超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第6話(4)古典の力

「ふふっ! 竜の力とまともに戦りあおうっていうの?」

 

「命知らずにも程がある……」

 

「ふん、ちょうど良いハンデだ」

 

「何ですって?」

 

「竜だかなんだか知らんが、所詮はケモノに過ぎん、俺様の敵ではない」

 

「はっ、言ってくれるじゃないの」

 

「大胆不敵か……ただのバカか……」

 

 ジンライの言葉を聞いて、ウリュウは笑い、サリュウは醒めた視線を送る。

 

「ジ、ジンライ……」

 

「下がっていろ、舞」

 

 心配そうに見つめる舞に声をかけながらジンライは考えを巡らす。

 

(バイオフォームでは竜のスピードを上回ることが出来なかった……ならばパワーで対抗するか? いや、ジャイアントフォームはスランプ期間で本調子ではない……それに、ここで下手に巨大化しては舞に危険が及ぶ……!)

 

「黙っているのなら、こっちから行くわよ!」

 

「ちぃ!」

 

 ウリュウが鋭い爪で襲いかかってきた。疾風迅雷はすかさず躱すものの、左肩あたりをわずかに引き裂かれる。

 

「へえ、よく躱したわね……」

 

 ジンライは肩を抑えながら内心舌打ちする。

 

(『銀河一のヴィラン』と呼ばれた俺様が女のことに気を取られて、傷を負うとは情けない……あの女のことなどどうでもいいではないか……!)

 

「もう一丁、行くよ!」

 

「くっ!」

 

 ウリュウの追い打ちを疾風迅雷は再び躱してみせる。

 

「ふん、なかなかしぶとい……」

 

(いや、NSPという未知なるエネルギーを解明する為には大二郎の頭脳が必要だ……。そして、大二郎への牽制の意味合いでも舞は手元に置いておきたい……)

 

「……ふふ、ふふふ……」

 

「な、何がおかしいの?」

 

 急に笑い始めたジンライに対し、ウリュウは顔をしかめる。

 

「いや、我ながらなかなか滑稽だと思ってな……」

 

「は?」

 

「こちらの話だ、気にするな」

 

「気にするなっていう、そういう妙に上からの物言いがさっきから癪に障るのよ!」

 

「実際上だからな。先程から頭が高いぞ、貴様ら」

 

「な、なんですって⁉」

 

「そうだ、一つ予言をしてやろう」

 

 ジンライが指を一本立てる。ウリュウが首を捻る。

 

「予言?」

 

「ああ、今から数分後、貴様らは俺様に対し、頭を垂れることになる」

 

 そう言って、ジンライは立てた指を地面に向ける。ウリュウたちの顔色が変わる。

 

「生意気な!」

 

「世迷い言を……」

 

「サリュウ、下がっていて! こいつはアタシが仕留める!」

 

 ウリュウが疾風迅雷に飛び掛かる。

 

(スピードがさらに上がった⁉)

 

「もらった!」

 

「カラフルフォーム! 『ブルー』モード!」

 

「なっ⁉」

 

「色が青に⁉」

 

「はっ!」

 

「ちっ! 三度目⁉」

 

(視覚が研ぎ澄まされている! 攻撃が見える!)

 

 疾風迅雷はウリュウの攻撃を三度躱した。すかさず後方に飛んで相手と距離を取る。

 

「おのれ!」

 

「落ち着け……! 接近戦にこだわるな……」

 

「! ふっ、それもそうね……」

 

 サリュウの声に冷静さを取り戻したウリュウは腕を大きく数度振る。

 

「衝撃波か!」

 

「これは躱せないでしょう⁉」

 

「『グリーン』モード!」

 

「ん⁉」

 

「今度は緑⁉」

 

(聴覚が鋭敏に! 風を切る音が聴こえる!)

 

 疾風迅雷は巧みに飛び跳ねて、衝撃波を躱してみせた。

 

「ぐっ……またしても……」

 

 唇を噛むウリュウに対し、ジンライが叫ぶ。

 

「今度はこっちから仕掛けるぞ! メタルフォーム!」

 

「⁉」

 

「銀色に⁉」

 

「ヘッドフラッシュ!」

 

「ぐっ⁉」

 

「ぬおっ⁉」

 

 疾風迅雷の頭部がピカッと光り、その余りの眩しさにウリュウたちは思わず目を閉じてしまう。疾風迅雷は相手との距離を詰める。

 

「どう使うのかと思っていた機能だが、存外役に立ったな!」

 

「し、しまっ!」

 

「もらった! 『ライトニングブレイド』!」

 

「調子に乗るな!」

 

「どわっ⁉」

 

 サリュウが連続で拍手し、爆発が起こって、疾風迅雷は吹き飛ばされる。

 

「ナ、ナイス、サリュウ……」

 

「数撃ちゃ当たる……」

 

 大の字になった疾風迅雷のバイザーに文字が表示される。

 

「ぬ……ん? これは……大二郎からのデータ転送! ……これで戦えというのか?」

 

「何をブツブツ言っているの?」

 

 ウリュウが覗き込もうとした次の瞬間、疾風迅雷が勢いよく立ち上がって叫ぶ。

 

「意志を表示!」

 

「何⁉」

 

 疾風迅雷の体が光る。ウリュウたちだけでなく、舞も驚く。

 

「な、なに⁉」

 

 そこにはパワードスーツの色が黒色と鈍色の二色に変わっただけでなく、スーツの形状も変わった疾風迅雷の姿があった。上半身が白色の着物で、下半身が黒色の袴姿なのである。離れて避難していた舞から驚きの声が漏れる。

 

「ジ、ジンライ、それは……⁉」

 

「これは疾風迅雷の数あるフォームの一つ、『クラシックフォーム』だ!」

 

「ク、クラシックフォーム?」

 

「ああ、大二郎が言うには、先人たちに学ぶことは多い! とのことだが、よその星からきた俺様に言われてもな……まあ、現状打破の為にはこれでやってみるか……」

 

 腰を低くして構えを取る疾風迅雷を見て、ウリュウが噴きだす。

 

「ふふっ、まさか本当にそんな古典的なスタイルで戦う気?」

 

「ああ、どこからでもかかってこい!」

 

「お望み通り、行ってあげるわ!」

 

「クラシックフォーム! 『サムライ』モード!」

 

「!」

 

「『居合い斬り』!」

 

「がはっ!」

 

 飛び掛かったウリュウだったが、疾風迅雷が腰につけた鞘から剣を素早く抜き放った抜刀術によって、すれ違い様に倒された。

 

「ウリュウ……!」

 

「次は貴様だ……」

 

「今のを見て接近戦をする馬鹿はいない! 拍手の爆発でケリをつけさせてもらう!」

 

「そう来るか……ならば、『ニンジャ』モード!」

 

「なっ! 色がまた黒に……スーツは微妙に異なるか?」

 

「『分身の術』!」

 

 疾風迅雷が十数体に分身し、サリュウを包囲し、襲いかかる。

 

「くっ、どれが本物か……手当たり次第に爆発させる!」

 

「ぐはっ!」

 

 次々と爆発して消えていく疾風迅雷の分身たちの中で、一体が屈み込んでいた。サリュウは思わず笑みを浮かべる。

 

「消えていない、貴様が本体だ! 爪で切り裂いてやる!」

 

 サリュウが爪を突き立てようとしたその時、ジンライがニヤっと笑う。

 

「かかったな……」

 

「なに⁉ はっ⁉」

 

 サリュウの背後にマコトが回り込んでいた。

 

「先程の爆破のお礼です!」

 

 マコトが小刀でサリュウを背後から切り付ける。

 

「ぐぬっ!」

 

 サリュウが前のめりに倒れ込む。ジンライが見下ろしながら呟く。

 

「ほらな、貴様ら仲良く頭を垂れただろう……」

 

「! まだだ!」

 

 サリュウが立ち上がる。

 

「浅いですか⁉ 畳みかけます!」

 

「そうはさせん!」

 

「どわっ⁉」

 

 爆発が起こり、追い打ちをかけようとしたマコトの足も止まる。

 

「くっ……はっ!」

 

 ウリュウを引き摺りながら、空間に発生した時空の抜け穴にサリュウは飛び込む。

 

「いつもの凸凹コンビだけでなく……疾風迅雷! 貴様にこの屈辱は必ず返す!」

 

 そう言って、穴は閉じた。パワードスーツを脱いだジンライは悔しそうに呟く。

 

「ちっ、逃がしたか……」

 

「あの傷……すぐには仕掛けてこないでしょうね」

 

「何故そう言い切れる?」

 

「あの二人がこの地域のラケーシュの主力ですから」

 

「成程、『時空キーパーズ』の隊員殿がそう言うなら、間違いないだろうな」

 

「ええ……って、えええ⁉」

 

 マコトがジンライに驚きの顔を向ける。

 

「何をそんなに驚くことがある?」

 

「ど、どこでそれを? 超機密情報ですよ‼・」

 

「時空賊というワードでドッポに検索させたら、関連ワードで出てきたぞ」

 

 ジンライはドッポを片手に呟く。マコトが頭を抱える。

 

「そ、そんな……」

 

「大した機密情報だな」

 

「た、ただ、ボクがその組織に関係あるということは証明出来ていません!」

 

「無二瀬マコト……」

 

「そう! その名前で検索してもらえば、ボクのきちんとした個人情報が出てくるはずです! ちゃんと、正真正銘この時代のね!」

 

「ムニセ マコト……」

 

「ん?」

 

「スキーが好きなのか?」

 

「ええっと! その話は良いでしょう。これ以上貴方に関係があるのですか?」

 

「俺様の素性を知られていて、気分が悪かったからな……意趣返しという奴だ」

 

「ず、随分とよい性格をしておられますね」

 

 マコトは引きつった笑顔で呟く。

 

「まあいい……NSPのケースはこれか、貴様ら、元のところへ戻しておいてくれ」

 

 ジンライはアタッシュケースを拾い、マコトに手渡す。

 

「どちらへ?」

 

「この地におけるNSPの脅威はひとまず去った。次の場所へ行く。ドッポ」

 

「リョウカイシマシタ、シャリョウモードニヘンケイシマス……」

 

 車になったドッポにジンライは乗り込む。

 

「行くぞ、舞! 舞?」

 

 ジンライが覗き込むと、テュロンに頬ずりしている舞の姿があった。

 

「あ~モフモフでカワイイ~♪ これは癖になってしまいそう~」

 

「……置いていくか、ドッポ、出せ」

 

「! ちょ、ちょっと待って! 本当に置いていかないでよ! 私も行く!」

 

 走り去っていくジンライたちを見て、デコボコが呟く。

 

「あの子たち、事件の匂いがプンプンするわ。また近い内に会いそうね……」

 

「デコボコさんのそういう推理というか、勘って当たりますよね……」

 

 去って行く車を見ながら、マコトは呟く。

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