超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(3)氷の女、滑走

「ここ最近、話題になっている氷のヒロイン、ファム・グラス! アイスだったのね!」

 

「別に正体を隠しているわけじゃなかったけど……」

 

 その様子を横目で見て、ジッチョクは驚く。

 

「香里もヒロインだったとは!」

 

「悠長に驚いている暇はないぞ!」

 

「ん? うおおっ⁉」

 

 ゾンビたちが、接近してきたクラブマンと疾風迅雷に狙いを変え、襲いかかってきた。

 

「ふん!」

 

 疾風迅雷がパンチでゾンビの腹を貫く。貫かれたゾンビはぐったりとなる。

 

「や、やったのか……?」

 

「分からんが、とにかく群がる奴らを片っ端からぶっ飛ばすぞ!」

 

「おおっ!」

 

 クラブマンがハサミを振るうが、ゾンビたちは素早い動きでそれを躱す。

 

「躱されているぞ! もっとしっかりと狙え!」

 

「そ、そうは言うが、コイツら意外とすばしっこいぞ……」

 

 ひとたび距離を取ったゾンビたちは疾風迅雷たちを包囲するように布陣すると、またもや素早い動きで襲いかかってきた。

 

「ちっ!」

 

「は、早い!」

 

「疾風モード!」

 

「⁉」

 

 疾風迅雷が脚を高く上げ、強烈な回し蹴りを放つ。直接当たった相手だけでなく、発生した衝撃波によって、周囲のゾンビも吹き飛んだ。倒れ込んだゾンビの内、何体かはゆっくりではあるが、立ち上がる。ジッチョクが戸惑う。

 

「くっ! 不死身か⁉」

 

「落ち着け! よく見ろ!」

 

 ジンライがすかさず声をかける。ジッチョクがよく周囲を見渡す。

 

「倒れ込んだまま、溶けた奴もいる……そうか! 首を刎ねれば良いのか!」

 

「恐らくそのようだ!」

 

「弱点さえ分かれば恐るるに足りん! いくぞ、『乱れ斬り』!」

 

 クラブマンがハサミを四方八方に向けて振るう。狙いが正確かつ鋭かったため、何匹かのゾンビは回避しきれず、首を刎ねられ、無力化する。

 

「ふん、やるな!」

 

「狙いどころさえ分かればこっちのものだ!」

 

 そこに大柄なゾンビが数体現れる。

 

「む……大きいな」

 

「これもどうせ首が弱点だろう! ぬっ⁉」

 

 クラブマンが飛びかかり、ハサミを振るうが、分厚い皮膚に跳ね返されてしまう。

 

「ヌン!」

 

「か、硬い! どわっ⁉」

 

 大柄なゾンビはその巨体に似合わず、鋭いパンチを繰り出し、クラブマンは派手に吹っ飛ばされてしまう。疾風迅雷はスピードを生かして、ゾンビに接近し、再び蹴りを繰り出す。

 

「それ!」

 

「!」

 

「か、躱されただと⁉ くっ!」

 

 ゾンビの反撃を喰らいそうになった疾風迅雷は咄嗟にガードし、直撃を避ける。

 

「シュルル……」

 

「疾風モードのスピードにもついてくるとは……厄介だな」

 

「ここはウチに任せて!」

 

 いつの間にか、疾風迅雷の背後にファム・グラスが立っている。

 

「き、貴様⁉ 一瞬で俺様の後ろに⁉」

 

「ハハッ、驚かせちゃった?」

 

「……速さはなかなかのようだが、その細身では到底奴らの首を刎ねられんだろう……」

 

「フフッ、そこは考えようだよね!」

 

 ファム・グラスの靴底に刃が出てくる。ジンライが驚く。

 

「刃だと⁉」

 

「『スケートオンアイス・テクニック』!」

 

 ファム・グラスの先にある地面が一瞬で凍りつき、そこを滑り出す。まるでフィギュアスケートをこなすかのような動きでゾンビたちの群れに近づく。

 

「グムッ⁉」

 

「ヌオッ!」

 

「ステップシークエンス!」

 

 ファム・グラスはゾンビたちの繰り出してくる攻撃を優雅なターンやステップを駆使して次々と躱していく。ジンライが感嘆の声を上げる。

 

「相手が全く捉えきれていない!」

 

「グオオッ!」

 

 業を煮やしたゾンビたちが地面ごと叩き付けようとする。ジンライが叫ぶ。

 

「四方から一斉に! マズい! あれは躱しきれん!」

 

「トリプルルッツ! トリプルループ!」

 

「グッ⁉」

 

 ファム・グラスは華麗な連続ジャンプでその攻撃を巧みに躱してみせ、ゾンビたちの中心に着氷する。

 

「まとめてケリをつける! キャメルスピン!」

 

「ブオァ⁉」

 

 ファム・グラスは上半身を倒し、右足を腰より上の位置に上げ、T字になるようにして高速でスピンする。すると、巻き上がった氷がゾンビたちの巨体を凍らせてしまった。

 

「こ、凍った⁉」

 

「完全に活動は停止した……後は溶けるのを待つだけ……無理に首を切らなくても良いの」

 

「なるほど、考えようとはそういうことか……」

 

「せい! 残っていたゾンビも片付けたぞ!」

 

「おお、いたのか、高速横歩き男」

 

「クラブマンだ!」

 

「まあ、良くやった……これで全て片付いたか」

 

「きゃあ⁉」

 

「⁉」

 

 ジンライたちが悲鳴のした方に向けると、舞を抱きかかえる、騎士の甲冑に身を包んだガイコツの姿があった。アイスが叫ぶ。

 

「あれは、『ゾン鉄』のステージボス、ガイコツ騎士!」

 

「出現地点に狂いがあったが、思わぬ拾い物だったな……疾風大二郎の孫娘、疾風舞がここにいるとは……嬉しい誤算という奴だな、それほど面白くはないが……」

 

「な、なんで私のことを知っているの⁉」

 

「その声はミルアムの幹部、プロフェッサーレオイ!」

 

「ファム・グラスか……君との戦いも毎度それほど面白くはない……失礼する!」

 

 アイスからプロフェッサーレオイと呼ばれたガイコツ騎士は舞を抱えたまま、傍らにいた体半分が白骨化した馬に跨り、その場から駆け去る。

 

「ちっ、舞!」

 

「後を追うよ! 『スケートオンアイス・スピード』!」

 

 ファム・グラスの靴底に別の種類の刃が現れ、スピードスケートの様に滑り出し、あっという間にその場から離れていく。

 

「は、速い! くそっ! 疾風モードでも追い付けん!」

 

「テンソウデータヲダウンロードシマシタ……」

 

「どうした、ドッポ⁉」

 

「コウソクイドウモードニヘンケイシマス……」

 

 ドッポがバイクに変形した。ジンライは驚く。

 

「バ、バイクになった⁉ サイズがおかしいことになってないか⁉」

 

「コマカイコトハイイッコナシデス……サア、オノリクダサイ」

 

「よし! あのガイコツの後を追うぞ!」

 

 ジンライはドッポが変形したバイクに跨り、走り出した。

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