超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(4)漫画の力

「異星人……確かに人型ではあるな」

 

 風花雪月がアマザの姿を改めて見て呟く。

 

「月さん!」「ここは俺に任せろ!」「まずは出方をうかがうべきだ」

 

「だ、だから! 同時にしゃべるなというのに!」

 

 風花雪月が片手で頭を抑えながら左右に振る。アマザが不思議そうに首を捻る。

 

「忙しそうだな……ただ、あまり構っている時間もない、こちらから仕掛けるぞ」

 

「来ますよ!」「俺がやる!」「防御を優先だ」

 

「ここはそれがしで十分だ! 行くぞタコ人間!」

 

 風花雪月は騒がしい脳内会話を強引に打ち切り、ペンを構えようとする。

 

「む!」

 

「骨は少なさそうだな……刻むか、焼くか! ぐっ⁉」

 

 風花雪月が手首を抑えてうずくまる。それを見ていた舞が叫ぶ。

 

「きゅ、急にどうしたの⁉」

 

「け、腱鞘炎が……」

 

 風花雪月が苦しそうに呟く。

 

「腱鞘炎⁉」

 

「漫画家にとって職業病のようなものだな……」

 

 舞の隣でジンライがボソッと呟く。風花雪月が苦々し気に声を上げる。

 

「くっ……これではペンが握れん!」

 

「……先程少し見ていた限りでは、そのペンという筆記具を使わせると厄介なようだな」

 

「ぐっ⁉」

 

 アマザの身体から二本の長い触手が伸び、一本が風花雪月の腕を弾いてペンを飛ばし、もう一本が鞭のようにしなって、風花雪月の身体を激しく打ちつける。

 

「わっ!」「ぐっ!」「うおっ!」

 

 風花雪月は地面に這いつくばった状態になる。

 

「月さん! 頑張って!」「ペンを拾え!」「あの触手を躱せば……!」

 

「ぐっ……言われなくても!」

 

「そうはさせんよ」

 

 アマザの二本の触手が交互に風花雪月の身体を叩きつける。風花雪月はなんとか立ち上がったものの、防戦一方になる。

 

「ちぃ! 情けないが、今のそれがしでは役に立たない! 誰か代われ!」

 

「……」「……」「……」

 

「な、何故に三人とも無言になる!」

 

「少し眼精疲労が……」「今の攻撃で腰痛が……」「あまり言いたくない部分の痛みが……」

 

「ど、どいつもこいつも!」

 

「す、すみません!」「人のこと言えねえだろうが!」「連載を減らすべきかもな……」

 

「……盛り上がっているところ悪いが、終わりにさせてもらう。NSPとやらで忙しいのだ」

 

「⁉」

 

 アマザが二本の触手を上に振り上げ、勢いよく振り下ろそうとする。

 

「吹けよ、疾風! 轟け、迅雷!」

 

「!」

 

「疾風迅雷、参上! 貴様らの邪な野望は俺様が打ち砕く‼」

 

 疾風迅雷がアマザの触手を弾き飛ばし、ポーズを取る。

 

「その声は……ジンライか⁉」

 

「ジンライ様、だろう?」

 

「やはり生きていたか、まったくしぶとい奴め……」

 

 アマザが少し後退する。

 

「貴様らの詰めが甘いからな、お陰様で死に損なった」

 

「ふん、まさか地球にいるとはな……」

 

「……NSPの回収が主な目的か?」

 

「ああ、そうだ」

 

「俺様の始末は後回しにしていたというわけか……」

 

「そういうことになるな。だが、余計な手間が省けたというもの!」

 

「はっ、余計な手間とは……随分と強気になったものだな、アマザ!」

 

「がはっ⁉」

 

 疾風迅雷があっという間に距離を詰め、アマザの腹に強烈なパンチを入れる。

 

「遅いぞ!」

 

「お、おのれ!」

 

「ふん!」

 

「なっ⁉」

 

 アマザが新たに伸ばした二本の触手を疾風迅雷があっさりと跳ねのける。

 

「相変わらずワンパターンな戦いぶりだな、成長のない奴だ」

 

「……お前の尊大さも変わらんな」

 

「凡愚の目にはそのように映るか……俺様の偉大さが分からんとは、いよいよ哀れだな」

 

「偉大? 笑わせる、反乱にも気が付かなかった間抜けが!」

 

「その間抜けを仕留め損なった貴様はなんだ? 大間抜けか?」

 

 ジンライがわざとらしく大袈裟に首を傾げる。

 

「黙れ!」

 

「むっ!」

 

 アマザが二本の腕を触手に変えて、疾風迅雷に向かって攻撃する。疾風迅雷は、一本は防ぐが、もう一本の攻撃を喰らってしまう。

 

「ははっ! どうした!」

 

「まぐれ当たりで調子に乗るな……」

 

「それ!」

 

「ちぃ!」

 

 アマザが六本の触手を自在に動かし、疾風迅雷に襲い掛かる。疾風迅雷も鋭い反応で攻撃を躱すが、それでも何本かの触手に当たってしまう。

 

「どうした、躱せていないぞ? まぐれでは無かったのか⁉」

 

「やかましい奴だな……大体、さっきから上官へ対する口の利き方がなっていないぞ」

 

「いつまで上官気取りだ! お前は行方不明扱いで、今は私が部隊長となっている!」

 

「俺様の行方は明らかになった。短い天下だったな」

 

「ふん、ここでお前を消せば良いだけのことだ!」

 

「出来るものならやってみろ!」

 

 疾風迅雷が触手を弾いて叫ぶ。アマザが攻撃の手を止め、嘲笑交じりに呟く。

 

「……戦闘中にそのように声を荒げるのも珍しいな、余裕がなくなってきているだろう」

 

「貴様も腕を触手に変えるなど、切り札を出しておきながら、俺様にトドメをさすことが出来ない体たらく……所詮は副官止まりの器だな」

 

「お前のその新しいパワードスーツを見極めていたまでだ。これで終わりだ!」

 

 アマザが六本の触手を同時に疾風迅雷に向かわせる。

 

「マジカルフォーム!」

 

「なにっ⁉」

 

「『トニトゥルス』!」

 

「ぐはっ!」

 

 疾風迅雷がステッキを掲げると、アマザの身体に雷が落ちる。

 

「威力はまだまだか……だが、ぶっつけ本番にしては上手くいった」

 

「くっ……な、なんだ、そのふざけた格好は……」

 

「わ、笑うな!」

 

「笑ってはいない、聞いているだけだ!」

 

「何も聞くな!」

 

 ジンライはミニスカートの裾を抑えながら叫ぶ。

 

「わ、訳が分からんが……まあいい、新型を試す!」

 

「新型だと⁉」

 

「こちらのポイントに来い!」

 

 アマザが叫ぶと、その数秒後、中型のドローンがその近くに飛来し、四本脚の付いたチェアのような形に変形し、アマザの身体にくっつく。アマザが椅子に座ったような体勢になったことに対してジンライが戸惑いながらも鼻で笑う。

 

「はっ、新型が聞いて笑わせる。ドッキング形式などむしろ古い流行ではないか」

 

「私の場合はこれがメリットとなる!」

 

「⁉」

 

 アマザの二本の脚が触手に変化し、長く伸びて疾風迅雷の身体を叩き付ける。

 

「どうだ! 脚が出来たことで、八本の触手を自由に使えるのだ!」

 

「ほ、本当にタコになった!」

 

 舞が思わず驚きの声を上げる。それを横目で見てジンライはふっと笑う。

 

「女受けは悪そうだぞ。デメリットの方が大きいのではないか?」

 

「減らず口を! 今度こそ終わりだ!」

 

「どわっ!」

 

 アマザが自由自在に繰り出す八本の触手を避けきれず、疾風迅雷は倒れ込む。

 

「お前との因縁もここまでのようだな……」

 

 アマザが勝利を確信する。その時、疾風迅雷のバイザーに文字が表示される。

 

「ぬ……ん? これは……大二郎からのデータ転送!」

 

「何だ?」

 

 アマザが近づこうとした次の瞬間、疾風迅雷が勢いよく立ち上がって叫ぶ。

 

「意志を表示!」

 

「何⁉」

 

 疾風迅雷の身体が光り、パワードスーツの色が明るいオレンジに変わった。舞が尋ねる。

 

「ジ、ジンライ、その恰好は……⁉」

 

「これは疾風迅雷の数あるフォームの一つ、『マンガフォーム』だ!」

 

「マ、マンガだと? また訳の分からんことを!」

 

「行くぞ! マンガフォーム、『チャンプ』モード!」

 

「ぐっ⁉ しょ、触手が半分動かん⁉」

 

「今の俺様は無免許の天才薬師だ! 貴様の触手に麻酔薬を打ち込んだ!」

 

「な、なんだと⁉ だがまだ四本動く!」

 

「『ホリデー』モード!」

 

「な、何⁉ 空中に浮いた!」

 

「今の俺様は魔族型宇宙人だべさ! 喰らえ! 炎撃!」

 

「ぐはあっ!」

 

 疾風迅雷の指先から放たれた炎に包まれ、アマザは崩れ落ちる。

 

「今日のおやつはタコ焼きか……」

 

 地上に降り立った疾風迅雷がアマザにゆっくりと歩み寄り、右腕を振り上げる。

 

「く、くそ!」

 

「さらばだ! ⁉」

 

「……」

 

「き、貴様は⁉」

 

 ジンライは自らと同じ漆黒のパワードスーツを装着した者の出現に驚く。

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