超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(2)道央観光

「ドッポ、停めろ」

 

「ちょ、ちょっと、どうする気⁉」

 

「ヒッチハイクというやつだろう」

 

「ま、まさか、乗せる気なの⁉」

 

「退屈しのぎになるぞ」

 

「そういうのは望んでいないのよ!」

 

「テイシャシマス」

 

 ドッポがヒッチハイクする女性の近くに停車する。

 

「い、いや、こういうのはあまり乗せない方が良いわよ……」

 

「男ならともかく、女ならば危険度は少ない」

 

「日本刀が見えない⁉ 危険度抜群でしょ⁉」

 

「ファッションの一種だろう」

 

「どんなファッションよ!」

 

「ありがとうございます、助かりました~」

 

「もう乗ってきたし!」

 

 グレーのタートルネックにデニムのGジャンを羽織り、黒のロングスカートを着た、艶のある黒髪ストレートロングの美人が車の後部座席に乗り込んでくる。

 

「誰も停まってくれなくて困っていたのですよ~」

 

 女性は笑みを浮かべながら、穏やかな口調で話す。

 

「そりゃあ、誰も停まってくれないでしょうね……」

 

「何がマズかったのでしょうか~?」

 

 女性は刀を片手に首を傾げる。舞は呆れながら答える。

 

「まずその刀が理由だと思いますよ……」

 

「きちんと鞘に納刀していますが……」

 

「まず刀を持ち歩いてはいけないんですよ」

 

「ドッポ、出せ」

 

「いやいや、ちょっと待って!」

 

 舞は車が走り出すのを制止する。ジンライが首を捻る。

 

「何を待つことがある?」

 

「こう言っちゃなんだけど、怪しい女性を躊躇いなく乗せて発車しないでよ!」

 

「怪しいか?」

 

「トッテモビジンサンダトオモイマス」

 

「あら、お上手ですね、うふふ……」

 

「出せ」

 

「出すな! 美人だからってなんでもかんでもOKすんじゃないわよ!」

 

「ではどうしろと?」

 

「まず貴女のお名前は?」

 

「それが……思い出せないのです……」

 

「え?」

 

「はっと気が付いたら、流氷の欠片の側に倒れていて……」

 

「ど、どんな状況ですか、それ?」

 

「そのようにしか言い様がないのです」

 

「なんらかのショックで記憶喪失になったのか」

 

「ミタトコロ、メダッタガイショウハナイヨウデスガ……」

 

 ジンライとドッポが冷静に分析する。舞が重ねて質問する。

 

「身分証明書などは持っていないのですか?」

 

「……生憎、持ち合わせてはおりません」

 

「その状態で何故ヒッチハイクをしようと?」

 

「行かなくてはいけない場所があるのです……そんな気がします」

 

「それはどこですか?」

 

「う~ん、どこでしょう?」

 

 女性は首を傾げる。ジンライは頷いてドッポに告げる。

 

「よし、出せ」

 

「だから出すな! なにがよしなのよ、なにが!」

 

「……走っていればその内思い出すのではないか?」

 

「どういう理屈よ!」

 

「なんとなくですが……」

 

 女性が顎に手をやりながら呟く。舞が尋ねる。

 

「なんとなく?」

 

「この地方で最も~と言える場所に行きたいのではないかと思います」

 

「この地方って……北海道でですか?」

 

「ええ……」

 

「最も~というのは?」

 

「最大とか、最高とか、ですかね……」

 

「いや、それはまた随分と漠然としているような……」

 

「分かった、出せ」

 

「分かるな! ああ、走り出しちゃった!」

 

「多少の余裕があるとはいえ、これ以上時間をかけてはいられん」

 

「だったら、尚更この人を乗せる選択肢はないのよ!」

 

「賑やかな方が良いだろう」

 

「タビハミチヅレ、ヨハナサケデス……」

 

「そ、そうは言ってもね!」

 

「や、やはり、私、降りましょうか?」

 

 女性が申し訳なさそうに口を開く。

 

「気にするな、もう走り出した」

 

「気にするわよ!」

 

「大体、場所の見当は付いている」

 

「ええっ⁉」

 

「ほ、本当ですか?」

 

 舞と女性は揃って驚く。

 

「ドッポ、これから指定する場所へ向かえ」

 

「カシコマリマシタ……」

 

「だ、大丈夫なの……?」

 

 車は速度を上げ、数時間後、ある場所へ着いた。

 

「着いたぞ」

 

「こ、ここは……」

 

「大雪山だ」

 

「いや、それは知っているけど……」

 

「厳密に言えば、大雪山旭岳か」

 

「な、何故ここに?」

 

「北海道最高峰だからな」

 

「ああ、最高ってことね」

 

「ロープウェイに乗るか」

 

 ジンライたちはロープウェイに乗り、雄大な大雪山の風景を見下ろす。

 

「……この時期でもまだ雪が残っているわね」

 

「どうだ? なにか思い出すか?」

 

「……申し訳ありませんが、なにも……」

 

 ジンライの問いに女性は首を振る。

 

「そうか、では温泉に一泊してから旭川に行くか」

 

「旭川?」

 

 山を下りたジンライたちは一泊後、旭川に移動する。

 

「ここだ」

 

「ど、動物園?」

 

「そう、日本最北であり、北海道最盛の動物園だ……」

 

 ジンライたちは動物園を見物する。

 

「ふむ、動物の行動や生活を見せることに主眼を置いた『行動展示』か、興味深い……」

 

「なにか思い出しました?」

 

「い、いえ、動物さんたちはかわいいですけど……」

 

 舞の問いに女性が首を振る。

 

「よし、次だ、富良野に行くぞ」

 

「富良野?」

 

 ジンライたちは、今度は富良野へ移動する。

 

「ここだ、日本最大規模のラベンダー畑だ」

 

「なるほど、最大ね、でも……」

 

「お花が……」

 

「ラベンダーノカイカジキハモウスコシアトニナリマス……」

 

「そちらの温室ならラベンダーは見られるぞ」

 

 ジンライたちは温室へ入る。女性が呟く。

 

「うわあ……綺麗ですね」

 

「思い出したか?」

 

「い、いえ、これではないかと……」

 

「ふむ……では次に行くか」

 

「どこかに泊まるの?」

 

「何を言っている。そんな余裕は無い」

 

「昨日はのんびり温泉に泊まったような……」

 

「昨日は昨日、今日は今日だ」

 

「あ、そう……」

 

 舞はジンライのマイペースぶりに軽く呆れる。また移動を始める。

 

「昨日も聞こうと思ったのですが……」

 

 女性が口を開く。

 

「なんですか?」

 

「お名前は伺いましたが、お二人はどういうご関係なのでしょうか?」

 

「夫……ぐおっ!」

 

 例の如く、夫婦と答えようとしたジンライの脇腹を舞が小突き、小声で囁く。

 

「変な答えは止めなさいよ!」

 

「むう……」

 

「あの……」

 

「そうだな……互いの寝顔を知る仲だ」

 

「ええっ⁉」

 

「だから、言い方⁉」

 

「ま、まだお若いのに……進んでいらっしゃるのですね」

 

「いいえ! 一歩も進んでいません! 大変な誤解です!」

 

「やっぱり、私、お邪魔だったかしら?」

 

 女性が小さく笑う。

 

「そんなことはない。お陰で有意義な観光が出来た」

 

「ア、アンタ、人の不幸にかこつけて……」

 

「貴様も温泉では楽しそうにはしゃいでいたではないか……」

 

「な、なんで知っているのよ⁉」

 

「隣の湯に入っていたからな……嫌でも声が聞こえてくる」

 

「ドッポを使って、覗いたりしていないでしょうね⁉」

 

「なんでドッポの性能をそんなことに使わなければならない……」

 

「ふふふっ、仲がよろしいのですね……」

 

「な、なんでそうなるんですか⁉」

 

「ふん……着いたぞ……」

 

 ジンライたちは車を降りる。

 

「本来の私たちの目的地、夕張ね……どの辺が最も~なの?」

 

「この地域最上の映画ロケ地だな、強いて言うのならば」

 

「強いてって……あら?」

 

「ううっ……」

 

 女性が頭を抱えて膝をつく。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です……少し思い出しました……」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ええ……ここで私は……⁉」

 

「きゃあー!」

 

「うわあああ⁉」

 

 人々の悲鳴が聞こえる。見てみると、豚の顔をした大柄な人型の生物が数匹、空間に開いた黒い穴から姿を現した。その生物は鎧のようなものを身に付けている。その中で一番立派な鎧を着た生物が叫ぶ。

 

「グへへ! とうとうこちらの世界への扉が本格的に開いた! てめえら、まずはこの辺りを制圧しちまえ!」

 

「な、なによ! あいつら⁉ ⁉」

 

「魔界『ツマクバ』のオークども……こちらまでやってきたわね……」

 

「ま、魔界⁉ オーク⁉」

 

 女性が刀を抜いて構える。

 

「向こうでは上手くやられたけど、こちらでは好きにはさせない! 『爆ぜろ剣』‼」

 

 女性が浅葱色のだんだら模様のドレス姿に変わる。それを見た生物が驚く。

 

「て、てめえは⁉」

 

「魔法少女新誠組(しんせいぐみ)副長、菱形十六夜(ひしがたいざよい)、参る!」

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