千雨Cubed   作:雑草弁士

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022話・体育祭はつらいぜ

 学園内各所に設けられた学園内放送用のスピーカーから、声が響く。

 

『こちらは体育祭実行委員会です。体育祭まであと3日! 安全第一! 事故、怪我の無い様に準備に励み、学園祭に引き続き死者(ゼロ)を目指しましょう!』

 

「……そうなんだよなあ。『帰って来て』改めて思ったが、学園祭にせよ体育祭にせよ、死者を心配しなきゃならない学校行事って何なんだろうな」

 

「気にすんな。気にしたら負けだ。そう、気にしたら負けなんだ」

 

「氷雨も結局は気にしてるじゃねえか」

 

 長谷川3人娘は、皆が体育祭の準備に忙しくしている中を、体育着姿でぼけーっと歩いていた。いや、彼女らも割り当てられた仕事が無かったわけでは無いのだが、さっくりと手際よく終わらせてしまったのである。

 

「あー。けどなあ……。希雨は本格サバゲー大会だったか?」

 

「おう。学園全体イベント以外で、1種目は出なきゃならんって話だったしよ。なんつーか、一応『本職』だし。上手く誤魔化して手加減できそうな種目が他になあ……」

 

「100m走とかだと、『魔力』や『気』を使わんでもわたしら全世界レベルをブッチ切ってるもんなあ。と言うかわたしら、使ってる技術はそれぞれ別種だが、結局のところ改造人間だもんなあ。ちょっと我ながら、ずるい(チート)だろ。出るわけにゃ、イカンよなあ……」

 

 そして彼女らは、一斉に溜息を吐く。

 

「「「はぁー……。体育祭ユーウツだぜ」」」

 

 そんな彼女らの上空を、飛行機レースの練習をしている旧日本軍戦闘機レプリカが、フライパスして行った。

 

 

 

 

 

 

 カゴを背負った対戦チーム(あかぐみ)の主将が、味方の陣地内を逃げまくる。味方チーム(しろぐみ)の連中は、必死になってそれを追い回し、足元に転がっている白い玉を拾っては逃げ回る相手の背中のカゴに放り込む。これぞ人呼んで、移動式玉入れである。

 麻帆良学園の体育祭中では比較的地味な団体競技であるが、そこはそれ。やっているうちに、参加者もけっこう熱くなって必死になる物だ。

 

 そんな中で、一際(ひときわ)やる気なさそうにしているのが氷雨である。しかしながら、その投げる白玉のカゴに入る確率はそこはかとなくほぼ100%で、実のところポイントゲッターであったりする。そんな彼女に、佐々木まき絵が声を掛けて来た。

 

「氷雨ちゃん! もっとどんどん入れないと、負けちゃう!」

 

「落ち着け、佐々木。焦ってもカゴに入らなくなるだけだって。敵の主将だって、必死で逃げ回ってるんだからな。

 大丈夫、今のところ味方の主将役の釘宮が必死こいて敵陣を逃げ回ってる。おかげで敵もなかなか赤玉をカゴに上手く入れられてねえ。そして……」

 

 ひょいっと気合の入らない投げ方で氷雨に放られた白玉が、すっぽりと敵主将が背負ったカゴに入る。

 

「わ、すご……」

 

「わたしの場合、多数投げるよりも1発1発狙いすまして、ゆっくり投げた方が効率いいんだよ」

 

 と言うか実は、ゆっくり投げた方が手加減の調整にちょうどいいと言う事なのである。氷雨は白玉を投げた時は基本的に必ずカゴに入るが、投げる回数を少なくする事で、常人がカゴに入れる命中率分布の中央値よりも若干マシ程度に調整していたのだ。

 氷雨が本気を出せば、マシンガンの様な速さで投げた白玉が、全て敵主将の背負うカゴに入るのは間違いない。ぶっちゃけ、氷雨1人でも勝てるのだ。けれどそれは悪目立ちと言う物でもあるし、競技にならなくなる。第一、どう考えてもずるい(チート)という物だ。

 

「……むなしい」

 

「何か言った? 氷雨ちゃん」

 

「いや、何も。ほれ、敵主将が逃げるぞ。追え、追え」

 

「あーっ! 待てー!!」

 

 そしてまき絵が、カゴを背負った敵主将を追って走り出す。氷雨はふうっと溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 結局のところ、麻帆良学園本校女子中等部1-Aはこの移動式玉入れ競技で、女子中等部1位を獲得した。だが氷雨はやはり、どうしてもズル(チート)をした様な思いから、逃れられなかったりする。

 

「千雨といっしょに、騎馬戦にしとくんだったかなあ……。はぁ~~~」

 

 氷雨は再度、青空に大きく溜息を吐いたのである。

 

 

 

 

 

 

 4人1組で作った騎馬が、競技場(スタジアム)のフィールドに多数並んでいる。普通の体育祭では花形とも言える種目、騎馬戦だ。もっとも麻帆良学園の体育祭はあまりに規模が大きいため、ちょっと変わった形でこの競技は行われる事になる。

 ぶっちゃけた話、1クラスにつき3騎の騎馬を出し、それでバトルロイヤルで互いの帽子を奪い合うのである。なおクラスごとに区別がつく様に、帽子の色は各々で違う。1-Aのクラスの色は、1年生で一番最初であるが故に、白であった。

 

 なお、騎馬戦出場メンバーを決めた時、長瀬楓はこっそり千雨と語り合ったものだ。

 

「千雨殿が馬の前でござるか。正直、千雨殿は騎手の方が良いのではとも思うでござるが」

 

「お前、人の事言えるのかよ。お前こそ騎馬戦の上になれば、楽勝で対戦相手の帽子なんざ、いくらでも取れるだろが。なのに何で、わたしと同じく別馬の前位置に立候補した?」

 

「はっはっは、拙者は身体が大きい故に、言いたくはないが重いでござれば。……それに拙者が騎手をやっては、ちょっと一般の人たちに対しヒキョーでござるからなあ」

 

「わたしも、そう言う事だ。体重云々じゃない方な」

 

「なるほど」

 

 そんなわけで、千雨の組は千雨が馬の先頭、大河内アキラが馬の右後ろ、那波千鶴が馬の左後ろで、騎手が雪広あやか(いいんちょ)であった。いいんちょは千雨たち3人が組み上げた騎馬の上に乗り、真面目な顔で言い放つ。

 

「……勝ちに行きますわよ、皆さん」

 

「うん、それはいいんだが。作戦は? バトルロイヤルなんだから、回避に専念して他が潰し合うのを待ってもいいかと思うが?」

 

「いえ、その作戦は取りませんわ。これは体育『祭』なのです。せっかくのお祭りなのですし、華のあるやり方でこそと言う物でしょう」

 

「……悪かった、意見は撤回する。んじゃ、ガンガン行くか」

 

「「「おおー!」」」

 

 そして彼女らはガンガン行ったのである。それはもう、思いっきり。まあ千雨は、アキラと千鶴の身体能力に合わせた程度の能力に抑えていたが。

 

 

 

 

 

 

 千雨が苦笑しつつ言葉を紡ぐ。そしてアキラと千鶴もそれに追随する。

 

「いや、惜しかったな。まあ長瀬、春日、和泉、そして騎手が神楽坂のチームが最後まで生き残って、1-Aのクラスが優勝はできたから、まあ……」

 

「うん、充分な成果だと思う」

 

「あらあら、あやかは少し不満げね?」

 

「い、いえ。そんな事ありませんわ」

 

 そう言いつつも、少しいいんちょは悔し気である。実はいいんちょは明日菜の騎馬が複数の敵騎馬に囲まれて危なかったのを助けに行って、それで無理をしてしまったのだ。明日奈の騎馬を救出することはできたのだが、いいんちょは帽子こそ取られなかったものの、敵騎馬の騎手もろともに落馬失格してしまったのである。

 

「……ま、いいんちょは良くやったと思うぜ」

 

「そうそう。委員長がいなければ、負けてたかも知れない」

 

「うふふ」

 

「……そ、そうですわね。皆さん、ありがとうございます」

 

 いいんちょの顔が、ようやく和らぐ。千雨はフッとニヒルな笑みを浮かべた。千雨にとってはそこそこ良い結果だったと言えるだろう。他の騎馬メンバーに能力を合わせる事で、自身のケタが外れた身体能力を晒す事無く、しかもそこそこの充実感も得られた。騎馬戦という選択肢は、彼女にとっては最良だった模様である。

 

 

 

 

 

 

 払い下げの旧式ヘリが、対地ミサイルただし模擬弾を発砲する。と言うか、いくら本格とは言っても、これは良いのだろうか。ヘリと言うのは、一回飛ばすのに最低でも数十万円かかるはずである。いや、費用の問題と言うよりは、BB弾でどうやって対処すればいいのか。希雨は思わず愚痴る。

 

「ほんとによ。これってサバゲじゃなかったか」

 

「本格サバゲー大会だからな。本物の戦場では、ヘリや戦車が出て来るのはおかしくないんじゃないか?」

 

「だったら、装備に対空携行ミサイルランチャーとか、対戦車兵器のRPGとか用意しろよ。言っとくが、RPG(ロールプレイングゲーム)じゃねえぞ。ちなみにGM(ゲームマスター)とかは出来るけど」

 

「ほう、興味深いな。ダンジョンズ&土下座衛門ズか?」

 

 龍宮真名が失笑と共に台詞を吐き出す。

 

「おそらくは、基本的に対抗不能な(たぐい)の壁役なんだろう。これはフラッグ戦だからな。アレらをどうにか回避して、(フラッグ)を取る事を考えるべきだな」

 

「対抗不能ってのは面白くねえな。龍宮だったら、実銃だったらいくつか対抗策があるだろ? それこそ対空携行ミサイルランチャー使うとかの手段も含めて」

 

「まあな。ただ、これは言わば遊びだからな。そこまでやるわけにも行くまい。で、どうする?」

 

 希雨は頭の中で地形図を描く。そしてもっとも成功率が高そうな進軍路(ルート)を選び出した。

 

「東の通りを抜けて、迂回しよう。ただし東の通りは3年生……たしか3-Cのクラスが陣を張ってる可能性が高い。龍宮とわたしで相互支援しつつ突破。

 今なら男子校高等部の2-Bがヘリの標的になってくれてるから、そいつらが全滅しないうちに急ごう」

 

「たぶんそっちの道に行けば、おそらくなんだが柿崎、釘宮、椎名のチームが足止めくらってるんじゃなかったか。それを救出して、合流か?」

 

「その予定……」

 

 その時、東の方から誰かの叫び声が聞こえてくる。

 

『柿崎いいいぃぃぃッ!!』

 

「……1人、味方が減った。急ごう」

 

「了解だ」

 

 希雨と真名は、急ぎ東の通りへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 千雨と氷雨が、競技を終了して来た希雨を迎える。

 

「よお、残念だったな」

 

「まあ、あれは仕方ねえよな」

 

「うーん、ちょっと作戦が堅実すぎたなあ。まさかあそこで、1-Cの部隊が一か八かの賭けで中央突破するとは思わなかった。おかげで先に(フラッグ)取られちまった。

 まあ、敵の撃破ポイントで、第2位は獲得したんだが……。ちょっぴり残念だな」

 

 3人は、そのまま格闘大会ウルティマホラの会場へと向かった。何と言うか、古菲(クーフェイ)がこの格闘大会に参加していると言う事で、一応なんとなく友人的な位置づけに居る事だし、観戦しておこうと思ったのだ。

 

「おお、やってるやってる……。ありゃ?」

 

「いや、勝ち残ってはいるが……。なんか古の奴、微妙に苦労してる感じがあるな?」

 

「お、それでも勝った。と言うか、さっくりと勝った。……次の古の試合まで間があるから、ちょっと行ってみるか」

 

 彼女らは古の居る選手控室へ向かう。そこでは古が、やはり何やら難しい顔つきで考え込んでいた。そこへ氷雨が声を掛ける。

 

「よお、古。激励に来たんだが……。どうした? 何やら戦ってる最中に、苦しんでたみたいだが」

 

「あ、氷雨に千雨、希雨も来てくれたアルか。実は……」

 

 古は声を潜めて言う。間違っても、他の選手に聞かれない様に。

 

「いや、手加減に苦労してるアルよ。本気でやらねば、相手に失礼なのは重々承知の上アルが……。本気を出してしまえば闘場の舞台に真っ赤な花が咲くアル。ラフレシア級のでかい花が」

 

「「「あー」」」

 

 古が『気』の扱いを自覚的に出来る様に、彼女にきっかけを与えたのは千雨である。あの後も、千雨、希雨、氷雨はときどき、古と手合わせをしていた。いや、古だけではなく楓とも戦ってはいたのだが。

 そして今現在の古は、入学当初の彼女が赤子扱いな程に技量を上げていた。いや、入学した当初の時点に於いても、彼女の力量は麻帆良の『一般人の中の強豪』を問題にしないレベルではあったのだが。しかし今の彼女は甲賀中忍長瀬楓と立ち合って、3~4本に1本は確実に取れるほどの腕前にまでなっていたのだ。

 

 そこまでの戦闘力を備えてしまった以上、古に取って麻帆良の『一般人の中の強豪』クラスだと、紙人形に等しい。彼女がそれらと立ち合う場合、かなりの手加減をしてやらねば相手が死ぬ。比喩でなく。

 

「うん……。まあ、わかる。ただなあ……」

 

「うん。今、古が抱えてる悩みは、古が強くなるにつれて遅かれ早かれ出て来たはずの悩みだ」

 

「ちょっとばかり早すぎた感も無くも無いが……。古が強いが故の贅沢な悩みだと思って、折り合いを付けてくしかねえな」

 

「わたしより強い人たちの言う事だし、謹んで従わせてもらうアル」

 

「「「「「「ええっ!? 古菲より強いだと!?」」」」」」

 

 いつの間にか、声のボリュームが普通に戻っていた模様。周囲の面々が、どよめく。

 

「あ、しまったアル」

 

「「「やべ」」」

 

 長谷川3人娘は、その場を逃げ出す。その巧みな足さばきにより、少なくとも『だが、回り込まれてしまった!』と言う事は無かった。無かったのだが……。

 後々に、古と同格以上の実力者が麻帆良学園本校女子中等部1-Aのクラスに、古含めて7人居る、という噂が流れるのは止めようが無かった。既に噂になっていた楓、真名、刹那に古を含めて、『武道四天王』と言う呼び名が定着しかけていたのだが、それが『武道7人衆』なり『七人の武道家』なりに変更されるのも近いかも知れない。

 

「……あと3人居たら、『十傑衆』だな」

 

「はっはっは……。どうすんだよ……」

 

「どうしようも無いだろ」

 

 長谷川3人娘は、肩を落とした。

 

 

 

 

 

 

 体育祭の終わりに、学園全体イベントが行われる。今年の種目は『学園縦断☆スーパー障害物競走』であった。『教師突撃☆スーパー借り物競争』にしようという意見もあったのだが、『いくら人気種目とは言え毎年毎年同じでは……』と言う意見が通り、今年は障害物競走になったのである。

 

「……けどよ。死者(ゼロ)を目指すってスローガンは何処行った」

 

「障害物と言うよりも、電流爆破デスマッチ競争だろがコレは」

 

「あ。まほ高男子高生が地雷に引っ掛かって……。あー、あー、あー。10mは飛んだな。なんで、かすり傷で済むんだか」

 

 長谷川3人娘は、障害物の中でも無難な物を選んでクリアして行く。100m網くぐりとか、10連ハシゴくぐりとか、400m三輪車とか。最低でも幾つかの障害物をクリアしてゴールにたどり着かないと、クラスの得点にはならない。

 

 そんな時、行く手から助けを求める声が響く。

 

「……早乙女の声だな」

 

「放って置くか?」

 

「心の底からそうしたいが、ちょうど進行方向だ。そうも行かねえだろ」

 

 3人が現場にたどり着くと、現場には綾瀬夕映、近衛木乃香、早乙女ハルナ、桜咲刹那、宮崎のどか等の姿があった。ちなみに刹那以外は図書館探検部メンバーである。そしてその場では、早乙女ハルナと近衛木乃香、桜咲刹那がトラップに引っ掛かり、ネットで宙に吊り下げられていたりする。

 

「……これはどうしたんだ」

 

「あー、長谷川さんたち」

 

「罠にかかったハルナを助けようと、木乃香さんが罠解除を試みて逆に罠にかかったです。それを助けようとした桜咲さんが、同じく罠に。わたしとのどかは、まだ他にも罠がある可能性を考えて、動くに動けなくなったです」

 

 千雨が(かぶり)を振って言う。大きな溜息が漏れた。

 

「……図書館探検部が罠に引っ掛かってどうする。なあ早乙女。はぁ……」

 

「そう言わないで、たすけてー!」

 

「くっ……。この様な失態……。申し訳ありません、お嬢様」

 

「あーん、このちゃん言うてなー」

 

 とりあえず千雨が、わざとトラップ地帯に踏み込む漢解除で罠を発動させ、全ての罠を解除する。ちなみに罠は発動するが、千雨の体捌きにより全て躱されている。

 

「これでもう、罠は無いはずだ」

 

「んじゃ、こいつら下ろすか」

 

 希雨が丁寧に、ハルナ、木乃香、刹那を宙づりにしているネットを解いて、彼女らを地面に降ろしてやった。ちなみにこのネットは学園の備品であるので、解除のときに傷つけてはならない事になっている。それ故に、刹那は剣で切断する事ができず、お嬢様ともども吊り下げられていたのだ。

 

「どうもありがとうなー、千雨ちゃん、希雨ちゃん、氷雨ちゃん」

 

「この度は、まっこと……」

 

「あー、別にいいから。それよりか、この障害物は一応クリアって事になるんだから、次の障害物目指さんといかんだろ」

 

「急がねえと、順位がどんどん落ちるぞ」

 

「わたしら、もう行くからな?」

 

 千雨、希雨、氷雨は礼を言う図書館探検部組+1を遮り、そそくさとその場を立ち去った。まあ、順位が落ちるのも理由の1つではあったが、照れ臭いのも多分にあった模様である。

 

 

 

 

 

 

『以上をもちまして、2,002年度麻帆良学園大体育祭の全日程を終了いたします。引き続き後夜祭が……』

 

「やれやれ、終わったな」

 

「おう。まあ、最初は憂鬱だったが、ちょっとは楽しめたかな」

 

「いいな、お前ら。わたしも騎馬戦にしとくんだったな……」

 

 千雨、希雨、氷雨は後夜祭の騒ぎを、少し離れた場所から眺めていた。本校女子中等部1-Aの連中は、中学生の部で総合2位を取れた事で、大喜びしている。まあ一部キチ●イじみた身体能力の連中が居るとは言え、女子中の1年生に過ぎない彼女たちが、身体的にほぼ出来上がっているはずの3年生まで抑えて2位を取れたのは、素晴らしい事だ。

 

 そしてしばらく後、千雨が口を開く。

 

「さて、皆のところ行くか」

 

「え? 行くのか?」

 

「ちょっと精神的燃料が尽きかけてるんだが……」

 

 腰が退けている希雨、ちょっと年寄臭い事を言った氷雨に笑いかけ、千雨は彼女らの手を引く。

 

「そう言うなよ。わたしらは、あえて『精神年齢を12歳頃に調整して』までして、『この世界に帰って来た』んじゃねえか。まあわたしも競技それ自体はちょこっと憂鬱だったが。でもせっかくの『年相応の』バカ騒ぎ、楽しまなくてどうする」

 

「「!!」」

 

 一瞬はっとした希雨と氷雨だったが、その表情に次第に笑みが浮かぶ。

 

「……そうだったな」

 

「んじゃ、せっかくのバカ騒ぎ、楽しんで来るとすっか」

 

 そして3人は、騒ぎの中心へと乗り込んで行ったのである。




 本作の長谷川さんたちには、体育祭って鬼門だと思う。彼女らが言ってる通りに、チート(ずるい)ですからねー。いや、他の(たぐい)の事も同じだと言われてしまえば、その通りですが。でもソレを思い切り思い知らされるのは、やっぱり体育祭とか体力測定とかでしょうし。体力測定、やっぱり手加減して乗り切ったのかなあ。
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