超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第4話(4)巨人の力

「ぐっ……」

 

 ジンライに迷いが生じる。ハンザは小首を傾げ、その様子を眺める。

 

「……」

 

(どうする? ベアーマスクの援護にまわった方が良いか? このままでは巨大トカゲがNSP研究所に向かってしまう。恐らくこのファーリという教団の狙いもNSPなのだろう……だが、この小さな体で出来ることは限られている……メタルフォームにもウェポンがいくつか追加されているが、あの巨体に決定的ダメージを与えられるとはとても……)

 

「来ないのならこちらからいくよ、お返しだ」

 

「どわっ⁉」

 

 ハンザが右腕を掲げると、空中にいくつかの光弾が発生する。右腕を振り下ろすと、光弾が勢いよく疾風迅雷に向かって降りかかり、爆発する。派手な爆発だったが、疾風迅雷はなんとか耐え忍んだ。

 

「ほう……意外とタフだね」

 

「シールドと言い、面白い手品だな、サーカス団に入ったらどうだ? 紹介してやるぞ」

 

「手品などではない……これはギフテッド……選ばれし者にのみ授けられた力だよ」

 

「選ばれし者……」

 

「そう、これは宿命と言っても良いのかな。この力を用いて、私たちは混沌にまみれたこの世界を正しい方向へと導くのさ」

 

「その為にまず目障りなベアーマスクとパキャなんとかを潰すと……」

 

「そういうことだよ。私の力もようやく一段階上に覚醒した……」

 

「覚醒だと?」

 

「そう、ご覧の通り、巨大怪獣を更に大きくさせることが出来るようになった」

 

「NSPはどうするつもりだ?」

 

「あの未知なる力は君らの手には余る……私たちが預かったほうが安全だ……」

 

「より危険が増すだろう! バイオフォーム!」

 

「! ふん!」

 

「ぐわっ⁉」

 

 バイオフォームにチェンジし、怪鳥モードとなった疾風迅雷は空中を飛んでハンザに襲いかかろうとしたが、ハンザはすぐさま光弾を放ち、疾風迅雷を撃墜する。光弾を喰らった疾風迅雷はあえなく地面に落下する。ハンザは笑う。

 

「また、違う色に変わった……しかも鳥のような姿になるとは、なかなか愉快な曲芸だ……君こそサーカス団に入ったらどうだい?」

 

「くっ……」

 

 疾風迅雷は俯いた体勢から寝返りをうち、仰向けになって空を仰ぐ。

 

「パフォーマンスは終わりかな? 君も邪魔だから消えてもらおうか」

 

「ちっ……ん? 大二郎から通信! これは!」

 

 疾風迅雷が立ち上がり、ハンザとは反対方向、巨大トカゲの方に向かって走り出す。

 

「! 逃がさないよ!」

 

「逃げではない! 面白い曲芸を見せてやる!」

 

「これ以上好きにさせるとでも⁉ なっ⁉」

 

 ハンザと疾風迅雷の間にクラブマンとファム・グラスが割って入ってくる。

 

「おい! 湿布賃貸!」

 

「疾風迅雷だ!」

 

「お客さんたちの避難誘導、完了したよ~♪」

 

「そうか、その男の足止めを頼む! 超能力を使うぞ、無理はするな!」

 

「分かった!」

 

「りょ!」

 

「意志を表示!」

 

「何⁉」

 

 疾風迅雷の体が光る。ハンザだけでなく、クラブマンたちも驚く。

 

「な、なんだ⁉」

 

「わ~お……」

 

 そこにはパワードスーツのカラーリングが赤・青・白のトリコロールに変化し、数十メートルの体に巨大化した疾風迅雷がいた。近くを飛行する戦闘機から舞の声がする。

 

「ジ、ジンライ、それは……⁉」

 

「これは疾風迅雷の数あるフォームの一つ、『ジャイアントフォーム』だ!」

 

「ジャ、ジャイアントフォーム?」

 

「ああ、ただ単純なパワーアップだけでなく、常識をはるかに超越した能力を発揮して戦うことが出来る! ……とのことだ!」

 

「常識を超越した……」

 

「とは言っても、例によってまだ限りがあるようだがな……まずはこれか!」

 

「⁉」

 

 疾風迅雷が手をかざすと、ベアーマスクが倍ほどの大きさになった。舞が驚く。

 

「そ、それは⁉」

 

「周囲の物体の大きさを変化させることが出来るようだ! 行くぞ、ベアーマスク! あのバカでかいトカゲを退治する!」

 

「グオッ!」

 

 ベアーマスクは力強く頷き、巨大トカゲに向かって突っ込む。まだ巨大トカゲの方が一回り以上大きいが、それでもベアーマスクには十分だった。ベアーマスクはジャンプして、巨大トカゲの頭部を叩く。そして前屈みになった巨大トカゲの頭部を自身の両足で正面から挟み、巨大トカゲの胴体部分を両腕で抱えて持ち上げながら後ろに尻餅をつくように倒れ込み、巨大トカゲの頭部を地面に激しく打ちつける。

 

「決まった! パイルドライバー!」

 

 杏美が歓声を上げる。巨大トカゲはそれでもなんとか立ち上がるが、脳天を打ちつけた為か、足元がフラフラとしている。

 

「ベアーマスク、下がっていろ! 後は俺様がやる!」

 

「ウガッ⁉」

 

「こういうことも出来るわけだ……!」

 

 疾風迅雷は崩れたテントの支柱を巨大化させて、自らの手に取ると、巨大トカゲに向かって勢いよく突っ込む。

 

「ギャア……!」

 

 支柱が巨大トカゲの胸を貫く。疾風迅雷はトカゲの目から光が失われたことを確認し、支柱を引き抜く。巨大トカゲはその場に崩れ落ちる。

 

「生物である以上、心臓、またはそれに近い器官はあるはずだ。正直当てずっぽうだったが、胸部を狙ってみて正解だったな……」

 

「くっ! これで勝ったと思うなよ!」

 

 ハンザの声にハッとなったジンライはファム・グラスたちに指示を送る。

 

「まさか復活させる気か⁉ その男に竪琴を奏でさせるな!」

 

「りょ! ショットガンスピン! なっ⁉」

 

 ファム・グラスの放った氷の塊は、ハンザのシールドに阻まれる。

 

「無駄だ! この防護盾は破れん!」

 

「うおりゃあ!」

 

「なっ⁉」

 

「はっ⁉」

 

 ハンザだけでなく、ジンライたちも驚いた。クラブマンがシールドをものともせずにハンザへ攻撃したからである。

 

「なっ……ど、どうやって防護盾を……」

 

「正面が駄目なら……横入りするまでだ!」

 

「そ、そんな……も、盲点だった……」

 

「いや、十分想像出来るでしょ……」

 

 ファム・グラスが呆れた声で呟く。

 

「くっ、カニ男め! 私の顔に傷を付けるとは! 覚えておけよ!」

 

「ぬおっ!」

 

「き、消えた……」

 

「……二人ともよくやってくれた」

 

 巨大化から通常のフォームに戻った疾風迅雷が声をかける。

 

「これくらいなんてことはない!」

 

「ジッチョク、相手に目を付けられちゃったみたいだけど……」

 

 アイスが心配そうに声をかける。

 

「仕方が無い! それもヒーローの宿命という奴だな」

 

「巨大怪獣で攻めて来られたらどうするの?」

 

「そ、それがどうした! 受けて立つまでだ!」

 

「声震えてんじゃん、意気込みは良いけどね……」

 

 アイスが苦笑する。

 

「……これからも移動しながら戦い続けるんですね?」

 

 戦いが終わり、怪獣の死体撤去作業などが忙しなく進む中、舞が杏美に問う。

 

「ファーリの拠点は各地にあると見られているからそこを調査しつつね」

 

「だ、団長~」

 

「あっ、光八! 今までどこに行っていたのよ! いつも肝心な時にいないんだから!」

 

「す、すみません……」

 

「……まあ良いわ、いつものようにトレーラーの運転、お願いね」

 

「あ、あの……」

 

「止めておけ、舞……」

 

 ジンライが舞を制する。

 

「で、でも……」

 

「知られたくないということだろう、放っておけ……」

 

 ジンライは運転席の方に回り、光八に近づく。それに気づいた光八が会釈する。

 

「あ、ど、どうも……」

 

「シャイな性格でずっとマスクを被っていてもほとんど違和感の無い場所……このプロレス団体兼サーカス団は貴様にとってちょうど良い隠れ蓑なわけだな」

 

「は、はい?」

 

 光八はとぼけた様子で首を傾げる。

 

「そのマスクがどうであれ、この連中ならば貴様のことを受け入れそうだがな……」

 

「!」

 

「独り言だ、気にするな……縁があればまた会おう」

 

「ただいまー!」

 

「ああ、お帰り……」

 

 家に戻った舞たちを大二郎が迎える。ジンライが怪訝そうな顔で尋ねる。

 

「どうした、浮かない顔だな、NSPを守ったのだぞ?」

 

「他の街のNSPが同時に危険信号を発していてね……まだ慌てる段階じゃないけど」

 

「はっ⁉ 他の街って、函館だけじゃないの⁉」

 

「い、いや、北海道各所に……言ってなかったっけ⁉」

 

「そ、それを早く言え!」

 

 衝撃の発言にジンライが大声を上げる。

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