超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(2)ちゃぶ台を囲む超一流ヴィラン

「ん……」

 

「お、気が付いたかね」

 

「?」

 

「ちょうどご飯も出来た、食卓を囲もうじゃないか」

 

「……」

 

 ジンライは警戒しながら、ゆっくりと立ち上がって、隣接する部屋に移る。白髪で豊かな髭を蓄え、よれよれの白衣を着た穏やかそうな初老の男性と、黒髪ロングで眼鏡を掛けた女の子が丸い木製のテーブルを囲んでいる。その様子を眺めながら、ジンライは自分が素っ裸でないということに気が付き、身に付けている衣服をつまんで引っ張る。

 

「ああ、その黒いのはジャージだ、僕のお古だけどね。あ、下着は新品だよ」

 

「なんで、私がそれを買いに行かなきゃいけないのよ……」

 

 女の子は不満そうに呟く。ジンライはテーブルの上に並んだ料理を見て考える。

 

(衣服もきちんと着用し、食料もしっかりと調理し、食器に盛っている……文明・文化のレベルは思ったよりも蛮族ではなさそうだな……)

 

「? どうした、座ったらどうだい」

 

「……」

 

 ジンライは二人の間にドカッと腰を下ろす。料理をじっと見つめる。

 

「さあ食べよう、いただきます」

 

「いただきます……」

 

 二人は料理を食べ始める。ジンライは目を細める。

 

(毒でも盛っているかと思ったが、そうでもないようだな……しかし、俺様を拘束もしないとは……こいつらの狙いが分からん……!)

 

 ぐうっとジンライの腹の虫が大きく鳴る。男性が笑う。

 

「はははっ、そういうものは万国、いや、万星共通かな? 遠慮しないで食べなさい」

 

「ふん……」

 

 ジンライは二人の見よう見まねながら、箸を器用に扱い、料理を口に運ぶ。

 

(毒ならばジョミール星人の件で多少ではあるが耐性がある……今は栄養を補給し、頭を働かすべきときだ……ん?)

 

「旨いな……」

 

「そりゃあそうでしょ、私が作ったんだから」

 

 ジンライの言葉に女の子が胸を張る。

 

「どんどん食べなさい、君には色々と聞きたいことがあるからね」

 

「って、おじいちゃん、本当にこいつを警察に突き出さないの?」

 

「? 彼は何も悪いことはしてないだろう?」

 

「思いっ切りお風呂を覗かれたわよ!」

 

「あれは事故みたいなものだろう」

 

「みたいなじゃなくて事故! 家が壊れたのよ⁉ 尚更警察沙汰でしょう!」

 

 ジンライは二人のやりとりを聞きながら考える。

 

(警察機構は存在するのか……ならば何故に通報しない? 個人的に尋問する気か? しかし、料理に毒やしびれ薬の類は入っていないようだが……俺様が暴れたらどうするつもりだ? さらに奇妙なことだが……)

 

 ジンライは顎に手をやる。

 

(何故にこいつらの話していることが分かるのだ? 言語に関しては幼少期から睡眠学習でありとあらゆる言語を叩き込まれているが、地球の言葉など学んだ覚えが無い……)

 

「まあ、とにかく食べよう、君も……も、もう食べたのか、早いね……」

 

「……なかなかの味であった。貴様、良い腕をしているな」

 

「き、貴様って……上から目線なのが気に食わないけど……どうも」

 

 女の子は軽く頭を下げる。食事を終えた男性がジンライに問いかける。

 

「……では少し良いかな?」

 

「……これは尋問ということか?」

 

「い、いやいやそんなに大げさなものじゃないよ。お話をしようということだよ」

 

「黙秘権を行使しても構わんのだな?」

 

「ま、まあ、答えたくないなら無理に答えなくても良いよ」

 

「そうか……」

 

「まず君の名前は?」

 

「……」

 

「いきなり黙秘⁉」

 

 女の子が驚く。男性は笑いながら後頭部を掻く。

 

「ああ、まずこちらから名乗るのが礼儀だったね。僕は疾風大二郎(はやてだいじろう)。科学者をやっている」

 

「科学者……」

 

「冴えない三流だけどね」

 

「だろうな、その服を見れば大方の察しはつく」

 

「ちょっと! おじいちゃんは超一流よ!」

 

 女の子が机に両手を突いて怒る。大二郎はそれを落ち着かせる。

 

「まあまあ、こちらは孫娘の疾風舞(はやてまい)。高校2年生だ」

 

「ふん……」

 

「な、なによ……」

 

 ジンライは舞をあらためて見つめて呟く。

 

「結構な美人だな」

 

「なっ⁉ ほ、褒めても何も出ないわよ!」

 

「そんなつもりではない。本心で言っている」

 

 ジンライは舞から顔を逸らさずに告げる。目鼻立ちのくっきりとしたルックスである。意志の強そうな眼差しがジンライの印象に残った。

 

「はははっ、祖父の僕が言うのもなんだけど、それは同感だ。僕や息子に似なくて良かったよ。話によると、高校でも相当モテているみたいだからね」

 

「お、おじいちゃん! い、今はそんな話は良いでしょ!」

 

「うむ……それでは君の名前を教えてくれるかな?」

 

 ジンライはおもむろに立ち上がって叫ぶ。

 

「漆黒のパワードスーツに身を包み、幾つもの堅固な宇宙要塞を陥落させ、数多の屈強な種族を倒してきた、ドイタール帝国第十三艦隊特殊独立部隊部隊長、『超一流のヴィラン』、ジンライとは俺様のことだ!」

 

「「……」」

 

「な、なんだ、その薄いリアクションは⁉」

 

「アンタ、私と同い年くらいでしょう? いい加減そういうの卒業したら? もうそろそろ皆、今後の進路について考える年頃なのよ?」

 

「なっ……貴様、まさか信じていないのか⁉」

 

「ジャージ姿の奴がなんたら帝国の特殊部隊長って言ってもねえ……」

 

「こ、これは貴様らが勝手に着せたのだろうが!」

 

「まあまあ、落ち着いてジンライ君。僕は信じるよ。だから座って」

 

「ふ、ふん、孫娘と違って多少は賢明だな、流石年寄りだ」

 

「年寄りって言うな!」

 

「年寄りは年寄りだろう!」

 

「ええと、勝手ながら君の乗ってきたポッドを解析させてもらっているのだけど……」

 

「解析? 出来るのか?」

 

「ある程度だけどね……君が宇宙から来たというのはあのポッドを見てもよく分かる」

 

「……」

 

「なによ、いきなり黙り込んで」

 

「……例えばだが、あれを修理することは出来るか?」

 

「修理か……それならもっと詳しく解析させてもらえるかな?」

 

「構わん、好きにしろ」

 

「ありがとう! いやあ、未知の技術に触れるなんて、科学者冥利に尽きるよ!」

 

 大二郎の答えにジンライはフッと笑う。

 

(宇宙は広いが科学者というのはどこも同じだな……精々利用させてもらおう)

 

「そうと決まったら、研究室に行ってくるよ!」

 

「ちょ、ちょっとおじいちゃん! コイツはどうするのよ⁉」

 

「舞、耳を貸して……」

 

 大二郎は舞に耳打ちする。

 

「……⁉ まさか、そんな⁉」

 

「まだ予想にしか過ぎないけどね、じゃあ、そこんとこよろしく」

 

「ちょ、ちょっと……しょうがないわね」

 

「?」

 

「え、えっと、ジンライだっけ?」

 

「よ、呼び捨て⁉ 銀河に名を知られた俺様を……!」

 

「ああ、そういうのいいからいいから。ちょっと食後の散歩でもしましょう」

 

 ジンライと舞は家の外に出る。ジンライは訝しむ。

 

(外に出して、もし俺様が逃げ出したらどうするつもりなのだ……?)

 

「あのポッド?が直らないとアンタも困るんでしょ? だから逃げたりはしないはず」

 

「なっ⁉ き、貴様、心が読める種族か⁉」

 

「大体考えそうなことくらい分かるっつーの」

 

「むっ……」

 

「まあ、さっさと逃げて欲しいくらいだけどね……これ以上面倒事が増えるのは御免だわ」

 

 舞は庭先の妙な箱に腰掛け、ため息交じりで呟く。

 

「面倒事?」

 

「色々あんのよ……」

 

 ジンライはあらためて家屋を見る。大きな看板が目に入る。

 

「『NSP研究所』? とても研究施設のようには見えないが……」

 

「土地を新たに用意するお金が無いの……だからこその自宅兼研究所」

 

 舞の答えにジンライは鼻で笑う。

 

「ふん、大した研究ではないということか」

 

「そんなこと無いわ!」

 

 舞は立ち上がって叫ぶ。ジンライが戸惑う。

 

「な、なんだ……」

 

「おじいちゃんの行っている研究はこの地球の未来を左右するほど重要なものよ!」

 

「とてもそうは思えんが……⁉」

 

 突如爆音が響く。ジンライは気配を察し、そちらに目をやると、虹色の派手なタイツに身を包んだ者たちが庭先に飛び込んでくる。

 

「来たわね!」

 

「な、なんだコイツらは⁉」

 

「世界征服を目論む悪の秘密結社『レポルー』の戦闘員たちよ! NSPを狙っていつも庭先で好き勝手に暴れ回るの! もう日常茶飯事よ!」

 

「日常的に秘密結社が庭先に来るのか⁉」

 

 ジンライは驚く。

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