでな。光速の数千倍以上出せる『トランス・ワープ艦』は、今現在建造中でまだ使えねえ。それで今回は、千雨に頼る事にした』
「ナルホド」
「と言うか、建造してるのかい?」
『ええ、してます高畑先生。……んじゃ、千雨が『跳び』易い様に少し地球から離れるか』
希雨が言った瞬間、
*
地球を遥か離れた宇宙空間で、希雨の航宙艦は太陽に対して静止状態を保っていた。艦長席の希雨は、艦中央部の保安部員待機室にいる千雨に通信回線を繋ぐ。
『千雨、こっちの準備はいいぞ』
『おう、んじゃ早速『跳ぶ』ぞ。全員、気を楽にしてくれ』
次の瞬間、一同はめまいに似た感覚を受ける。まるで魔法による転移現象を受けた時に近い感覚だった。だが魔力が動いた感じはしない。
一同の中で希雨を除けば、最初に気づいたのは超であった。彼女は眼前の科学士官席に据え付けてある
「……跳んダ!! 今のは何ネ!? 魔法でハないヨ!! ……この
『間違ってねえぜ。あの近くに見える恒星は、間違いなく『TOI-700』だ。そしてあれを公転してる惑星『TOI-700 d』が今回のジェネシス魚雷の実験場だ』
「「「おおお……」」」
超と葉加瀬、そして高畑は目を見開き、感嘆の声を上げる。と、
「千雨君!?」
『あ、いえ。大丈夫です。流石にこの
『超人■ックほどじゃねえが、■ード・レオン級の能力は余裕であるって言ってたっけな。ああ氷雨、悪いけど千雨を船室まで連れてって休ませてやってくれねえか』
「了解」
ターボリフトで、氷雨が
「千雨君は、超能力も使えたのか……。と言うか、600mの航宙艦を乗員ごと100光年のテレポート……」
「恐るべき力だヨ……。まあ、流石にコレだけやれば、疲れ果てたみたいだがネ」
「うーん、科学の発展のために色々と調べさせてもらえませんかねえ?」
『命が惜しくねえなら、頼んでみたらどうだ? 千雨はわたしら3人の中でも、そう言う方面では厳しい奴だからな?
奴にとっては『
希雨の脅し文句に、葉加瀬は黙ってしまう。まあ希雨からすれば、事実を告げただけなのだが。
そして航宙艦は、惑星『TOI-700 d』を周回する軌道へと入る。希雨は
『あれが『TOI-700 d』だ。早速、ジェネシス魚雷の第1次実験を開始するぞ。ちなみにこの様子は、船室で休んでる千雨とそれに付き添ってる氷雨にも、映像で送られてる。
超に葉加瀬。科学士官席とその助手席を空けさせるから、そこに座ってくれ。そこで実験の監督を頼む』
「了解ネ」
「わかりました!」
希雨は自身に
『これより第1次の実用型ジェネシス魚雷起動実験を開始する。全
『魚雷本体、異常ナシ』
『魚雷発射管、異常ナシ』
『航宙艦『HSS-1581-A』、照準装置ヲ含ム火器管制システム、異常ナシ』
『惑星『TOI-700 d』着弾予定地点、状況グリーン』
「こちら葉加瀬です。艦側には問題ありません。魚雷射出OKです」
「こちら超ネ。全て事前の予定通りダヨ。チェックシートは全テ埋またヨ。まったく問題なしネ」
準備は全て完了。希雨は最終秒読みに入る。
『1番発射管、ジェネシス魚雷初号機、発射準備。10分前……。5分前……。4分前……。3分前……。2分前……。60、59、58、57……』
「……いよいよですね」
「マダ事前準備の予備実験なんダヨ、葉加瀬。あまり気負い過ぎない事ネ」
『……15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、
光の尾を引いて、ジェネシス魚雷は惑星『TOI-700 d』の表面へと向かって行く。そして惑星表面に、輝きが走った。
『-5、-6、
惑星表面に発生したオレンジ色の輝きは、どんどんとその直径を増して行く。そしてまるで池の表面に波紋が広がるかの様なイメージで、オレンジ色の光の輪が惑星表面を撫でて行った。
そして一瞬後、そのオレンジ色の輝きの波紋が惑星地表を嘗め尽くす。そこには、青い海と緑の大地に覆われた、美しい
ちなみに超能力のテレポートと言うのは、普通に歩くよりも疲れる物らしいです。ライオット・アレクセイも、そう言ってます。