超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(1)推し様がみてる

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「ふん!」

 

「どおっ⁉」

 

 漆黒スーツから蹴りを受け、疾風迅雷が吹き飛ばされる。アマザが声を上げる。

 

「間に合ったか!」

 

「くっ……」

 

「その調子で畳み掛けろ!」

 

「ぬっ⁉」

 

 アマザの指示を受け、漆黒スーツが疾風迅雷にラッシュを仕掛ける。戸惑い気味の疾風迅雷は防戦一方を余儀なくされてしまう。その様子を見て、アマザが笑う。

 

「ふはははっ! どうしたジンライ!」

 

「な、何故、俺様と同じパワードスーツを⁉ 俺様専用タイプだったはず!」

 

「ふふ、ひそかに研究を進め、つい先頃、量産化に成功したのだ!」

 

「なんだと⁉ うおっ⁉」

 

 驚いた疾風迅雷は防御を一瞬緩めてしまい、漆黒スーツの攻撃をもろに喰らう。

 

「どうだ⁉ 『銀河一のヴィラン』と言われた自らと同様の攻撃を受ける気分は⁉」

 

「ふ、ふん……着用している奴が平凡な兵士ならば、せっかくの優れたスーツも宝の持ち腐れというものだ……」

 

「強がりを! しっかり効いているのが声色で分かるぞ!」

 

「強がってなどいない、事実を言っているまでだ……俺様だったら、二、三回の攻撃で相手を確実に仕留める。そのような無駄なラッシュをかける必要などない」

 

「⁉」

 

「戯言を! もういい! やってしまえ!」

 

 再度アマザの指示で、漆黒スーツが疾風迅雷との距離を詰める。かなりのスピードに疾風迅雷は防御の体勢を取るのが遅れてしまう。

 

「ちぃ!」

 

「『効果音』! 『ドゴーン』!」

 

「ぬおっ⁉」

 

 突然、漆黒スーツを爆発が襲い、体勢を崩す。

 

「き、貴様⁉」

 

 疾風迅雷が視線を向けると、腕を抑えながら、苦しそうにペンを掲げる白い風花雪月の姿があった。アマザが舌打ちする。

 

「おのれ、まだ動けたか!」

 

「月! 代われ!」

 

「『ページチェンジ』!」

 

 風花雪月が青色になり、再びペンを掲げる。

 

「『点描』!」

 

「どはっ!」

 

 細かい点の集合体が漆黒スーツを襲い、漆黒スーツはさらに体勢を崩す。風花雪月が疾風迅雷に声をかける。

 

「今だぜ! ファンのお兄さん!」

 

「⁉ 俺様のことを認知していたのか⁉」

 

「男性の方がイベントに来られるのは珍しいですから……」

 

「疾風朱夏……先生! 『手洗いミューズの赤木さん』のコラボ石鹸は予約したぞ!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「悪いが、全員の回復までもうちょっと時間がかかる……この後は任せたぜ!」

 

「桜花青春……先生! 『苦虫マダム』の未亡人さんは良いヒールキャラだ!」

 

「あ、ああ、そうかい、結構マニアックだな……」

 

「加勢出来なくてすまない……」

 

「吹雪玄冬……先生! 『今朝、なに食べたっけ?』の実写映画も見たぞ! 良かった!」

 

「スタッフ、キャストに恵まれた……」

 

「美味しいところは譲ってやる……」

 

「佳月白秋……先生! 『文具のり』の映画続編も楽しみだ!」

 

「今回もオール海外ロケだ、期待しておけ」

 

「よし! 行くぞ!」

 

 ファンとしての思いをしっかりと伝えた疾風迅雷は立ち上がり、構えを取る。

 

「アマザ様!」

 

 茶色スーツ一人と灰色スーツ数人の部隊がその場に駆け付ける。

 

「おお、ようやく来たか! まずはあの目障りな黄色いパワードスーツを始末しろ!」

 

「はっ! 皆、かかれ!」

 

 部隊がすぐさま疾風迅雷に襲い掛かる。

 

「『疾風』モード!」

 

「ぐわあっ!」

 

 疾風迅雷が鋭い回し蹴りを繰り出し、群がる敵を一気に吹っ飛ばす。

 

「むうっ!」

 

「どうも兵の練兵がなっておらんな、アマザ様……」

 

 ジンライの嫌味にアマザが顔をしかめる。

 

「ま、まだ、このような力を残していたとは……」

 

「違うな」

 

「何?」

 

「残していたのではない、湧き上がってきたのだ」

 

「湧き上がってきただと?」

 

「そうだ」

 

「そ、そのような機能までそのスーツに備わっているのか⁉」

 

「それも違う……」

 

 ジンライは大きくため息をつく。

 

「な、なんだというのだ⁉」

 

「推しが見ているのだぞ? それも四人全員で!」

 

「は?」

 

「無様な戦いは出来んだろう!」

 

「な、何を言っているのか、さっぱり分からん!」

 

「だから貴様は副官止まりなのだ!」

 

「くっ、奴を止めろ!」

 

 アマザの指図を受け、体勢を立て直した漆黒スーツが疾風迅雷の前に立ちはだかる。

 

「どけ! 『迅雷』モード!」

 

「どわっ⁉」

 

 疾風迅雷の強烈なパンチを喰らい、漆黒スーツは力なく倒れ込む。

 

「くっ……まだ試験運用段階ではこの辺りが限界か……」

 

「言い訳は結構……例え万全ではなくても使いこなすのが良い将というものだ」

 

 アマザの苦々し気な呟きをジンライは一笑に付す。

 

「おのれ!」

 

「む!」

 

 アマザが猛スピードでその場を去る。ドッポがジンライに告げる。

 

「オオドオリコウエンホウメンニトウソウシマシタ」

 

「大通公園……NSPもあの辺りに……追うぞ、ドッポ!」

 

「リョウカイシマシタ」

 

 ドッポがバイクに変形し、疾風迅雷がそれに飛び乗って、アマザを追いかける。

 

「むっ……」

 

 アマザの脚は故障していた模様で、大通公園の中心辺りで止まる。

 

「ふん、貴様の悪運も尽きたな」

 

 すぐに追いついた疾風迅雷がバイクから降りて、アマザにゆっくりと近づく。

 

「お、おのれ……」

 

「今度こそ終わりだ!」

 

 疾風迅雷が蹴りを繰り出そうとすると、伸びてきた触手がその脚を弾く。

 

「そうはさせませんよ……」

 

「おおっ!」

 

「だ、誰だ⁉」

 

 疾風迅雷が驚いて視線を向けた先にはイカのような顔をした人型の者が立っていた。

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