超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(4)金属の力

 レオイは赤レンガ倉庫が立ち並ぶ通りにやってきた。舞が状況を確認して呟く。

 

「ま、まさか……?」

 

「そのまさかだ。ここは函館でも有数の観光名所。君の祖父殿は函館の各所にNSPの石を分散させているね。その狙いが今一つ不明瞭ではあるのだが……」

 

「……名誉市民だとかなんだとかおだてられて、調子に乗ってバラまいたのよ」

 

「そ、そんなことがありうるのか?」

 

「ありうるわ。孫娘の私が言うんだもの」

 

「理解出来ないな……なんとかと天才は紙一重というが……」

 

「おじいちゃんは天才よ! ……エキセントリックではあるけど」

 

「……まあそれはどうでもいい。この地のNSPを回収させてもらう……あの石碑か……」

 

 レオイが馬を石碑に近づかせる。

 

「アンタたち、NSPをどうするつもりよ!」

 

「君が知る必要は無い。 !」

 

「きゃっ⁉」

 

 レオイが舞をドサッと石碑の側に置く。

 

「女性に手荒なことをして申し訳ない。その石碑の側で少し大人しくしていてくれ」

 

「う、動けない⁉」

 

「舞ちんになにしてくれてんの⁉ スケートオンアイス・テクニック! ダブルルッツ!」

 

「ふん!」

 

 駆け付けたファム・グラスは靴を切り替え、レオイに向かって飛びかかる。対するレオイは鞘から剣を抜き放ち、蹴りを受け止める。

 

「ちっ!」

 

「意外と速いご到着だったな……」

 

「ウチのスピードを舐めてもらっちゃ困るっつの!」

 

「先程も言ったが、君との戦いは毎度それほど面白くはない……」

 

「だろうね。いつもウチにボロ負けしているもんね~」

 

「! 認識のズレがあるようだな……負けてはいないし、単純に退屈なだけだ」

 

「そのわりにいつも声色は結構嬉しそうに聞こえるんだけどな~あ、もしかしてツンデレってやつ⁉ 意外とカワイイとこあるじゃん! ウケる~!」

 

「……そのことについての話は平行線を辿るだけだろう、時間の無駄だ……!」

 

 レオイは剣を構え、斬りかかる。

 

「サーペンタインステップ!」

 

 ファム・グラスはS字状に蛇行するステップを見せ、レオイの斬撃を軽やかに躱す。

 

「ちっ、相変わらずすばしっこい……」

 

「お馬さんに頼ったところでウチの動きにはついてこれないよ~」

 

「煩わしい……」

 

 レオイが舌打ちすると、ファム・グラスが笑う。

 

「それなら、ちょっぱやで終わらせてあげる! ショットガンスピン!」

 

 ファム・グラスは左足を前方に水平以上に持ちあげた状態で高速スピンを行う。それによって飛び散った氷がまさしくショットガンから放たれた弾丸のようにレオイに襲いかかる。

 

「くっ!」

 

「よしっ! 凍った! ……ってない⁉」

 

「ふん!」

 

 レオイが剣を振り、ファム・グラスの太もも辺りを斬りつける。

 

「ぐっ……そ、そんな、何故?」

 

 ファム・グラスが太もも辺りを抑えながら膝をつく。

 

「このガイコツ騎士は『ゾンビの鉄人』のステージボス……寒冷地域で志半ばに倒れ、ゾンビ化したという設定だ……よって君の氷系統の攻撃はほぼ無効化することが出来る……」

 

「そ、それ、ズルくない?」

 

「ズルくはない、対策をしっかりと練ってきたまでのこと……」

 

「くっ……」

 

「君との浅からぬ因縁もここまでだ……!」

 

 レオイがやや間を置いてから剣を振り下ろす。

 

「⁉ えっ⁉」

 

「何⁉」

 

「俺様を無視するな……はっ!」

 

 レオイの剣を疾風迅雷のキックが防ぎ、弾き返す。

 

「ちっ!」

 

「ジ、ジンライっち!」

 

「怪我をしたのなら無理をせず下がっていろ。後は俺様がやる」

 

「う、うん……」

 

 ファム・グラスが後退したのを確認して、疾風迅雷が構えをとってレオイに尋ねる。

 

「舞をさらったことから考えて、貴様らの狙いはNSPだな?」

 

「……そうだと言ったら? 何か不都合でも?」

 

「別にない……ただ、邪魔はさせてもらおう!」

 

「お~い、ジンライ君、盛り上がっているところ悪いのだけど……」

 

 間の抜けた声がして、ジンライはガクッとなる。視線を向けるとドローンが浮かんでいる。

 

「……大二郎、何の用だ?」

 

「今、データを転送したよ! 確認してくれ!」

 

「こ、これは⁉」

 

「選択してくれ! 意志表示するだけで良い!」

 

「!」

 

 疾風迅雷の体が光る。レオイが驚く。

 

「な、なんだ⁉」

 

 そこにはパワードスーツのカラーリングが銀色に変化した疾風迅雷がいた。

 

「これは……」

 

「それは疾風迅雷の数あるフォームの一つ、『メタルフォーム』だ!」

 

「メタルフォームだと?」

 

「ああ、様々なウェポンやマシンを駆使して戦うことに長けたフォームだ!」

 

「様々なウェポン、マシン……つまりドッポがバイクになったのも……」

 

「ご明察! まずはドッポにデータを送ったのだよ!」

 

「それで? どんなウェポンがあるんだ?」

 

「えっと……色々装備されて……される予定だよ!」

 

「予定ってなんだ⁉」

 

「いや、実装には結構時間がかかるのだよ……」

 

「まさか、手ぶらで戦えというわけではあるまいな!」

 

「ま、まさか! ……とりあえずデータを送ったから確認してくれ!」

 

「……普通、こういうものはテストを経てから実戦に使用するものだぞ!」

 

「ここは実戦兼テストということでひとつ!」

 

「何がひとつだ! 使用方法がなんとなくしか分からんぞ!」

 

「なんとなく分かるのなら大丈夫だよ! さすが超一流のヴィラン!」

 

「おだてるな! ……まあ、事実だが」

 

「後は持ち前のセンスでよろしく!」

 

 言うだけ言って、ドローンはその場を離れる。

 

「ちょ、ちょっと待て! よろしくするな!」

 

「漫才は終わりかな?」

 

 レオイが首を傾げる。ジンライはため息まじりで答える。

 

「……ネタ合わせの段階で相方が逃亡した」

 

「それは気の毒に……我々の邪魔をするというのなら容赦しない!」

 

 レオイが馬を走らせ、疾風迅雷に向けて突っ込んでくる。

 

「くっ! 速い!」

 

「終わりだ! 『氷剣乱舞』!」

 

「なにかないか、なにか!  ! これか! 『バーニングハンド』!」

 

「ぬおっ⁉ 氷が一瞬で溶かされた!」

 

 疾風迅雷の左腕から火炎が放射され、レオイの剣から生じた冷気を吹き飛ばした。

 

「もらった!」

 

「くっ!」

 

 レオイが馬を方向転換させ、その場から逃れようとする。

 

「ドッポ!」

 

「ハッ!」

 

 バイクに変形したままのドッポが近づき、疾風迅雷が跨って、レオイを追いかける。

 

「逃げる気か⁉ 騎士道の片隅にも置けない奴め!」

 

「! 言わせておけば!」

 

 レオイは再び馬を方向転換させて、バイクで突っ込んでくる疾風迅雷に向けて全速力で馬を走らせ、剣を構える。レオイは疾風迅雷の右側に走り込む。

 

「!」

 

「ネタ合わせを聞いたところ武装はまだまだ貧弱! 左腕の炎さえ気を付ければ!」

 

「安易な挑発に乗ったかと思ったら、意外と頭の回る奴だな!」

 

「伊達にプロフェッサーを名乗ってはいない! 『氷剣斬』!」

 

「『ライトニングブレイド』!」

 

「ぐおっ⁉」

 

 馬とバイクのすれ違いざまに疾風迅雷の右腕から発生したレーザー状のブレイドがレオイの体を切り裂いた。レオイの振るった剣よりも速い剣さばきであった。ドッポが呟く。

 

「オミゴトデゴザイマス……」

 

 ジンライが振り返ると、レオイと馬の姿は消えていた。

 

「やったか⁉」

 

「……残念だけど、奴らの内、幹部連中は『特殊次元転移装置』って機械を使っている。恐らく逃げられたはずだよ……」

 

 疾風迅雷の近くに滑り寄ってきたファム・グラスが言い辛そうに口を開く。

 

「くっ、倒す手段は無いのか……?」

 

「あるとすれば、奴らの本体をどうにかして引き摺り出すことだね」

 

「それはまた厄介な連中だな……」

 

 疾風迅雷の火炎放射を利用し、石碑に縛り付けるように凍らされた舞を解放する。

 

「はあ、助かったわ……」

 

「NSP狙いで貴様の身柄を狙ってくるケースも増えてきそうだな」

 

「そ、それは嫌ね……」

 

「護身術の通信教育を増やしてみるのも手なんじゃないか?」

 

「……トレーニングに付き合ってくれるとか、そういう流れじゃないの?」

 

「? 何故俺様がそんなことをせねばならん?」

 

「別に! 言ってみただけよ!」

 

 舞は立ち上がると、その場からスタスタと歩いていく。ジンライは首を傾げる。

 

「? おかしな奴だな……」

 

「これは……わりとチャンスあるっぽい?」

 

 舞とジンライのやり取りを見ていたアイスが悪戯っぽく笑う。

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