超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(3)衝撃

「ははっ、流石に驚いているね」

 

「ぐっ!」

 

「おっと」

 

 ジンライはムラクモを突き飛ばす。

 

「ドッポ!」

 

「オウキュウショチヲオコナイマス……イチオウシケツデキマシタ」

 

 ドッポがジンライの傷口を即治療する。それを見てムラクモが笑みを浮かべる。

 

「ほう、なかなか便利なものを連れているんだね」

 

「ど、どういうつもりだ⁉」

 

「どういうつもりって?」

 

 血の付いた剣先を見つめながらムラクモが不思議そうな声を上げる。

 

「貴様と俺とは士官学校の同期という間柄ではないか! 共に帝国の更なる繁栄に貢献する為、切磋琢磨してきたであろう!」

 

「そういうこともあったね……」

 

「そして、一緒に多くの危地をいくつもくぐり抜けてきたではないか! まさか忘れたのか? あの『カミノポッカ星の戦い』を!」

 

「忘れてないよ……あれはぶっちゃけヤバかったよね」

 

「『エンパラケッタ要塞攻略戦』を!」

 

「あれもまさに紙一重の戦いだったね……」

 

「何故戦友である俺様に対して刃を向ける⁉」

 

「ジンライ、君は一つ大きな勘違いをしているね……」

 

 ムラクモが剣先を懐紙で拭き取りながら呟く。

 

「何⁉」

 

「僕は帝国の更なる繁栄なんて、これっぽっちも望んでいないんだよ」

 

 ムラクモは指で砂粒をつまむような仕草を見せる。

 

「ど、どういうことだ⁉」

 

「う~ん、案外察しが悪いね。もうちょっと頭が切れると思っていたけど。まあ混乱しているだろうから無理もないか……」

 

「む……?」

 

「僕はドイタール帝国に対する忠誠心など持ち合わせていない」

 

「なっ……?」

 

「むしろ恨みを抱いている……」

 

「う、恨みだと……?」

 

「そうさ」

 

「つ、つまり、企てというのは……反乱を起こすということか?」

 

「お、冷静さが多少は戻ってきたかな?」

 

 微笑を浮かべるムラクモに対し、ジンライが戸惑いの声を上げる。

 

「そ、それにしても、恨みの原因が分からん!」

 

「……ウヨテマチョ公国という国家の名前に聞き覚えは?」

 

「や、約十年前まで帝国と友好な関係にあった国だな……」

 

「友好ね……」

 

「?」

 

「どうぞ、続けて」

 

 ムラクモが剣を軽く振って、ジンライに話の続きを促す。

 

「し、しかし、ある時、突如として、帝国への領土的野心を露にし、帝国領へのテロリズム紛いの攻撃を仕掛けてきた……」

 

「それで?」

 

「なんの罪もない一般民衆に多大な被害が及び、帝国内には怒りと怨嗟の声が高まり、義憤に駆られた帝国軍によって正義の鉄槌が下され、あえなく亡国の道を辿った……」

 

「流石だね、ある意味ではほぼ正確な歴史認識だね」

 

「ある意味?」

 

 ジンライが首を傾げる。

 

「それは帝国が意図して流布したプロパガンダの上においての認識だ」

 

「プ、プロパガンダだと?」

 

「そう、公国には帝国と敵対する意志など微塵もなかった……自作自演のテロ事件を公国の犯行とでっち上げ、一方的な侵略を行ったんだ!」

 

「そ、そんな馬鹿な!」

 

「帝国の侵略は実に見事なものだったよ……周到に準備・計画され、実行に移された軍事作戦、その後の情報操作、歴史的事実の改竄も含めてね」

 

「な、なにを……」

 

「まるで見てきたかのように話すんだって? 当然だ、僕は公国で代々政治の重要なポストを担ってきた有力貴族の数少ない生き残りだからね」

 

「!」

 

「成す術も無く故郷を蹂躙され、望んでもいないのに亡国の民となった少年時代の僕は名前と身分を偽り、帝国に潜入した……」

 

「そ、そんなことが出来るはずが……」

 

「親が外交官だった僕には、帝国内にも色々とコネクションがあってね。帝国のIDを取得するのはそう難しいことでは無かったよ」

 

「……」

 

 言葉を失うジンライには構わず、ムラクモは話を続ける。

 

「約十年間の雌伏を経て……いよいよ恨みを晴らす時が来たのさ……」

 

「だ、だが!」

 

 黙っていたアマザが口を開く。ムラクモが興味の無さそうな視線を向ける。

 

「ああ、君、まだいたんだ……」

 

「た、確かにお前は強い戦士だ! しかし、帝国に反旗を翻すにはあまりにも無力だ!」

 

「ご心配なく……帝国を打倒する算段はついたよ」

 

「な、なんだ⁉ 反乱分子をまとめあげたとでもいうのか⁉」

 

「意外と鋭いね。全てではないが、ある程度はね」

 

「なっ⁉ そ、それでも帝国を倒せる力があるとは思えん!」

 

「力ならこの辺境の星で見つけたよ、NSPという未知なるエネルギーをね……」

 

「⁉」

 

「天よ、力を! 雲よ、群がれ!」

 

 右手に持つ剣を上に掲げて叫んだムラクモの身体を眩い光が包みこみ、青色と白色の二色のパワードスーツとなる。色は違うが、疾風迅雷のスーツとよく似た形状である。

 

「な、なっ⁉」

 

天ノ叢雲(あまのむらくも)、参上! 君たちは残らず覆い隠す!」

 

 名乗りを上げた天ノ叢雲は剣を片手にポーズを取る。ジンライが驚きの声を上げる。

 

「ま、まさか、それもNSPから生成したパワードスーツか⁉」

 

「そうだよ。この圧倒的な力があれば帝国なんて恐れるに足らない……とは言っても!」

 

「うおっ!」

 

 天ノ叢雲はアマザに猛然と襲い掛かる。

 

「現時点で帝国に報告されると面倒だ、ここで始末する!」

 

「アマザ様!」

 

「むっ⁉」

 

 倒れ込んでいたエツオレが触手を伸ばしてアマザを回収し、ムラクモから距離を取る。

 

「ここは一旦退きましょう!」

 

「くっ! おい、ジンライ!」

 

「!」

 

「お前のスーツが量産されたことの意味について考えてみろ!」

 

「?」

 

「はっ、分からんか? お前はもはや絶対的な存在ではないということ、帝国から見切りをつけられたのだ!」

 

「⁉ ば、馬鹿な……」

 

 エツオレがアマザを連れて手際よく撤退する。ムラクモが舌打ちする。

 

「ちっ、逃がしちゃったか……まあ、切り替えるとしよう。ジンライ、消えてもらうよ」

 

「ぐっ……」

 

 ジンライはなおも混乱しながら、ムラクモと対峙する。

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