超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第5話(1)襟裳の春は何もない

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「思えば遠くまできたものだ……」

 

 ジンライは海を眺めながら呟く。

 

「ジンライサマ……」

 

 トボトボと近づいてきたドッポに向かってジンライが振り向く。

 

「貴様がバイクだけでなく車両モードに変形出来るとはな」

 

「オツカレデハナイデスカ?」

 

「自動運転だったからな、シートの座り心地も悪くは無かった。大して疲れは無い」

 

「ソレハナニヨリデゴザイマス……」

 

「ただ……飛行機モードなどに変形は出来ないのか?」

 

「ハカセハイチオウカイハツチュウダトオッシャッテイマシタガ……」

 

「移動距離を考えるとすぐに欲しかったところだが……まあ、贅沢は言えんか」

 

 ジンライは首を傾げながら呟く。

 

「シカシ、ヨロシイノデスカ?」

 

「何がだ?」

 

「ショウジキニモウシアゲテ、ゲンザイノジンライサマハハカセノツカイパシリデス」

 

「随分と正直な物言いだな」

 

 ジンライは思わず苦笑する。

 

「ギンガイチノヴィランガ、イツマデモコノヨウナアツカイニアマンジテイルワケニイカナイノデハ……?」

 

「下手なことを言うのはやめておけ……」

 

「ゴシンパイナク……ゲンザイハカセトノツウシンハシャダンチュウデス、コノヤリトリガキカレルオソレハアリマセン」

 

「貴様自身も把握していない方法を使っているかもしれん……会話内容をメモリーしておくとかな……奇人変人ではあるが、なかなか侮れん奴だ」

 

「デスガ……ダレカニソウダンスルコトニヨッテ、カンガエヲセイリデキルトイウメリットモアルトオモワレマス……」

 

「貴様からの提案、心に留めておこう。その件についてはひとまず後回しだ」

 

「ハッ……」

 

 ジンライは海に視線を戻す。腕を組んで考える。

 

(NSPが一つの街だけでなく、この北海道というエリア全体に配置されているとは想定外だった……。表向きは大二郎の業績を讃える行政機関の要請に応えるという体で、その研究成果を様々な形で各所に設置しているとのことだが、実際の狙いは違うのだろう……。奴が少し口を滑らしたように別の目的があるはずだ……その目的を見極める為にも、ここはあえて奴の依頼を受け、各地を巡ってみようと思った。しかし……)

 

「寒いな!」

 

 ジンライはブルブルっと震える。

 

「キセツハスッカリハルデスガ、キョウハウミカゼガツヨイデスネ」

 

「ここはなんという街だったか?」

 

「エリモデス」

 

「そうだ、襟裳だ。しかし……何もないな」

 

「そりゃ、岬の先端部分にまで来ればね、どこだってこんなもんでしょ……」

 

 舞が目を細めながらジンライに語りかける。

 

「なんだ、調子が戻ったのか、トイレに駆け込んでいたが」

 

「洗面台を借りにね……吐き気がひどかったから」

 

「乗り物酔いとは情けない奴だな」

 

「むしろアンタがなんで平気なのよ」

 

「宇宙空間の飛行では多少の揺れがつきものだ」

 

「生憎だけど、宇宙に行った経験が無いもので」

 

「先が思いやられるな……」

 

 ジンライがため息をつく。

 

「酔い止め薬を買っておくわ。どこかで買えるでしょ」

 

「大体、貴様はなんでついてきたのだ?」

 

「学校が連休で休みだし」

 

「そういうことではない」

 

「アンタ、北海道の地理に不案内でしょう、ナビ役よ」

 

「必要ない、ドッポがいる」

 

「ドッポの調子が悪い時に困るでしょう」

 

「まず貴様が調子を崩しているだろう」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

 舞が口ごもる。

 

「まあ、側にいた方が守りやすくはあるか……」

 

「え?」

 

「いいか、極力俺様の側から離れるなよ」

 

「ええ?」

 

「もちろん俺様も離さん、必ず守ってやる」

 

「えええ?」

 

 舞の顔がみるみる赤くなる。ジンライが顔を近づける。

 

「どうした? 顔が赤いぞ、熱でもあるのか?」

 

「べ、別に! 大丈夫よ! ⁉」

 

 その時、舞の腹がグウっと鳴る。

 

「……どこかで腹ごしらえでもするか……ドッポ」

 

「スコシモドッタトコロニキッサテンガアリマス」

 

「喫茶店……軽食も出しているだろうな。行くぞ、舞」

 

 ドッポを肩に乗せジンライが歩き出す。

 

「な、なんか、タイミング悪い! ……ような気がする! 今じゃないでしょ⁉」

 

 舞がポンポンと自らの腹を叩く。ジンライが不思議そうに見つめる。

 

「何をやっている?」

 

「何でもない! 自分の腹の虫に腹を立てていたの!」

 

「なんだそれは……」

 

 ジンライが首を捻りながら再び歩き出す。ドッポが呟く。

 

「ジンライサマモツミナオカタデスネ……」

 

「? まあ、舞の身柄を確保しておくに越したことはない。以前のようにNSPを狙う勢力にさらわれたりしてはかなわんからな。大二郎への牽制にもなる……」

 

「ソウイウイミデモウシアゲタノデハナイノデスガ……」

 

「ん?」

 

「イエ、ア、ミエテキマシタ、アノミセデス……」

 

 ジンライたちは店に入って、食事を済ませた。

 

「ごちそうさまでした……それで? これからどうするの?」

 

「……大二郎の説明によれば、NSPが危険信号を発したということはそのままの意味で危険を察知したということになるらしい」

 

「それは私も聞いたわ。ただ、危険を察知ってどういうこと? NSPは自らにとって、その察知した存在が安全か危険かどうか判断することが出来るの?」

 

「細かいメカニズムは俺様にも分からん……なにせ未知のエネルギーだからな」

 

 ジンライはわざとらしく両手を広げてみせる。

 

「函館を留守にしても良かったのかしら?」

 

「研究所の守備はアイスに頼んでおいた、一応カニ男にもな……」

 

「手回しが良いわね」

 

「とはいえ、心配ではあるな……こちらを片付けてさっさと函館に戻りたいところだが」

 

「おじいちゃんは慌てる段階ではないって言っていたけど」

 

「数か所ある中で、一番優先すべきなのがこの街だということでやってきた」

 

「ジンライはなにかが迫っていると確信しているの?」

 

「確信とまではいかないが、しばらく滞在していよう。しかし、本当に何もないな……」

 

「何もないとはご挨拶ね!」

 

 突然、ボサッとした茶髪でライダースジャケットにジーンズ姿の女性がジンライたちに話しかけてきた。

 

「……誰だ?」

 

 ジンライが怪訝そうに尋ねる。

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