超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第6話(1)プリズナーハネムーン

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「……これはどういう状況なの?」

 

「……」

 

 舞の問いかけにジンライは無言でいる。

 

「黙ってないでなんとか答えなさいよ」

 

「……なんとか」

 

「ふざけないで!」

 

「怒鳴るな……」

 

 ジンライはため息交じりに呟く。

 

「怒鳴りたくもなるわよ! なんなのよこの状況⁉」

 

 ある部屋の中で、ジンライと舞はそれぞれの両手を後ろ手に縛られ、さらにお互いの体を背中合わせの状態で、縄でまとめて縛られている。

 

「とらわれてしまったな……」

 

「しまったな……じゃないわよ! どうしてこんなことに? 私がうたた寝をしている間に一体何があったのよ⁉」

 

「……約5時間の睡眠はうたた寝とは言わんだろう、本格的な睡眠だ」

 

 ジンライは醒めた声で答える。

 

「い、いや、それは……」

 

「車は揺れが酷いとか言ってなかったか?」

 

「な、慣れって怖いわね。疲れもあったと思うけど、おじいちゃんと通信でやりとりした後、ぐっすりと眠ってしまったわ……」

 

「大体、ナビ役はどうした、ナビ役は? 役目を果たしていないぞ」

 

「眠ってしまったものは仕方がないでしょう!」

 

「開き直ったな」

 

「ごめんなさい! ほら、ちゃんと謝ったでしょ⁉」

 

「謝罪というものはもう少し申し訳なさそうにするものだ……」

 

「細かいわね! いいから状況を説明してよ!」

 

「ふむ……どこから説明したものか……」

 

「大体ここはどこよ⁉」

 

「網走だ」

 

「あ、目的地にはちゃんと着いたのね」

 

「ああ、北海道を縦断してな」

 

「着いたのなら起こしてくれたら良かったのに……」

 

「よく眠っていたからな、それに……」

 

「それに?」

 

 舞が首を傾げる。

 

「貴様の寝顔というのがなかなか新鮮でかつ魅力的だったからな」

 

「⁉ な、何を言ってんのよ⁉」

 

 舞の顔がボッと赤くなる。

 

「思ったことを言ったまでだが」

 

「そ、そういうことをいきなり言わないでよ!」

 

「? よく分からんやつだな」

 

「こ、こっちの台詞よ!」

 

「? ますます分からん」

 

「な、なんか、よくよく考えてみたら、思いっ切り寝顔を見られたのよね……今更ながら恥ずかしくなってきたわ……」

 

 舞が小声で呟く。

 

「? なんだ、ブツブツと?」

 

「な、なんでもない! それで?」

 

「敷地内にNSPが保管されているという網走刑務所の近くまで来たのだが……」

 

「……本当になんだって、刑務所に置いてあるのかしら?」

 

「さあな、そのことに関しては貴様の祖父に聞け。恐らくは……いや、なんでもない……それで刑務所付近をうろうろしていたのだが……」

 

「怪しい奴ら発見! って、私の勘がピーン! と来たのよ」

 

 部屋の中にショートボブの髪型に赤色のカチューシャを付けた女性がドカドカと入ってきた。黒のトップスに赤いフレアスカート、黒いストッキングを穿いている。長身でスレンダーな身体つきをしており、整った顔立ちをしている。

 

「ど、どなた……?」

 

 舞が怪訝そうな顔でその女性を見つめる。

 

「失礼! 私、こういうものよ!」

 

 女性が名刺を差し出してきたので、ジンライが受け取り、舞に見せる。舞はそれを声に出して読み上げる。

 

「えっと凸凹(でこぼこ)探偵事務所……代表……平……?」

 

平凸凹(たいらあい)よ! 皆デコボコっていうから、それで呼んでもらっても構わないわよ!」

 

「はあ……」

 

「平らなのか凸凹なのか、ややこしい奴だな……」

 

「いや~そんな褒められると照れるわね」

 

 デコボコは後頭部を掻く。

 

「全然褒めてはないぞ……」

 

「す、凄い名前ですね……」

 

「人生っていうのはデコボコ道、心して挑めよって意味が込められているのよ、多分」

 

「た、多分って……」

 

「聞いたことないから分かんないわ。私、細かいことは気にしない主義なの」

 

「探偵としてどうなんだそれは……」

 

 舞とジンライは呆れた顔でデコボコを見つめる。

 

「まあ、私のことはいいのよ……それより問題は貴方たちよ!」

 

 デコボコはジンライたちをビシッと指差す。

 

「……さっきも言ったが、俺様たちは怪しい者ではない。ただの新婚旅行中の夫婦だ」

 

「ちょ、ちょっと⁉」

 

 舞が戸惑いの視線をジンライに向ける。

 

「十分に怪しいわよ! 一体どこの世界にハネムーンで刑務所の周りをうろちょろとするカップルがいるっていうのよ⁉」

 

「世にも珍しいカップルがたまたまここにいた、それだけのことだ」

 

「それで納得すると思う⁉」

 

「え、えっと! 私は疾風舞と言います! こちらが疾風迅雷! ふ、夫婦というのはともかくとして、個人データを照会して頂ければ、怪しいものではないと分かるはずです」

 

 舞の言葉にデコボコは端末を取り出して、操作を始める。

 

「ちょっち待って……あ、あったわ……」

 

「確認が取れたのなら解放して下さい!」

 

「いや、まだ駄目よ!」

 

「な、なんでですか⁉」

 

「実は……『この網走刑務所にあるNSPを頂きに参上する』という予告状が届いたの」

 

「え⁉」

 

 舞が驚く。デコボコは説明を続ける。

 

「恐らくは奴らの仕業……そして貴方たちが奴らの変装とも限らないからね!」

 

「そ、そんな……」

 

「つまりは潔白が証明されんことには解放してはもらえんということか……」

 

「そうよ。まあ、『北日本の名探偵』と呼ばれている私の推理に間違いはないけどね」

 

「推理……さっきは勘がどうとか言っていたような気がするが」

 

「とにかく助けを呼んでも無駄よ、この刑務所は今、厳重に警戒されているから……⁉」

 

 そこに爆発音が響く。デコボコが端末を操作すると、叫び声が聞こえてくる。

 

「NSPが盗まれました!」

 

「⁉ な、なんですって⁉」

 

 デコボコは慌てて部屋を出ていく。

 

「潔白が証明されたが……NSPを奪還せねばならんな……」

 

 ジンライが面倒臭そうに呟く。

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