超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第6話(3)モフモフカワイイ

「そのテュロンって何なの⁉」

 

 ドッポのバイクに乗る舞が並走するテュロンに跨るマコトに尋ねる。

 

「何か気になることが?」

 

「リスくらいの大きさだったのに、超大型犬を一回り大きくしたくらいになったわよ⁉」

 

「ああ、色々と変化出来る系統のケモノなのですよ」

 

「どんな系統よ!」

 

「ちょっとばかり珍しいかもしれませんね」

 

「ちょっとどころじゃないでしょう⁉ バイクと同程度の速度で走れているし!」

 

「ケモノというかもはやバケモノの類だな……」

 

 ジンライがボソッと呟く。マコトが苦笑する。

 

「バケモノ扱いは酷いな~? 結構カワイイでしょう?」

 

「……それは否定しない。特にモフモフしているのが良いな」

 

「ジンライ⁉」

 

「このモフモフは譲らないわよ!」

 

「デコボコさん⁉ そ、そういう問題ではなくて……」

 

「じゃあ、どういう問題よ?」

 

 デコボコは舞の言葉に首を捻る。

 

「テュロンのこと、気にならないんですか?」

 

「え? なんで?」

 

「ど、どういう存在なのかとか……」

 

「頼れる助手が飼っているカワイイペットよ」

 

「そ、そういうことではなくて……」

 

「それ以外にある?」

 

「お、大きさが変わるんですよ? 不思議じゃないですか?」

 

「不思議といえば不思議だけど……まあ、いいんじゃない?」

 

「い、いいんですか⁉」

 

「細かいことを気にしていたら探偵稼業なんかやってられないわ」

 

「迷探偵だ、この人!」

 

「落ち着け舞、既に分かりきっていることを大声で叫ばなくてもいい……」

 

 ジンライが冷静に呟く。

 

「そ、そうは言っても!」

 

「そもそも探偵なのかどうかすら怪しい」

 

「酷い言われ様ですね」

 

 マコトは苦笑を浮かべる。ジンライはデコボコに尋ねる。

 

「デコボコ、貴様のあの能力はなんだ?」

 

「能力?」

 

「護身術とか言っていたやつだ……」

 

「ああ、あれはある日いきなり使えるようになったのよ」

 

「……突然変異型の異能力者か……」

 

「この時代にはまだ珍しい覚醒者ですね」

 

「この時代には、か……」

 

 マコトの呟きをジンライが繰り返す。デコボコが得意気に語る。

 

「暴漢を懲らしめたりするのに役立っているわね、推理を補ってくれているわ。おかげで事件をいくつも解決に導けているのよ」

 

「むしろ推理よりもそちらがメインになっているのではないか?」

 

「ねえ、最初に話を振っておいてなんだけど、こんなのんびりしていて大丈夫⁉」

 

 舞の叫びにマコトが落ち着いて答える。

 

「しっかり目で追えていますから、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

 

「速度はそれなりに速いが、本気でこちらを振り切ろうとはしていないな……むしろ何かを探しているようだ……」

 

 ジンライの言葉にマコトは笑みを浮かべる。

 

「なかなかの洞察力ですね。そうです、探しているのですよ」

 

「何を探しているのだ?」

 

「そうですね、統一名称はありませんが……強いて言うなら時空の抜け穴ですかね……」

 

「時空の抜け穴だと? あの女どもは何者だ?」

 

「青髪がサリュウで、赤髪がウリュウ……時空賊『ラケーシュ』に属する双子です」

 

「時空賊?」

 

「タイムワープをして犯罪行為を働く連中ですよ」

 

「タ、タイムワープ⁉ それほどの科学技術を何故持っている⁉」

 

「未来人だからです」

 

「み、未来人……噂では聞いていたけど、本当にいたのね?」

 

「本当なわけがないでしょ! いい歳して、ちょっとアレな奴らなのよ」

 

 舞の言葉をデコボコは否定する。マコトが呟く。

 

「……デコボコさんは今の時代で言う、『中二病』の連中だと解釈しているようで……」

 

「だって、タイムワープなんてそんな常識外れなことあり得ないでしょ⁉」

 

「自分の能力のことは棚に上げているな……」

 

 ジンライが呟くと、双子は道路を外れ、山を登り始める。

 

「山道に入った! テュロン、追いかけて下さい!」

 

「ドッポ!」

 

「オフロードソウコウモモンダイアリマセン……」

 

 ジンライたちもそれに続き、山道を登り出す。さほど大きい山ではなかった為、すぐに山頂へついた赤髪の女、ウリュウが振り返ってジンライたちを見下ろしながら叫ぶ。

 

「ちぃっ! しつこいわね! サリュウ!」

 

「まだホールが開いていない……座標はあっているけど」

 

「やっぱりやるしかないか!」

 

 ウリュウがバイクから降りて腕を構える。右腕が巨大化する。マコトが叫ぶ。

 

「あの腕は危険です!」

 

「すぐさま懐に入る! ……吹けよ、疾風! 轟け、迅雷!」

 

「!」

 

「疾風迅雷、参上! 貴様らの邪な野望は俺様が打ち砕く‼」

 

 パワードスーツを装着したジンライがバイクから飛び上がる。ウリュウが驚く。

 

「なっ! 奴もヒーロー⁉」

 

「バイオフォーム、『怪鳥』モード!」

 

 鳥のように翼を広げた疾風迅雷が、あっという間にウリュウに接近する。

 

「しまった!」

 

「もらった!」

 

「……なんてね!」

 

「ぐはっ⁉」

 

 ウリュウが右腕を振り下ろし、疾風迅雷が押さえつけられる。

 

「なかなかのスピードだったけど、それでは出し抜けないわよ!」

 

「ぐっ……な、なんだ、この怪力は⁉」

 

「竜の腕ですもの……並の力じゃないわ」

 

「りゅ、竜の腕だと⁉」

 

「このまま握り潰してあげる! 『握手』!」

 

「ぬおおっ!」

 

 ウリュウの圧倒的な怪力に疾風迅雷が握り潰されそうになる。

 

「はあっ!」

 

「くっ⁉」

 

 そこにマコトが短刀で斬りかかり、ウリュウの手の甲に傷を付ける。鋭い一撃にウリュウは手を引っ込め、疾風迅雷はその隙を突いて、一旦距離を取る。マコトが声をかける。

 

「大丈夫ですか⁉」

 

「あ、ああ、なんとかな……しかし、こいつの腕は……」

 

「未来では竜など、幻の獣と思われる存在を実体化することに成功しました。ラケーシュはその技術を悪用し、幻獣の身体の一部を人に移植することを始めました。ある種の人体実験です。その実験の結果が彼女たちです……」

 

「な、なんということだ……」

 

「正面切って戦うのは不利です。NSPを取り戻して、撤退すべきです!」

 

「ふふっ、出来るものなら、やってごらんなさいよ!」

 

 ウリュウが笑いながら、左腕でアタッシュケースを持ち上げる。

 

「デコボコさん!」

 

「よしきた!」

 

 マコトの叫びに呼応して、デコボコが地面を叩くと、ウリュウの足下が隆起する。バランスを崩したウリュウはアタッシュケースを手放す。

 

「し、しまった!」

 

「よしっ! テュロン!」

 

 マコトがアタッシュケースを拾い、テュロンに飛び乗って、山を下る。

 

「同じような手に引っかかるとは……」

 

 サリュウが呆れた声を上げる。

 

「う、うるさいわね! 逃がしはしないわ!」

 

 ウリュウが右腕を思い切り振ると、爪から衝撃波のようなものが飛び、逃げるマコトたちの背中に向かって飛ぶ。ジンライが叫ぶ。

 

「危ない! 避けろ!」

 

「テュロン!」

 

「なに⁉」

 

 テュロンが大きなボードに変化し、マコトとデコボコはそれに乗って、さらに加速して、衝撃波を躱し、山を下っていく。舞が唖然とする。

 

「えっ、道具に変化した⁉ いよいよ何なのよ、あのテュロンは……」

 

「スピードは上がったかもしれないけど、動きはかえって読み易いわよ!」

 

 ウリュウが再び衝撃波を飛ばす。マコトが再度叫ぶ。

 

「デコボコさん!」

 

「ほいきた!」

 

「なっ⁉」

 

 デコボコが斜面に多数のこぶを作り出し、マコトはその上をボードで、スキーのモーグル競技の要領で下っていく。動きが直線的ではなくなった為、衝撃波が当たらない。

 

「よし! このまま逃げる!」

 

「……『拍手』!」

 

「どわっ⁉」

 

「なっ……!」

 

 突如爆発のようなものが起こり、マコトたちが倒れ込む。ジンライが振り返ると、そこには左腕が巨大化したサリュウの姿があった。サリュウが口を開く。

 

「……竜の腕なら、軽く手をうっただけで、爆発的な空気振動を起こせる……」

 

「でかしたわ、サリュウ! ケースを回収するわよ! ⁉」

 

 斜面を駆け下りようとしたウリュウたちの前に疾風迅雷が立つ。

 

「……やはりおとなしく逃げるよりは戦う方が俺様の性に合う!」

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