超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第6話(2)ちょっとばかり凸凹を作り出せる

「どうするの?」

 

「決まっている、揉め事に首を突っ込む」

 

「そうは言っても……⁉」

 

「交換する名刺もないからな、あの女に返す」

 

 ジンライが名刺をピラピラとさせていることに舞が驚く。

 

「え⁉ 縄は⁉」

 

「とっくにほどいている……縛られた振りをしていただけだ」

 

「い、いつの間に……」

 

「普通に名刺を受け取った時点で気付け……」

 

「あ、余りにも自然な動きだったから……」

 

 舞の答えにジンライは首を左右に振りながらゆっくりと立ち上がる。

 

「あの女も相当ポンコツだな……名探偵と言っていたが、迷う方の迷探偵じゃないか?」

 

「あ、ありがとう……」

 

 ジンライが舞の縄をほどいてやり、舞も立ち上がる。

 

「さて、ここは地下室の様だが……地上に上がらなければな」

 

「場所は分からないの?」

 

「ご丁寧に目隠しされて連れてこられたからな。まあ、斥候がやってくる頃合いだろう」

 

「斥候? ああ、ドッポ⁉」

 

「あの女もここの警備に当たっている連中も普通の車だろうと思って油断しているはずだからな……色々と情報を収集してきてくれるはずだ」

 

「その必要はありませんよ」

 

「⁉」

 

 ジンライたちが目をやると、部屋に小柄な少年が入ってきた。青色と白色を基調とした、独特な文様の衣装を身に纏っている。やや長い髪を後ろに一つにしばっている。

 

「貴様は……?」

 

「こういうものです」

 

 少年が名刺を差し出してきたので、ジンライはそれを受け取り、舞に読み上げさせる。

 

「えっと、凸凹探偵事務所……助手……無二瀬(むにせ)マコト?」

 

「助手?」

 

「ええ、うちの代表が大変失礼しました。悪い人ではないのですが……観察力・洞察力などに少々欠けているところがありまして……」

 

「探偵としては致命的だろう……」

 

「でも、そうですね……この時代風に言えば、『陽キャ』ですよ?」

 

「……明るいのは結構だが、それだけで探偵業は務まらんのではないか?」

 

「その辺をフォローするのがボクの仕事です」

 

「若い身空で大変なことだ……で? ドッポはどうした?」

 

「流石に取って食えはしなかったみたいで……お返しします」

 

 マコトと名乗った少年はポンとドッポを投げる。受け取った舞が驚く。

 

「ドッポ⁉ って、なに⁉ 濡れている⁉」

 

「こいつがじゃれついたみたいで……」

 

 マコトの右肩にリスのような小さい動物がちょこんと飛び乗る。舞が尋ねる。

 

「そ、その動物は?」

 

「これはテュロンです」

 

「リスちゃん?」

 

「いいえ、テュロンはテュロンだとしか答え様がありませんね……どうやら私の故郷近くにしか生息していないみたいですね」

 

「スミマセン、ジンライサマ……イキナリトビツカラレテ、ベロベロトシタデナメマワサレ、オモチャアツカイサレテシマイマシタ……」

 

「なんとなく卑猥な感じがする物言いは止めろ……自動乾燥機能があるだろう、さっさとそのまとわりついた唾液をなんとかしろ」

 

「カシコマリマシタ……」

 

「おおっ! 一瞬で乾いた!」

 

 驚いている舞をよそにジンライがマコトに尋ねる。

 

「……それで貴様は何者だ?」

 

「……ですから、極々普通の、探偵の助手です」

 

「図鑑にも載っていないような珍しい生物を連れている奴が極々普通か?」

 

「……希少種ですから。特に灰色のはね」

 

「……」

 

「今はボクの素性なんてどうでも良いでしょう、それよりも銀河一のヴィランと呼ばれる貴方のお力を借りたいのです。地上に案内します」

 

「こちらの素性を知られていることが居心地悪いのだが……まあいい、案内しろ」

 

「どうぞ、こちらです」

 

 マコトの案内でジンライらも地上に上がる。そこにはデコボコの姿があった。

 

「追いつめたわよ、怪盗! おとなしくお縄につきなさい!」

 

 デコボコがビシッと指差したその先には、やや長い赤髪で右目を隠し、露出の多い黒のボンテージスーツに身を包んだ女性が小さいアタッシュケースを持って立っている。

 

「まったく……いつもいつも邪魔しちゃってくれるわね、貴女……」

 

「私の推理力を見くびらないことね!」

 

「推理っていうか、ほぼほぼ本能で動いているでしょう。はあ……そろそろ逃げまわるのも面倒になってきたわ。お仕置きが必要なようね……」

 

「⁉」

 

 ジンライと舞が驚く。女の右腕が巨大化し、長く鋭い爪が生えたからである。

 

「この爪の餌食にしてあげる!」

 

 女がデコボコに向かって凄まじい勢いで走り出す。ジンライが叫ぶ。

 

「マズいぞ! あの迷探偵、丸腰じゃないか!」

 

「凸凹護身術!」

 

「えっ⁉」

 

 デコボコが地面を叩くと、彼女の周囲一帯の地面が隆起したり、沈下したりした。

 

「地面が凸凹に⁉」

 

「くっ⁉」

 

 女が突如出来た地面の窪みに足を取られ、体勢を崩す。

 

「かかったわね!」

 

「ちょっと地形変化出来た位で調子に乗らないで! 攻撃手段が無いでしょう!」

 

「甘いわね! こういうことも出来るのよ!」

 

「なっ⁉」

 

 デコボコが地面の隆起した部分を四つほど手に取って、縦一列に並べ、棒状にする。

 

「喰らいなさい!」

 

「ぐっ⁉」

 

 デコボコが棒で殴り、まともに受けた女は吹き飛ばされる。

 

「まだまだ! ⁉」

 

 デコボコは追撃を加えようとしたが、突如爆発が起こり、行く手を阻まれる。倒れている女の側にバイクが止まる。バイクにはやや長い青髪で左目を隠し、露出の多い黒のボンテージスーツに身を包んだ女性が座っている。顔が瓜二つである赤髪の女に尋ねる。

 

「……ブツは?」

 

「ちゃんとこのケースに入っているわ」

 

「……ならば遊んでないでさっさと撤退」

 

「はいはい!」

 

 赤髪の女がバイクに跨り、女たちはそこから走り去る。デコボコが叫ぶ。

 

「あ、逃げた!」

 

「デコボコさん!」

 

「マコト⁉」

 

「追いかけますよ! テュロン!」

 

「ええっ⁉」

 

 テュロンが大型の四足歩行の生物と化し、マコトとデコボコがそれに跨って走り出す。

 

「ど、どういうこと……」

 

「ボーっとするな、舞! 俺様たちも追いかけるぞ! ドッポ!」

 

 ドッポがバイクに変形し、ジンライと舞がそれに乗って、二組を追いかける。

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