超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

34 / 62
第9話(2)各々の企て

「おいおい、流石に焦ったぞ」

 

「ちっ、もう少し遅れても良かったか……わざと降下ポイントをずらした意味が……」

 

「ん?」

 

「いえ、何とか間に合って良かったです」

 

 アマザに対し、イカ頭が敬礼をして、アザマと疾風迅雷の間にさっと割って入る。

 

「くっ……貴様は?」

 

「お初にお目にかかります。この度、アマザ様の副官に任命されましたエツオレと申します。帝国でも名高い『銀河一のヴィラン』殿にお会い出来て光栄です」

 

 エツオレと名乗った者は、ジンライに対し、恭しく礼をする。

 

「ふん、今の攻撃……少しはやるようだな」

 

「お褒め頂きありがとうございます」

 

「私の優秀な副官だ」

 

「貴様にはもったいないほどだな」

 

「全くもってその通り……」

 

 ジンライの言葉にエツオレは小さく頷く。アマザが首を傾げる。

 

「うん?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

 エツオレは首を左右に振る。

 

「アマザ様! エツオレ様!」

 

「!」

 

 十二人の新たな部隊がその場に到着する。エツオレがすぐに指示を出す。

 

「この黄色いパワードスーツを始末する……包囲しろ」

 

「はっ! 各自展開!」

 

 部隊は統制の取れた動きで素早く疾風迅雷を包囲する。

 

「ちっ……」

 

 ジンライは舌打ちする。エツオレは感心したように呟く。

 

「無理に仕掛けようとしない……流石ですね、一瞬で相手の力量を見極めるとは……」

 

「動きにほとんど無駄が無い……なかなかよく鍛えられているな」

 

「私にとって自慢の部下です」

 

「貴様の部下か、良い指導をしているな」

 

「またお褒め頂き、恐縮です」

 

 エツオレが軽く頭を下げる。アマザが若干顔をしかめて呟く。

 

「おい、エツオレよ、あまり馴れ合うな……」

 

「失礼……それではジンライ様、名残惜しくはありますが、ここら辺でご退場願います」

 

 エツオレが右腕を掲げると、ジンライを包囲した部隊が一斉に銃を向ける。

 

「くっ……」

 

「放……」

 

「待て!」

 

「⁉」

 

 声のした方にジンライとエツオレたちが目を向けると、そこには風花雪月が立っていた。

 

「貴様ら……」

 

「ようやっと回復したぜ! 今度は俺たちが助太刀する!」

 

「誰だ……?」

 

「この辺りを守る地元ヒーローなる者らしい。それなりに厄介な相手だぞ」

 

 アマザがエツオレに説明する。

 

「それなりにですか……なるほど、言われてみれば確かに」

 

「ああん⁉ 舐めたこと言っているな! タコ頭にイカ頭の分際で!」

 

「粗暴な物言い……いかにも蛮族らしいですね」

 

「なんだと⁉」

 

「プラン変更だ、あの青いのから始末しろ」

 

「了解!」

 

 疾風迅雷を包囲していた部隊が今度は一斉に風花雪月に銃口を向ける。

 

「むっ!」

 

「たった一人増えたところで、戦況は変わらない」

 

「一人と決めんなよ?」

 

「なに?」

 

「『増刊号』!」

 

「『風花』!」「『雪月』!」

 

「なっ⁉」

 

 エツオレたちだけでなく、ジンライも驚いた。風花雪月が二人に分裂したからである。一人は上半身が朱色で下半身が青色。もう一人は上半身が黒色で下半身が白色になった。

 

「別れただと?」

 

「行きますよ、花さん!」

 

「おう!」

 

「『トーン:網』!」

 

「『点描』!」

 

「ぐわっ!」

 

 風花と名乗った者が腕を振るうと、網が出現して、も三人の脚を絡め取って、転倒させる。さらに風花は脚を蹴り上げると、細かい点の集合体が部隊の内、もう三人を襲う。

 

「『吹き出し:叫び』!」

 

「『効果音』! 『ビューン』!」

 

「ぎゃあ!」

 

 雪月と名乗った者が腕を振るうと、ギザギザの形をした雲のようなものが飛び出して、部隊の三人を襲い、更に雪月が脚を蹴り上げると、風が吹いて、三人が吹っ飛ばされる。十二人いた部隊が全員、あっけなく倒された。その様子を見てエツオレが顔をしかめる。

 

「どうです!」「大したことはねえな……」

 

「こんなものか……」「もう少し数を集めるべきだったな……」

 

「な、なんだと⁉ ペンなる物を使わなくても、攻撃出来るのか⁉」

 

 驚くアマザに風花と雪月が答える。

 

「威力は大分劣りますが……」「そういうことだ」

 

「身体が覚えているという奴だな」「おのれらを相手にするには十分だ」

 

「ぐっ……」

 

「面白い……私が直々にお相手しましょう」

 

 エツオレが前にゆっくりと進み出る。花が声をかける。

 

「あのイカ頭、結構やるぞ! こちらも変更だ! 『転載』!」

 

「『風雪』!」「『花月』!」

 

「なんだと?」

 

 今度は一人が上半身朱色で下半身が黒色、もう一人が上半身青色で下半身が白色となってそれぞれ構えを取った。

 

「こういうことも出来ます!」「面食らっているようだな」

 

「一気に決めるぜ!」「それがし、いつも下半身なのだが……」

 

「ふん!」

 

 エツオレが口から液体を噴きつける。風雪と花月の身体が黒に染まる。

 

「どわっ⁉」「こ、これは⁉」

 

「く、黒い……墨⁉」「ホワイトで修正をかけなければ!」

 

「喰らえ!」

 

「どわっ⁉」「うおっ⁉」

 

「うわっ⁉」「うぐっ⁉」

 

 エツオレが四本の触手を伸ばし、風雪と花月を弾き飛ばす。

 

「……あまり調子に乗らないことです……」

 

「ううっ……」

 

 風雪と花月が倒れ込んでしまう。エツオレが疾風迅雷に視線を向ける。

 

「さて、次は貴方です……!」

 

 エツオレの鋭い触手が疾風迅雷を襲う。

 

「マンガフォーム、『ムック』モード!」

 

「なにっ⁉ 躱した⁉」

 

「今の俺様は名刑事の子孫だ! 貴様の攻撃パターンは大方解けた!」

 

「お、大方だと⁉ 全てではないのか、驚かすな!」

 

「『アップ』モード!」

 

「な、何⁉ 消えた! いや、こっちか!」

 

「今の俺様は超武闘派種族の生き残りだ! 喰らえ! 光波!」

 

「ぐはあっ!」

 

 疾風迅雷の指先から放たれた光弾を喰らい、エツオレは崩れ落ちる。

 

「さて……今度こそお礼をさせてもらおうか」

 

 疾風迅雷がアマザにゆっくりと歩み寄り、右腕を振り上げる。アマザが叫ぶ。

 

「く、くそ! ここで私を始末しても……第二、第三の私が出てくる! お前は相当恨みを買っているからな!」

 

「……遺言はそれで良いのか?」

 

「わ、私が単独で動いていると思っているのか⁉」

 

「何?」

 

「き、貴様の居場所は既に帝国内ではなくなっている! 貴様が大の苦手とする政治的活動によってな!」

 

「む……」

 

「ここで私を倒しても、大勢に影響はない! 実質お前の負けだ!」

 

「それはどうかな?」

 

「貴様⁉」

 

「⁉ お、お前は?」

 

 睨み合うジンライとアマザのすぐ側に、ドイタール帝国軍の制服に身を包んだ美しい顔立ちをした青年が現れた。ジンライと似たような姿形をしており、同じ種族ということが窺える。髪は白髪で、肩くらいまで伸ばしている。

 

「ムラクモ! 来てくれたか!」

 

「……」

 

 喜びの声を上げるジンライに対し、ムラクモと呼ばれた青年は微笑を浮かべる。

 

「はははっ! どうだ、アマザ!」

 

「お、おのれ……」

 

 ジンライはアマザの方を見て勝ち誇る。

 

「陛下の覚えもめでたく、貴族連中からの評判も大層良い、ムラクモが来たぞ! これで俺様にも復権の目が出てきた!」

 

「ぬぬぬ……」

 

「貴様、いや貴様らの企ては水泡に帰した! 俺様の勝ちだ……⁉」

 

 ジンライが驚く。ムラクモが剣で自分の脇腹を突き刺してきたからである

 

「奇遇だね、僕もちょうど企てていたんだ、まずは君を血祭りに上げてね」

 

「ば、馬鹿な……」

 

 ジンライが呆然とした顔でムラクモの顔を見つめる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。